配水用ポリエチレンパイプ

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今年は地球自転速度が低下し赤道が収縮するとの報告がなされている。その結果、プレートの移動変動に伴う地震・噴火などが昨年より頻度が多くなるのではと言われている。そこで今回はライフラインで重要な耐震性水道パイプについて考えてみた

いつのころから水道の蛇口から赤さびが出なくなったのをご存知でしょうか。水道工事予定の回覧板には給水再開時に赤さびがでますとお知らせがあった。今はない。若い人はこんな時代があったなんて知らないだろうが、1970年前は頻繁にあった。水道管が鋳鉄管の表面にエポキシで被覆はされていたとは思うが剥離し、やがて錆が発生した。1970年以後は口径50mm以下の主として家庭用給水用パイプは低密度ポリエチレン性であり錆ないが、時々薄肉円筒状のフィルムが分岐管を閉塞する事故が発生した。パイプの内面が一皮むけしている事故が全国あちこちで発生するに至り、解析と対策が実施された。どうやら殺菌消毒液として僅かに配合されている次亜塩素酸が影響しているようだとして、短時間で結果がでるよう高濃度次亜塩素酸水にポリエチレンのサンプルシートを浸漬するとブリスター(泡)が発生した。ポリエチレンに耐候性改良剤として添加されているカーボンブラックが原因であることが判明した。そこで急遽内面にはカーボンブラックを配合しない内層と外面は耐候性改良のためのカーボンブラックを配合した2層パイプにて切り替えることとした。その後 事故は発生していない。

しかしながら、高濃度次亜塩素酸水に浸漬したポリエチレンシートにブリスター(泡)は発生したが、当初報告されたフィルム状剥離は再現できなかった。急遽の切り替えに勢力が割かれた。筆者は何故発生するのかカーボンブラックが起点だとすると何か理由があるはずだと考えカーボンブラック中の電子スピン濃度と関係することが分かった。この考えは其の他の用途でカーボンブラック配合が必要な樹脂製品に応用することができた。パイプ事故で躓いたがWhy?と考えたことで他に応用できたことは良かった。でも今でも何故剥離フィルムが生成したのか?は考えている。材料屋の直感としてはサイジングダイ通過時の内面剪断問題であろうと想像していた

この事案と前後してカリフォルニア大地震があり、ポリエチレン製のガス管は断層があっても切断事故はなかったことが報告された。ポリエチレンでも中密度リニアーポリエチレンで耐環境応力亀裂性、衝撃強度など優れた材料が選択されていることから国内でも同様材料開発が進み、かつパイプとパイプを接合する装置を開発した。この接合技術は次に大きな役割を果たすことになる。因みに地中埋設のパイプを後で他の土木工事で切断しないように黄色に識別されている

大口径(75~300mm)の配水管については道路埋設されたとき25トントラックの繰り返し荷重に耐えられるように材料は密度の高い高密度ポリエチレンが採用されている。色は青色。高密度化(結晶比率が高い)で剛性など機械的強度は得られる上,ガス管に用いられている中密度ポリエチレンのクリープ強度大きく改善させた.これは,結晶の一部の分子が隣接する結晶に入り込み結晶同士があたかも結合したように分子設計したことと,結晶の大きさ隣接距離のバラツキが無いようにパイプを製造することで欠点が改良されて現在に至っている。高密度ポリエチレンパイプの接続にはガス管接続方式が採用された。実際埋設された地域で東北地方太平洋沖地震があったが、事故率ゼロが報告されている。写真はパイプ敷設場所が垂直方向に断層した場合と水平方向に断層した場合のモデル実験であるが、(震度6程度)の地震では問題がないことが証明されている。現在、100年寿命パイプとして官民学協力して精度アップと標準化を進めている。テストシートの短期評価に加えパイプを敷設して長時間のフィールドテストにより変化をチェックする息の長い検討が山形大学栗山教授を筆頭に配水用ポリエチレンパイプシステム協会が推進している。開発途上国は水道が普及していないが、いずれ普及したときに地震大国で過酷テストに耐えたパイプが推奨されるようにISO標準化作業の中での活躍と企業の支援を期待している

(配水用ポリエチレンパイプシステム協会HPより抜粋;但し、この表7の宮城県・岩手の市町村逆に記載されています)

 

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