コロナ禍明けで京都の紅葉狩らしいシニア層が新幹線に乗り込んできた。コロナ流行中は東海道新幹線の車両は1車両多くて5人だった。やはり経済復興には人、物の流れが重要だ。(直近のオミクロン株は気になるが)微笑ましいシニアの二人連れや団体をみながら鉄道に関して、ふと色々思ったことがある。
急ぐあまりに戦略を取り違えたのでは?と思うことの一つが山形新幹線。仙台行き“やまびこ号”に“つばさ号”が連結し福島まで走行。そこから米沢、山形方面に分岐して奥羽本線を走る。窓の外の景色がゆったりと楽しめ、峡谷を心ゆくまで見ることができる。だが、130km/hr.いかにも遅い! 旅行には良いがビジネスには適さない。
仙台・盛岡方面に遅れをとっては不味いと考えたのであろう、ミニ新幹線構想に乗った。今になって、フル規格にならないかの運動を開始したとの報がある。福島(飯坂)〜米沢に聳え立つ山を回りながらの国道13号線に代わって、高速道路のトンネルが開通すると自動車の方が便利になってしまった。筆者は冬には電車を利用するが、その他は東京から自動車での日帰り。フル規格変更には余程の経済的、政治的パワーが必要。そのパワーが功を奏したのであろうか国交省の幹線鉄道ネットワークのあり方調査(令和2年)には山形県念願の構想が盛られている。福島―山形県境まではミニ新幹線 県境―米沢―新庄はフル規格で新庄から酒田まではミニ新幹線。初めから急がずに提案していれば実現したのかも。結果論だろうが、長崎新幹線の佐賀県問題を見ながら、今回の山形は新戦略に賭けた。
北陸本線と交直切り替え
東京〜金沢がフル規格の北陸新幹線が開通して盛況だ。今は金沢〜敦賀までの延伸工事が進んでいる。在来線の北陸トンネルができる前はスイッチバックで今庄と敦賀間の山越をしていた。北陸本線は都会に比較して走行車両数は少ない、かつ急峻な坂を含める土地柄とあって送電する変電所の数を抑えることもメンテと電力消費面でも重要とあって交流にした。採用当時は交流が最新技術だったので、それに乗った。これが後々厄介なことになる。
北陸本線は大阪・中京地区を米原から敦賀・福井・小松・金沢・高岡・富山を結んでいる。中規模工業地帯と観光地でもある。当時は米原から北にある長浜までは京都・大阪の経済圏への通勤車両が走行することで直流。ただ長浜以北の車両走行数は比較的少ないので交流。直流―交流の切り替えポイントの間は電源を切って惰性で走行した。
その後、敦賀から京都への通勤客も多くなり、ついに敦賀までを直流に。地元は変電所設備の負担をして改造。今は姫路〜敦賀の新快速が走行している。 直流・交流変換ポイントは敦賀と南今庄間となった。結局、送電・変電所のインフラ面では交流が優れ、車両は交流がべらぼうに高い。交直流電車となると新幹線なみの車両価格になる。後から経済圏の変化により直流に切り替えるのはあり得る。送電ロスを考えると交流が優れている。低電流高電圧で送電抵抗を抑えられるが、車両にとってみれば20,000Vの交流が入ると降圧変電し、次にモーターの三相交流にするために、降圧電流を直流にインバータで変換し次に三相交流にする複雑な工程・装置を内包している。それが車両価格高い理由。
つくばエクスプレスをよく利用するが、守谷止まりの電車がある、そこまでの車両は直流、それから先は交流区間であることが理由と知られている。守谷からつくばから先が決して過疎地でないことは今では常識だが、開発当時は確かに守谷でさえ・・の状態だった。土地バブルで守谷が注目されたのはその後。
横浜地下鉄グリーンライン。
横浜には藤沢市湘南台(小田急接続)から横浜市青葉区あずみ野(田園都市線接続)までのブルーラインとJR横浜線の中山から日吉(東急東横線)までのグリーンラインがある。センター南、北で交差する。ブルーラインの距離は40Kmと地下鉄にしては長い。いずれ新百合ヶ丘まで延伸すると川崎市と市を跨ぐ路線となる。
グリーンラインは短いが線路の真ん中を白いボードが延々と敷き詰められている。浮上しないがリニアモーターカーなのだ。大江戸線のようにチューブの中を走り抜ける構造にして建設費を詰める理由とするのは分かるが、地上走行で余裕のある横浜グリーンラインは何故採用したのか不思議。小さなパンダグラフが取り付けられている。車両の下取りもできないだろう。一方のブルーラインの集電は第三軌条方式(サードレール方式)。どうして相互に車両を使用することをしないのか不思議。
武蔵小杉、日吉の人口が増えたことで車両数を増量すべく駅の改造をしているが、相鉄線が新横浜―日吉に乗り入れ渋谷まで繋がることになった。ブルーラインのセンター南でグリーンラインに乗り換えていた乗客が流れるのではないかと予想されるだけに、ブルーライン車両と統一してパンダグラフ集電にしておけば両線も日吉経由渋谷までの直行運転も物理的には可能。戦略に長けた東急相手では市営地下鉄は厳しいのはわかるが仕掛けぐらいはしても良いと思う。横浜―新横浜250円。阪急京都線に乗ると烏丸から高槻市手前まで同額で行ける。これもボタンの掛け違いか。
経済復興には需要喚起、大型設備投資(含む投資に対する税制優遇)による成長戦略が必要だが、先々のグランドデザインに基づいて鉄道方式を選択しないといけないなぁと電車に揺られながら、つい余計なことを考えてしまった。