音力発電

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慶應義塾や阪神の応援団に味方? をするかもしれない発明が東大から発表。と書き出すと東大の野球部もたまには勝つ時があるとコンプレインがあるかも。音が電力に変換できることが9月1日プレスリリースされた。元の英文の文献には音によりLEDが点灯する、マスクを付けてしゃべることでマスクの先端に取り付けた小さなLEDが点滅するなど、音振動による発電の模様を見ることができるので是非チェックをされたい。

この発表を見て、記憶が定かではないが、圧力を電力に変換するシステムを慶應湘南キャンパスのメンバーが開発し、駅の自動改札口にシートをおいて発電を実証した。東京の桜橋か記憶が怪しいがトラック・自動車の走行により夜間の橋の照明を補填する試みもニュースになった。

踏む圧力と音圧は比較するまでもなく大きな差がある。冒頭の野球応援団で言えば、交互に立ったり座ったりする広島応援団のベンチは圧力変換シートで応援団の人数に依存するがこちらが明るいだろう。慶応は薄暮ゲームになりそうな時は「モリバヤシが足りない!」と大声を出すと明るいフィールとなるかも。阪神がAREを達したタイミングが甲子園であれば阪神・阪急電車は回生電力として利用できるので2度美味しい。そんな漫画のようだがどうなるか楽しみだ。

冗談は生真面目な東大に似合わないので、早速技術内容を見てみよう。超簡単に言えば圧電性のあるポリフッ化ビニリデン樹脂を用いナノファイバーを作成しナノメッシュ電極とサンドイッチしたものである。ナノファイバーの製造は電界紡糸法である。ナノファイバーの製造では以前から実施されているものである。特に福井大学繊維工学ではナイロンなどでナノファイバーを作成し、その表面を金、銀でメッキを施して殺菌、滅菌、ウエラブル導電衣服などの開発を実施していた。 溶融樹脂をノズルから押し出し電界を印加する。 おそらく、事業化には生産性に劣ることから、ノズル付き押出機から噴き出すメルトブローン方式になるのだろうと思われる。

タイトルは「世界最高電力密度の超薄型音力発電素子の開発に成功 ―会話や音楽、環境騒音など様々な音を利用した高効率の発電を可能に―」発表のポイントとして

  •  世界最高電力密度(8.2 W/m2)の超薄型音力発電素子の開発に成功した。
  •  この音力発電素子は、圧電材料を含む柔らかいナノファイバーシート 3 層から構成されており、総厚さは 50 マイクロメートルと極薄である。
  •  会話の音や周辺からの音楽といった環境音を用いて発電することが可能であるため、今後、モノのインターネット(IoT)やウェアラブル機器への様々な音を用いた電力供給が期待される。と記載されている。

 

発明には種類があるが、多くは既存技術+他分野技術+α の組み合わせであり、それぞれの組み合わせにおいて工夫をする。奇想天外新世界を突然発明することはごく僅か。その意味でこの発明は組み合わせの典型的事例だと思われる。工業的には電界溶融紡糸法はラボスケールであって、ここは既に市場でポリプロピレンのナノファイバを製造している企業があることのでプラスすることが好ましい。

大学でやるべきこと、企業がやるべきこと、双方が途中から組み合わせながら実用化を図る。それが特に地域に存在する大学に求められるのであろう。

なお、振動発電には圧電式、静電誘導式、そして電磁誘導式がある。電磁誘導は馴染みがあるのは永久磁石揺動(永久磁石の揺動により磁束が変化)、磁歪(磁性体内の磁束方向と応力により応答が変化)と面直磁界式があると 横浜国大の大竹准教授がJSTで発表している。これもミリ〜数Vまで対応、動作温度範囲が広いなど特徴があるとのこと。今後の発展に期待したい。

このブログを見て、いびき発電、寝返り発電で家計が賄えないかなぁと誰かの超嘆息が聞こえてきそうだが、笑い声発電が世の中をさらに明るくしてくれそうだ。

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