5Why

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自動車完成検査問題に端を発して続々の首脳記者会見。日本のもの作りは大丈夫か?と疑問を多くの人は持ったことは確かだろう。でも極論を言えば完成自動車検査問題は罪が軽い。大凡10万ものパーツからなる自動車を最終的に人が検査できない。法律が現実に置いてきぼりされているようでもあるがソクラテスが言う法は法。

もの作りは上流の素材・加工・組立て・モジュール・組み込みなどの工程を経ている。例えば樹脂素材を例に挙げれば、ナフサ中の硫黄など不純物含有量チェック、ポリオレフィン製造の場合はエチレン、プロピレン中の異性分の分析、触媒組成チェック、触媒保管チェック、重合反応装置材質変化、不活性化ガス成分チェック、重合条件モニタリング、溶融樹脂粘度・発熱状態のチェック、押出機内の圧力・温度モニタリング、ペレット粒サイズ別分級、髭・粉分析、分子量、分子量分布、添加剤配合量チェックの上流工程で製造されて最終の出荷検定項目で合否を判定される。出荷検定数より遙かに多くの工程分析からフィードバックされてスペック幅に入れる製造能力があれば、自動的と言っても良いほどスペックに合格する。自動車部品の多くはこれと類似した工程で製造されている。 

罪が深いのはデーター改ざん。上流からの工程管理精度を向上する努力・投資をせずに競争力が高いと装うことは信頼が基本の仕事の流儀から逸脱している

新幹線N700台座問題。記者会見では設計が粗く、他パーツを取り付ける際に肉厚8mmを1mm研削して肉厚7mmとするまでは許容するとの品質基準があるものの、実際は現場に委任されていて最大3.9mmまで研削した事例もあるとのこと。強度は厚みの3乗に比例するので、この箇所は設計の1/8.7しか強度がないことになる。この会社は新幹線300系の時代から代々担っただけにエッ?と思ったのも事実。当時の現場には設計者と対等に渡り合う叩き上げの熟練技能者が存在し、設計と実際の成形上の不具合調整を議論したであろうが、今はいないのであろうか?と考えてはいけない

「トラブル原因を人のセイにするとトラブルは再現する」前職時代トヨタとの付き合いで学んだポイントである。最終的に研削して寸法合わせしたのは現場。でも合わせざるを得なかったのは何故か?超高張力鋼鈑をコの字形状にプレスし溶接により中空体を製造。その上にパーツを接合する。その間隙調整に研削や肉盛りをしたことが直接原因。しかしその前に、設計者は鋼鈑が超高張力になればなるほどプレス後にバネのように戻るスプリングバックして最終寸法にならないことを計算に入れていただろうか?プレス現場で学習したのであろうか、現場研修させるシステムがあったのだろうか。それをCADの中でどのように設計基準に入れ、肉盛残留応力問題をどのように処理したのか。。。。。組織の問題に置き換えて深く掘り下げる必要があろう。苦しい作業になるがこれを乗り越えると脱皮した企業体になることが期待される。是非トライして欲しい。川崎重工の世の中での役目は誰もが認識している。無くてはならない企業である

15年ほど前、東京で明日のプレゼンの用意をしていた19時頃にトヨタ関連企業から電話。「今から逢えませんか?何時になっても良いから待っている。」 公用に自家用車使用は認められていないが、東名を疾駆し駆けつけた。この企業とは某用途で開発を企画したが、最初の段階で想定クレームとそれに対する5Whyを整理するところから入った。まだ販売していない段階、それも開発をこれから着手する段階にて。これには正直驚いた。一次原因は***で、この更なる原因は****で・・・・の何故?何故を5回繰り返すことでコア部の問題点を明らかにする5Why。噂には聞いていたが、実際は大変な作業である。このとき感心したのは

「トラブル原因を人的要因もあるとした対策案はことごとく拒絶された」ことである。

トラブルを起こさざるを得なかった人的背景要因に組織はどう関係しているのか?を深掘りしない限り5Whyまでは到達しなかった。5Whyまでに到達するまでに何度も脚を運び都度勉強することが続いた。先の東名疾駆は何回目だったか忘れたが、先方との信頼感が5Whyを通じて強化されていくことを実感した。帰路の裾野付近から箱根越えのダラダラ登り坂はアクセル踏む脚力には厳しいなかにも、5Whyの効用を味わえたのは貴重な経験だった

現在の働き方改革云々では威張れる話ではないが、どこかでは必要なんだろうと思う。

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