先日、奈良斑鳩に出張した。先端ナノ材料開発に必要なテストを実施するため装置のある斑鳩の会社を訪問。京都からのクルマルートを紹介すると大原野インター(京都縦貫道;京大桂キャンパス近く)から大山崎で名神に乗り→八幡京田辺から新名神→城陽から京奈和(和までは未開通)大和郡山→斑鳩。 いつの間にか京都南部から奈良へのアクセスが高速道路で繋がっていることに驚いた。斑鳩といえば法隆寺。聖徳太子ゆかりの寺院。金堂、五重塔、夢殿など世界最古の木造建築として世界遺産になっている。小学2年生のとき訪れた記憶がある。聖徳太子は同時に何人もの話を同時に聞き分けることができることに驚き、十七条憲法発布をした日が筆者の誕生日とあって親近感があった。(余談だが国民の祝日案になったときもあった)。 木造建築の極意は釘を使うことなく「ほぞ」で組み立てる。
製材の立体交差や木材を継ぎ足して長い長尺物を作るときは複雑なほぞ形状をつくる(金剛継)。宮大工はノコギリ、各種形状のノミ、カンナ
を駆使してピッタリ接合させる。墨打ちで粗々の切削形状は製材に描くものの、最後の数ミクロンの調整は職人の腕に依存している。奈良は地震が少ないとは言えないが最古の木造建築が現存している理由は木材の高弾性結晶セルロースをリグニンで接着した繊維の配向による強靱さと、揺れを緩衝させる「ほぞ」部が大いに寄与していると思われる。
さて、その「ほぞ」を持っている甲虫を紹介する記事があった。車にひかれても無傷。「ディアボリカル・アイアンクラッド・ビートル(悪魔の鋼鉄甲虫)」10月20日の記事によればhttps://nazology.net/archives/71860
「アメリカ・カリフォルニア大学の研究チームは、この頑丈さの秘密を解明するため、外骨格の構造をナノスケールで詳しく調べました。その結果、2枚の前翅(昆虫の前部の翅)が互いにくっついて、インターロッキング式に組み合わさっていたことが判明しています」
“インターロッキング”って日本建築の上述の「ほぞ」そっくりに筆者は思えるが如何でしょうか。 「研究チームではX線を用いて圧縮中の構造変化をリアルタイムで調べてみると、パズルのような接合部は、圧力に応じて固く組み合わさるのではなく、ゆっくりと剥離して衝撃を和らげ、壊滅的なダメージを受けないようにしていた」と報告しています。更に3Dプリンターでインターロッキング形状を作り高い強度と耐久性が実証されたとのこと。 キサイラス氏は「この構造や生物学的システムを応用すれば、より強固な人工材料を開発することも可能でしょう」と指摘しました。インターロッキング構造の実現により、ネジや留め具を使わない頑丈な自動車や建造物の開発も期待されています。」
ちょっと待って! 日本では推古天皇のころ(607年)には法隆寺に代表される建築で利用しているのですが、、、サイエンスにも掲載されたこの文献の査読者に日本人が存在していれば、インターロッキングは1600年前から日本にあったと指摘し、インターロッキングが作動するための潤滑剤があれば分析しておけば、さらに有用だとアドバイスをしただろう。多分蛋白質の量が関係すると推定されるが、化石原料に依らない潤滑剤の開発になるかも知れないのだ。
肝心の先端ナノ材料の実験は前半は50点の成績。実験前の根拠のない期待値75点を下回った。テストを実際に担当された方とデーター解析とアイデアを組み合わせ夕方になり90点をマークすることができた。きっと「和を以て貴し」と聖徳太子が囁いてくれたのだろう。