先のメールで長崎大学発表の内湾の塩濃度と魚生殖についてアップしたところ、「日本の土地は世界61位、海岸線の長さは6位。これをどう思うか?」のメールを頂いた。拙ブログをお読み頂いたことに感謝しつつ、これにお応えすることは浅学では困難なことあり、その旨を返信した。だが海洋国家の日本の将来をぼんやり思うには良いテーマかと思った。
フィリッピン海溝に沿った海底火山から島を形成。南鳥島の海底にはレアアースが、成長続く西之島には金の埋蔵など、その他海底にはマンガン塊が多く存在しており、先端産業にとっては嬉しいところ。これらの情報は多くがすでに知られており採掘技術の発展を待っているところである。そのような時に、北海道大学が
「南関東の世界最大ヨウ素・メタン濃集の謎を解明~沈み込み帯でのヨウ素のフラッシュ蒸発と移動集積~ 2025.10.2 発表した」
南関東(特に千葉県)では天然ガスが商業ベースに乗っていることも多くの人が知っている。今回はヨウ素・メタンがなぜこの地域か解明した文献である。
その前に
ヨウ素と聞いて“なんだヨードチンキ?”と思った人は昭和前半の人。今はポビドンヨード(商品名:イソジン)。前者はヨウ素をアルコール希釈。後者はヨウ素をポリビニルアルコールで希釈したもの)。ヨウ素の利用先について先に記載をすると
工業用途(〜現在)
液晶ディスプレイ:偏光板の製造(ヨウ素含有。偏光板は液晶ディスプレイ(LCD)の主要な部品で、特定の方向の光だけを通すことで画像を形成。ヨウ素を含む(ヨウ素含有ポリビニルアルコール)
触媒:化学反応を促進する触媒。特に、酢酸の合成プロセスでは、ヨウ化メチルやヨウ化ロジウムが利用。
半導体 半導体製造プロセスにおけるエッチング剤として利用される
工業用途(将来は)ペロブスカイト太陽電池、電子部品、センサー、フィルターなどへのヨウ素含有高分子材料が研究され実用化しつつある。
医療におけるヨウ素の利用
消毒剤、甲状腺疾患の治療と診断 (甲状腺ホルモン構成要素)
造影剤 ヨウ素化合物は、CTスキャンやX線撮影においてコントラストを高め、病変部をより鮮明に映し出す
今後の医療分野では
ナノ医療: ヨウ素を内包したナノ粒子は、がん細胞を標的とする新しいタイプの造影剤や、放射線治療を補助する増感剤として研究されている
次世代の診断・治療薬: 放射性ヨウ素を標的分子と組み合わせることで、がん細胞にピンポイントで放射線を照射する分子標的放射性医薬品の開発が進んでいる。
前置きが長すぎる。北大に失礼だ!との声が聞こえた。 北大発表のポイントを引用すると(下線部)
フィリッピン海プレートが南関東帯水層に多量のヨウ素、メタン、水素を供給。沈み込む海洋堆積物の地震破壊に伴う液体ヨウ素の気化(フラッシュ蒸発)。プレート三重点での広大な帯水層の形成とヨウ素、メタンの濃集。
南関東地下の上総層群帯水層(図 1)には世界のヨウ素埋蔵量の約 65%(約 400 万トン)が濃集し、水溶性メタンの産出量も世界最大です。しかし、なぜこのような莫大な量のヨウ素がメタンと共に同帯水層に濃集しているのか不明。これを解明した。
説明図が非常にわかりやすい。以下 転載する。 化学でお馴染みの相図(温度・圧力による固体・液体・気体マップ)を参考に見ると一層の理解がされるので試して下さい。
日本列島は太平洋プレートとフィリッピンプレートの押し合い・潜り込みによるカタストロフィ的に圧力解放=地震発生と災害をもたらす元凶である、その一方でプレート下の資源(今回はヨウ素・水素)をフラッシュ蒸発させている。プレートとして申し訳ないプレゼントなのか。我々は地震発災回復・予防に係る予算と工業、医薬面での収益バランスが取れるように利用すべきであろう。