ウイスキーは数滴の加水で美味しくなる?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今回は紳士淑女が愛してやまないウイスキー、ブランデーについて。ウイスキーに水を数滴加えるとすると味が美味しくなるのは経験された人は多いと思われる。アルコール(エタノール)と水は分子構造が似ているので良く混合する。なので数滴といえども加水すれば水っぽくなる筈であるが、逆に美味しくなる理由が分からない。凡人は何故?と考える前に酔いしれるが、世の中には分子動力学によるシミュレーションでアルコールと水がどのようにウイスキーの中で存在しているかをコンピューターで計算した研究者がいる。(オリジナル文献スウエーデン・リンネ大B.C.G.Karlsson,R.Friedma Sci.Rep.,7 6489(2017) 、引用文献 現代化学201711月号)

分子動力学シミュレーションはコンピューター上の仮想空間にエタノールと水の分子を配置し、原子に働く力及びポテンシャルエネルギーを仮定しニュートンの運動方程式に従って分子の運動の軌跡を計算する。ウイスキー醸造後のエタノール濃度は55~65%であるが、瓶詰めの段階で加水され40%に調整される。研究者は27%のエタノール濃度の時にエタノールと水は瞬間的に何処に存在するのか計算し統計的に処理した結果、表面層にエタノールが濃く存在し(平均の4倍)、表面から内部に向かうにつれ水の濃度が高い結果となった。かつエタノールはCH3-CH2 –OHと表現されるが、液面の最表面ではCH3-CH2が並んでおり-OHは内側に向いていることを算出した。これに数滴の水を加えるとこの傾向は更に強くなることが計算で求められた。尚、醸造後のアルコール濃度55~65%では全く均一であることと様相が異なる。

スコッチウイスキーにはエタノールだけで無く其の他成分(例えば香り成分)も存在している。醸造時に生成する香り成分とエタノール、水との3元系について、同様に動力学シミュレーションをしたところ、この香り成分の特定の箇所がエタノールに積層して存在するが、数滴の加水で表面層のエタノール濃度が高くなると、この香り成分はエタノールから分離揮発して我々が香しいと感ずるメカニズムを明らかにした。

左党にとってなるほどと関心を持って頂けるか、硬水と軟水ではどう違うのか?日本のワイン作りは水で苦労したと聞くが、どのように工夫したのかなど話題は尽きない。

それなら歯科関係のあの材料はどのようになるだろうかと想像を逞しくするのも良いのかも。酔い知れる前に。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。