ポリフェノール・腸の働き

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ポリフェノールは馴染みワードになっている。化学が苦手な人でもフェノールとはフェニル基(ベンゼン環)にOH(水酸基)がついている形をしていることを子供の頃から(町医者の診察室に漂うフェノールの匂いで)知っている。

樹脂は電力ケーブル被覆材料、自動車、家電、など身近に使われているが、製品寿命に合わせてフェノール系酸化防止剤が基本配合されている。長寿命製品の代表格は電力ケーブルや通信ケーブル被覆材料であり、100年維持設計には水・湿気・温度の環境下で滲み出さない(ブリードアウトしない)フェノール系酸化防止剤が基本。フェノール酸化防止剤が酸素と反応した後で再活性化させるヒンダードアミン系相乗剤との併用、紫外線吸収剤などの配合がなされている。

横道にそれるが、一般的に破壊寿命は製品の50%がある劣化基準点に達したときをもって寿命としているが、電力・通信関係は初めの1つが劣化基準点に達した時をもって寿命としている。それだけ国のインフラは信頼性を高く設定する必要がある。筆者は若い時、この材料開発に従事しており、この初めの1点に泣かされたものだ。 今や人間100歳が言われている。そうか、各内臓の50%が不具合ではタマラナイ! ここはどの臓器でも初めの1つが劣化起点に至らないようにするのが重要で、その秘訣は腸細菌叢にあるとの報告は多くある。

フェノール基の数が2〜4(〜それ以上)と多いのがポリフェノール化合物である。 食物でいうところのポリフェノールは化学合成された酸化防止剤とは分子構造は異なるが、複数のフェノール基を分子内に持っている点は同じ。機能(医学用では機作という)は酸化防止剤として作用して体内の活性酸素と反応する。

ここで、お茶のカテキンは低分子のポリフェノールだが、発酵するウーロン茶やワインのそれは重合ポリフェノールであり分子量が高い。不思議に思ったのは、低分子のポリフェノールであれば腸から吸収されやすいが、高分子ポリフェノールは吸収されるのであろうか。活性酸素と反応するには至近距離に存在する必要がある。

しかしながら、ワイン、カカオ、りんごなどを多く摂ると肥満、糖尿病、高血圧、心筋梗塞などに効果があるとするなら別の機作があるのだろうと漠然とTV放映で「ポリフェノールは活性酸素・・・」を聞くたびに思っていた。同じように食物繊維の中でも不溶性食物繊維は便通だけではないのではないか?とも。

そんな中、以下の文献・情報を目にした。詳細はオリジナル文献にてチェック願いたい。

文献からの二次情報であるのでブログではなく、あくまでも筆者の備忘録に過ぎないが紹介する。

  • 「ポリフェノールと腸内細菌 腸内細菌叢の変動を介した生体調整機能」 (化学と生物vol 60,No3 2022 福島大准教授 升本早枝子)
  • 「早期パーキンソン病患者において 2 年後の症状進行を予測する腸内細菌を同定」日本の研究 プレスリリース:2022.06.02 名古屋大学 大野 欽司 氏複数
  • Gut bacteria and mind control; fix your brain, fix your gut! Prof. Simon Carding. Quadram Institute (英国)  (2015年You tube講演)

4) 考える「腸」と「脳」:その不思議なメカニズム 健康・医療科学 環境・自然・生物2022.03/28東北大学大学院教授・福土 審

文献1 は全体を理解するには優れた文献。 序説では、赤ワインに含まれるカテキン、リスベラトロールがLDL(悪玉コレストロール)の酸化を軽減し動脈硬化の進行を抑制し、心血管疾患のリスクを低減したことを挙げ、ポリフェノール類の機能性については動脈硬化抑制、LDL抑制、脂質代謝促進、抗炎症、血圧上昇抑制、血糖値の上昇抑制が報告されていると紹介。

このほか、デンマークではフラボノイド類摂取により癌死亡率、糖尿病・肥満リスクの低下を、日本でもポリフェノール摂取量が脳血管疾患、消化器疾患死亡率と逆相関にあることが明らかになっている。このように脳にはじまり各臓器の活動に深く影響しているのは分かった。

だが、筆者の疑問はまだ解けない。高分子量ポリフェノールの機作(腸内細菌叢との関係)だ。

ポリフェノール類が生体調節機能を発揮するには、腸管から吸収され、その分子構造が保たれた状態で、各臓器・組織・細胞へ到達することが望ましいが、文献著者の升本氏は面白い実験をしている。リンゴ由来プロシアニジン類の低分子オリゴマーポリフェノールとin vivo試験では吸収されない高分子量ポリフェノールを肥満モデルマウスに別々に投与。その結果、低分子量オリゴマー、高分子量のそれは共に同程度の体重増加抑制や脂肪蓄積抑制が示された。

そこでオリゴマー群と高分子群の盲腸内容物の腸内細菌叢を解析したところ、高分子摂取群のみでBacteroidetes門比率が増すことを明らかにした。更に高分子群ではAkkermansia属の増加が顕著に認められた。 この属は肥満者や高コレステロール血症、高血糖などの症状を有する人は少ないことが分かっている。Akkarmansia muciniphilaの増加により肺細胞からの上皮性粘液(ムチン)の分泌が亢進すること、腸管上皮細胞のタイトジャクション関連因子の遺伝子発現が増加し、バリア機能が向上するなど分かっている。図参照。

この文献は紹介すべきところが実に多く、文献2、3、4とも深く関連するところがあるので機会を見て紹介する。特に認知症は気になるところである。平易な言葉で腸と脳の関係を説明しているのが文献4であるので、簡単であるが紹介する。

脳と腸が情報を交換し合う現象を「脳腸相関」と呼ぶが、福土さんによると近年、腸は脳からの指令で動くだけではなく、自ら判断し、行動する臓器であることが明らかになってきた。腸の状態が脳に伝わり、伝達の過不足が、喜怒哀楽や好き嫌いといった心の状態にも変化を及ぼすという。だからこそ、福土さんは「消化管、腸、脳の関係を捉えなおす必要があります」。とのこと。これって禅の教えの心身一如とも通ずると考えるが如何であろうか。

と偉そうなことを言えば血が通わないブログになる。知り合いの人は「りんごの食べ方知っていますか? 皮を剥かないでりんごを横にして輪切りにする。これこそ栄養価が高い」と教えてもらった。(農薬が気になる人は重曹で洗浄)。 子供の頃から包丁での皮剥きは得意だったが、残念! 輪切りは芯のカットする部分が少ないと納得。されば遊び心で、ミキサー(レコルト・ボンヌ)でりんごを破砕(5秒)または“おろし”、ヨーグルト・蜂蜜を掛けてみたところ美味しい。調子に乗って冷凍バナナとリンゴの共粉砕でジェラート風に。これも行ける。ピーマン嫌いの子供にも試してみよう。 ポリ(多くの)やり方で摂るのもポリフェノールに相応しいか?と我田引水。このブログではコーヒーについて述べたが、カテキンにもっと光を当てるべく、それならと最近入手した緑茶(奈良の月ヶ瀬茶)を飲用。

なお、文中で細菌の名前・分類について注釈をしなかった。興味を持っていただいて文献調査をすることで医学分野は面白いと感じてもらえたらと考えた。免疫など解明すべき課題の解決ははその方々に委ねたい。

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