水素エンジン本命か

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

このブログでも水素エンジンもありうると記載したことがあった。元々水素エンジンを検討していたのは日本人で武蔵工業大学の古濱教授だった。これをマツダがロータリーエンジンに適用すべく工夫改良を重ねた。最もポイントとなったのはガソリンは流体であり、水素はガス流体であること、燃焼ポイントが水素は早めになり制御が非常に困難であることに尽きた。今、マツダはロータリーエンジンの熱烈なファンに答えるべく部品在庫をPRしているが、水素ロータリーエンジンは見送り、会社としてはEVに舵を切った。

トヨタ及びトヨタグループはガソリンで開発したエンジンに上記の短所の改良を織り込んで水素エンジンを開発し、世間の注目を最も浴びるレーシングに打って出た。2021年5月、富士スピードウェイで開催された「スーパー耐久シリーズ」の第3戦となる24時間レースで、トヨタは排気量1.6L直列3気筒の過給水素直噴エンジンを搭載した「カローラスポーツ」で見事に完走した。過酷なモータースポーツのレースにおいて、水素エンジンの搭載車が完走したのは世界初である。(日経クロステック21.06.17)

富士スピードウエイで開催されたレーシングに挑戦し32周見事完走した。水素ボンベをMIRAIより倍増し車体重量は200kgも重い、かつ水素チャージのためのピットイン回数はその他より2倍とかかり、部品不具合調整に時間を要するなど想定トラブルは折り込み済みであっても狙い通り“驚いた”が正直な感想だ。

 

 

 

 

 

 

筆者は技術的なことは分からない。だが、水素エンジン推しの理由は

  • エンジンに関わる雇用がEV化により失業(国内雇用喪失500万人(豊田自動車工業会発表))は日本経済に深刻な打撃を与える
  • EVは本当にLCA(原料採掘からバッテリーまでのトータル環境負荷が大きい。採掘国を巡るトラブルも予想される
  • EVよりチャージ時間が短く、長距離走行が可能

などであるが、反対意見は 水素ステーションが少なく利便性がない に集約されるであろう。ただ、これはガソリンスタンドがそのまま切り替えられる訳では無い。自動車の水素ボンベ内圧は70MPa でこれも高圧だが、水素ステーションでは87MPaが予定されており、エネオスは従来のガソリンスタンドを改造することを発表しているが、政府の後押しもあるのだろう。

今、国民は安定雇用を求めている。コロナで落ち込んだ経済に更なる失業者増加で、少ないパイを競うことを願う。なので、本音は水素エンジンなるものが実用化するなら、それに越したことはないと考える。

企業で安直な収益改善はリストラ。これを現場で実施する上司は大抵性格が穏やかで、常日頃から信頼を寄せられている。その人がノルマをもって対処するのは本当に神経がズタズタになる。で、ノルマ達成の後は自分も退職する人の複数の人間を知っている。あれはやりたくないし、あの光景は見たくない。

ここに来て、EV一辺倒だった欧州が水素エンジンの開発に狼煙を上げた。これは驚いた。ディーゼルで大失敗した逆風をEVで切り替えしに成功し、逆にハイブリッドを追い落とすべく動いていただけに、拍子抜けの感がある。さてはEVはフォークボールでストレート方針と思いきや世論を躱す玉だったか。でも確かメルケルもエンジン雇用問題は以前口にしていた。ハイブリッドでも名実主導権を日本に獲られ、EVバッテリーは中国依存は拙いとドイツ及び周辺国で製造するとの情報もあるなか、水素エンジンが本格化したら、それももとの木阿弥になりかねない。少なくとも開発を余儀なくされた事情があるのだろう。

ここで、EVのLCAの記事があったので紹介する。

 

EV生産に伴う炭素排出量*出所:独フォルクス・ワーゲン*VWの「ID3」 **バッテリー生産のための 再生可能電力を含む。

 

 

スウエーデンの水力発電利用してのLCAだが、それにしてもバッテリーの比重が大きい。対比すべき水素エンジンのLCAはデータはあるかも知れないが、今は得ていない。

リチウムバッテリのリチウムはチリ及びアルゼンチンの鉱山で採掘されており、価格が安定しないで高騰傾向にあるのは、メーカーとして落ち着かない。

欧州の水素エンジン開発状況を付記しておく。

BMWはX5を試作し走行テストを、ランドローバーも続いている。ボッシュなど部品メーカーも開発に参加。先日フランスのロンバードは500馬力、804Km走行のセダンを発表した。ローマ法王が水素エンジン推しの話も伝わっている。真贋は分からないが、パワートレインが必ずしもEVで決定しないことは確かな模様だ。

水素の課題はコストであるが、2021.1.04日経クロステック記事によるとこれまで、グリーン水素には前のめりな見方とは別に冷めた見方もあった。それは、グリーン水素のコストを懸念する見方だ。グリーン水素はほんの3年ほど前までは10米ドル(約1000円超)/kg以上で、米国での天然ガスの価格の5~10倍と割高だった。大量の水素確保はまずは安い褐炭の改質で、というNEDOの方針もこうした背景から立てられたようだ。

2年ほど前からグリーン水素の製造コストは急速に下がり始めた。2018年には8米ドル/kg、2019年には5米ドル/kgと低下。2030年には2米ドル/kg前後にまで下がるという予測も出てきた。これは、NEDOが2030年に褐炭の改質で実現を目指す「30円/Nm3(約3米ドル/kg)」というブルー水素の価格をグリーン水素が下回ってしまう。2050年には1米ドル前後/kg(10円/Nm3)になる見通しで、天然ガスの最安値に並ぶ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。