海マイクロプラスチックを考える

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始めにお断りをしておきます。レジ袋有料化に特段の意見を持つものではありません。環境問題に貢献したいとの皆様と立場は全く同じです。ただ、カーボンニュートラルが目的である植物由来ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)であれば海マイクロプラスチックス問題の解決策のように誤解されることもあり、また、生分解プラスチックスであればカーボンニュートラルとマイクロプラスチックス問題も一挙に解決するのでは?との考えも提唱され再びスポットライトがあたっている材料もある。これらを踏まえ海マイクロプラスチックに焦点を当てて自分の頭を整理してみた。

  • 原油由来のプラスチックスとは

原油は(図-1)にあるように重油、軽油、灯油、ジェット燃料油、ナフサ・揮発油(ガソリン)、ガスからなり、さらにナフサは熱分解されて炭素数2のエチレン、3のプロピレン、4のブタンなどが、また亀の甲の形をした芳香族に分類される。(図-2、図-3)大まかにナフサは原油の26%を占めている。

 

 

 

 

 

 

ナフサからの誘導体の比率は自由にコントロールできない。自動車材料でプロピレンの需要が多い場合、自動的にエチレンも増産することになる。逆に言えばレジ袋のポリエチレンを削減しようとすると自動車材料がショートすることになる。大手化学会社では分解触媒の開発により比率を変える試みは継続しているが、実際は大がかりな投資が必要であり、そう簡単にはいかない模様だ。食品容器にはPETやPS(ポリスチレン)もある。これらの主原料は芳香族の誘導体である。芳香族の樹脂は耐熱性があり金属にとって変わる機能があり、自動車の軽量化による燃費向上やハイブリッド、EV車の機構部品向けに貢献している。では、芳香族誘導体の需要が増えたから、どうするか、既にお分かりのように全体のナフサ分解生産を上げる。でもその時にエチレンやPET、PSも増えるのだ。石油コンビナートは超微妙な匙加減に依存している。炭素数4は自動車タイヤの原料。タイヤ増産するとエチレンも増産との関係にある。 全体が幸せに調和するには、エチレンを大量に使用する用途を見つけ、それが、環境にとっても有益であることが極めて重要である。 その候補の一つがパイプ。 地盤が軟弱で地震があっても変形に耐えられ、酸化防止剤など配合しなくても寿命が長い衛生的なポリエチレンパイプを促進する施策を展開すべきである。

  • 植物由来原料のプラスチックスとは

サトウキビを発酵してアルコールを合成。さらにエチレン、プロピレンを合成して後の製造工程は原油由来と同じである。ポリエチレン、ポリプロピレンなどがブラジルで生産さら、日本では双日、豊通により輸入している。

分子構造は原油由来品と全く同じである。 サトウキビ由来なのでカーボンニュートラルを利用しているので環境中の炭酸ガスは増加しない。生産量はサトウキビと発酵能力の制約があり、価格は原油由来並よりは高い。なので、10%、25%を原油由来材料に混合して環境材料としている。

この植物由来のポリエチレンを普及する仕事をフイルムメーカー、商社が粘り強く活動した結果、現在は品不足まで来た。現在はPETも植物由来原料で生産することができ販売されている。エンジニアプラスチックスでは植物由来モノマーであるイソソルバイドを利用したポリカーボネート、ひまし油由来の耐熱ポリエステルなどが市販されている。

尚、ポリエチレン、ポリプロピレンは原油由来品と分子構造が同じであると記載した。では、偽物植物由来ポリエチレンがでる危険性があるが、面白いことに原油の中にある炭素とサトウキビの炭素は同位体の崩壊時間経過が違うことが分かっており、筆者は鑑定したことがある。

 

  • 海マイクロプラスチックス には原油由来と植物由来では違いがあるか?

ぽい捨てされて紫外線に曝されるとポリエチレンは分子が切れて粉々になる。これが海に廃棄されると餌と見間違う魚が口にする。これが問題の一つ。さらに、海の中にある汚染物質がこのマイクロ粉の表面に付着する、これが問題の二つ目。でも考えてみると、原油由来ポリエチも植物由来ポリエチも分子構造は同じなので紫外線での劣化も同じである。 要するにぽい捨てが問題。二つ目の問題は、そもそも海中に流れた汚染物質処理の問題。

 

  • 生分解プラスチックス

使用後に生分解する材料としてポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどがある。10年前にブームになったが、現在、サイドスポットライトを浴びている。 コンポスターの中に入れ分解促進剤を振り掛けると水や酸素に分解する優れものである。

ぽい捨てだけで分解するかというと、そう簡単ではなさそうで、分解促進剤を振り掛けする工程が必要。 促進剤がなくても良いから分解速度を早くすると今度は製造したペレットから何日までは使用可能と農作物・果物の管理と同じ。 自動車など品質保証が決まっている分野には利用できない。それなりに製品寿命が長くする分子構造や安定化添加剤配合が必要となる。 一方、土の中に入れて分解させると、分解する菌の餌が増えるのではないのか? のような素朴な疑問に対しても答えがあるのか、不勉強ゆえ知らない。 コップの内面コーティングしているポリブチレンサクシネートでは問題が少ないだろうが、ポリ乳酸の大型製品の場合には考えることになろう。 また生分解プラスチックスには原油由来もある。

  • まとめ

*原料・ナフサ分解による誘導体の比率は大きくは変えられない。

*仮にポリエチレンは要らない、自動車向け材料やタイヤのみ欲しいと要求されてもエチレンがほぼ自動的に生産してしまう。

*なので、レジ袋削減しようとすとレジ袋の同じ原料の他の用途を開発しないとバランスが取れない

*植物由来原料プラスチックスも原油由来プラスチックスも分子構造が同じなので、ぽい捨てすれば、紫外線劣化によりマイクロプラスチックスになる。

*マイクロプラスチックス対策はぽい捨てしない教育問題、マナーが重視される経済的に豊かにすることがポイントだろう

*生分解プラスチックスが大量に使用される場合は大型コンポストのインフラが必要である。 ポイ捨てOKとは分解菌、町の美観からの見方も議論されるであろう。

 

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