火災予防と不燃化技術

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気がつけば湿度計が40%を切る乾燥の季節となった。今年の火災予防週間の標語は「ひとつずつ いいね!で確認 火の用心」。 身近な家庭内やオフィスでもでコンセントが十分に差し込んでいない、たこ足配線、定格にあわない延長コードなどを見てぞっとすることはある。コードが長い場合に束ねて使用していることもある。熱をもっているケーブルを握ってギョッとしたこともある。

電気配線・設計・施工・メンテのプロによりなされたはずの首里城全焼の原因は電気系統のショートとのこと。 プロのはずなのでホント?と疑いは残るが、原因解析は専門家の方々にお任せして、判明しだい我々レベルで利用できる注意喚起をお願いしたい。

ここで、

材料屋からみれば、建造物の難燃化や不燃化処理してあれば、あれほどの規模に延焼することはなかったと考える。現在では木造の不燃化処理は可能である。製材をオートクレーブ(巨大が圧力窯)に入れてホウ酸化合物を圧入することが行われている。 金沢工大の露本研究室ではポリホウ酸ナトリウムを木材やポリスチレン、紙に塗布・圧入することで不燃化を達成しベンチャー起業している。そのほか、福井工大も類似開発、京都の企業は仏像の汚れ落とし業から木造建築の不燃処理に京大と組み不燃化処理をビジネスとしている。しかしながら、建築現場でカンナで削る作業が入ると厚み方向に不燃材が浸透しているのかが問題になる。

そこで表面加飾の漆自体の難燃・不燃化が必要となる。

漆の難燃化は電線ケーブルの難燃剤である水酸化アルミの粉末を配合する試みがあるようだが、恐らく40~60%配合する必要があるだろうから、あの光沢を出すのは厳しいのではないだろうか。この際、短時間で検討可能なハロゲン系難燃剤の適用を提案するのもありだと思われる。研究開発の時間が許されればリン酸エステル難燃剤、ポリリン酸アンモニウムのイットメッセンツ難燃処方が考えられる。これらは難燃剤。延焼時間稼ぎはできる。長期に亘って建築物が維持されるためには高分子量の難燃剤を漆と反応させることも考えられる。考えられる難燃剤として図の分子構造がある。この材料は単独でも透明で耐熱性があり、コーティイングなど種々の樹脂加工法が適用でき肉厚によっては不燃材ともなる面白い材料である。商品名は「SNOWIN」雪のように着火しないところから命名されている。なにか面白そう。

 

 

最後は何ごとも「地球温暖化説」を面白おかしく言う人がいるので、その人になりきり、無理を承知で珍説をあげると「電線ケーブルをかじる生物が温暖化で移動説」。筆者は若いころ通信ケーブルの材料開発に従事したことがある。通信ケーブルは国内だけでなく、海外にも敷設される。この海外での条件が、温度による劣化、紫外線による劣化などなど通常考えられる条件による劣化があり、当然のことながら材料に適用される。驚いたのは「ケーブル被覆材料のポリエチレンを喰う虫がいる!」 ゴキブリは日本のそれと違い巨大で集団で飛ぶと空が暗くなる程だと。蟻もアリンコなど可愛いものではなく、これもポリエチレン製ケーブル被覆に歯形を残す程の頑丈な歯をもっている。そこで、東南アジアへの輸出ケーブルには忌避剤が材料にコンパウンドしてある。実際に東南アジアの各種昆虫類による浸食テスト設備を電線・通信ケーブル製造会社は所有している。 首里城の延長コードに複数のショート痕が従来沖縄に棲息しない動物によるものだとしたら、設計基準を変更する必要がある。あくまでも珍説であるのでご注意。

少しありうる仮説は美徳節電。毎日ブレーカーを落として閉館し、毎日ブレーカーを入れて開館するとある。個別のスイッチをオフにして、最後にブレーカーを落とすのだろうが、そうでない場合は入れる度の起電は回路の疲労と関係しないのか?(衝撃電圧(サージ電圧)による絶縁破壊)。 ケーブル材料開発で寿命を規定するのは、n回テストした時の平均寿命ではなく、1回目で破壊するときの耐久時間を採用するというもの。確かに火災や通信事故は1回目が勝負になる。竣工以来1万回程度なので平均寿命としては考えられないが、n=1となると少しはチェックすることもあろうかと。

最近のスマホを充電すると「あなたの充電パターンから充電率80%にしておきます。」「明日の5時までに充電するようにします」の表示がでる。いずれ絶縁破壊センサーが開発されると建築・電力ケーブル寿命においてAI制御が可能になるかもしれない。

最後は標語のとおり、「ひとつずつ」には初期消火用のスプリンクラーや電気用消火剤(ハロゲンガス、炭酸ガス)などを砦として設備することは言うまでもない。家庭にある消火器の使用期限の確認はしよう。

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