無形資産

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確定申告の準備に国税庁のHPをチェック。新型コロナウイルスの影響をうけて国税は納税猶予制度を設けたとある。但し、猶予条件は「担保物件があること」。これを見て15年前にR&D(研究開発会社)を立ち上げた時を思い出した。

まず、銀行口座開設窓口で

銀行員 「経理とか簿記をご理解されていますか? あのね基本はね、仕入れ原価があり、売値があり、その差額が大雑把な営業利益! 分かります??」

当方「はい分かります。」

銀行員「あなたの事業計画には仕入れに相当するものがない。これで事業と言えますか?」

当方「仕入れは知識と知恵・工夫などの無形資産の活用です」

銀行員「理解できません。無から有へ?そんなことありえない。基本はね、、、と繰り返す」

当方「シンクタンクの会社って存在しますけど、同じじゃないですか?」

銀行員「・・・・」「ともかくダメです」

当方 そうですか一週間後にまた来ます。

そして一週間後、身元を調べたのであろう支店長室で頭を下げられ通帳を渡された。無形資産しかない会社から融資を申し込まれても担保物件がない場合は融資できない。

無形資産はサンク(失敗すれば埋没・蒸発)して差し押さえができない。銀行に無形資産を評価する機能がない。引当金も積みました上で、自己資本率低下なんぞの危険を回避するのは当然である。当時の銀行は日本でのものづくり成長成功体験を海外で再現すべく主軸を移していた時だけになおさら、国内の無形でしがない会社を相手にはしている暇はない。そんな雰囲気だった。当方も銀行員であれば同じような対応をしただろう。

 そして一年後、国税の査察があった。普通は5年毎に査察があり初年度にあるのは珍しい。

査察官「決算報告書に理解不能な箇所があるので査察する。」

「基本的な簿記の知識が無いようですので、まず聞いて下さい。

基本はね。。。。。と銀行員と同じことを言う。

定型式にあてはまらないのは理解不能。官吏に式が違うと理解して貰うのは大変だった。あれこれ議論して漸く理解してもらったが、それまで5時間。これを岩盤というか、システムの硬直と言うべきか。最終的に査察官も「税制のあり方がR&Dの性格と合わないことが分かりました」で落着。

こんな風景が15年前の当たり前・常識だった。機械や原料など有形を購入し加工して製品とし販売して利益を出す。もしくは、製品を購買し小売りする商売、それが規模の大小に関わらず「事業であり会社」 。GDPは経済指標としては有効であった

 トフラーがポスト工業化として未来は非物質的なものが経済に重要だと指摘してから60年後の現在、目の前の実態を見て初めて、自分だけでなく日本が置いてきぼりされたと痛感する日が来るとは。

 今や無形資産が有形資産を上回っているのが現在の経済。その事例はマイクロソフト社。総資産のうち有形資産は4%、時価総額では1%である。有形もほとんどが現金で簿記でいう有形資産はコンピュータ、机の類い。稼ぎネタは頭脳の集約であるソフトやブランド力。コーラも配合リストの紙一枚だけの無形資産で稼いでいる。有形資産は世界各国のボトラーが製造設備として所有している。ボトラーは装置インフラの費用はかかるが、コーラ本体は無形資産で稼いでいるのだ。日本での高収益企業キーエンスも設計は自社であるが、製品製造をするのは外注で、有形資産は所有していない。この企業の年収は他を圧倒しているのは有名だ。さらにスケールが大きいのはGAFA。マイクロソフト、コーラ同様グローバルに無形資産を活用できる強みがある。有形資産では機械を設置した場所に限定されるが、無形は空間を飛び越えて収益を獲得する強みがある。

ここで無形資産について整理した表があるので引用する(ジョナサン・ハスケル著「無形資産が経済を支配する」東洋経済)

 

 

 

 

 

 

 

米国では既に無形資産が有形資産を超えている。中国や地中海地域は典型的な有形資産が主流で、イノベーションが浸透していない。筆者の感覚であるが、韓国は大型生産設備は最新機を日本から導入してスケールメリット活用コスト競争力で勝負してきたが、足下の研究開発は日本人のスカウトで対応するという、基礎力が低いこともあり無形資産としては小いとみる。

冒頭のベンチャー起業は無形資産での勝負であるが、それでも資金は必要。そこで銀行はみてくれないとなると投資家エクイティに依存した経営になる。ここで問題は短兵急の収益獲得となると見かけは5年程度の新規RD経費を抑制すれば達成可能でも、それ以上の年月には息切れしかねない。

また、無形資産は頭だけあれば可能との誤解を生みやすい。筆者の感覚で申し訳ないが、元南海ホークス(現ソフトバンク)の名監督「鶴岡親分」は「ゼニ(銭)はグラウンドに落ちている」が研究開発にも適用できると考え、その体験は多くあった。研究現場、市場の現場などフロントにタッチしていないと研究ネタも浮かばず、浮かんでも長期的研究としての価値、市場価値から乖離する。そこを考えることが無形資産資本主義ならこそ強く要求されるものと思う。

 新型コロナウイルス問題で理化研が薬効に向けての機作を続々発表している。これこそ無形資産である。理化研はこの研究成果を発表すると同時に世界の科学者、製薬メーカーに利用して欲しいとも。無形資産は利用されてこそ価値があると考える。航空機分野で特許に拘るあまり囲い込みで失敗したライト兄弟。ハイブリッド技術公開のトヨタ。違いはあきらかだ。さて、ナノサイズ企業の筆者の選択も迫られる。

 上述の書籍を読んで面白いと思ったのは都会と冨の偏在。 無形資産は相互シナジーで大きくなる。それは分かる。この著者は金持ちの隣に家を持ちたがるのも、これが一因であると述べている。都会は満員電車など不便極まりない、ましてコロナウイルス温床になりかねない。ただ、それを遙かに上回るだけの無形資産蓄積に好都合な条件がそろっている。SNSが5Gに移行し、インターネットがどれほど進歩してもだそうだ。これから有形から無形に向かう日本は都会集中は避けられないとも読める。

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