知的財産権 特許庁活動と提言

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「突然ですが問題です。として始まる特許庁支援課のプレゼン

(2019.12.12@埼玉産業技術センターでの講演より抜粋)

Q1 2年前に他社が開発・販売した製品。売れているが知的財産権を取得していないので、形状や機能をすべてパクリしてロゴだけ自社のモノを製造して販売した

合法? 非合法?

Q2 5年前に他社が開発・販売した製品。売れているが知的財産権を取得していないので、形状や機能をすべてパクリしてロゴだけ自社のモノを製造して販売した

合法? 非合法?

Q3 自社のマル秘技術。特に管理ルールを設けているわけではないが、外部には知られていない。これを自社の社員が退職した際に持ち出し、自分の会社を立ち上げて利用している

合法? 非合法?」

の質問で始まる特許庁 総務部 普及支援 産業財産権専門官の出張講演が埼玉産業技術センターであった。「 」内は当日の講演冒頭で聴取者にヒヤリング設定問題である。これこそパクリ・丸写しであり、文書作成した特許庁に著作権がある。著作権は死後70年あるが、講演会の目的が普及活動にあるので転載の形で許されるのを確認した上でブログを書いている。

冒頭に戻り、Q1は非合法 Q2は合法、Q3は合法。

皆様の回答は如何でしたか?  Q1は非合法。 既に商品を製造し販売。3年以内は守られるルールがある。ところがQ2は5年経過すると、そのルール適用はできないので合法となる。なのでパクリ商品を出す場合は(知財出願がないことを確認したら)3年と1日待つことになる。なんだか、G党のEgawa事件を思い出した。 Q3は労働市場の流動性が過去より激しいので、よそ事ではない。 社則での管理、雇用労働契約の整備、特に退社時の書類の保管が重要。 よく言われるのは、社員は会社情報を漏らすより、経営者が多い。自社自慢もあり他社との会合の場や、展示会でつい力が入って背伸びした発言をすることがある。

講演会では特許、実用新案、意匠、商標権について具体事例をあげて紹介。特許は出願から20年、実用新案10年と期限があり、意匠、商標も都度延長があるので、商品の立ち上げからエンドまでの寿命を考えて出願する必要がある。意匠、商標を新規に考案するときは、売れている商品にどうしても意識・発想が引っ張られる傾向がある。どうみてもパクリだろう的なものもある。誤解させるネーミングもある。特にSNSのアドレス、商品にみることがあるが、現在は日本語が怪しいので見破ることができるが、巧妙な仕掛けを次々にするだろうから油断はできない。 ここも具体例を挙げて専門官は説明。

特許庁は40人ほど(単独でなくも合算で)揃えば、出前の講演会+特許相談をお願いすることができるので、これは是非利用したいものだ。知財の全体像を理解するには非常に便利だ。

今後、効率よい出願や、ブルーオーシャンのビジネス狙いにはパテントマップの作成がある。筆者も若いときはマッピングを作成したことがあり、会社別にまた発明者毎に整理すると、その人の技術的背景や癖を理解した。非常に面倒なので外注先を特許庁がアドバイスしてくれるHPがあるので参考にされては如何でしょうか。

中小企業には出願において特典が用意されている。外国を対象にする場合はPCT出願を日本語でしておいて、国が決定したら翻訳して海外国に出願する。PCT出願費用及び翻訳料の支援が受けられる。筆者も度々利用しており、特許庁から還付されるとホットしてありがたいと思う。

一方、特許は長くて20年。なので、永遠に技術保持して他社排他にするには、徹底した技術の囲い込みと流出防止をすることもある。コーラが代表的であり、最近ではノウハウ・ブラックボックス化もある。 想像だが、特許を継続改良で出し続けて巨大な特許網を形成する費用と徹底した秘匿への費用は拮抗しているのではないかと思うが、秘匿すればするほど魅力性が増すことが付加価値になっているのであろう。でも大変だ。

経済先進国のこれからの成長エンジンは知的財産にあると言われるが、本当は「もの造り」「ソフト創り」の現場があって成立する。妄想は勿論、机上の空論は特許にはならない。実施例、比較例により先進性、新規性を証明して初めて特許が成立する。 もの作りで先頭を走らないと、基礎的研究を牽引することはできない。ものづくりと知的財産の生産は両輪なのだ。ただ課題がある。知的財産をサポートする弁理士、また特許庁においては、重厚長大時代に活躍した機械、電気、電子関係が多く、これからの成長分野である創薬、バイオ、遺伝子工学、医学分野や、それらに共通する化学の専門家比率が極めて低い。ここが知的財産育成の課題であると考えている。 学生から実業界を経験しないで弁理士、審査官になることが多いが、それに加えて実業世界で先頭で戦ってきたシニアの経験を活かす採用があっても良いのではと考える。

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