社会を支える下水処理場メガターボエアブロワ

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「下水でコロナ検出実施」のニュースをみて目の付けどころが凄いと感心し、分析インフラが進んでいることで安堵した。NHK6月16日放送要旨は「富山県立大学と金沢大学の合同の研究グループが、処理されていない下水から新型コロナウイルスを検出することに国内で初めて成功したと発表しました。下水に含まれるウイルスの量の変化を見ることで、感染拡大の兆候を察知することが期待できるということです。」

童話・桃太郎の時代では川でお婆さんが洗濯など不浄なものは川を通じて海に流れても環境に影響は無視レベルだったろう。しかし、人口が何億十倍の現在では環境・医療リテラシーの低い国の中には今でもポイ捨て垂れ流しがあり、環境への影響は大きい。下水設備が未だにない国もある。衛生環境が劣悪なところに病原菌は棲息する。

上水だって整備されていないのに、まして下水処理は二の次になる。東南アジアでも上水設備が不十分だ。笑い話になるが、上水設備を新設したいので相談に乗って欲しいとアジアの某国から12年前に話があった。日本のメーカーは最新の濾過設備であればコンパクトで高性能が確保できますと強調。限外濾過膜、、、、先方は困惑した顔つきで「狭い日本なら、この装置・設備でしょう。我が国は広い土地が準備できるので従来方式で結構です。」

それに対して、現在の下水場は海外の方が巨大である。日本で最大の下水処理場の約8倍規模の場所も海外にはある。下水処理場のキイポイントは微生物が入った活性汚泥と下水を混ぜ、微生物の活性を活かす為に空気を汚泥槽に送り込む工程にある。下水処理の流れを図に示した。

生物反応槽にエアブロワが設置されている。下水処理場のサイズが年々巨大化していることもあり、従来のエアブロワでは能力不足。また、日本でも過去に設置したブロワの経年劣化もあり置き換えの時期になってきていることから、静かにそして巨大メガサイズのブロワの新機種開発と増設が行われているのだ。先のブログで陽があたらない地味な仕事であっても骨太インフラを実行する企業・技術者は明日の日本には重要だと述べた。その一例がこのメガブロワの開発であろう。

東京の下水処理場はどこにあるか東京の小学生なら施設見学に行ったこともあろう。都内に20箇所ある。いずれも広大な土地が必要。異臭もなく見学することができる。今の50歳前後の人ならば新宿西口あたりにあったと言うだろう。今は都庁を始め高層ビルが林立している。東口に比較して整然とビルが建築されるには元々広大な土地だったからでもある。四谷に住んでいた少年がバットとグローブを持って新宿東口、歌舞伎町を抜けて西口の野球広場に行ったとの話を聞いたことがある。

脱線した。メガエアブロワの渦に巻き込まれた。大型になるにつれて使用電力もウナギ登りになる。そこで革新的な方法を川崎重工が開発した。2004年のことである。ブロワは磁気軸受型高効率曝気ブロワである。インバーター制御式高速電動機の軸端に羽根車をつけ、電磁力でローターを浮上させて高速回転をさせ圧縮空気を送り出す。電力消費を15~30%カットする画期的な技術。メガ規模エアブロワではローターの重量が極めて重くなるが軸受けを浮かす許容は20ミクロンと極めて厳しい。(出典川崎重工11月号特集抜粋) 重量が重くても精緻な制御ができることは事業部は異なるが手術ロボットへと繋がっているのだろう。

2回目の脱線。

先日、NHKの番組で「魔改造の夜」を放送。魔界をイメージさせるおどろおどろしいナレーションと共に、アイデア、技術の粋を競う番組である。この日は床掃除ロボットが掃除しつつ走行して、走り幅跳びの踏切のところからジャンプ。その距離を競争する。

3社が挑戦した。1社目は癒やしロボットの開発会社。2社目は金属精密加工を得意とするメーカー 3社目はH技研でジェット機など開発チームが挑戦。1社目は助走から足で蹴る方式で人間に近い仕草で好感もてた。2社目は二重バネを考案、僅か1センチを1社目を越えたがほぼ同位。二重バネは外の製品に応用が期待できる。横展開は日本得意のはずだ。3社目は炭酸ガスボンベの噴射口を工夫して音速4の噴射方式。見事な放物線を描いて計測想定外まで飛翔。だが、いずれも本番前まで試行錯誤の繰り返し。複雑な理論式などで詰めても、テストは簡単には許されない壁の連続と苦悩。細部に拘った結果、重心が肝心とテストをしてみて分かった。それから立ち直る技術者の模様を放映していた。

脱線から戻って、川崎重工のメガエアブロワもサイズアップ(重量増大)になるにつれて軸の形状など多くの試作の結果ノウハウが蓄積されているのだろうと推測できる。陸用機械営業部ブロワ課長とはバイクの展示会で“ニンジャ”のインペラーの件でお会いしたことがある。非常に明るい人柄だけに、技術での壁がいくつもあろうが乗り越えるチームへの支援力となったのであろう。

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