3Dプリンターと都市防災

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まずはこの作品を見て欲しい

 

建築モデル作成で有名な株式会社BENAの作品である。会社のある板橋地区の3Dプリンターによる都市モデル。カラー着色の3Dプリンター。首都高5号線の橋脚、道路上のクルマ、ビルの窓まで詳細に再現されていることは驚きである。1.2m四方に亘って忠実に民家も含め再現していることに驚きが重なる。3Dプリンターが出現する前は手作りの紙や粘土で作成していておりペイントも含め長時間の忍耐作業を必要としていたが、3Dプリンターであれば昼夜厭わず稼働することで遙かに短時間(この作品の場合は一週間前後と聞いているが)で仕上がっている。板橋、成増地区に詳しい人ならば、病院や区役所など直ぐに分かるだろう。そして災害があれば避難場所はあの空間だとすぐ分かる。 同社のWEBにも代表的建築物の作品があるので参照願いたい。

現在の喫緊の課題は洪水、地震、津波、火災などの被害を最小限に抑える国土・都市設計である。 対策案が発表されると地域でのヒヤリングがなされる。その時は平面図での説明であるだけに真剣味が不足していることは否めない。この3Dプリンターで例えば球磨川流域を作成して、山側から定量の水を流し込んだ場合、洪水までの時間、範囲がどうなるか、知事、住民に見て貰い理解することで、経済的・人名的損失は最小限にできるのではないか。 頭の中で想像するより、コンピュータグラフィックでプレゼンされるより、遙かに説得力がある。 都市でも昨年の多摩川越水問題。住民の景観が堤防強化では損なわれるとの反対意見があり、施工しないままになっていた。その時に3Dプリンター模型で越水すると被害が拡大することでone for allだと理解させることができたのかもしれない。

友人から信玄堤の話を聞いた。武田信玄の治水方法であるが、堤の一部を越水するようにしている。 上流からの下流への流量削減と流速のセーブの為である。 現在なら、適切なところにダムを造るand/or 切れても被害が最小限になるように河川を設計する(実際一部はなされているが)ことになる。

東京駅から皇居に向かってのデザインが随分変化した。昔は駅・大丸ビルがで~んと構えており、海からの風がストップしていたが、両サイドに高層ビルを建て中央を空けることで風がとおり、丸の内側の温度が灼熱から緩和することができた。 都市にとって温暖化とは都市発熱と風の通り難しに大きく依存する。 打ち水だけでは済まない。 3Dプリンターで作成して風洞実験して「風、熱流の流れを見える化」することで建築制約、都市集約デザインをすることで無駄な電気エネルギーを削減することができるだろう。 北区、足立区、葛飾、江東区などの東部地区の洪水問題、世田谷地区密集住宅街の防火問題などは、地域住民の個々の事情があって、中々動かないテーマであるが、その解決に3Dプリンター都市・国土モデルは有益ではなかろうかと強く思う。

因みに、和光市の理化研、商工会と3Dプリンター活用企業のメンバーが研究会を構成してソフト、ハード、材料、マシンなどのついて研究開発事業を推進している。BENA社そして筆者も会員である。(過去のブログで和光市民祭りで作品の一部を紹介したことがあるので参照願いたい。

先日。日経は「自治体の9割、浸水危険地域でも住宅立地 転出に遅れ」を報じている。

自治体の都市計画では水害や土砂崩れで危険だから「居住誘導区域」を推奨しているが、その誘導区域が危険である割合いが高いとのこと。いやはや、これでは移住したくなる動機は小さい。 仕事を求めて都会に来る。マイホームを建てるには資金面で建築する地域はあまり選べない。無理からぬところである。 東京も徳川家康が城を構えるまで人が住める場所は青梅や日野の武蔵の国。河川を付け替え、干拓をして土地拡大してきた。

最後に干拓ついでに横浜も。明治になり新橋―横浜に汽車が開通した。その終着駅の横浜は当時は海の中。東神奈川あたりから海の上を鉄橋で桜木町まで線路が敷設されていた。 6月に桜木町に新駅ビルができ、復刻実寸汽車が展示されている。みなとみらい散策のついでに寄ってみては如何でしょうか。これも3Dプリンターで製作できる日は来るだろう。

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