46%CO2削減と現実解考察

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2030年炭酸ガス46%削減を“おぼろげに浮かんできた数字”と環境大臣が発言。行政府は雇用・経済・医療・福祉などへの影響も勘案し責任ある現実解があるから言える筈だ。通常なら工程表で具体的に説明をして国民の期待と協力をお願いするところだ。

それでは現実解とは何かを考えてみたい。2030年まで時間がない。代替技術開発、建設、稼働までの工程の大日程がある。開発済みの技術でスケールアップだけが残されている場合においても、建設に最短3年、転換事業の教育訓練を含む検収1年の4年はかかる。それも全国規模でなると建設にも順番がある。前の東京オリンピック直前に新幹線が開通した。当時の十河総裁は既存技術の組み立てだけでシステムを構築した。もっとも戦前・戦中の弾丸構想があってのこと。新幹線は東京オリンピックを前に一から着手してはいない。平素の基礎開発力があり、政府の大きな後押しがあって実現する。

火力発電では

再生エネルギー(太陽光・風力発電)に環境大臣は比重を置いているようだ。但し、風力発電の巨大な羽根が居住地区では低周波振動が問題となることから海上に限定され、海上設営の本格技術開発はこれからだ。太陽光発電は日本の風景を一変する程に拡充してきた。残された土地は多くない。

もとより昼夜安定した電力を維持できない。筆者が以前紹介した余剰電力を圧縮空気として保存して小型水力電力として取り出す方法がベストだと思われる。これだと比較的簡単な土木工事ですむ。イスラエル企業は日本より欧州での実用化を急いでいる。横目で見ているときではないと思う。

水素発電は1業者がスタートした。NEDO/川崎重工/大林組、三菱パワー、J-Powerも続いているが、2050年目標なので2030年はどこまで46%削減に算入できるか見物である。普通なら責任もって算入はしない。技術検証―改良―完成までの期間に充てるのが通常だ。

水素製鉄(コークス還元代替)も三菱重工などが開発に着手している。が、2030年まで現在のプロセスを置き換えるには時間は厳しい。

原電

一方で、そこまで至る繋ぎの意味も含め原電再稼働は極めて重要である。福井県杉本知事は美浜原発再稼働を認めた。40年以上のプラント再稼働に異議を唱える声は当然だ。しかし、プラントの定期修理のレベルは非常に高いので、メンテの実態を開示でして理解を得るのが良いと思う。また、新設原電は昔の原電と異なり小型化していることで

万一の場合は大事にならないと聞いている。これが本当なら原電に関する議論を冷静にするのもありだと考える。

日本は高い厳しい規制をクリヤーし、クリヤーできなかった国、企業に差をつけてきた実績がある。上記の開発要素が多いアイテムについては、積極展開を期待する。

さて、使用する側の炭酸ガス削減・ニュートラルを自動車についてみると。

自動車ではEVは自身では確かに炭酸ガスを排出しない。FCVも実現すれば優等生と言われては巷間言われている。但し、EVは何度も言うがフォルクスワーゲンがディーゼルゲートで窮地に陥ったので、窮余策としてEVを取り上げたに過ぎない。

トヨタ自動車の豊田会長は、EVが最終ゴールではないと釘を刺している。エンジンの改良は継続しており、直接ガソリン燃焼した方が火力発電での電力利用よりは効率が良いかも知れないなら、その技術向上を継続しよう。またEVが台数でメジャーになるには時間がかかるがHEV、PHEVがそのギャップを埋めよう、そして水素も国家戦略上も重要だからFCVや水素エンジンも、、、、と多くの候補を考えて投資する必要を訴えている。

でも、可能なのはトヨタとVWグループ規模だけだと思われる。それ以外のメーカーはどれかに絞るか、または本命になったときに開発した会社のグループに参加するかの二者択一しかないのも事実あるのだろう。ホンダはカリフォルニアのマスキー法規制のときCVCCエンジンを開発した。日本車イジメが目的の一つだったが、見事にクリーンヒットでお返しをした。そのホンダがエンジンをやめてEV、FCVに絞ると発表した裏にGMと歩調を合わせる四輪車採算事情があるようだ。

以下の表は筆者が各パワートレインの特徴を纏めた。

現行エンジンも合成燃料を使用すればカーボンニュートラルは達成できる。日本の自動車産業に関わる500万人の雇用は維持できる。合成燃料はHEV,PHEVにも適用できるので高い燃費性能は維持できる。EVは電池が固体電池の開発が急がれ、かつ失業者は国内100万人と予想される対策が国と企業に求められる。水素は次期国家戦略では重要であるが、水素発電にも課題としてあるように点火し易いことからエンジンの設計がミソになる。水素タンクの容量アップも課題だ。

この表をみると、全部の候補に目配りして実行しているのはトヨタのみ。表現は悪いが競馬で全部の馬に賭けているようなものだ。自動車会社は連結子会社から提携までの組み合わせがあるが、将来はパワードライブを軸に再編されていくと容易に予想される。

 

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