賃金と待遇

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最低賃金が10月から大幅にアップするとの報道がある。現在の全国加重平均時給930円が31円アップの961円になる模様。東京や神奈川は既に1040〜41円を突破しているので1071〜72円/時となる。大阪も1023円と1000円を超える。僅か31円だけではないか。もっと上げるべきだと言う人も居られよう。中小企業の経営者から見たら、このアップ率(3%)は想定外の厳しいレベル。最低賃金が給与ではないにしても、毎年4月になるとベースアップとボーナスに頭を悩ませるのが経営者。どうしても最低賃金アップ率を横目に決めざるを得ないからだ。政府は中小企業への打撃緩和策として助成金と抱き合わせを考えているものの、ベースアップに対しては利用できない。

今、中小企業が新技術開発、新規ビジネスを企画する際には、補助金・助成金の調査から始まる。補助金の中の人件費をどの程度賄えるかが非常に重要なのだ。それほど人件費の経営におけるウエイトは大きい。補助金の資料作成が面倒・厄介にして、成果確度が承認者に納得できるくらいに開発レベルが到達していないと補助金獲得は困難である。1回のチャレンジで合格するほど甘くはない。大学や有名研究機関と共同でも厳しいのが現実。

最低賃金の決定は前年の失業率を計算に入れて算出すると聞いた。(嘉悦大髙橋教授説明では5.5%-前年失業率)。ではコロナ禍に見舞われた3年の間の失業率はといえば、雇用調整金、休業補償、休業手当てなど手厚いコロナ対策により維持されたのが実態で、もしなかった場合の真水の失業率がどうだったかわからない。失業者増加、企業倒産の嵐だったと思われる。コロナ7波が越えれば2類から5類に移行する考えだとすると、手厚い補助は無くなるはずだ。最低賃金のアップの皺寄せが解雇の形に出るのが怖い。某国の事例があるだけに他所ごとではない。

そんな中、機械工作メーカーのDMG森精機が博士課程卒は年収3割増の682万円を発表した。Face bookでは、この記事に刺激を受け「日本は、総じて海外企業に比べて博士号取得者が軽視されている」と投稿。他の人も「その通り待遇改善が必要だ」・・・が続いた。所謂「エコーチェンバー現象」が発生した。

森精機が高額で優秀な人材の獲得は一つの成長戦術であるのは当然。だが何故そのような措置をしたのかが気になる。筆者は機械加工業には門外漢なので、わからないが。1)過去の蓄積技術(属人化している技術)の解析を通じての見える化(e-ラーニング)に繋げる数学的高度レベル 2)ものづくりとして指示通りの切削加工をするのではなく、例えばトポロジーを活用したデザインを提案できる数学レベル 3)素材の開発・改良につながるような基礎研究が可能で金属以外にも精通している 4)ある専門が好きで好きで寝食を忘れ没頭した結果として与えられたような人物 特に4)であれば大大大賛成だ。

FBに投稿した人によれば「博士は文献査読に始まり未踏の分野に挑戦するなど修士などとは比較にならない努力をしている。」などの理由が述べられていた。面白い理由だ。本当に未踏の分野を極めたのなら起業すれば自らの待遇を決定できるはずだ。日本の博士号取得して起業した実際の統計数字は見たことがないので、コメントはできないが、フィーリングを許されれば、皆無か極々少数だろう。企業では技術研究部門における最高峰としてフェロー制度を設けている場合に、どれだけの人がフェローを取得しているのか、その割合も博士の価値判断になるだろう。

そう、「経営から見ると結果が全て」なのだ。結果までの時間軸の取り方は違うだろうが。経営に貢献大でFAされては困るのであれば更に高額を出すだろう。ダメなら閑職にも甘んじなければならない。米国は博士が多い一方で、突然ダンボールを抱えてオフィスを出るのも普通の光景。クビにしないで次回登板や異業種を展開するには必要かもと思いつつ残す日本がよほど社員を厚遇していると思うがどうだろう。

活かされていないとしたらスキルを発揮する場面に呼ばれない要素があると考えられる。努力しているのは誰でも同じで、技工士もプロ。プロフェッショナルな人は努力+アルファがあるから成功している。社会ではアルファが非常に重要なのだ。ホンダを世界の巨大自動車メーカーに育てた本田宗一郎は類まれな現場力・人間力で「あの人には尽くしたい」と周囲を思わせた。好きで好きで寝食を忘れて集中没頭する、その結果として新しい1ページを拓いたとするとそれが授与するのが大学でなくとも“博士以上”の称号が相応しい。

プロ野球然り、サードといえば長島。男らしさと華麗なフィールディング、ここぞと言うときにホームランと華やかでファンを唸らせた。ショート広岡の前で捌いてしまう。普通は遠慮するモノだが天衣無縫なナガシマだからと納得させてしまった。最近では日ハムとオリックス戦で杉本が2連続死球をくらった場面で、乱闘まではならないまでも、両軍の選手は恒例のごとくマウンドに集合した。その時ベンチからゆっくり杉本に近づく男がいた。Big Bossである。杉本に一言二言謝ったのだ。杉本は気分を取り直して1塁へ。ベンチに帰る途中で次バッターの宗にも一言。これに宗は笑顔で応え、それを見たスタンドは喝采。エンターテイメントの粋を見せたBig Bossだった。このようなことが、北海道北広島の新球場へ観客を呼び込む一つのスキルだとすれば金を出す価値はある。

長島が活躍した頃に全盛期を誇ったのが西鉄ライオンズ。セカンドを守ったのが仰木彬。のちの近鉄、オリックス、ブルーウエーブの監督。データー野球の先駆けとして冷酷な場面もあれば選手の長所を伸ばす名伯楽であった。野茂、イチロー、長谷川、吉井、田口など多くのMLB選手を輩出した指導・経営力。その一方で当時のニュースステーション放映中に小宮悦子さんを口説く艶っぽさもあり幅広い人間力など魅力があった。何より神戸淡路大震災の時「がんばろう神戸」を掲げて地元を団結させ優勝へ導いたことは後年になっても語り継がれている。

待遇云々は言わずともついて来る。ましてシニアになって退職・退官しても人は集まる。それが何よりの待遇だと思うが、如何だろうか。

 

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