金平糖

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ノーベル賞のパロディ版としてイグノーベル賞がある。思わず笑ってしまうが着眼点は凄いなぁと感心することがある。日本人の受賞者が多いことでも知られている。カラオケの効果や歯周病と経済は関係があるとの解析もあれば、兼六園の銅像には鳩の糞がつかないことからカラス避け合金の発明などがある。犬との会話ができるバウリンガルもあった。さしずめ小職が選ぶテーマとしては、スマホによる親指の長さの世代間変化か

文科省ナノテクノロジー分子・物質合成研究プラットフォームでは「オリジナルの着眼点に将来のビジョンを描く」として、この世の中には、一見役に立たないように思われることは沢山ある。しかし、ある瞬間、突如としてブレークスルーすることがある。今は役に立たずとも、必ずや未来に花を咲かせる研究シーズを紹介する「すぐには役に立たない研究講座」を開催している。日本は独創性に劣るとの批判もあるのであろう、本来は役に立つことを前提に科研費を大学に出す文科省が、直ぐには役立たないシーズ研究を許すことが有意義なことと思う。ある日突如ブレークスルーするには感性の違う聴衆に訴えることは有効である

そこで日頃は非常に難解専門用語や数式を駆使されている大学研究者が、異なる分野の聴衆に聞いてもらうために平易に説明する必要がある。専門仲間内の言葉では伝わらない。ここで講師の力量が試される。本当は超難解な内容を平易に説明してくれると「確かに役に立ちそうだ」とぼんやりながらでも脳みそに浸透する。開催者から講演指定された人の中には「役に立たない」からと指名され招待されたとしてやや抵抗気味に発表しているのは微笑ましい。517日のテーマは 「鏡の中のグルコースを食べる微生物」、「金平糖の形状に法則性があるか」、「本当に使い難い技術」、「電子の集団行動がもたらす不思議な現象」などである「鏡の中・・」はD体、L体のグルコースの一方を利用して創薬の可能性を。「本当に使いにくい・・」はマイクロ反応装置を利用した化学反応精密制御技術の開発、「電子の集団行動・・」は膨大な情報処理を電子の電荷とスピンに分離し媒体利用しようと、確かに今ではなくとも役に立ちそうと理解できる

ここで気になったのは「金平糖」。実は金平糖のような形状がある物質で可能なら面白いが。。。と考えていた時にこの講演会。これは天の配剤として会に参加した次第。ニーズがあり役立つシーズを探していた。弘前大学の宮永教授の発表は1)何故角が発生するのか2)角の数に法則性があるのか として、10年に及ぶ学生実験を纏めたものである。ご承知のように金平糖は大きな平鍋を略30度傾斜させ加熱・回転しながら核種の表面に糖蜜を掛け乾燥すると糖蜜を更に掛ける作業を続けると角が発生する現象を利用したお菓子。核種が1粒だけでは角が発生せず球に成長するだけだが、複数の核種では角が生え始める。当初の角は90数個の小さい凸が10時間後には20前後に落ち着くとのこと。教授は淡々と実験事実を発表していて、初めはこれが国立大学?と驚いたが、聴衆に答えを直ぐに言わずに各自の頭で考え創造性を高めるようにとの会の趣旨に合致していることが分かった。

糖蜜が回転する平鍋の界面で水分が蒸発することで粘度が高くなり摩擦によるカタストロフィーにより微小な凹凸ができるのだろうと思われる。微小な凹凸が隣の凹凸と衝突することで蜜が積層する角とそうでないところに分かれると推察した。これは空間を如何にして作り最適解の形状を設計する「トポロジー」の世界である。3Dプリンターと本質的に共通するものがあると思われる。コスモサイン合同会社では3Dプリンター装置販売と同時に専門誌・歯科技工からのご依頼により3Dプリンター記事を連載中である。妙なところでリンク。当初考えていた用途への適用には糖蜜代替物質を考慮することで実用化を計りたい。宮永教授は金平糖の角と雪道での凸凹を結びつけている。これもいずれ冬タイヤ溝形状などへの役立つことになると期待している。青森の厳冬のなかコンビニの前の道路をじーっと観察している学生さんは、自然現象の中に多くの役立ちシーズがあることを学んだのであろう。

海岸の流れの強い場所で二枚貝のイガイは足糸をつかって岩に付着している。これを見た研究者はテフロンであろうが付着するので研究をしたところ、ポリドーパミンが付着物質であることを見つけた。神経伝達物質であるドーパミンが酸化重合したものである。今は医療用コーティング材、導電膜、メッキなどへ応用されている。自然界にはまだまだベールに包まれた技術ネタがありそうだ。と書きながら自然界はオープンに公開している。観察眼のなさをベールと表現しているのは自然に対して不遜な態度なのであろう。

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