米国燃費目標 保護de反故?

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スキージャンプで日の丸飛行隊が活躍すると、次の大会までに例えばスキー板の規格を変更するなどルール改訂?が欧州勢回復策として浮上し、次の大会では狙い通りになることを経験してきた。野球でも飛びすぎるバットや飛ばないボールも変更対象にあがってきた。改訂とは言えルールは共通なので、体格的に不利でもテクニックでカバーするなどで対応している。

ところが、オバマ前大統領が決めた2025年までの年度ごとの燃費目標を国内自動車産業が立ち行かなくなるとして撤廃するとトランプ大統領は言い出した。理想主義と現実主義の対立。(オバマ目標2025年 23km/L 適用商品がなければビジネスにならない商売人トランプならではの発想。技術開発を信用していないこと、EVに熱心な中国では国内EV販売が思うように進まず、やがて米国への侵入してくるであろうとの懸念も本音であろうと想像する。

 環境問題をリードしてきたカリフォルニア州は汚染空気が滞留しやすい地形を理由に独自のルールを設けている。ワシントン高官はこのカルフォルニアも含めるとコメントを出しているが、加州は強く反発している。同調するその他の州もあり米国内ではダブルスタンダード化が簡単には解消しないようだ。

(カリフォルニア州は排気ガスゼロのEV車、燃料電池車の割合が基準を満たさない場合は販売できないか他社の余剰枠を買う。この余剰枠販売でテスラモータースは日本メーカーから巨額の資金を調達した。ワシントン高官の言う通りならば返金要求可能だろうか気になる) 

ダブルスタンダードでたまったものではないのが日本やドイツ勢。トヨタ、日産、ホンダに加え、マツダ、スバルも対象となっている。州内で6万台以上販売したとしても、残りの州向けのエンジン、排ガス対策など異なる車種製造は厳しい。 加州向けに一定の割合の製造しつつ、他州には新ルール車を製造することになりそうだが、いつ新ルールが反故にされるかも不安もある。なにせ反故歴が米国にはある。

 第一次オイルショックの1970年代にマスキー法が制定され、排気ガス規制が施行するとの報告を受け、どこも達成不可能とみていたが、ホンダがCVCCエンジンをシビックに搭載し、颯爽とカリフォルニアを走行。このころマツダのロータリーエンジンが出現し世界の注目を浴びた。米国は自動車産業保護の観点からこの法案を反故にしたことがある。 反故には前歴があるのだ。

その後も自動車メーカーごとの平均燃費を規定したCAFE(corporate average fuel efficiency)規制(15km/L) がドライビングフォースとなって、エンジン改造、ダウンサイジング、内外装の樹脂化、アンダーフード部の機能性樹脂による金属代替など軽量化もありCAFEもクリヤー。平均燃費向上にハイブリッドが貢献したのは言うまでもないが、その他のパワートレインEV(電気自動車)の生産台数も増加する一方、従来のリチウム電池代替の全固体電池の姿が見えてきた。充電時間の圧倒的短縮と走行距離が延びるなど活気的な技術開発がトヨタから発表されている。同時にトヨタ、ホンダはFCV(水素燃料電池)も進展している。 

 米国勢はCAFÉをクリヤーするために何をしたか。実に面白い。CAFEルールは車格ごとに決められている。小型車を軽量化するよりは大型重量車の軽量化で基準をクリヤーする方が手っ取り早いと考えたのであろう。米国車は従来より大型化に移行している。ルールといえばルール。

ドイツ勢はディーゼルの燃費不正問題からEVにシフトと思いきや、ここに来てディーゼル復活の声が出始めた。ドイツ政府をマネジメントする立場からするとEV車での失業問題が容易に予想できるので、ディーゼル燃費不正問題がケリがついたら戻るのではないかと予想していた。

 ディーゼルエンジンは炭酸ガスの発生量が少ないがチッソ酸化物量が高いことがネック。排気ガスに尿素水(アドブルー)の噴霧と触媒の最適化で乗り切ろうとしている。 VWは尿素水噴霧をエンジン燃焼直後と床下の2か所で噴霧するなど工夫はしている。化学反応ではバッチ処理より逐次回数反応の方が効率が良い。これを利用したのであろう。尿素水タンクと燃料タンクの2つが必要。乗用車でもベンツクラスであれば尿素タンクもありだろうがCクラス適用には無理がある。

日本でもディーゼルはトラックには必要である。だが、小型トラックに関しては今年のモーターショーで日野自動車から触媒担持にナノポーラス体を利用すると尿素水タンクが不要であると発表。さらにマツダは排気ガスの一部をエンジンに戻し再燃焼することで解決している。フレッシュ空気の量がその分削減されるとパワーが出ないので全体の排気量を増加させ、フレッシュ空気の量を減らさない発想で設計した。ディーゼルエンジン本家ドイツをマツダは追い越した。

 ドイツ勢は日本メーカーのシツコク諦めない研究と経営姿勢をどう見るか興味深々。 革新的技術開発には時間がかかる。 四半期ごとの決算会計システムでは長期的な経営に障害があるのではないかとして米国で見直し機運がでてきたようだ。この場合は好ましいルール改訂だと思う。

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