2026年 3月 の投稿一覧

ダンゴムシは食べた鉱物の構造を体内で作り変えて外骨格に

このタイトルを見て驚いた。そして最後は生物に学ぶ次世代材料への貴重な報告と気がついた。 筑波大学が2026.03.19にリリース。

ダンゴムシに炭酸カルシウムを含まない(例:石英)と含む鉱物を舐めさせたところ、炭酸カルシウムを含む鉱物を舐めたダンゴムシの背は厚く固く、そうでない石英では薄い結果を見出した。ここで疑問に思ったのは甲殻類が成長する時に脱皮をするが、脱皮時に殻が硬いと脱皮できるのだろうか?と。それを思いつつ文献を読み進む。その結果、炭酸カルシウム含有鉱物を舐める→外骨格殻を硬くするメカニズムの中間体として非晶性炭酸カルシウムとして貯蔵しておいて、キチンやタンパク質で構成される型の中に充填して結晶化させるとある。非晶性炭酸カルシウムは柔軟・水溶性だから型への移動が容易。この逆に脱皮する時は骨格にある結晶性炭酸カルシウムの何割を非晶性炭酸カルシウムがいわば潤滑剤として利用してスムーズに新しい骨格へ引き継ぐ仕組み。実にすごいメカニズムなのだ。材料として金属、樹脂にも応用できると考えられる。

剛直/柔軟の多層構造体。ダンゴムシよ誰に習ったのだ?と聞きたくなる。

文献の図を引用する。

 

 

 

 

 

 

 

カルサイトは石灰岩や大理石などに広く見られ、アラゴナイトはサンゴや貝殻などに含まれている。と文献中に紹介されている。

試薬として購入する炭酸カルシウムの粉末とホタテ貝の粉末とは結晶構造が全く違う。機械的強度(剛性)を高める時にはホタテ貝の粉末を樹脂に配合するのは理にかなっているが、化学式ではCaCO3で同じなのに、どうして形態が異なるのか不思議だった。

ダンゴムシ:子供に愛されながら嫌われキャラの二面を持つ。だが、脱皮の時の風景を調べたら実に面白いので紹介する。脱皮は前半・後半に分けて行われている

一気に脱ぐと、全身が柔らかい無防備な時間が長くなり、乾燥や外敵に対して非常に脆弱になる。半分ずつ脱いで硬化させることで、常に「動ける部分」や「ある程度硬い部分」を確保し、生存率を高めている。 また元の殻を食べて炭酸カルシウムの濃度が同一になるようにしている。炭酸カルシウムのリサイクルを生命の必要性から実施している。 今はリサイク時代?いや太古の昔から生物は必要に応じて実行していたのだ。

ということで、柔よく剛を制すのではなく、柔が剛を作り、剛も変化し柔となり次の脱皮成長へと繋げる。そして最後はリサイクルも行う。なんとも現代が参考にすべきところ多々ありと感心した。

レジスタント・スターチ

腸内環境にはレジスタントスターチが良いとの声をよく聞く。 またレジスタントスターチかぁ?と言いつつ、その意味をぼんやりというか明確に理解していないで過ごしてきた。英語やカタカナで表現すると理解されない面もある。そこで自分なりに考えることにした。

腸内細菌(特にParabacteroides)の餌になるものとしてレジスタントスターチ、水溶性食物繊維、ポリフェノールがある。レジスタントスターチとしては冷飯、ジャガイモなどがある。水溶性食物繊維はお馴染みのオートミール、もち麦、ごぼうやオクラなどがありポリフェノールはココア、緑茶など読者の方々が多くの品種をご承知。

Parabacteroides goldsteine種は肥満抑制、血糖値改善のいわゆる善玉菌だけに“腸まで届くエサ”が重要になってくる。

自分は学生時代から社会人まで高分子材料に関係してきたこともあり、スターチ(澱粉)も高分子の仲間と考えている。プラスチックも高分子であるが主に石油由来を原料として重合により製品化されるのに対して、バイオ高分子はトウモロコシなどのバイオ原料由来である。デンプンもまたアミロースやアミロペクチンという長い鎖からなる天然の高分子材料で分類から言えば結晶性高分子。

結晶性樹脂の代表はポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなのであるが、結晶が溶融する温度までは非常に硬い材料で結晶が存在しているので不透明。一方、非晶性樹脂としてはポリススチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどがあり透明である。お米は不透明なので結晶性高分子に分類されるのは理解されるでしょう。おかゆにすると水分子が分子をほぐすことで、透明性が増加する。そんな荒っぽい説明。

さて、

お米を炊く前に洗い、浸水、脱水、再度浸水、加熱の工程の中で澱粉は親水性なので非晶部分が膨潤(米粒サイズが大きくなり)、セルロースの分子の間に水が浸透することで、結晶が解け、乾燥した米粒であれば約230℃で分子が変形するところ(これをガラス転移点という、その温度では分解が同時進行する)、水が存在することでこのガラス転移点が炊飯温度以下になってふっくらと炊き上がる仕組み。(α化)

これでお分かりの通り、暖かいご飯の分子は結晶していないランダム分子構造であるから、胃や小腸で糖に容易に分解されてします。 ところが元々結晶性樹脂であるから、冷却されると再結晶が起こる。(β化)

結晶成分は胃では酵素の歯が立たないほど硬いので分解されずに腸内細菌が待つ腸に送られて徐々に善玉菌で分解されることになる。 胃では分解されない(抵抗性があるとの意味でレジスタントと呼称しているのだ)

これを理解すると折角の部分的に結晶化している“おにぎり”を電子レンジで温めることは勿体無いと思う。元に戻る。昼に作りだめしておいたパスタを冷蔵庫に入れて夕食の隅に置くことは理にかなっている。

ここで高分子屋から一言。冷却速度がポイントになります。 エッ!と驚かれる人がいると思いますが、窓ガラスは常温でもゆっくり分子が動いている。製造する時の冷却速度があまりにも急速度なので一応固化はしているものの本来の固まる温度を通り過ぎているので(過冷却という)分子は動いている。本来のガラス転移点に戻るまでは何千年もかかることから実用的に問題がない。 この話をおむすびに例えるならば「冷飯なら冷凍庫に」はこれと同じで結晶化が進まないで固まるだけに終わっている。なので腸までは届かないで胃が冷えるだけに終わる。その前に歯が立たないが(笑)このましい温度は4℃前後ですのでご参考まで。

深海底からレアアース。なぜ?

南鳥島6000m海底からレアアース泥を取り出したニュースは大きく報じられた。

なぜ南鳥島? なぜ深海? と改めて思った。10年前に東大が報告した当時は正直ああそうか的な印象だった。その後地道にパイロット規模まで開発されたことに頭が下がる。でも先の疑問は残ったままだ。そんな時にこの疑問に応えているかは門外漢だけに断定はできないが、面白い文献を見つけた。

信州大学が2026.02/24にリリース「深海底の泥にREE が濃集する鍵は魚骨類中の炭素にある?! ~魚骨類中のアパタイトにおけるREEと炭素の分布と存在形態から その関係性を探求~」 である(注REE:rare-earth elements通称レアアース)

概要と深海にレアアースが沈着し高濃度化するメカニズした図があるので紹介。

 REE(希土類元素)は、自動車をはじめとするハイテク産業において、不可欠な金属として知られています。近年、日本の南鳥島周辺で採取された深海泥には、魚の骨や歯の破片が含まれており、これに希土類元素(REE)が高濃度で濃集していることが明らかになりました。魚骨類にREEが濃集するメカニズムを解明することができれば、海水などの流体から効率的に希土類元素を回収する技術の開発に貢献することが期待されます。したがって本研究では、このREE泥中の骨片類にREEがどのように濃集しているかを詳しく調査しました。

アパタイト中の炭素がレアアース(炭酸塩)を引き寄せ、海底の温度、加圧(500〜600MPa = 5,000気圧〜6,000気圧の条件下でコラーゲンが分解しレアアースが残るメカニズムを提案されている。

歯科に関わる関係者であればこの500MPaの数字に敏感になるかも。CAD/CAM冠を成形する時の圧力と略同等である。緻密な構造体ができる成形法。

話は横道にそれた。

アパタイトは歯科には象牙成分として熟知しているところだが、骨もアパタイトが主成分であり背骨においては増血機能もあることから非常に重要である。その周囲に(炭素を含む)コラーゲンが緩衝材として存在している。

 

図ではレアーアース泥の中からアパタイト100%の歯と骨のCa,P,Y(カルシウム、リン、イットリウム)濃度を示している。確かに骨の方にレアアースが存在していることがわかる。

 

 

ここまでの説明で海底5000~6000mの温度は1℃前後。その温度でコラーゲンが分解するはずがない。人間の体温でも分解しないではないか。と疑問を持つ。

どうも南鳥島の今は現在の場所に存在するが、約3,500万年前〜4,000万年前には海底火山があるところからプレートに乗って流れてきたとの説を聞けば、なるほど海底火山では100〜500℃の熱水が噴き出しているのでコラーゲンは即分解するであろう。

魚が豊富で海底火山があるところは約3,500万年前〜4,000万年経つと新しいレアアース採取場になるのだ。壮大だが多くの人はそれを見ることはない。

それを待つことは現実的ではないので、大昔海底火山活動がありプレートの動きから現在ありそうな地域を探している。小笠原、ハワイ、チリ沖などは日本の試採取結果を注視していることは考えられる。 ロマンがありますね。

 

宇宙天気予報

太陽フレアとは何? 野球解説者の小西徳郎が生きていたら言いそうなフレーズ “なんと申しましょうか 野球ならビックイニングとでも言いましょうか黒点集中による爆発ですかね?” 呑気な話ではない

非常に大事なことを京都大学が教えてくれた。2026.02.06

太陽活動が地震の引き金になる可能性―電離圏と地殻の静電結合モデル―

要旨を引用すると

太陽フレアなどの太陽活動が電離圏に電子数密度の変動(電離圏擾乱)を与えるほど大きい場合、地震発生そのものを促す可能性があることを示す新たな物理モデルを提案しました地殻内の破砕帯と電離圏が「巨大なコンデンサ」のように電気的に結合していると考え、太陽フレアなどによる電離圏の電子数密度の変動(電離圏擾乱)が、地殻内部に電気的な圧力を生じさせる仕組みを理論的に示しました

事例として次の2つを紹介されている。驚きです。

  1. 2024 年1月1日早朝に大規模な X クラス太陽フレアが発生し、同日の夕刻(日本時間)に気象庁マグニチュード 7.6 の能登半島地震が発生しました。
  2. 2025 年 12 月 8 日の午後2時頃 X クラス太陽フレアが発生し、同日の深夜(日本時間)に気象庁マグニチュード 7.5 の青森県東方沖地震が発生しました。

電磁気に詳しい人は次の図を参照願います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電気に詳しくなくとも知っておくべきことを自分なりに考えた。まず、太陽フレアが発生すると強い電磁波(X線、紫外線など):約8分で地球に到達

高エネルギー粒子:数十分〜数時間で到達

コロナ質量放出 (CME: Coronal Mass Ejection):巨大なガスの塊。1〜数日で到達

この結果、

通信・GPS障害: 電離層が乱れ、航空無線やカーナビの精度が悪化する。

停電: 強烈な磁気の乱れが送電網に過電流(誘導電流)を流し、変圧器を壊す。

人工衛星の故障: 放射線によって衛星の電子回路がダメージを受ける。

最も身近な被害はGPS,通信障害、停電でしょう。

自動運転の車が出たとしても、位置情報が大幅にズレ、衝突・大渋滞が発生する。地図帳が読めない人はお手上げ状態。 物流トラックはストップ。 宅配ビジネスもスマホのナビで運用しているので届かない。

停電になると、家庭では冷暖房、IH調理器、電子レンジが使えないので、ポータブルガスコンロとボンベの用意の他、お湯だけで食べることができる食料に頼ることになる。 Suicaも利用不可。自動精算も不可。現金支払いの世界に戻る。もちろんEV車は動かない。 こんな状況でもマルチパーパスが有効なのかとトヨタ説が浮かぶ。

大袈裟ではなく、太陽フレアの周期は11年サイクルなので決して絵空事ではない。

一昨年に日本海側特に石川県ではオーロラが観測されたことが話題になったことがあった。今、宇宙天気予報の高度化が進められているとの情報もあり、「今日はGPSに頼らないで、地図帳を持参してください」「△△には〇〇を準備」などのアナウンスがされるかも知れない。

地震は地球内部のプレート衝突によるものは常識で下ばかりを見ていた。しかし、それは結果であって原因が遥か上の宇宙とサンドイッチされたコンデンサーの中に我々は存在しているとの見方の視野の広さに驚いた。地震の予測が今以上に精度が上がることを期待する。地震災害最小化策として、この研究に国家資金を投入してほしい。