2026年 4月 の投稿一覧

水あめの浸透圧を利用した創傷被覆材

このタイトルを見て一瞬ハテナ?と思いませんか? 自分だけかもしれませんが、じゅくじゅくした傷口の水分を水飴の水が吸い込む。同じ水同士で浸透圧が作用するのか?と早合点した。謎解きは後半にするとして、まずは文献を見てみよう。

東北大と東京薬科大が2026.03.26に発表。

「水あめの浸透圧を利用した新たな創傷被覆材がキズを治りやすくするメカニズムを解明-「治す力を高める」創傷被覆材でキズに苦しむ患者を救う!-」

ポイントを引用すると

水あめによる浸透圧を利用した新しい創傷被覆材に治癒効果があるメカニズムを、マウスを用いて解明しました。

キズの治りを早めるカギは、本創傷被覆材の増殖因子 等の「治りに必要な成分を逃さない」作用であることを明らかにしました。

本創傷被覆材が持つ機能を活用した「患者の治す力を高める(免疫細胞を活性化する 」創傷ケアは、難治性創傷(治りにくいキズ)に苦しむ患者を救う新たな解決策となることが期待されます。

 

 

 

 

 

効果がわかったところで冒頭の疑問「なぜ水同士なのに浸透圧が発生するのか」

について考察する。まず水飴は主に「でん粉」を酸や酵素で分解(糖化)して作られる。 主原料はでん粉(コーンスターチ、甘薯でん粉、馬鈴薯でん粉など)。糖化剤:は酸、酵素、または大麦麦芽  (向後スターチ社情報)で、一般的な水分20~25%とのこと。

だが、この水分に限界まで糖分(ブドウ糖や麦芽糖)が溶け込んだ超高濃度の液体で水分は糖と水素結合などで自由に動ける水ではないと考えられる。むしろ じゅくじゅくした傷に存在する水分濃度の方が高く、水飴の水分濃度が低い。こう考えると傷口から水分が水飴に浸透圧で移行するのが整理できる。この浸透圧が高いので傷口に存在する菌の細胞の中の水分まで吸収する。

現在病院で処方される白糖製剤は精製された白糖(約70%)とポビドンヨード(殺菌剤)を練り合わせたもの。糖の浸透圧で傷を洗浄し、ヨードで菌を叩くというハイブリッドな仕組み。ご家庭にある砂糖では効果的ではないとの説もあるのだが、この何故?を調べるうちに、九州や東北では砂糖を傷口に塗ることは昔からの知恵であったと知った。科学の進歩が経験を掘り起こし光をあてる。実に面白い。

緑茶(ほうじ茶)の有意な特徴

緑茶の七変化というべきか奥が深い。先のブログで煎茶、抹茶はエピピロガロール・カテキンが多く含まれ花粉症(くしゃみ)抑制に効果。と記載した。ほうじ茶、茎茶、番茶には多く含まれていない表も記載しつつ、これらについては名誉挽回の機会を。。。とも書いた。それが今回いみじくも佐賀大学が発表してくれたので紹介する

緑茶カテキンの新型コロナウイルス感染阻害メカニズムを解明! ~「ピロガロール型」カテキンがウイルスのヒト細胞への侵入を強力にブロック~」 2026.04.09

概要を引用すると

  • 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、ウイルスの表面にあるスパイクタンパク質がヒト細胞のACE2受容体に結合することで感染を開始
  • 14種類のカテキン誘導体がこの結合を阻害する効果を評価した結果、エピガロカテキンガレート(EGCG)やガロカテキンガレート(GCG)など、化学構造の「B環」に3つの水酸基を持つ「ピロガロール型」のカテキンが、強い感染阻害効果を示すことを発見
  • 茶葉の加工過程等で生じる「非エピ型」カテキンが、より強力にウイルスに結合することも示唆されました

この3番目に記載の非エピ型カテキンはほうじ茶に多く含まれていることが注目される。さらに、お気づきの人がおられようが、なぜペットボトルが絵の中にあるのか?

これが、今回のミソになります。繰り返しですが、茶葉に含まれるカテキンには、もともと茶葉の中に存在する「エピ型」(エピガロカテキンガレートなど)と、加工過程の熱処理によって構造が変化した「非エピ型」(カテキンガレートなど)がある。

非エピ型カテキンを効率よく生成するためのキーワードは「加熱(熱異性化)」。

具体的な加工法とポイントをあげると

  • 茶葉の高温抽出か加圧加熱 90℃以上で淹れる。普通は煎茶・抹茶は65〜75℃で淹れるが、90℃以上になると熱異性化が起こる。
  • 煎茶・抹茶は蒸し茶だが、ほうじ茶は焙煎で熱いお釜で加熱処理がなされるので異性化が生成する。
  • ペットボトルのお茶は殺菌処理(120℃―数秒)処理することで異性化が生成する

これでほうじ茶の名誉挽回がされたのではないでしょうか。昔からほうじ茶は脂肪吸収抑制作用やコレステロール低減効果が高い可能性が示唆されていますので愛飲されている人も多いのではないでしょうか。味は渋めだが渋さが魅力のシニア層には似合いのお茶かと。

米糠がインフルエンザ療法に

今は筍の季節。京都から大枝の筍が送られてきたので米糠でアク抜き下処理。味合うには明後日になるが楽しみ。京大桂キャンパスのある洛西〜向日市〜長岡京に至る地区は竹林が一つの名所になっている。ただ大枝の筍は自然に生えている竹からではなく、畑で肥料など工夫して耕作しているところもあるとか聞く。一味違う所以なのか。

さて、筍の話が本題ではなく、漬物などの脇役と見られた米糠が今回の主役である。

中部大学が「米糠発酵物がインフルエンザの補完療法に役立つ可能性を動物実験で解明ー体重減少の抑制、肺内ウイルス量減少、抗体増加を確認ー」2026.04.01にリリース

ポイントを引用する。‘本文では以下の2つ以上が記載されている)

  • 免疫機能正常マウスと免疫機能低下マウスに米糠発酵物を経口投与
  • マウスにインフルエンザ感染させたところ、非投与マウスは体重低下が抑えられ、肺のウイルス量が減少、血液中の中和抗体価が増加

研究目的にインフルエンザ感染に伴う合併症を発症するリスクが高い免疫抑制状態の高齢者の数は増加傾向にある。発酵米ぬか(FRB)は栄養補助食品として利用されており、様々な生物学的活性を示し、抗インフルエンザウイルス活性を示す可能性もある とあり、若年層が1〜2日で回復するのに対して高齢者では2週間〜3週間も要する事例を身近に見てきただけに、ここの文献は役立つだろうと思う。

代表データとして体重変化を紹介(その他、ウイルス量変化、血液中の抵抗量など)

 

 

 

 

 

 

 

 

米糠(こめぬか)を活用した発酵食品がウイルス対策に役割を果たしていることに驚き、日本の伝統的な食文化の知恵を改めて知った。

漬物以外に米糠を利用している事例を紹介する。 若狭(福井)から京都に通じる道は鯖街道として知られている。その若狭では鯖を塩水につけた後、米糠で樽に漬け込み(この樽のへりに押し込む)作業から「へしこ」として知られている。へしこを焼く時の香を含めて、呑んべいにとって格好の肴として全国的に注目されている。

同じ北陸ではフグの解毒剤として米糠が利用されているが、フグを調理することは禁じられているので、味合うには石川まで行かれることをお勧めする。この肝臓の解毒機作がいまだに解明されていない。初めにトライした人は一体何者?と思わざるを得ない。 その他ネットによると、北九州では鯖、イワシを煮るときに米糠を配合する料理もあるとのこと。やっぱり魚だ。

肉に適用すると、1)ぬか床に住む乳酸菌が肉のタンパク質をゆっくりと分解し柔らかくなる。2)香り付け 3)米糠には「フェルラ酸」や「ビタミンE」など、強力な抗酸化成分が含まれているので、時間がたっても美味しい状態とメイラード反応が進むので美味しい見た目になる。と言いつつ肉は菌が多く含まれるので要注意。

最後に、筍をゆがいた残り水をプランターに散水。なるほどの日常風景にも理屈があると感心。

コーヒーvs.緑茶ポリフェノール比較(緑茶は花粉症抑制効果も)

最近、大手コーヒーショップが街中でコーヒー豆を紹介している風景を見る。

異なる豆種、異なる焙煎度の豆を淹れたコーヒーを試飲させて、豆の購入に誘導する。試しに4種類を味わって豆種・焙煎度を当ててしまった。試飲コップの順番を逆にして飲ませてくれたのだが、この順番通りですと豆の袋を指さす説明員。それに対して「いや逆じゃないの?」と答えたら「コーヒー店の人ですか?」と聞かれた。そこまでは笑い話だが、コーヒー店で飲んでくれた方が収益は良いのに、なぜ豆売りを?と疑問も持った。

更に最近経験したことは、ある横浜発準大手コーヒーショップでの出来事。今まではそのお店の豆を購入すると、コーヒー1杯を店内でいただける無料チケットがもらえた。先日随分溜まっていたので友人と利用すべく訪れたところ、このシステムは廃止になりました。お持ちのチケットを使うにはケーキ、フルーツを頼む必要がありますと言われた。この店を紹介した手前もあってケーキを注文。

店内には電源・Wifi と隣席との仕切りなど、一種のスモールオフィス的になっており、長居する客は迷惑だがお店としては痛し痒しのところがある。

滅多にコンビニのコーヒーを飲んだことはない。これも先日コンビニのレジで支払いコップをもらってトライ。1杯120円。場所代がないだけ安価。時間調整だけならこれで十分だ。 コンビニのコーヒー店への影響は相当あるのだろう。この3つの例でコーヒー店営業は結構厳しい状況にあることがわかる。

ここまではコーヒーの話。これに緑茶が加わるとどうなるか。

コーヒーも緑茶も抗酸化作用がある。前者がクロロゲン酸(の分解物)、後者はカテキン(これも分解物)が効果をたらしめている。そこでポリフェノールの量を比較した。

コーヒー1杯の豆量は普通10〜12g 、緑茶 2〜3g  (いずれも150cc)結果は 表の通り

 

 

 

 

コーヒーが圧倒しているが、緑茶は2煎、3煎につれ濃度は低下するがトータルではコーヒーといい勝負をする。 当方は1日あたりコーヒー2杯、煎茶4杯が標準的なところ。

ここで、緑茶の面白い機能を紹介する。東京大学、広島大学、日本医科歯科大学が1026.03.23にプレスリリース「抹茶で花粉症も一服⁉ ―抹茶を飲むことでくしゃみを抑えられる可能性― 」

論文から引用

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに茶葉の種類とEGCG(エピガロカテキンガレート)の含有量を参考まで調べた。思うに山は植林で杉が多く、一方で緑茶よりコーヒーの機会が多くなったニッポン。 タイトルは抹茶となっています。EGCGは煎茶が高い。これについて抹茶は粉ごと全部のむのに対して煎茶は抽出方式なので1煎目では7割程度。味はともあれ何回も抽出する必要がある。

次の表はネットからの情報 ご参考まで。番茶、ほうじ茶は別の機会に効能を紹介したい。

コーヒーの成分が大腸がん細胞の増殖を抑制を考える

またコーヒーの話かとお嘆きの方に新しいコーヒー効果情報をお届けしますのでご勘弁を。京都府立医科大学と関西医科大学が表題をリリース(2026.03.17)

要約を引用。

コーヒーの摂取と大腸がんのリスク低下との関連を示す疫学研究の背景にある分子メカニズムの一端を説明する成果です。

コーヒーに含まれるポリフェノール成分「カフェ酸」がヒト大腸がん細胞の増殖を強く抑制することを発見しました。

ケミカルバイオロジーの手法により、カフェ酸が大腸がんの予後不良に関わるリボソームタンパク質 RPS5 に直接結合することで、がんの増殖を制御するメカニズムを発見しました。

コーヒーといえばポリフェノールのクロロゲン酸と理解されている。双方の分子式を見ると、カフェ酸とクロロゲン酸もポリフェノール化合物であることがわかる。

 

 

 

 

カフェ酸が初めからあるのではなく、クロロゲン酸が胃や腸で加水分解されて生成するものであるとのこと。確かにクロロゲン酸の分子式の右半分がカフェ酸の素であることがわかる。実にオシャレな命名をしたものだ。

効能の写真では

左;2種のヒト大腸がん細胞(HCT-15、 HCT116)が紫色に染色されている。右;カフェ酸の投与により、がん細胞は ほぼ消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機作については論文をチェックされたい。

ブログとしては「欧米ではコーヒーを4〜6杯飲んでいるのに大腸癌が多いのはなぜか?」「日本人は多くても3杯が好ましい理由」に関心がある。

鍵は食生活と遺伝子の違いか。

欧米化激しい日本だが、米国の方が赤肉、加工肉の消費が圧倒的に多く、食物繊維が少なく肥満、運動不足の生活スタイルが大腸癌を加速させている。そこにコーヒーが体にいいとか言いつつ砂糖たっぷり添加する飲み方ではカフェ酸が活躍するにも出番が少ないのだろうと推定。おそらく無糖で10杯ぐらい飲まないとカフェ酸の効果はないのだろう。笑い事ではない、日本でも米国の後追い食生活をしている。だったらコーヒーを多くすれば良いのでは?と思うものの、遺伝子がそもそも違うのでそうはならない。

1 肝臓でカフェインを分解する酵素 CYP1A2 の活性の違い。

日本人は遺伝的にこの酵素の活性が低い、あるいは標準的な「遅い代謝型」の割合が高いので、1日に4杯以上飲むと、血中のカフェイン濃度が下がらないまま次の杯を重ねることになり、自律神経の乱れ、不眠、動悸、不安感などの副作用が出やすくなること。

2 骨密度の低下リスク(カルシウム排出)

カフェインには利尿作用があり、その際にカルシウムも一緒に体外へ排出される。もともとカルシウム不足になりやすい日本人。骨粗鬆症の原因にもなる

3 日本人は胃粘膜が比較的弱いので胃炎などの原因になりやすい。

ということで、食事の後にコーヒーを頼む一種のおもてなし文化があるが、本音をいえば、直後に飲むのではなく、1時間後が好ましい。また空腹時に飲むより“お3時”的に(甘くない)おやつと一緒にするのが好ましい。

なお、欧米人では肥満は仕事能力が低いとみなされているので、日本食を取り入れかつ運動をしている。その結果、大腸癌は減少している。今の日本は逆行している。ファストフードショップが満員になっていると。余計な心配をしてしまう。自分でも何年か前は同じだったので偉そうなことは言えないが。