4月に厚労省が地方自治体に向けた資料の中に血圧などの基準値確認文書があった。とりわけ血圧はいつでも測定できる身近な健康指標だけに関心が強い。抜粋すると次の表の通りである。
従来の血圧上限は130mmHg以上が高血圧であった。検診で1回目にこれをこすと深呼吸をして再測した。
130mmHgの根拠としては高血圧症の多くの患者の統計的処理によるもので、それ自身を疑うわけではない。ただし、統計には母数の変化や後で追加因子が出てくることもあるので、いつまでも同じ数字ではあり得ない。今回の基準変更の理由を厚労省など資料検索したが現在のところ見つけていない。
血圧上限160mmHgと聞いて、なんだか1960年ごろの年齢+90に戻ったような気がしたが、設定の考え方は多分異なるだろう。戦後の人口パターンと現在は違う、高齢者が増加して、意外にも従来基準の血圧であっても健康に過ごしている人を多くみる。母集団の性格の違いにより見直しがなされたのではないかと想像する。
一般的にわかりやすいように、「老化に伴い血管が固くなる、血管にコレステロールが付着して見かけ内径が細くなるので心臓ポンプは昇圧しないといけない」と言われている。定性的にはわかるが、何か定量的な事例をとモデルケースを考えた。
極端なケースにおいてポンプ圧力を計算する。内径が1mmと2mmで長さ10mのパイプに水を1リットル/分の速度で流す時に必要なポンプ圧力を求めた。物理でお馴染みのベルヌーイの定理から計算できる。
結果は 1mm : 34,700Pa, 2mm : 10,900Pa (Pa:パスカル)これを受けて0.8mmを追加計算すると 147,000Pa となる。もちろん、極細パイプに同じ量の水を通すとの前提とするとこれらの圧力が必要になるのであって、逆に圧力が一定であれば、通過する水の量は少ない。
水と血液では粘度、血管と血液の摩擦係数など違いがあるので一概には言えないものの1mmが0.8mmになると尋常な圧力になるので、逆に言えば血液流量は少なくなると言える。
血管の太さをMRIや超音波で測定して個人個人の最適血圧が算出できるならば、ビジネスになるかも知れない。保証はしないが。
内径が太いと低圧力で送り出しできるが、細いと高い圧力が必要。これを体に置き換えると末端の細い血管まで血流を届けるには相当の高圧力が必要。もし血圧が低いとやがて臓器の機能は低下し、末端では壊死も起こりうる。心臓は1つしかない。補助作用する脚の筋肉を送り出し補助材として利用することの重要性がわかる。
ここで血圧が高くても元気なシニアがおられることが気になる。血管は細くなるのであれば高圧に耐えられる血管の補強が必要となる。その補強材がなんとコレステロールであると聞いて驚いた。コレステロールには悪玉、善玉があり悪玉は血管閉塞の原因(動脈硬化)との定説がある。しかしながら和田秀樹先生によるとコレステロール値は下げるべきでない。コレステロール値をあげた方が死亡率は下がるフラミンガム研究結果を紹介している。表参照。
血管を頑丈にすることで血圧が高くても破れない。とすると悪玉・善玉の表現を変えないといけない。この説を裏付けるデーターとして1日あたりの脂肪摂取量と死亡率の推移を引用されているので最後にご紹介する。(雑誌プレジデントより抜粋)