象・シロツメクサに見る異変

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たまには部屋の整理でもするかとして溜め込んだ本のページをめくれば、驚きの記事があった。「密猟がアフリカ象の牙にもたらした遺伝子的変化」nature digest 12月号(2021)。牙は歯の一部だけに見逃せない記事だ。長文だが抜粋。

「モザンビークで1977-1992年に起こった内戦では象牙取引が資金源とあって、ゴロンゴーザ国立公園には2,500頭を上回るアフリカ象が生息していたが密猟に伴い90%以上減少し2000年代前半には約200頭になった。」「牙なしの形質を持つ個体は、成長しても牙が生えないので密猟の標的にはならない。」牙なし雌の割合は内戦前18.5%に対して内戦後に生まれた91頭の雌では33%に増えていた」。「研究チームでのゲノムを解読してX染色体上に見られる差異を調べ、最近働いたと見られる選択の証拠を探し、その結果、候補遺伝子としてAMELXとMEP1aの2つが見出された。AMELXについてはヒトで上顎側切歯の形成不全などのX連鎖性遺伝性疾患と関連付けられている」

人間を含む動物の進化・退化は何万年を経て進むものと教えられていただけに、衝撃の記事だ。牙なし雌から生まれた牙なし、牙ありは50:50だとしても遺伝子も牙なしに傾いているのか。1977年からだとしても僅か45年程度でこの大きな変化。

仲間の像、配偶像が銃弾で倒れ牙を取られる様を見てどれだけの涙を流したであろう。象牙取引はワシントン条約で禁止になった。当時勤務していた樹脂研究センターに印鑑業者やピアノ鍵盤製造業者から象牙代替材料の問い合わせがあった。象牙の構造は非常に複雑であり同一性能は無理だったが近い物性の樹脂複合体を提案した。それを思い出しながら記事を読んだ。

元に戻り、象の牙は土を掘って植物の根を食べ、樹木の皮を剥いで恐らく食用セルロースを摂るためにはえている。牙がないと木の実や地表の草が餌になる。結果として景色が変わる。象の鼻は高いところにある木の実を取るためにキリンに負けまいと長くなるかも知れないと妄想するのは良いが、人間の振る舞いで動物に悪い影響を与えるとブーメランのように人間が困ることはある。困って初めて気が付くのが通常だけに象牙の記事は筆者の鈍感な脳にも響いた。

一方で、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの内海俊介准教授らは5 大陸・26 ケ国・160 都市で,都市環境と約 11 万個体のシロツメクサを分析した結果を報告。シロツメクサは,植食者への防衛や乾燥ストレス耐性にシアン化水素を放出するのに対して都市でこの性質が喪失していく進化が起きていることを発表(2022 年 3 月 18 日SCIENCE 誌)

シロツメクサという身近で世界中に存在する植物から,人々の暮らす都市が生命の進化のありかたを変える決定的な証拠が得られたと報告している。

この場合のDNAは都会によらず変化していないとのこと。世界の都市化の速度に合わせて、必要でないと体内で防御物質は生産しない。人間にとってシロツメクサの事例は何を暗示しているのだろうか。人工的な舗装道路、街路樹、公園など特定の場所にしか緑がなく、それも一律の同じ種類の樹木。多様性の昆虫からシングル種が生息する。そんな環境ストレス社会に晒されていては、身体の方が変化しない方が不思議だ。

筆者の具体的に困ったことは人の名前が出てこない。パソコンやスマホがある時代だから記憶しておく能力は徐々に減少+加齢による脳細胞の劣化。これがさらに進むと100年後に生まれてくる人間の脳は空っぽでも問題がなく、クラウドからダウンロードすれば良いとなるであろう。複数の業種で天才を発揮したダヴィンチ、将棋天才藤井さんの脳情報も高額だがDLできるかもしれない。外国語は全く問題ない。今のスマホでも通話と同時に文字起こしができ、翻訳もしてくれる。選民主義、ロボットに対して本来ありうる人間性は遠くへ。そんな未来を見たいか? 元カノの家に入り込み家族ごと殲滅するような脳情報はアンインストールしないといけない。などなど考えているといつまで経っても部屋の片付けが終わらない。いいではないか人間だもの?となんだか聞いたことのあるフレーズ。

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