プラスチックゴミは貴重な資源

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その日の朝、ゴミ収集車がいつものメッセージを流しながらやってきた。「プラスチックは使わないようにしましょう! 太陽光パネルを設置しましょう!」 大きなボリュームで。以前はこのフレーズがなく分別などの注意喚起だけだったのに、付け加えられた。太陽光パネルについては多くの人により語り尽くされているので、ここでは言及しない。

特にプラスチックスは環境にとって悪者のように子供に刷り込ませるのは如何かと思う。軽い・強い・自由なデザインで身の回りの繊維から自動車〜航空機までプラスチックスなしでは成立しない。入学シーズン前にランドセルを購入しプレゼントした人もおられるだろう。皮革のようで実は芯鞘構造をとるプラスチック(例えばポリエチレンとポリエステルのような)繊維の組み合わせからなる織物なのだ。それを子供に使うなとはよもや言わないだろうが誤解させる。繊維のついでに意外なところではカツラもプラスチックス、模造ファーもプラスチックス。動物愛護から毛皮をとることは禁止・制約を受けて材料変換が起きている。因みにカツラの材料は難燃性が必要なのはアフリカ向け。何故難燃性が必要なのか現地の生活を想像するだけでも楽しい。ここでもハロゲン系難燃剤から環境適合難燃剤が採用の事例がある。アフリカの人々も環境には気を遣っている。

昔の浴槽は大衆浴場と同様にセメントにタイルを貼ったものだった。それが不飽和ポリエステルSMCから透明なアクリル製とオシャレになっているのは、軽量・大量生産に適していたから。NHKチコちゃん風に言えば郊外団地を作るには上階へ人が運ぶのは大変だったので急速に変わった。今、プラスチックスを廃止してセメント作りにすることは砂不足・工程の面でも事実不可。檜風呂なら環境に良いかと言えば、職人がいないので数に限りがある。毎日の乾燥などメンテナンスも大変。

軽さを圧倒的に求めるのは航空機。乗客がお待ちの食事タイムには電子レンジ、オーブンが活躍する。ここでトレーやカップは軽く必要な耐熱性が必要である。陶磁器は重い。そこで電子レンジ対応にはポリプロピレンや特殊ポリエステルが、オーブン対応にはC-PET(結晶化PET)が利用されている。

歯科材料でもプラスチックスは有用であることは業界では言を待たない。PMMAは透明であり自動車テールランプ、カーボート、水族館パネル最近ではコロナ衝立などに利用されている。寸法精度と適度な靱性があり厚労省認定歯科材料になっている。ジルコニアと双璧の歯科材料になった。これから更に靱性と圧縮強度が必要となる部位についてはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリカーボネートが適用されるものと思われる。超高分子量高密度ポリエチレンは骨代替として長年利用されているのはご承知の通り。このような話を始めると延々と続くのでタイトルに戻すことにする。

すなわち、プラスチックスは本当は良い人で、自から主張する口がないので代弁する。問題はポイ捨てし海ゴミの原因を作る人間、資源として有効利用のための技術開発を怠る人間にある。次の2点は意識する必要があると思われる。

1)プラスチックスは熱源保存体であり燃焼して2度目のお役に立っている。

2)プラスチックスは常温・常圧で水素を蓄えている物質である

ゴミ袋の多くはポリエチレン。CH2-CH2———がグレードにもよるが5万〜数十万連なった分子(高分子)である。話は脱線するが、数百万となると超高分子高密度ポリエチレンと称し食品工場の搬送ローラーなど清潔が要求されるところに採用されている。摩擦係数が極めて小さく、傷がつかない特性はドライ・アイススケートリンクに採用されたことがある。スケート靴で滑走してもアイス同様の滑りを楽しむことができるとあって、巨大な冷凍設備を不要なのだ。現在の省エネには最適。

話を戻して、水物を多く含む調理済みゴミが入っていると燃料補助としてポリエチレンバッグやトレーなどが燃焼することでプラスチックのC(炭素)が燃焼ガス温度を調整してくれる。温度の調整はダイオキシン発生のコントロールには必要である。原油もしくはトウモロコシからポリエチレンとして1回目のお役に立ち、2回目は燃料として役に立つポリエチレン。一方の水素(H)は水素社会の一翼を担うことは間違いない。これを分かってスピーカーから流しているのか聞いてみたい。

これからの発電は石炭を微粒子にしてガス化してアンモニア又は水素と混合することにより炭酸ガスゼロの技術が開発されている。さらに自動車の次世代燃料としての水素についてもポリエチレンなどプラスチックスから水素をとることも研究されている。プラスチックスゴミから水素を得る技術開発は2025年稼働目標で岩谷産業・豊通・日揮連合が発表している。

さすれば、ごみ収集車からのメッセージは「プラスチックスは明日を拓く貴重な資源です。大事に有効に使いましょう!」 となるであろう。これが正解。

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