景気が悪化している。GDP速報でもマイナス6%で今後の4-6月見込みでも同様な数字と経済評論家がレポートしている。新型コロナウイルスの影響でインバウンド客急減や国内行事も控えめになっていることから、消費税アップの影響は埋没しているように見える。が消費者心理はキャッシュレス優遇期間終了とオリンピック後を予想して買い控えの気分になるだろうとのぼんやりしたことを考えている。「景気」は名前の通り消費しようとする「気分」に左右されるが、その「気分」が出ないと、デフレに舞い戻る。ここ数日の円安はある意味「日本売り」であり、従来の円安歓迎とは言えない窮地に追い込まれている。バブル崩壊後の30年のデフレスパイラルはもうゴメンである。
若い人の労働機会が収縮し、賃金は上がらず、65歳定年を無事終えた人が、年金は減額が予想される中、100歳までの30年をデフレ景気でどう暮らしていくのか路頭に迷うのも容易に想像できる。
言いたくないが「一律の働き方改革」も景気の足を引っ張っている。外注で仕事を出したところ、少しだけ残業すれば1日でこなせる仕事が2日かかったので2日分を請求されたことがある。顧客は離れていく。祝休日も多すぎる。だからAIだIOTだと聲高に叫んでも、その導入資金が零細企業にはない、また導入しようにもSEの人不足、能力不足で、装置・システムを導入したものの、稼働せず、事務所、工場の片隅に布を被せて放置したままの風景をみた。それも数多く。
今は確定申告の時期。徴税を目こぼしなくやれば、少しは正常になるはずだ等、なんだかんだと専門以外のところで言ったところで埒があかない。
自分のフィールドで何ができるか? それが重要である。
そんな時に目に付いた書籍がサフィ・バーコール著のLOON SHOTS である。(日経BP社) 表紙には「クレイジーを最高のイノベーションにするルーンショット」「周囲から非常識・クレイジーと思われて相手にされないが、実は既存の常識を覆し、業界や世界までも変える 最重要ブレイクスルー・アイデア」「非常に脆く、潰されやすい。優れたアイデアは3度死ぬ」「突然、組織がルーンショットをうみだせなくなることがある。それは相が変わったからである。相転移の科学を使えば状況をコントロールできる」とある。 相転移については前回のブログで紹介した。
社員が相転移しないで、現状で満足し、リスクを取る冒険をしないマジックナンバーが記載されている。ナルホドと思うところがあるのでご参考まで。
M=ES2F/G E;エクイティ比率 S:マネジメントスパン(組織階層数)
F:組織適合率 G:給与もアップ率
Mが大きいとリスクがあるプロジェクト推進よりは社内政治に力配分する。
S:組織の階層数が重厚であるほど2乗で聞いてくるので、組織スパンの見直しだけでもこのマジックナンバーは変えることが可能。勿論Eが大きいと現状に安住し、給与アップが小さいとやる気を失う。のは分かる。問題はF:組織適合率。社内政治に対する防御壁となり、社員のスキル養成を重視し、社員とプロジェクトを的確にマッチングする係数(スキル/社内政治の比率)。 具体的なマジックナンバーについては米国企業248社を調査してM=150を境界として社員が社内政治で昇進を図ろうとするとの結果をだしている。
大企業でSが大きく、給与アップ率が小さいとなると、社内営業が昇進には手っ取り早いと考えるのが自然。植木等のスーダラー節。今の時代にそんな….と思う方もおられよう。だが、まだまだ存在している。リスクを取らない人が出世する事例を挙げるまでもない。
逆に社長と自分の距離・階層が少ないと、クリエイティブにならざるを得ない。そう考えると、ソニーは東京通信工業として20名でスタート。「人のやらないことをやる」を掲げて成長した。社内営業どころではなかった。既に大企業になってからも半導体の成長軌道に乗っているC-MOSはSSDの陰に隠れて、優れたアイデアも3度死ぬを文字通り経験した。初期のC-MOSの欠点を違う視点から眺めたこと、なにくそ精神とチームワークが成功をもたらした。
違った視点で眺めることの重要性は筆者も最近経験した。それは難燃剤を開発していたときに起こった。樹脂の中に配合して樹脂を難燃性にする添加剤である。樹脂と難燃剤を2軸の混練性能の優れた押出機に投入して加熱混練し、ついで試験片を作成して燃焼試験をしたところ、全く難燃性を示さなかった。難燃剤が配合していない樹脂と同等レベル。このようなことは経験しなかった。普通は「この難燃剤は×」として、外の難燃剤を評価するところだが、余りにも効果がないことが気になった。実験方法が間違い? 相手の樹脂が間違い? 押出機が間違い、、、といろいろ考えて行くうちに、突然の啓示!?
難燃剤を外の難燃剤と同じような視点・視線で見ていたことに気がついた。この難燃剤の性格が活きるようにしてやれば、どうなんだとの実験をしたところ、全く世の中にない効果を発現することができた。それから4年経過。
M値が高い企業では相手にされなかったが、閾値の好ましい企業から声がかかったことで市場に展開することが可能となった。マーケッティングでも犬も歩けば棒に当たるような無駄な行動よりはM値を参考にした方がクリエイディブ商品の展開は速いと理解した。
近々、これが皆様の目に触れることになるが詳細は今のところここまでの開示に留めておきます。特許は2件出願しいずれも登録されている。
(ご注意:会社全体のM値が高い場合でも、例えば社長特命直轄テーマとして運営する場合は極めてM値が小さく成功する事例が多い)