太陽光発電は夜間には発電できない。そこで昼間の余剰電力を何らかの形で蓄電することが必要で、このブログでもLiバッテリー、揚水発電、フライングホイル、圧縮空気での保存を紹介してきた。この3者の中ではイスラエル企業が実用化しているプロセス:圧縮空気として保存し、圧力を放出しながら小型水力発電機を作動させるのが最も安価で優れていると報告した。
ところが、思わぬ伏兵が現れた。揚水発電は余剰の水を昼間に元のダム湖に戻しておき、必要の時に落水させて発電するものであるが、水の代わりに錘を余剰電力で巻き上げておき、必要な時に落下する時のウインチの回転(モーターの回転)により発電をする仕掛け。いわゆる位置エネルギーを利用しての蓄電。気がつかなかった。そんな手があったのか。揚水はダムがあっての前提だが、これだと普通の場所でも可能だ。一種の巨大倉庫のような設備があれば可能だ。圧縮空気タンクを地下埋設する必要はないが、錘が落ちてくる時の音・振動対策が特に都会では必要だろう。
言われて気が付くまさにコロンブスの卵だ。欧州では既に実用化に向けて試験装置が稼働しているとの情報がある。文献によれば重さ3.6 トンの錘を100mの高さからつるべ落としをすると1k Whの電力が得られるとのこと。(日経クロスネット 9月抜粋)
つるべの数、高さ(深さ)、錘の重量などが蓄電量の変数となる。欧州では炭鉱の廃坑を利用することや、巨大倉庫の中につるべ落としを設営することも考慮中とのこと。見逃せないのが、そのコスト。それもあって、将来の蓄電法の割合は図のようになるとの予想がされている。圧縮空気の蓄電を国内複数の企業群に紹介したが、興味を示すところはなく、Li電池が主流だとして見向きされていない。ところがこのグラフを見ると半信半疑でも良いから準備する必要はあると思うがどうだろう。
揚水の代わりに揚錘(同じヨウスイと読むには日本人は得意なはずだが)とはまさにコロンブスの卵。冗談半分だが、小学校の雲梯で降りる時にウインチを回転させて「ハイあなたは○W発電しましたね。とか言えば興味を持つかも知れない。
筆者は子供の頃、夏休みの自由研究で句碑のコピー(拓本)を集めていたことがある。加賀千代女の「朝顔やつるべ取られてもらい水」を見つけた。草ボウボウの茂みの中にある状況を写真に収めた。先生から高度成長時代には俳句する心の余裕もなく草取りもしないことが何より物語っていると指摘されたことを覚えている。綺麗事は言わないが自分も企業成長に傾倒まっしぐらだった。
今、「つるべ」がESGの投資対象になるとは、一旦高度成長をすぎて、ここに戻ってきたのかと千代女は言っているかも知れない。重力蓄電は環境にとって良いだろう。疑うことは少ない。だが、ちょっと待てよ! その蓄電の行く先は本当に環境に、しいては人に優しいのか? パッと咲き誇る朝顔を見て取水を止めたように、流されてはイケナイように何らかのストッパーを必要とする。高度成長で大気汚染などの歪みを生み出し、反省し改善を継続してきた日本人ならでは気づくことある。それを強く意識したい。