機会損失(精緻と直感)

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「ゾーエトロープ:Zoetrope」と聞いてピンとくる人は少ないでしょうが、パラパラ漫画の立体版といえば、なんとなく分かる。ノートや教科書の右隅に少しづつ人や模様を変えて、パラパラめくると、動いて見える。目の残像時間を利用している。英単語を覚えるつもりで買った綴り帳は特に便利だった。表と裏の両方に描いては楽しんだ。おかげで肝心の英単語記憶目的はパラパラとどこかへ飛んで行った。今は3Dプリンターのおかげで立体像を一コマづつ僅かに部分を変えて製作することができる。これを回転盤の円周上に時間軸の順番にワンピース欠けることなく置き、回転させる、かつ回転盤の上から回転速度と同調したサイクルでLEDの光源を点滅すると、立体像が動いている様に見せることができる。事例や作り方はWEBに紹介されているhttp://roomoor.net/entertainment/11254/2、https://www.youtube.com/watch?v=PDwal4PhZv4

尚、筆者が参加している3Dプリンター研究会(活動拠点和光市)では来る11月11日(日曜日)に和光市保健センターで開催される和光市民まつり会場に研究会活動の余興として作品を展示する予定。お時間があればお子様連れで遊びに来て下さい。どのような3D形状にするか、メンバーには凝り性の人がいるので小生も楽しみにしている。

さて、前置が長くなった。大学での研究成果が産業界に移転させる交流の場として科学技術振興機構(略JST)がほぼ毎週のように「新技術説明会」を実施している。日頃専門外の最先端の情報に触れることが少ない研究者や技術系管理者にとっては非常に有益なシステムである。特に業際を知ることは非常に重要である。筆者もよく利用している。これはと思った研究者には講演後の個別面談や大学訪問の上で情報の精度を上げることがある。こんなところが日本のサイエンスの強みを支えていると理解している。

企業が取り組んでいる現在のテーマに応用することで短期的収益が増大すると期待できる発表の後には名刺交換など長い行列ができる。成果主義の影響だろう「答え」が分かった案件はスピードが勝負である。講演参加者としてそれなりに社内説得できる立場の人が多いのでアクションが速い。

一方、講演の内容が最後の「答え」が開示されていないテーマについて中長期テーマとして自社で取り上げるには正直名刺交換の列は短い。社内のテーマとしては遠い位置づけか壁は高いのであろう。発表について特許出願したが、公開されるのが1.5年後なので、答えを待つ必要がある。 現在のイントロ開示段階では頭を回転させて欠けているワンピース(答え)を浮かび挙がらせる力量が求められ、それにより共同研究するか否かの判断が求められる。

企業で「戦略的企画」を作成するにあたり上層部のチェックは企画者の推察・想像・妄想は厳しく排除される「精緻な計画」になっているかどうか問われる。特に大企業に多い。 予算規模、人材再配置など大がかりなことになるから安全運転経営ではありうる。想定内の条件を前提にしての「精緻」ならいくらでも書けるが、想定内通りに市場・経済が推移することがないので「絵に描いた餅」に終わることがある。計画が精緻で自信があったのか、世の中が間違っていると言う人にも出会ったことがある。あれだけ調査に費用をかけ、優秀な人材を投入した企画なので間違いがないと。精度はないのが当たり前として斥候検討をさっさと始めた方がよほど効率的である。そうはしないで精緻・精緻を連発するような会社は来たるべき運命が待っている。 小野薬品工業も本庶教授からの提案を断った理由が分かる。米国企業に話しかけたところ乗ってきた。そこで小野はそれを見て受け入れたの情報がある。如何にも日本企業の典型的見本。では米国企業はどのように判断をしたのか、それは「大局的な直感」であろう。この提案に乗らないで他のテーマに会社の資源を投入して得られる利益と本テーマが成功した場合の利益を得る「機会損失」を計算したに違いない。精緻な積み上げより「直感」が勝ることはよくある。 おそらく想定内の範囲で利益を得るよりは、想定外の技術開発で想定を変えていくような企業が生き残るのであろう。アマゾン、アップル、グーグル、フェスブックなど、日本語がないのが残念だが、昔はホンダやソニーがあった。でも今の若い人は違う。精緻を連発していたシニアは去り、直感を磨いていたシニアは退職後も活躍している。その両者がタッグを組めば面白い展開ができると期待している。

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