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CD・DVDリサイクル

何年ぶりだろうか、CDショップを訪れた。30数年前に流行った曲が再燃しているとあって、当時のCDもしくはカバーCDがあるだろうかと。横浜でも最大のショップ。昔はビルの中心部を占めていたが、今は地下の一角に、日曜日だというのに訪れる人も疎らで中高年が目立つ。イマドキCDを買うのは時代遅れなのか、デジタル配信が中心になり、わざわざ出かけることもなく安価に手に入れることができる。モバイルに保存して通勤時に愉しんでいる。イヤホンコードがやがて無くなりBluetoothになるのも時間の問題かと思われる。著作権に疑問はあるが、You TubeからMP3に無料ソフトでダウンロードできる。DVDにも転送することができる。これら一連の操作を苦も無く若い人はサッサとできる。中高年はそうは行かないのが現実だ。

話は脱線するが最近のクルマ「コネクテッドカー」電話はBluetooth,ナビの行く先は音声入力、センターとのガイダンスを受けることも可能、Google機能搭載・・・・。昔のクルマ運転の腕のみせどころは坂道発進、スマートなコーナリング。なめらかな縦列駐車だったが、今はこれらの電子機器をスマートに使いこなせないとダサいと評価される。確実に時代は変わった。

話を戻す。CDは透明なポリカーボネートを基板として、その上に色素記録層や金属反射層、保護層、下塗層、塗膜層、ハードコート層、反射防止層などが設けられている。ご存知の方が多いと思うが、CD、DVD、ブルーレイは主としてケミカル会社が製造販売している。アルミなど金属反射材料以外は化学品であることと関係している。特に色素記録とは有機化合物に光が照射されると分子の形が変化する/変化しないをデジタル信号1,0,1,0.・・・として記録するもので機能性色素を開発した。

20年前はCD、DVDの生産量が増産につぐ増産状態で、製造に伴う工程内不合格品をどうするかが問題であった。「リサイクルをしよう!」かけ声はいいが、色素、金属反射、ハードコート層などを除去する必要がある。これらが少しでも異物として残留すると光を乱反射させ正確に10101を刻むことができない。ポリカーボネートをプラント製造する場合に最も気を遣うのは微粒のゴミである。製造プラントからローリーで輸送する場合も窒素ガスを封入して圧力を大気圧より高くして、外部からの混入を回避している。

そのCDからゴミのないポリカーボネートを回収することは1000%無理と判断する人が多いなか、社長からトライしてはどうかと背中を押されて検討し始めた。その頃、写真フィルムや偏光フィルムをリサイクルしている会社が南足柄にあることを知り、写真の感光剤が残留しない技術に驚き共同研究を開始。プラントも同社内に建設し営業生産を開始した。再生ポリカーボネートをDVDや自動車部品へ利用することができた。CDと自動車部品では要求品質が異なるので、再生品を原料とするコンパウンドでは分子設計に工夫をこらした。ご興味有る方は特許・特開2006-89509を参照願いたい。

この研究が切っ掛けでNEDOの3R諮問委員として活動した。30年後の3R政策にアドバイスするものであるが、めったにない良い経験をした。背中を押した社長のもう一つの思いを知ったのは後だった。

 

赤ワイン

前週ブログ俗説(1)でアルコール分解酵素について紹介したが、アルコールに強い人からは、それだけの蘊蓄?と次を催促する声がありましたので、化学材料屋的な蘊蓄をご紹介します。特に赤ワインを好きな人にお贈りします。ワインにはテイストが付きもの。ワイングラスをゆらせて香り成分を嗅ぎ、次に少量を舌の上にして味を分析する。その瞬間名人なら何処の農場で育成された葡萄で、熟成何年モノ・・・を見定めてゲストに愛飲を進める手順である。ここで、人間は実に化学的に大変なことをしていることに驚く

まず、(1)香り成分の分析であるが、通常の化学分析では熱分解ガスクロマトグラフを利用するが、これでは香り分析はできない。サンプルを加熱し、揮発する成分の分子量・構造を特定する装置であるが、成分が多い化合物を香りと勘違いすることがある。成分がガスクロマトクラムでは検出量が微量でも香り成分だと特定する必要がある。ここは従来の装置では無理。前職の研究所では「鼻ガスクロマトグラフ」を発明した男がいた。初めは「鼻」と嗤っていた社内も業界もやがてその効用を認めるに至った。それは熱分解ガスを装置に接続すると同時に途中で鼻でも検知する簡単な組み合わせからなっていて、チャートに記録されるピークに鼻で感ずる時にマーキングをする手法。これで装置での検知濃度は少なくても人間の鼻では強く検知していることが分かり、後は化学成分を特定する作業に入る。適用は安全性が確認されているサンプルに限定されるが、人間の鼻さえガスクロ以上の分析機能がある。犬ならその100万倍以上の能力がある

(2)赤ワインの味を人間はどうして検知しているのか? 

赤ワインを舌にのせた瞬間に葡萄外皮の多糖類を腸内細菌が加水分解して13種類の糖類を生成していることが判明している。味が異なるのは13種類の化合物の比率が違うからである。

味気ないかもしれないが、品種、農場、天候などが比率を変化させるのであるから、外皮の分析から特定糖類をブレンドすることで平準化することは可能。勿論マーケットの特徴を反映して特定糖類を強化したグレードを発売することは可能だろう。将来の蘊蓄としては「この赤ワインはL―アセリン酸が強いね。D―キシロースを増量したら更に美味しくなり、肉なら神戸牛に合うね・・・」なんて格好良くサラリと言うには紳士・淑女風格が必要であることは言うまでもない。それとも野暮?

以下、その化学的根拠についてポイントを記載する(詳細は現代化学3月号・竹中・坪井氏論文を参照願いたい。)

*赤葡萄の果実はセルロースと蛋白質で構成された硬い外皮で保護されている

*その内側に柔軟性のあるペクチン(複合多糖類)のネットワークがあり

*ペクチンにはラムノガラクツロナン(RGⅡ)のゲル状分岐糖類が弱く結合している

RGⅡには腸内細菌の一種(Bacteroides thetaiotaomicron)が反応し自己ゲノムに含まれる酵素群で単糖に分解する。

竹中・坪井氏はハイテクワインが製造できるかもと記述している。一方で脚を棒にして折角客人のために探し求めたビンテージ。簡単にブレンドで「もどき」ができてたまるか!ご馳走の意味を分かっているか!と主張するご仁にも理解はできる。でも腸内細菌が元気でいることがワインを愉しむ条件であれば、健康体で明るくワインを愉しみましょう

最後に、ワイングラスの形は胴部より上部の径が小さい曲面形状。ワイン中のアルコールは手の温度で蒸発し、上部で冷却されて元に戻る。このとき、ツツーッと液滴が落ちる列の間隔は等間隔。通常「ワインの涙」と言うが、131日付けブログで非平衡系の自己組織化・散逸構造の一例である(慶応義塾 朝倉教授)。蘊蓄の一つに加えては如何でしょうか

(図13種類の糖分子と4種類の修飾糖基)

俗説への挑戦 新技術の芽

俗説の代表格「酒は飲む訓練をすれば飲めるようになる」であるが、東大医学部の中川氏が「赤ら顔となる深酒は食道がん、咽頭がん、肝臓がん、乳がん、大腸がんなど、多くのがんの発症リスクを高める」と警鐘。27日付日経夕刊)。 現在では俗説は間違いとようやく浸透してきた。ノンアルコールでも会食時の違和感は薄れてきた感がある。エタノールが脱水素酵素と酸化酵素の作用によりアルデヒドに変化し、アセトアルデヒド分解酸化酵素で酢酸・炭酸ガス・水へと変化する工程で、アルデヒドはDNAの二重螺旋構造を傷付け修復不可能になることが判明している。分解酵素をつくる遺伝子にはD型が元々あり、中国南部でD型がN型に転換。日本では縄文時代ではD型、弥生時代はN型。その後は両親の遺伝子組み合わせからDD50% DN45% NN5%となっている。DD型は九州・四国・関東・東北・北海道に多く、中部・近畿はDN型、NN型が比較的多い。N型からみると何故Dから中国南部で転換したのか知りたいところである。

俗説(2)食物アレルギー発症回避のため、高アレルゲン性食品を妊娠中や授乳中に母親が食べないようにしたり、離乳食を始めるのを遅らせてきた。しかしながら、この予防法が却って食物アレルギーを増加させていることが判明している。2006M.Karamerらがメタ解析により解明しており専門家は熟知、でも母親の心理面からは受け入れられていないのが実態であろう。離乳食を早め体内での免疫寛容を形成させ、その後の皮膚を通じてのアレルゲン経皮感作を抑制する方が好ましいのではないかとの仮説を動物実験で検証している。 (現代化学20182月号)

俗説(3)ポリカーボネート製ほ乳瓶は危険。重合成分であるビスフェノールAが超微量存在するとオスの魚がメスに変化する。カナダの小説家が「失われし未来」として出版。超微量とは当時の分析機器でも検出限界程度であり、それより高い濃度であれば影響がない。・・・まか不思議な理屈? 企業は言い訳を後回しにして即刻当該用途・類似用途への販売は中止した。今も販売はしていない。問題はここからが肝心なところで、サイエンス的解明を確実に実行して根拠のない妙な小説と区別することである。

ビスフェノールAはエストロゲンの一種であるが、人類・動物が排泄する量が圧倒的に多いと言いつつも口に出さずに、グローバル企業が相互協力して莫大な資金で研究解明を地道に積み上げ「完全シロ」を得た。もう一つ得たものがある。それは超微量成分分析技術。小生も本件に係わったが、欧米巨大化学メーカーのトップのサイエンスへの真摯でサイエンスに対する姿勢を見たことは有益だった。

俗説(4)特異性質を有する高分子ABを混合して両方の高分子の長所のみ有する材料とする技術はポリマーアロイとして発展してきた。マトリックスをA、ドメインをBとする海/島構造の場合Bのドメインサイズを微細化する程、長所を引き出すことができるとあって、技術者は10ミクロン→5ミクロン→3ミクロンと平均ドメインサイズを微細化することを競っていた。一体どこまで微細化すると良いのか分からずにである。理論的理想値を発表する大学教授が東京地区におられた。業界では著名人だけに有りがたく信用した。1ミクロン以下になると性能は発揮できないと言うモノ。1ミクロン以下のドメインを製造することは困難なので、多分1ミクロン以下は価値がない、工業用途には2~5ミクロンで十分だとして微細化競争は終了。小職も別の形態へ挑戦し2種類のアロイ形態を開発し特許化した。企業として微細化技術開発に突進していては新規形態開発を出来なかったが、あの時の某教授の話に少し疑問が残った。この教授も当方もミクロン単位での制御技術しかなかったのが本音である。恥かしながら小生も俗説化していた。

<新技術への挑戦と芽とは>

今はナノを通り越して分子レベルでの制御が可能となっている。京都大学の中條教授(高分子学会長)は原子ブロックハイブリッド高分子の分子設計と製造法を開発した。また同じく京都大学の植村准教授は多孔性金属錯体(MOF)内に高分子の素であるモノマーを孔に閉じ込めて重合させることで、従来のポリマーアロイでは得られない異種組み合わせからなる新規高分子アロイを開発した。ハイブリッド高分子は工業用途のみならず創薬・医療向けに発展が期待できる。次世代歯科材料の有力候補になると予想できる。MOF利用ポリマーアロイは光学用途・人工DNA・蛋白質など新分野開拓するのではと小生は予想する。何れも俗説を見事に払拭して高分子の新時代を開いて頂いたと高分子に長年携わってきた小生は感謝している。

植村准教授(京大テック発表資料からMOFとは)

5Why

自動車完成検査問題に端を発して続々の首脳記者会見。日本のもの作りは大丈夫か?と疑問を多くの人は持ったことは確かだろう。でも極論を言えば完成自動車検査問題は罪が軽い。大凡10万ものパーツからなる自動車を最終的に人が検査できない。法律が現実に置いてきぼりされているようでもあるがソクラテスが言う法は法。

もの作りは上流の素材・加工・組立て・モジュール・組み込みなどの工程を経ている。例えば樹脂素材を例に挙げれば、ナフサ中の硫黄など不純物含有量チェック、ポリオレフィン製造の場合はエチレン、プロピレン中の異性分の分析、触媒組成チェック、触媒保管チェック、重合反応装置材質変化、不活性化ガス成分チェック、重合条件モニタリング、溶融樹脂粘度・発熱状態のチェック、押出機内の圧力・温度モニタリング、ペレット粒サイズ別分級、髭・粉分析、分子量、分子量分布、添加剤配合量チェックの上流工程で製造されて最終の出荷検定項目で合否を判定される。出荷検定数より遙かに多くの工程分析からフィードバックされてスペック幅に入れる製造能力があれば、自動的と言っても良いほどスペックに合格する。自動車部品の多くはこれと類似した工程で製造されている。 

罪が深いのはデーター改ざん。上流からの工程管理精度を向上する努力・投資をせずに競争力が高いと装うことは信頼が基本の仕事の流儀から逸脱している

新幹線N700台座問題。記者会見では設計が粗く、他パーツを取り付ける際に肉厚8mmを1mm研削して肉厚7mmとするまでは許容するとの品質基準があるものの、実際は現場に委任されていて最大3.9mmまで研削した事例もあるとのこと。強度は厚みの3乗に比例するので、この箇所は設計の1/8.7しか強度がないことになる。この会社は新幹線300系の時代から代々担っただけにエッ?と思ったのも事実。当時の現場には設計者と対等に渡り合う叩き上げの熟練技能者が存在し、設計と実際の成形上の不具合調整を議論したであろうが、今はいないのであろうか?と考えてはいけない

「トラブル原因を人のセイにするとトラブルは再現する」前職時代トヨタとの付き合いで学んだポイントである。最終的に研削して寸法合わせしたのは現場。でも合わせざるを得なかったのは何故か?超高張力鋼鈑をコの字形状にプレスし溶接により中空体を製造。その上にパーツを接合する。その間隙調整に研削や肉盛りをしたことが直接原因。しかしその前に、設計者は鋼鈑が超高張力になればなるほどプレス後にバネのように戻るスプリングバックして最終寸法にならないことを計算に入れていただろうか?プレス現場で学習したのであろうか、現場研修させるシステムがあったのだろうか。それをCADの中でどのように設計基準に入れ、肉盛残留応力問題をどのように処理したのか。。。。。組織の問題に置き換えて深く掘り下げる必要があろう。苦しい作業になるがこれを乗り越えると脱皮した企業体になることが期待される。是非トライして欲しい。川崎重工の世の中での役目は誰もが認識している。無くてはならない企業である

15年ほど前、東京で明日のプレゼンの用意をしていた19時頃にトヨタ関連企業から電話。「今から逢えませんか?何時になっても良いから待っている。」 公用に自家用車使用は認められていないが、東名を疾駆し駆けつけた。この企業とは某用途で開発を企画したが、最初の段階で想定クレームとそれに対する5Whyを整理するところから入った。まだ販売していない段階、それも開発をこれから着手する段階にて。これには正直驚いた。一次原因は***で、この更なる原因は****で・・・・の何故?何故を5回繰り返すことでコア部の問題点を明らかにする5Why。噂には聞いていたが、実際は大変な作業である。このとき感心したのは

「トラブル原因を人的要因もあるとした対策案はことごとく拒絶された」ことである。

トラブルを起こさざるを得なかった人的背景要因に組織はどう関係しているのか?を深掘りしない限り5Whyまでは到達しなかった。5Whyまでに到達するまでに何度も脚を運び都度勉強することが続いた。先の東名疾駆は何回目だったか忘れたが、先方との信頼感が5Whyを通じて強化されていくことを実感した。帰路の裾野付近から箱根越えのダラダラ登り坂はアクセル踏む脚力には厳しいなかにも、5Whyの効用を味わえたのは貴重な経験だった

現在の働き方改革云々では威張れる話ではないが、どこかでは必要なんだろうと思う。

CNF(セルロースナノファイバー)

数年前の統計だが国内年間使用材料の数量と容積比データーが手許にある。第1位は石・セメントで15億トン、第2位鉄1.2億トン 第3位が木材・紙の0.45億トンである。因みに4位はプラスチックス0.15億トン、アルミが0.025億トン。重量ではこの順位になるが、例えばプラスチックスの容積比を1とすると鉄は0.9と体積ではプラスチックスが鉄より比率は高い。比重が違うので当然この結果となる。自動車は内外装にはプラスチックス、鉄(鋼鈑)は強度が要求されるホワイトボディに採用され軽量化と車両としての骨格を分担する機能で成立している。今、鋼鈑はより比重の低いアルミから攻勢が掛けられ、鋼鈑・アルミは炭素繊維複合プラスチックスに攻勢を掛けられている。エンジンからEVへのパワートレインが変化すると更に軽量化が要求され、鋼鈑としては強度を表す高張力鋼板は15年前までは780GPa前後だったのが、現在は1700GPaまで改良され、薄肉・少量鋼鈑で対応している。アルミ、プラ、高張力鋼板のせめぎあいは見事である。共に切磋琢磨することで自動車以外の分野にも拡張している。

上記の材料の中で一人沈んでいるのが木材・紙である。重量比、体積比ではおよそプラスチックスの3倍の需要があるものの、人口減少に伴う建築軒数の削減、雑誌・新聞は紙媒体から通信機器に取って代わりつつある。医療関係では電子カルテになり、医療費支精算までラインで繋がり、紙が存在するのは患者番号切符と領収書のみ。さらに手術室等のリアル空間記録も紙では対応できない。そんな影響を直接受けるのが製紙メーカーである。

その製紙メーカーが切り札として開発を進めているのがCNF(セルロースナノファイバー)である。紙の原料であるパルプの繊維1本の太さは10~20ナノ前後で長さは測定できないくらい長い。繊維の長さ/太さ=アスペクト比と表現したとき、プラスチックスと混合した場合、アルペクト比が大きい程、引張り強度、曲げ強度、熱変形温度を改良することができる基本原則がある。炭素繊維複合樹脂材料、ガラス繊維複合樹脂材料、タルクなど無機充填剤複合樹脂材料などはこの原理原則を利用している。

さて、このCNF。アスペクト比はこれらの複合材料に比較すると圧倒して大きい。但し繊維1本、1本を解くことができること(解繊)が前提である。セルロースはご承知のように親水基を分子内に多数あり、相互に水素結合しているので解繊が困難である。そこで化学的修飾して解す(東大磯貝教授プロセス)、または高圧水や機械剪断利用して解す(京都プロセス)など工夫されてCNFとしている。

多くは水溶液として得られる。濃度は1~2%。水溶液の形で利用しているのは化粧品やボールペンのインク滑らかさ改良である。量的に大量消費が見込まれる樹脂に配合するには100%まで濃縮・乾燥する必要があるが、過程中に親水基が再凝集することもあり、かなり厄介である。可能となれば物性は期待できる。

例えば繊維の太さが人間視野波長より細いので透明樹脂に配合しても透明性を維持し、かつ繊維の数が多く、相互に絡みもあることから、樹脂の線膨張係数が小さく、機械的強度が向上する。製紙メーカーとしては樹脂複合材として自動車・航空機の材料になることを期待して中規模プラント建設をした会社がある。原料が針葉樹パルプ以外にも竹由来のCNFもあり、また鳥取県では蟹の殻のキチン・キトサンを原料したもの、愛媛県ではミカンの皮を原料にしたものなど地域特徴をだしたCNFの開発を進めている。蟹由来は医療用にミカン由来はジュース粒の沈降防止などが利用されている。ソフトクリームが夏場でも長時間維持できることを経験した人もあろう。

ここで本命のパルプ由来について果たして目的の自動車・航空機に利用できるか? 言うまでもなく木材は炭酸ガス固定として有為の存在であり、違う目的で再利用できることは大きな意味をもつ、単なる製紙メーカー救済策ではない。17年ほど前、前職時代にナタデココから採取したナノファイバーをアクリルに配合して透明で屈曲できるウエアラブル・ディスプレーを開発した仲間がいた。その途端、ガラスメーカーは薄く屈曲できるガラスを発表した。喰われる方のメーカーは容赦をしない。この時に深追いしなかった理由は価格。この経験から製紙メーカーには現在乾燥CNFが5万円とも言われている価格帯を500円前後まで合理化できることを期待している。是非頑張ってとエールを送る。

CNF説明資料:京都大学生存圏研究所HP http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/labm/cnf

蓄熱・蓄電

政治・経済の評論家は大変だ。数年後に正鵠を得たのは誰かと逆評論されることがある。それに比較すれば技術に関してリスクは低いと言えそうだが、さて本当か。意地悪だが手許に5年前にEV車の欠点として冬場の暖房に電気が消耗されるので、暖房には蓄熱剤搭載が必要だとのペーパーを日経テクノロジーに掲載した人がいる。偶々乗り合わせたタクシーがEV車で運転手からの愚痴をネタに蓄熱剤の利用を説いた。執筆者が文系か理系記者だか不明であるが、5年後の今はそうはならなかった。EVは徐々に浸透しているが、始動前充電させながらエアコンを掛けるか、座席ヒーターのみ通電することで対応しているのが現実である。もし蓄熱剤及び蓄熱タンクや付帯設備を搭載すると車重が重くなり、電気容量を食うことが容易に類推できる筈である。材料・設計・デザイナーは軽量化1g当たり価格を意識してミリミリ詰めているので蓄熱の発想はなかった。

しかしながら蓄熱は全く意味がないかと言えば、国家エネルギー政策上は極めて重要である。

即ちエネルギー供給源として石油、天然ガス、石炭、自然(太陽光・風力、地熱)エネルギー、原子力のトータルエネルギーを100とすると実際は35%しか利用されていない。残りの65%は発電所、大規模コンビナートでの熱エネルギーとして損失している。この65%を有効化するには蓄熱できる装置・材料があればと長年研究されている。しかしながら排熱の温度の82%は250℃以下と低いことが障害となっている。蓄熱材と熱交換する時間が長い場合、さらに温度が低下してしまう。そこで伝熱面を機械的制御により蓄熱を高速熱交換する技術開発を東北大が開発している。原理はシンプルで蓄熱している層(A)と熱を受け取る層(B)の界面の総括伝熱係数をコントロールする。東北大方式は(A)(B)からなる2層パイプとして(B)を回転させて界面の総括伝熱係数をコントロールし高速熱伝導性が確認されている。話を単純にすれば将来は発電所で発生する熱を蓄熱ローリーに充填してビルや工場に熱をデリバリーすることが可能である。実に面白いが、2層パイプの表面粗度・寸法精度など高度の成形加工技術を要する。日本の機械加工技術の底力を見せるケースである。

EV車はクルマ自体エコであるが、発電所の炭酸ガスと熱ロス問題は解決しないと完全にエコとは言えない。この高効率蓄電・熱移送方式が実現すればEVのエコに磨きがかかる

さて、カリフォルニアはEVを推進しているが、電源は自然エネルギーが好ましいとしている。ただし天候に左右され変動する。その補填として発電所及び家庭での蓄電池の設定を法制化した。現段階で蓄電池を選択するとなると、リチウムであるが、家庭設置は燃焼危険性があり、そもそもリチウム資源枯渇問題もある。EV車が全体の10%を占める時のリチウム必要量は約6万トンであるが、2013年当時のチリなど資源発掘量は37千トンでEV車使用分だけでも不足が予想されている。中国の中南米の鉱山資源獲得攻勢を強めているのも背景にあり、

リチウム代替の蓄電池がクローズアップされている。

結論を急ごう。リチウム代替候補はバナジウム(VSSB)である。蓄電池には鉛、ニッケル水素、NAS電池と種々あるが、比較表を添付する。バナジウムは資源量に問題なく、繰り返し充填疲労、高速充填の基本性能が確認されている。病院・歯科医等の無停電電源装置(UPS)としても有用。この研究も東北大でなされている。蓄熱・蓄電の両方を攻める東北大に是非とも頑張って実用化への橋渡しを期待するものである。

 (表出典 20181月東北大JST発表資料)

日本の研究・COM

日本の研究・COMは大学・公的研究機関が発表する最新の文献・情報発信のWEBである。

大雑把に我々の税金がどのような研究に投入されているのかリアルでみることもできる。

昨年の研究費及び論文数はピーク時の10%ダウンであり、巷間言われている日本の技術停滞を如実に表わしている。因みに研究費総額6,530億円 論文数81,403件。過去5年間トータルの研究費は3.4兆円。医歯薬関係は8,000億円(内歯関係435億円)となっている。この数字をどうみるか。ご専門の方々のご判断にお任せしたい。

究機関別 推定研究費TOP10

研究機関                                推定研究費          登録課題数

東京大学                                   762.01億円                                                5,231

大阪大学                                   553.24億円                                                3,909

京都大学                                   531.89億円                                                3,889

東北大学                                   303.49億円                                                3,167

慶應義塾大学                             286.92億円                                                1,906

九州大学                                   257.12億円                                                2,701

国立がん研究センター                  236.61億円                                                647

理化学研究所                             214.60億円                                                1,192

東京医科歯科大学                       190.30億円                                                1,710

名古屋大学                                167.00億円                                                2,119

ところで、論文についてアクセスランキングも随時行われており、2週間前までトップを維持していたのはなんと「八つ当たりする魚の発見」である。総合研究大学院大学の院生が同種固体サイズの異なる魚を水槽にいれLサイズがMサイズを攻撃するとMサイズは5秒以内にSサイズに八つ当たりする事例2800を観測、指導教官沓掛講師と共に纏めて発表した。霊長類以外に魚といえども高度な社会的情報処理と意思決定を行っていることを示していると説明している。 なるほど面白い。だが、発見である。社会・心理学分野での貢献が大であろうことを期待はするが、工業会に棲息している我が身としては、折角の科研費を有効に利用して発見から発明への展開できるのか否か興味がある。それともビックデーター、AIを駆使する人物もしくはコンピューターロボットがCDO(Chief Digital Officer)として的確な判断ができるボスとなり、疎い者がイジメの対象になるとでも想像させるのか・・・。

そんなもやもやしていたところ龍谷大と京都大学では舞鶴湾に棲息する15種類の魚について「海に生息する魚種間にはたらく複雑な関係性を捉えることに成功 ~緩い種間関係と種の多様性が生態系を安定化~」を発表。

ポイントとして(原文引用)

  • 非線形力学理論を利用して開発した新しい数理的データ解析手法により、舞鶴湾での過去12年間の生物個体数変動データを分析。
  • 15種の生物の間に働く複雑な関係性(目には見えない力)が刻々と時間変化する様子を捉えることに成功。
  • 生態系の安定化には、出現する生物種が多いことや、種間に及ぼし合う影響が緩やかになることが大きな役割を果たしていることを新たに発見。
  • 生態系観測によって「自然のバランス」の変化を捉える新技術の開発につながると期待

·       

1 本研究の対象となった舞鶴湾の15種の生物と、個体数変動データから明らかになった生物種間の14の関係性(種間相互作用)

·        矢印は影響を与える種から、影響を受ける種に向かって引かれている。色は影響の符号(正負)で、青色()は平均的には相手を増やす作用、赤色()は平均的には相手を減らす作用を表している。

 新い数理論的データ解析により「新技術開発のヒント」になれば発見から発明になる。尚発明の要件とは産業上の利用可能性*新規性*進歩性である。例えば鰻の稚魚がなぜ絶滅するのか、この論文では絶滅しないバランスがある筈だとすれば、何を制御すれば良いのか。この研究によれば絶滅種を回避して共存することが可能であるとして、上記のAI音痴の社員がイジメにあうのではなく、共存への裏方的価値があるとも示唆しており興味深い。

研究の最終ゴールが何を目指して実施しているのか、この「日本の研究.COM」は教えており、オオッと感心するテーマあり、日本も捨てたモノではないと感ずる時もあるが、地方国立大学の1講座予算平均60万円とあっては、この先が思いやられるのも事実。

配水用ポリエチレンパイプ

今年は地球自転速度が低下し赤道が収縮するとの報告がなされている。その結果、プレートの移動変動に伴う地震・噴火などが昨年より頻度が多くなるのではと言われている。そこで今回はライフラインで重要な耐震性水道パイプについて考えてみた

いつのころから水道の蛇口から赤さびが出なくなったのをご存知でしょうか。水道工事予定の回覧板には給水再開時に赤さびがでますとお知らせがあった。今はない。若い人はこんな時代があったなんて知らないだろうが、1970年前は頻繁にあった。水道管が鋳鉄管の表面にエポキシで被覆はされていたとは思うが剥離し、やがて錆が発生した。1970年以後は口径50mm以下の主として家庭用給水用パイプは低密度ポリエチレン性であり錆ないが、時々薄肉円筒状のフィルムが分岐管を閉塞する事故が発生した。パイプの内面が一皮むけしている事故が全国あちこちで発生するに至り、解析と対策が実施された。どうやら殺菌消毒液として僅かに配合されている次亜塩素酸が影響しているようだとして、短時間で結果がでるよう高濃度次亜塩素酸水にポリエチレンのサンプルシートを浸漬するとブリスター(泡)が発生した。ポリエチレンに耐候性改良剤として添加されているカーボンブラックが原因であることが判明した。そこで急遽内面にはカーボンブラックを配合しない内層と外面は耐候性改良のためのカーボンブラックを配合した2層パイプにて切り替えることとした。その後 事故は発生していない。

しかしながら、高濃度次亜塩素酸水に浸漬したポリエチレンシートにブリスター(泡)は発生したが、当初報告されたフィルム状剥離は再現できなかった。急遽の切り替えに勢力が割かれた。筆者は何故発生するのかカーボンブラックが起点だとすると何か理由があるはずだと考えカーボンブラック中の電子スピン濃度と関係することが分かった。この考えは其の他の用途でカーボンブラック配合が必要な樹脂製品に応用することができた。パイプ事故で躓いたがWhy?と考えたことで他に応用できたことは良かった。でも今でも何故剥離フィルムが生成したのか?は考えている。材料屋の直感としてはサイジングダイ通過時の内面剪断問題であろうと想像していた

この事案と前後してカリフォルニア大地震があり、ポリエチレン製のガス管は断層があっても切断事故はなかったことが報告された。ポリエチレンでも中密度リニアーポリエチレンで耐環境応力亀裂性、衝撃強度など優れた材料が選択されていることから国内でも同様材料開発が進み、かつパイプとパイプを接合する装置を開発した。この接合技術は次に大きな役割を果たすことになる。因みに地中埋設のパイプを後で他の土木工事で切断しないように黄色に識別されている

大口径(75~300mm)の配水管については道路埋設されたとき25トントラックの繰り返し荷重に耐えられるように材料は密度の高い高密度ポリエチレンが採用されている。色は青色。高密度化(結晶比率が高い)で剛性など機械的強度は得られる上,ガス管に用いられている中密度ポリエチレンのクリープ強度大きく改善させた.これは,結晶の一部の分子が隣接する結晶に入り込み結晶同士があたかも結合したように分子設計したことと,結晶の大きさ隣接距離のバラツキが無いようにパイプを製造することで欠点が改良されて現在に至っている。高密度ポリエチレンパイプの接続にはガス管接続方式が採用された。実際埋設された地域で東北地方太平洋沖地震があったが、事故率ゼロが報告されている。写真はパイプ敷設場所が垂直方向に断層した場合と水平方向に断層した場合のモデル実験であるが、(震度6程度)の地震では問題がないことが証明されている。現在、100年寿命パイプとして官民学協力して精度アップと標準化を進めている。テストシートの短期評価に加えパイプを敷設して長時間のフィールドテストにより変化をチェックする息の長い検討が山形大学栗山教授を筆頭に配水用ポリエチレンパイプシステム協会が推進している。開発途上国は水道が普及していないが、いずれ普及したときに地震大国で過酷テストに耐えたパイプが推奨されるようにISO標準化作業の中での活躍と企業の支援を期待している

(配水用ポリエチレンパイプシステム協会HPより抜粋;但し、この表7の宮城県・岩手の市町村逆に記載されています)

 

コスメの科学(2)塗る、刺す、そしてセカンド・スキンへ

<クリームなど塗るテクノロジー>

東京にも雪が降った。なかなか融雪しないうちに次の降雪が予報されている。寒いが化粧品業界は熱い戦いが行われている。そこに科学がどう関係しているかみてみよう。

雪の形については有名な北大中谷宇吉郎名誉教授の研究が有名である。不思議に思うのは何故あの多種多様な雪マークになるのだろうか、コップに水を入れると界面張力が作用して丸くなろうとする。それに反してギザギザ分岐の形にはどうしてなるのか長年分からなかった。1977年ノーベル賞を受賞したイリヤ・プリゴジン教授が非平衡系の自己組織化・散逸構造を提唱するまでは。その答えは身近なところにあることを共同研究者の慶応義塾朝倉教授が解き明かし化粧品分野の商品開発に結び付けている。紫外線防止クリームは塗布後と水浴後ではクリームの集合状態が変わる。従来は水浴後に疎らに凝集していたクリームを理論的解析により水泳後でも均一な商品を開発された。(写真はカネボウ・慶応共同研究成果)

この理論が虎やシマウマの縞模様発現と同じだと朝倉教授を話されるが、今でも小生には難解。でも面白い。

 

 

 

 

 

<ヒアルロン酸は塗るからニードルで刺すテクノロジーに>

124日から3日間、幕張メッセで化粧品テクノロジー展が開催された。異分野でのテクノロジー進展に興味がありチェックした。その結果は購買層を反映した、アンチエージング、美肌関連の展示が多く、従来の経験に基づく商品開発(土地特有の植物から抽出成分を配合)から発酵技術を駆使しての新規原料の開発などが目に付いた。特記すべきことは、ヒアルロン酸を皮膚に塗布しても効果がイマイチだとして、皮膚下まで針を差し込みヒアルロン酸やコラーゲンを注入する試みがなされていた。ここで針?とは金属製ではなく、実はヒアルロン酸の結晶体をフィルム面の上に生成させている。ヒアルロン酸の結晶は針になるほどの強度があることに実は知らなかった。この技術はナノインプリントと称する光学フィルムの製造において急成長したテクノロジーであり、液晶テレビ、モバイル、タッチパネルなどでは無反射防止フイルム、指紋が付きにくいフイルムで実用化している。食品ではヨーグルト容器の蓋にはこの技術が応用されている。以前は蓋にヨーグルトが付着していたが、いつの間にか蓋にはつかなくなっている。フイルム、アルミ箔の表面にナノサイズの突起が転写されている。

ナノと今回の化粧品ニードルとは寸法は違うものの、成形法については同類だろうと想像している。写真はコスメディ製薬のパンフから抜粋した。

 

 

<セカンド・スキン>117日の日経によると資生堂は以下の発表を行った。

米オリボ・ラボラトリーズ(マサチューセッツ州)が持つ「セカンド・スキン」と呼ばれる人工皮膚形成技術の特許と関連事業を買収した。買収価格は不明だが数十億円規模とみられる。オリボ社の数人の研究者も資生堂グループに取り込む。セカンド・スキンは肌に特殊な高分子化合物を配合したクリームと専用の乳液を重ねて塗る。すると、人工皮膚が瞬時に形成されて凹凸を補正しシワやたるみを隠せる。 直ぐ外出する用事があるときには便利な「化粧」だと思われる。

コスメの科学

昭和初期の歌手は直立不動。昭和中期では簡単な振り付けとバックダンサー。昭和後期から平成初期ではジャニーズを初めとしてダンスができないと歌手にはなれない。ついに平成30年になると歌手かダンサーのどちらが主役か分からなくなってきた。大阪府立登美丘高校ダンス部のキレッキレッ超ハードバブリーダンスが国内外の話題と高い評判をさらった感がある。あの高校生たちは母親の当時の服を纏い、ケバい化粧でメイクアップしてバブル時代(1986年から約5年間)を彷彿させていた。

でも化粧品は当時の物では無いとTVを観ながら気づいた。メイクアップとメイク落としは当時より大きく変化している。アイシャドウ、口紅、アイライン、ファウンデーションなどメイクアップは汗や飲み物でも落ちない新素材研究が進み、一方メイク落としは何がなんでも落とす機能が要求され研究されている。まるで盾と矛の関係である。最近のメイクアップには汗や水に対して親和性のない(疎水性・撥水性のある)シリコーンやフッ素系材料が配合されている。顔料はメイクアップ中のオイルに分散して光沢などを強化するために顔料表面を疎水性コーティングがなされている。なおさら従来のメイク落としでは取れない

小生はこの分野は素人だが面白いので文献を捜していたら山形大学の野々村美宗教授の分かり易いペーパーが見つかった(化学vol73.No.1 2018)。特にメイク落としの記載がなされている。結論から言えば界面活性剤の種類と形態の進歩で、シリコーンやフッ素系配合がなされていても拭き取ることができる。

身近な界面活性剤として食器洗剤、洗濯洗剤などがあるが、洗剤メーカーのCMでよく観るように界面活性剤が汚れの表面に付着して、やがて汚れを界面活性剤の内部(ミセル)に取り込むメカニズムになっている。(図-1)

 

最近のメイクアップを除去するには。まず界面活性剤成分中のオイル量を高めシリコーンやフッ素系成分が多く取り込まれるように形態にも工夫がなされている。その形態として界面活性剤が液晶のように揃っている(液晶型メイク落とし)か、オイル成分と親水成分の両成分が同時に存在する形態(バイコンティニュアス型メイク落とし)を利用している。そのため、少量の水、泡で拭き落とすことが可能となった。(図-2)

 

界面活性剤の世界に疎い小生にとって液晶型、バイコンティニュアス型があるとは知らなかった。しかしながら、高分子材料の高付加価値化手段としてはポリマーアロイがあり、通常利用される手法である。バイコンティニュアスとは言わずスピノーダル型と表現している。材料設計の考え方としては似ていると思われる――――――――――――――――――――――――――――――――――

(参考)界面活性剤 特徴を超要約すると以下の通り。

アニオン系          石鹸、合成洗剤 →植物由来原料へ転換

カチオン系          生体がマイナス帯電なのでプラス帯電のカチオンは毛髪リンスなどに利用                         抗菌性もあるので院内感染防止にも利用         

両性                  アニオンもカチオンにもなれる 広いpHで利用可能。洗顔、シャンプーなど

ノニオン              どんなタイプとも一緒に利用できる。化粧品、食品など

シリコーン系        サラサラ化粧品を支える

フッ素系              水にも油にも強い→歯の成分ヒドロキシアパタイトの表面に吸着するので

            撥水・撥油性を利用した歯科向けに展開

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                                     (日刊工業新聞 界面活性剤 抜粋)