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海洋ゴミと3R

湘南(鵠沼)に住む友人は毎朝・江ノ島海岸のゴミ拾いをしてから出勤。その様子をFBで公開しているが、毎日の清掃にもかかわらず60リットル袋に一杯のゴミが収集されている。彼曰く「毎日毎日よく川から流れてくるし、よくこれだけ観光客が砂浜に捨てる勇気があるなと嘆きたくなる毎日ですが、毎日やっていると、ローカルサーファーが帰りがけに『いつも波乗りしながら見ています。ありがとうございます。これ、海のゴミです。ひとつですけど、捨てるのお願いしていいですか?』こんな人がこの三年で増えてきているのも事実です。まだまだ日本も捨てたもんじゃないです。とのこと。

環境省28年度海洋ゴミ報告(http://www.env.go.jp/press/files/jp/108078.pdf)によると漂着物は大型海藻、木材の自然物及びプラスチックスである。プラスチックスでは漁具である浮子(アバ)、発泡スチロール、及びPETボトル、フィルムシートなどであり、漂着する地域によって種類と流出先が違う。例えば奄美~串本の太平洋岸では中国からのPETボトルが、対馬~山陰海岸では韓国からのPETボトルが目立つ。北海道では漁具が多いなど特徴がある。中国は世界中からの樹脂ゴミを受け入れることを止めた。約800万トン/年の樹脂ゴミを巡って悲喜こもごもの様子が展開されている。輸出用コンテナーの奥に樹脂ゴミを、扉付近には綺麗な樹脂を積載して検査をすり抜けることを試みたが結局発見されてシップバックした某国企業、ゴミ樹脂からの分別をする中国企業が倒産に追いやられた結果、中国内需を賄えないことから日本の綺麗な再生材を輸入することになり、日本の再生業者は設備増強している。日本の家庭ではPETボトルからフィルムを剥がし、内部洗浄して回収にだす几帳面な性格が中国を救っている。中国はリサイクルせずにPETボトルを流出し、日本から再生材を輸入。どこか滑稽な風景だがこれが現実。

一方、EUの欧州委員会は5月28日、海洋生物保護のため使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する法案をEU加盟国と欧州議会に提出した。2030年までに使い捨てのプラスチック容器・包装を域内でゼロにする目標を掲げた「プラスチック戦略」を表明しており、今回の提案は実現に向けた具体策となる。 http://blog.knak.jp/2018/06/post-2037.html

1)消費削減:プラスチック食品容器や飲み物コップの使用を削減、

2)販売禁止:代替品がある場合、使い捨てプラスチックは販売禁止。

  プラスチック製の綿棒、ナイフやフォーク、皿、ストロー、飲み物の攪拌棒、風船棒

3)生産者の義務:生産者は廃棄物処理や清掃等のコストを一部負担、代替品の開発

  食品容器、食品包装、飲み物容器とコップ、フィルター付きタバコ、ウエット手拭き、風船、軽量プラスチック袋

4)回収目標:2025年までに使い捨て飲料ボトルの90%を回収(デポジット)

海洋生物保護目的としているが、喫緊の課題は中国ゴミ樹脂拒否対策が先である。欧州は米国と並んで樹脂ゴミを中国に輸出をしている。食品包装がガラスなどからフィルムに転換することで輸送時の炭酸ガス抑制に貢献し、さらには食品維持の為の多層フィルム化やレトルト調理などを通じて働き方を支えてきたことを、全く考慮しない委員会の狭い了見では消費者が迷惑するだろう。日本ではここで対象となるプラスチックスは焼却炉の最新化と燃焼カロリー面からも焼却されているが、こと欧州では焼却炉が対応できていないのではないだろうか。

日本ではPETボトルto PETボトルの技術が確立し、すでに稼働している。食品トレーもトレーメーカーが中心となりシートtoシートが進んでいる。また、リサイクルPETペレットをポリエチレンに20%混合した製品は洞爺湖サミットで提供するなど多面に亘り活動している。ただリサイクルPETが40%以上になると引裂やすく、ヒートシール温度が高くなる(100℃近傍→210℃近傍)問題があり実用化されていない。筆者らの研究によればリサイクルPETの割合が80%以上であってもヒートシール温度が100℃である技術が完成している。この技術を応用すれば紙を50%以上配合することもでき、廃棄にあたっては紙容器の範疇に入る。 日本は環境先進国である。胸を張って、かかる技術を輸出しては如何だろうか。

金平糖

ノーベル賞のパロディ版としてイグノーベル賞がある。思わず笑ってしまうが着眼点は凄いなぁと感心することがある。日本人の受賞者が多いことでも知られている。カラオケの効果や歯周病と経済は関係があるとの解析もあれば、兼六園の銅像には鳩の糞がつかないことからカラス避け合金の発明などがある。犬との会話ができるバウリンガルもあった。さしずめ小職が選ぶテーマとしては、スマホによる親指の長さの世代間変化か

文科省ナノテクノロジー分子・物質合成研究プラットフォームでは「オリジナルの着眼点に将来のビジョンを描く」として、この世の中には、一見役に立たないように思われることは沢山ある。しかし、ある瞬間、突如としてブレークスルーすることがある。今は役に立たずとも、必ずや未来に花を咲かせる研究シーズを紹介する「すぐには役に立たない研究講座」を開催している。日本は独創性に劣るとの批判もあるのであろう、本来は役に立つことを前提に科研費を大学に出す文科省が、直ぐには役立たないシーズ研究を許すことが有意義なことと思う。ある日突如ブレークスルーするには感性の違う聴衆に訴えることは有効である

そこで日頃は非常に難解専門用語や数式を駆使されている大学研究者が、異なる分野の聴衆に聞いてもらうために平易に説明する必要がある。専門仲間内の言葉では伝わらない。ここで講師の力量が試される。本当は超難解な内容を平易に説明してくれると「確かに役に立ちそうだ」とぼんやりながらでも脳みそに浸透する。開催者から講演指定された人の中には「役に立たない」からと指名され招待されたとしてやや抵抗気味に発表しているのは微笑ましい。517日のテーマは 「鏡の中のグルコースを食べる微生物」、「金平糖の形状に法則性があるか」、「本当に使い難い技術」、「電子の集団行動がもたらす不思議な現象」などである「鏡の中・・」はD体、L体のグルコースの一方を利用して創薬の可能性を。「本当に使いにくい・・」はマイクロ反応装置を利用した化学反応精密制御技術の開発、「電子の集団行動・・」は膨大な情報処理を電子の電荷とスピンに分離し媒体利用しようと、確かに今ではなくとも役に立ちそうと理解できる

ここで気になったのは「金平糖」。実は金平糖のような形状がある物質で可能なら面白いが。。。と考えていた時にこの講演会。これは天の配剤として会に参加した次第。ニーズがあり役立つシーズを探していた。弘前大学の宮永教授の発表は1)何故角が発生するのか2)角の数に法則性があるのか として、10年に及ぶ学生実験を纏めたものである。ご承知のように金平糖は大きな平鍋を略30度傾斜させ加熱・回転しながら核種の表面に糖蜜を掛け乾燥すると糖蜜を更に掛ける作業を続けると角が発生する現象を利用したお菓子。核種が1粒だけでは角が発生せず球に成長するだけだが、複数の核種では角が生え始める。当初の角は90数個の小さい凸が10時間後には20前後に落ち着くとのこと。教授は淡々と実験事実を発表していて、初めはこれが国立大学?と驚いたが、聴衆に答えを直ぐに言わずに各自の頭で考え創造性を高めるようにとの会の趣旨に合致していることが分かった。

糖蜜が回転する平鍋の界面で水分が蒸発することで粘度が高くなり摩擦によるカタストロフィーにより微小な凹凸ができるのだろうと思われる。微小な凹凸が隣の凹凸と衝突することで蜜が積層する角とそうでないところに分かれると推察した。これは空間を如何にして作り最適解の形状を設計する「トポロジー」の世界である。3Dプリンターと本質的に共通するものがあると思われる。コスモサイン合同会社では3Dプリンター装置販売と同時に専門誌・歯科技工からのご依頼により3Dプリンター記事を連載中である。妙なところでリンク。当初考えていた用途への適用には糖蜜代替物質を考慮することで実用化を計りたい。宮永教授は金平糖の角と雪道での凸凹を結びつけている。これもいずれ冬タイヤ溝形状などへの役立つことになると期待している。青森の厳冬のなかコンビニの前の道路をじーっと観察している学生さんは、自然現象の中に多くの役立ちシーズがあることを学んだのであろう。

海岸の流れの強い場所で二枚貝のイガイは足糸をつかって岩に付着している。これを見た研究者はテフロンであろうが付着するので研究をしたところ、ポリドーパミンが付着物質であることを見つけた。神経伝達物質であるドーパミンが酸化重合したものである。今は医療用コーティング材、導電膜、メッキなどへ応用されている。自然界にはまだまだベールに包まれた技術ネタがありそうだ。と書きながら自然界はオープンに公開している。観察眼のなさをベールと表現しているのは自然に対して不遜な態度なのであろう。

バイオプラスチック(2)生分解性プラスチック

生分解プラスチックは例えばポリ乳酸は澱粉などを発酵により乳酸とし重合によりプラスチックスになる。使用後は微生物により分解されて水とCOかメタンとCOに分解する。空中のCOを固定して利用し微生物により低温分解して元に戻す。COを増加しないプロセスとして優れている

欧州バイオプラスチック協会が公表している調査結果によると、2017年の世界の生産能力は205万トン。 生分解性プラスチックスはその内44%で85万トン。主たるプラスチックはポリ乳酸(PLA)と脂肪族ポリエステル(PHA)で今後も50%の成長速度が予想されている。世界のプラスチックス総生産量は約3億トンなのでバイオ全体でも0.7%未満。少ないとみるか、よくぞここまでの規模になった今後も期待できるのどちらか。

<少ないとみる人は>

 プラスチックは市場が必要とする物性にあわせて合成されてきた。一方微生物バイオプラスチックは天然由来成分だけに目的物性に合わせる幅が小さい。なので適性市場は少ないだろうと(現在の技術ベースで)考える。具体的にはポリ乳酸(PLA)が出現した時はPET代替が可能として期待はしたが、ガスバリアはPETに及ばず、溶融から固化するまでの時間が長く射出成形適性はない。このための添加剤は開発されたが、コスト問題の壁がある

<増加を期待する人は>

 ポリ乳酸(PLA)は短所が長所である成形法に巡り会えた。それが3Dプリンターである。溶融から固化までの時間が長いのは溶融フィラメントを積層して立体物を成形する(FDM方式)の材料としては優れていることが判明した。現在はフィラメントとして販売されている。FDM向け材料はABS、ナイロン12と並んでPLAが高温特性、耐薬品性などを特徴として伸びている。

 PLAが期待されている分野に発泡製品がある。一般に発泡は化学発泡剤及び低沸点有機溶剤、フッ素系化合物の物理発泡剤が利用されているが、ここでは環境を考慮して炭酸ガスによる発泡を検討している事例を紹介する。 PLAを押出機で溶融させ、途中から炭酸ガスを注入しPLAに溶解させる。溶解させるに都合のよい超臨界圧条件で炭酸ガス(超臨界状態では液体的性質)を混合し、ついでダイスから大気圧へ解放すると発泡する仕組みである。民間企業を中心に産総研(関西)、大阪市・滋賀県工業試験所が協力して開発を進めている。PLAにはd体L体があり、また分子量依存性もあることから発泡プロセスの開発と同時に材料開発も検討した。その結果を巻末にて紹介する。

このように今後の成形技術の開発如何によっては伸びることが予想されている。生分解プラスチックにはPLAの他にポリヒドロキシアルカン(PHA)ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリグリコール(PGA)がある。それぞれ微生物分解を利用した農業用マルチフィルムに既に利用されており、後者はガスバリア特性を活かした冷凍輸送代替真空パック用包装フィルムなどに利用されることが期待される。

過去から身近で利用されてきた生分解材料にセルロースがあり、光学フィルムのTAC(トリアセチルセルロース)はリサイクル率が高いことも好感される。包装フィルムやテープの(セロファン)はPPやPETの2軸延伸フィルムに押され減少傾向にあったが、最近4~5%伸びで反転攻勢に出ている。セルロースフィルムの吸湿性をコーティングでカバーし家庭内で生分解できるネイチャーフィルム(英イノービアを買収したフタムラ)は菓子、コーヒーなどの食品包装を中心に動向が注目される。

 セルロースといえばセルロースナノファイバーが脚光を浴びているが、木材はセルロースを接着し、害敵からガードするためのリグニンからなっている。リグニンを除去しないで木材のまま成形体ができないかの研究も一方で行われている。京都大学はセルロースナノファイバーと平行して木材粉末やサトウキビ由来のスクロースにクエン酸を配合して熱プレスにより製品化できることを発表している。接着材に化石原料を全く使用しない特徴がある。クエン酸が相当量含有されているので、熱湯水で溶解しないのか懸念したが、セルロース、リグニンと反応していることが分かっている。東京都産業技術センターでは木材チップ・粉末に熱硬化性樹脂を極少量配合した複合材料を熱成形するプロセスを発表しており、一部食器など民間企業で生産されている。漆器と外観が似ている。 これらが射出成形可能まで開発されると面白い

さて、話を戻して制度面から見ると、すでに国内には日本バイオプラスチック協会などによる表示・認証制度が存在する。 主な対象は植物由来の製品や生分解性を有する製品などがバイオプラだということが分かりやすいマークを示すことで、低環境負荷を意識するメーカーや小売業者、消費者への訴求を狙っている。経済産業省が新たな表示や顕彰制度の創設で後押しの動きをしているが、国産バイオマスを原料とする製品に限定が有力候補の一つ。但し、欧米では生産過程でCO削減に貢献した製品もグリーンプラに含める概念をだしつつあり、経産省も再考の余地があるようだ。

だとすれば、化石原料由来のポリカーボネートの製造法には溶剤を使用する界面法と一切使用しない溶融法があるが、この欧米の解釈では溶融法ポリカーボネートがグリーンプラになる可能性になるか否かも注目される。現実的には消費者は市場性のあるプラスチックを購入する。 物性、価格など満足した上でグリーンであれば購入の動機となる。なので、物性、価格のマッチングの材料開発と独特の特徴を活用した成形技術の開発が必要となる

そんな中、既存のPETを分解する微生物が海外の研究者によって発見されたとのニュースがFacebookにあった。中国の廃プラ輸入禁止措置もあり関心を読んでいる。ただ、PET分解微生物の発見は日本が早く慶応/京都繊維工芸大の合同チームが2016年に発表している。

最後に生分解プラスチックは却ってマイクロプラスチックスを増加させ海洋汚染するのでは?と英国を中心に巻き起こっている懸念にどう向き合うか。生分解プラスチックにだけでなく非生分解プラも含めて全体での議論が当必要だろう。

PLA超臨界発泡プロセス   20倍発泡食品トレー   35倍発泡セルSEM写真

 

バイオプラスチック(1)

バイオプラスチックには次の2種類があることを始めに紹介します。

①    植物由来原料を重合したプラスチック(バイオマスプラスチック)

②    植物由来原料を重合したプラスチックスが微生物により分解し最終的に水と二酸化炭素に分解される プラスチック(生分解性プラスチック・グリーンプラスチック)

<はじめに>

近くのスーパーでエコバッグ持参の客には2円値引きサービスがあったが、。先日エコバッグ持参の割合が70%に達したので環境への理解を得られたとして値引きサービスは止め、ポリ袋が欲しい場合は1枚2円頂戴しますのビラ。 逞しい商魂にアッパレなのか渇!なのか皆さんのご判断にお任せします。何だか落語の壺算の逆パターン。

経産省などが推進しているバイオプラスチック。バイオ率100%のレジ袋では2円/枚より更に高価になり直接消費者に反映させるとバッグ持参が増加し、バイオプラスチックはレジ袋市場には浸透しなくなる。なのでバイオ率、価格をどうするか、それとも従来材料にない機能を発揮させて、価格に見合った市場を開拓するかがポイントとなる。

<バイオプラスチック>

企業がバイオプラスチックスの事業に着手するには地球愛だけでなく、利益を通じての社会貢献が動機である。数年前まではブラジルや米国ではサトウキビやトウモロコシ由来のアルコールが自動車ガソリン代替か混合用(ガソホールE10,E20)として原油価格暴騰の期間ブームになったが原油価格の低下、シェールガスが現実化すると沈静化した。米国のイラン核合意離脱により5月16日のWTI価格71ドルと高騰気味であるが、採算ラインになるかどうか注目される。ただ、高燃費車や脱ガソリン車の増加もあり、ガソホール復活可能性は少ないとみる。ブラジルBraskemではアルコールをエチレンに転換しバイオマス・ポリエチレンの生産をしている。日本でも2商社が取り扱い、包材メーカーも商品化に努力している。パッケージ展でみると歩みは当初の狙いより遅いが確実に浸透していることは分かる。原油(ナフサ)由来のポリエチレンと物性が略同じなので、材料設計、成形加工技術、製品設計は従来技術の範囲内で対応できる強みがある。しかしながら価格差はナフサ由来とはある。

バイオマス・ポリエチレンはイオングループが有料レジ袋に、東京ディズニーリゾートがお土産用袋に、またセブン-イレブンが一部店舗で無料レジ袋に、 今後バイオプラスチックス認定を見える化する経産省・環境省の動きを先取りしての企業活動だろうが、バイオマスの割合については価格見合いだろう。京都市はバイオマス・ポリエチレンを10%配合した家庭ゴミ袋を7月から有料指定袋として本格実施する。従来と同価格。これで年間500トンCO2が削減されるとのこと。京都議定書20年の節目のアクションとしては理解できる。たかが10%されど10%。従来通りだと単純に価格は上がる。物流コストの上昇環境もあり、インフレーションフィルム成形速度、シール速度、裁断刃寿命改善、パッケージ袋の印刷、検査方法、段ボール材質見直しなど細かいところまで合理化しないと採算に合わない。ご苦労された様子が想像できる。改善導入初期はポカミスが起こり易い。検品にコストが掛かる。なので導入期間は相当とる必要がある。

バイオマスプラスチックスの中でも注目を浴びているのがバイオポリカーボネートである。糖・グルコースから誘導されるイソソルバイドを成分とするポリカーボネート(補注参考)で既存のポリカーボネート樹脂の透明性、衝撃強度、寸法精度特性を有しておりながら、光学特性に優れ表面硬度が高い(鉛筆硬度は既存がBに対して1Hと高い)開発品の中には2Hとアクリルに迫る硬度がある。特徴は表面鮮鋭性である。自動車の内装材(インパネ)は傷が付きやすい。なので、傷がついても戻り易いウレタンかポリプロピレンの場合は種々の無機フィラーの種類、配合エラストマーなどを変えてグレード開発をして更に成形時にはエンボス加工(小さな凸凹)するのが一般的である。

自動車は単なる移動手段だけでなく個室的な意匠性が要求される。なのでインパネは軽自動車とは言え硬度と鮮鋭性を付与するために塗装がなされることがある。自動車に長く携わってきた開発者がバイオポリカーボネート樹脂のテストピースを見た瞬間、これを着色ペレットとして販売すれば塗装しなくても商品価値はあると直感。塗装費用に見合うとの計算もあり、しかも、塗装表面は硬化樹脂のコーティングにおける非平衡系の自己組織化散逸構造により表面は微少の凸凹パターンが発生する。これが光散乱の原因となる。一方、射出成形で表面が平滑なバイオポリカーボネートは鮮鋭性・深みのある意匠性が発揮できる。

軽自動車への採用を切っ掛けに乗用車まで拡大している。塗装は溶剤系が主流で溶剤回収など環境に課題が、水系塗装は乾燥が長くタクトタイムに課題がそれぞれあり、塗装レスは非常に意味がある。内装材で実績を出した材料は外装材にも適用されている。塗装レスがキイワードである。現在、三菱ケミカルがDurabioの商品名で製造販売をしている。製造プロセスは溶媒を使用しない溶融法を採用していることから材料及び製造法の両面で地球フレンドリーと言える。帝人も研究を進めており新聞発表をしている。

バイオプラスチックスではその他、展示会・新聞報道によると次の各社が発表している。

*三菱ガス化学(セバシン酸原料)高弾性率・低吸水ナイロン(Lexter)を市場展開中。

*ユニチカ も同様に「ゼコット」を準備している。

いずれも高価格・高機能が許されるスーパーエンプラ分野への参入。

*東洋紡・三井物産・Synvina(ポリエチレンフラノエート)PEF(ガスバリア、透明性、耐熱)推進中。PET代替。ポリエチレングリコールと、2,5-ジフランカルボン酸の重縮合体

*米ジェノマティカ、伊アクアフィル(ナイロンメーカー)は原料のカプロラクタム(CPL)の商業化に乗り出す 。

*三菱ケミカル・東レ 三菱ケミカルはトウモロコシなどバイオマス原料由来のポリエステル(ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)や ポリエチレンテレフタレート(PET)に関する基本特許について 東レとライセンス契約を結んだと発表。 市場拡大の為の三菱ケミカルのKAITEKI戦略の一つだろう。

次週はバイオプラスチック(2)生分解プラスチックスを採り上げる予定

 

5S

多くの会社で5Sの標語を目にする。 整理・整頓・清掃・清潔・躾。大凡この順番である。シアワセのSを追加した会社もある。製造・物流への立ち入りは制限されていることが多い。その場合、応対者の躾を見て、残りの4Sを推測する。躾が良ければその会社に良い印象をもつ。なので5Sのマニュアルは完備していて、型から入る方式で充実を図る。これはこれで良い。型が徹底している見本はファーストフード店。でもローテーションできない立ち場の人が長時間勤務すると徐々に作り笑顔のメッキが剥がれる光景をみるときがある。型をキープするにも体力が必要だ。幼いときからの躾が身についていれば体力云々は関係なく自然にできるものだろう。幼少の頃からの躾に何かをプラスした事例を挙げる

事例① アラ古希の人が店頭販売で若い店員さんよりお客に人気があって売り上げトップの店がある。買うか買わないで迷っている人に「如何ですか?ご覧なって下さい!」のようなマニュアルの型だけでは対応しない。つかず離れず適当な距離をおき、客の心理の揺れの絶妙のタイミングで商品アドバイスをする。次の瞬間レジの流れ。巧である。若い店員さんにも当然良い影響を与えており、なんとか会得しようとしているのは気持ちが良いものだ。アラ古希の人数が100万人を越えたとのこと。なまじ会社で肩書きを背負ってきた人のプライドはマイナスに作用するので注意が必要だろう

事例② ある会社の社長になられた若い女性にお会いしたのは数年前。その時「そのおじぎの仕方はどこで習ったのか?」と思わず聞いてしまった。よい角度は60度とマニュアルには書いてある。彼女は直角のおじぎと笑顔。それだけで人を魅了するには十分だった。幼少のころから身についているからこそ自然と出来る所作であろう

事例③ 大平正芳という総理大臣がいた。あ~、う~、あ~で主語を言って一息、助動詞は再びあ~う~を必要とする。こんな調子の口調であったが、聞いていると、正直に話をしたいとのオーラが伝わってきたものだ。記者は記事を起こす時もっと驚く。話言葉がそのまま原稿になっていると驚いた逸話は多い。国税横浜中税務署長をされていた時に利用していた庶民派飲食店の経営者から税務署の人だが憎めないオーラがあったと聞いた。若いときから躾が身についておられ、それに教養がプラスされたオーラだと思う。 若い代議士に多いが頭が良いだろうと早口でため口も入れ舌鋒鋭いつもりの声高には、躾けがなっていないなぁと感ずると同時に底の浅い質疑に終始していると大丈夫か?と思う。少し躾や相手の心理を読み取る勉強をすべきかも知れない。 論理的攻め方にプラスして躾が滲みでると訴求に迫力を増すことをモリ問題で証人喚問をした葉梨議員が良い見本であろう

さて、偉そうなことを言いながら小生は整理・整頓が苦手である。 だが、劣等生でも五分の魂があるとして言い訳を少々。

ポリオレフィンの重合はスラリー法が長年採用されていたZiegler-Natta 触媒(チタン/アミン系)を溶剤に分散させてエチレンやプロピレンのガスを反応槽に供給すると、触媒中のチタンから対触媒のアミンに向かってエチレンやプロピレンが重合しながら成長する。極めて規則正しく分子が並んで重合が進むので結晶性が高くなる。その反面、重合鎖の末端に残っているチタンを除去する必要があり、触媒を除去するための洗浄後工程が必要であった。 その後、残存触媒が圧倒的に少ない(触媒活性が高く、触媒あたりの重合収率が高い)プロセスにより洗浄・後工程を省略することを狙って開発が進んでいた。ある金属塩に担持させた触媒は活性が高く洗浄工程を省略しても良いとの結論を得てスケールアップ試作で最終製品試験までこぎ着けた。 但し、製品を長期使用してみると製品がやや黄ばみを呈する問題が浮上してきた。 原因は樹脂が酸化劣化しないように酸化防止剤が極少量配合されているが、これが残存活性チタンの光増感反応により変化することが分かってきた

さあ、どうしたものか、各種の抑制作用のある添加剤を組み合わせする実験をしたが全滅状態。隣の研究室の倉庫には国内外の添加剤メーカーからの試供品や購入品が整理整頓とはほど遠い状態のギッシリ。今なら、棚卸しや5S活動で長期使用しない添加物は廃棄するが、小生と同類の人が廃棄しないで倉庫の奥にしまってあるのを見つけた。古色蒼然の瓶の蓋を空けると黄色から褐色に変色したペースト。黄変を改良するのに黄色・褐色の添加剤を加えることは基本しない。常識人であれば保存期限を10年もオーバーして変色していたら捨てる。

だが、ここで面白いことが起こった。これが黄変防止に有効と判明したのである。後は消えかけているラベルのメーカー名を尋ねて供給能力増加を依頼。ポリエチレンの製造はスラリー法から気相法に移行し脱触媒洗浄工程はない。合理的価格で製造できるとあって、あっという間に世界に広がった。その時の添加剤配合は10年ぶりに陽の目をみたこの黄変防止添加剤配合が世界標準となった。格好良く言えば廃棄整理の前に研究者の「サブでベンチにいれておくか」の勘が働いたのであろう

現在の日本の研究能力は20%低下していると言われている。短期間の成果主義も一因であろうが、研究現場、研究室、図書室などは多少整理整頓清潔感に問題があっても、昔の研究者は少ない情報や劣悪な環境の中で成果を出したのは何故だろうと考えることは意味があると思うが如何であろうか。各人が整理整頓とは言い難い糊しろ(その時には役立たないが考え続けることで醸成される拡張部分)を持っていて、相互の糊しろとリンケージすることで新技術を開発することがあった。シニア層が蓄積した財産は在庫が無くなってきている。若い研究者はネットなどで糊しろがなく、誰でも入手できる情報で対応しがちである。それでは骨太のソリューションは出ない。研究者を責めるのではなく、抜本的な制度組織を見直すべきだろう。

難燃剤

なにげにTVを点けたら葛飾立石商店街の再開発を採り上げていた。老朽化建物が狭い地域にひしめいているが人情味あふれる味のある風情。ただ風情などと部外者だから言えるが、住民の再開発を望む割合が高いとか。災害が発生したら財産を失うことを意識されていると推測される。東京には三軒茶屋などが、横浜には野毛地区など戦後名残りの地区があり同様な事情がある。

地域はそれなりに危険性を感じて予防意識があるだろうが、雑居ビルからの発災が多いのは消防署からの注意喚起があってもテナント同士の連結が薄く浸透しないからであろう。インスタ映えする店内風景を信用して知らないお店をネット予約すると危険性を見落とすことになる

大正の関東大震災では地震の後の火災が多くの人命を奪った。僅かに延焼を免れたのは神田地区だけ。最先端のご専門家(瀬尾東工大名誉教授:地震学)でも何故か分からないとのこと。インバウンドで外国旅行者は安全が確保されているホテルだけでなく、少々安全意識希薄な宿泊設備も利用する。訴訟社会からの客人では厄介なことも懸念されるだけに、地域全体で安全を確保することも考えられる。先の神田地区の謎も含め都市全体の再設計にはスパコンの長時間稼働が必要。理化研和光の「北斎」、神戸の「京」に続くインフラが必要ではなかろうか

火災で怖いのは燃焼ガス。一酸化炭素、塩化水素、シアン化合物など。パソコン、モバイルなど家電や自動車、車両、建築材、カーテン類内装材などは難燃基準に従って難燃処方がなされている。木造の家は燃えやすいというのは昔の話であり、今は製材後に巨大なオートクレーブに入れてホウ素化合物を高圧注入することで難燃性が確保されている。トーチで燃焼試験しても表面が炭化するだけで着火しない。この場合はホウ素が熱により相互ネットワークを形成するメカニズムである

プラスチックスで難燃剤を配合しなくても難燃である材料は塩ビ、PPS(ポリフェニレンサルファイド)や芳香族ポリイミド、フェノール樹脂などである。分子内にハロゲン元素か芳香族環(ベンゼン環)濃度の高いプラスチックスは基本的に難燃性がある。他のプラスチックスは必要により難燃剤を処方するが、難燃機構は幾つかある。

    炎でプラスチックスの温度が高くなると難燃剤が分解して表面に不燃ガスで被覆するメカニズム。ハロゲン(塩素、臭素など)系難燃剤であり、ポリスチレン、ABS樹脂、PBTなどの家電及び部品など広範囲商品に適用されている。

    炎で加熱されると難燃剤が分解して表面を被覆する機構は同じだがアンモニアを主成分とするガスでインツメッセント難燃剤と呼称されている。ポリプロピレン、ポリエチレンに採用されている。

    炎で加熱されると分子内にOHを多く含む無機化合物(アルミ、マグネシウムなど)から分解して結晶水を分離。これが冷却に働くことで燃焼を抑える。ポリエチレンの電線ケーブルは世田谷の火災事故から学習して、この無機化合物をケーブルに相当量配合してある。

    ~③まではプラスチックスが熱分解して発火温度に達する前に難燃剤がタイミング良く分離することがポイントで、ずれては効果がない。ここが技術者の腕のみせどころ

    これらとは別のメカニズムがある。燐を分子内に有するフォスフェート化合物である。これは加熱されるとプラスチックスから水素原子を引き抜き、引き抜かれた同士が結合することで、炭化ネットワーク(チャー)を形成し表面を被覆し、内部からの可燃性ガスをストップする。モバイル、パソコン、TV、プリンターなど家電の筐体や内部のシャーシー類に多く採用されている。少量で効果がありプラスチックスの物性への影響が小さいことも歓迎されている。プラスチックスの種類ではポリカーボネート、ポリカーボネート/ABSアロイ、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル類などである。ここで言うポリエステルはカツラ向けの人工毛である。(繊維のポリエステルは精練後に難燃剤を表面に塗布している

プラスチックスの工業用途の多くはガラス繊維、無機フィラーとの複合材料である。強度、寸法精度、耐熱、耐荷重長期変形防止などメリットが多い。だが一方、可燃性ガスがガラス繊維とプラスチックスの界面を伝って表面に出てくると燃焼し易くなる短所もある。所謂「ローソク効果」と称する。 当ブログ者の研究によると高含量ガラス繊維複合材料の難燃化に成功している。今後注目される技術であろう

難燃の評価も試験片の厚み、接炎時間、接炎回数、燃焼時間、燃え垂れの有無、発煙状態など製品別に詳細決められ実力に見合ったランク別にグレードを認可する仕組みで国際基準となっている。家電製品や航空機などは別の地域別の規格もあり、材料別、製品別にそれぞれの認定機関での承認を必要とする。また立ち入り検査もあるので品質管理は極めて重要。製造と管理を別組織にして相互監視をしている。電気自動車など新用途が出現すると、適性材料、適性難燃剤の競争が繰り広げられる。また原料の臭素など資源国政治事情も反映するだけに気が抜けない。 

無事であれば注目されない地味な研究ではある。難燃剤の選択、難燃剤と樹脂のコンパウンド、その分散、燃え垂れ防止剤、難燃評価サンプル成形、難燃評価、燃え残渣の形態・化学分析。。。気が遠くなる仕事。添加剤メーカー、材料メーカー、電線メーカーなどには入社以来難燃一筋の研究者が多く存在している。

難燃のプロでも手に負えないのは「♪あなたへの燃える火を断ち切れない、消せはしない」(大塚搏堂:めぐり逢い紡いで) 

理化研(和光)オープンキャンパス

先週土曜日(421日)はRIKEN(理化研)キャンパスオープンとあって和光市駅前から無料バスを待つ市民が長い行列。親子連れ、中高校生の団体などが解放された研究設備やセミナー聴講を楽しむ和光市あげての恒例行事。バスを利用しない場合は和光市駅から徒歩で行くのも楽しみの一つ。舗道にはH、He、Li、Be・・・周期律表の元素プレートが埋め込まれていて、辿って行くと理研に到着する仕掛けができている。ニホニウム道路と称する。途中にニホニウム発見を記念したモニュメントが当方も関係した企業の寄付により建立されてい

産業総合研究所、材料研究所と並んで国立研究所の一つである。平穏なキャンパスも、この日は若い学生・子供の流れが交錯する活気溢れる場に変貌する。木漏れ日の下や池の周辺でお弁当を拡げる風景に学生がサイエンスに興味を持って育ってくれると良いですねと案内役と話す。

最近ブームの脳科学研究棟には長い行列。一番キャンパスの遠い地区にある仁科RIBFに脚を伸ばす人も多かった。日本で初めて発見・確認された元素番号113ニホニウムの誕生現場を一目見たいのがその理由。地上2階、地下3階を貫く巨大な装置に驚く(写真注90度回転して下さい)。

自分の知っている周期律は精々4行目までであとは飛び跳び状態。自然界での発見はフランス、ドイツなど当時の化学先進国がリード。ウラン以後の超重元素は合成によるので大規模な加速器(サイクロトロン)・検出器を所有する国が占めている。米国、旧ソビエト、ドイツが競っている。日本は所有していた加速器が占領政策で東京湾に投げ捨てられるなど基礎研究するにも装置も予算もない状態からのスタート。よくぞここまでと感慨にふけるが説明員も力が入っていた。さぞ関係者全員が多くの苦労したのであろう。異なる元素の一方の原子核を1秒間に10兆個を片方の元素に当てて融合させようとしても、なかなか当たらない。100日、200日昼夜連続しても結果がでないこともあると説明されいたことが印象的。万々一の何乗かの確率で当たって融合し中性子を順次放出し崩壊して既知の元素に到達したことを確認することを数回実績をつまないと認められない気の遠くなる仕事である。

非常に高度なサイエンスを分かり易くするための工夫、簡単な模型などが容易されており、説明員の語り方も平易な言葉を使うなどキャンパスオープンに慣れている。市民からはニホニウムの発見で医療・新材料への展開はどうなりますか?と素直で直球質問があったが「分かりません」と。面白かったのは原子核を強く当ててはどうですか?との質問には、いやソフトに優しく当てるのがコツです。強いと相手が融合しないで弾き飛ばされるのでダメと。なにやら人間関係と似ていますねと笑い。成果の結論がでるのはきっと100年後。楽しみにしましょう。今後は119番に狙いを定め仁科RIBFの予算を集中させるとか期待しましょう

当方がかねてから興味をもっているのは中性子発生装置の小型化。橋梁、ビル、トンネルなど経年劣化を現在は超音波やX線の非破壊試験装置で実施しているものの、測定可能の厚みに限界がある。一方、中性子はコンクリート30cm奥の鉄筋の状態、水たまりの状態を鮮明に撮影することができる。問題は中性子発生装置と中性子を受け止める装置の小型化。2013年に大竹教授を中心とするチームは長さがおよそ10mまで小型化することに成功している。水から水素イオンを発生させ7MeVまで加速させBeに衝突させて中性子を発生させる。発生した中性子を受け止めるには鉛、炭素、高密度ポリエチレンの塊が採用されているが、それだけで20トンもある。なのでトラックに搭載して実用化するには更なる小型化と軽量化が求められる。5年経過した現在の状況は非開示研究棟で組立てをしているとのこと。建造物60年寿命問題までには間に合うことを期待している。 

理研は形式上縦割りの組織ではあるが、垣根がなく水平展開し易いダイナミック性を持っている。先端アカデミック、サイエンスの成果を民営化するDNAを昔の理研コンツエルンにみるように潜在的に持っている。この動きは今後大いに注目される。

 

 

 

人工知能と知的財産生産性

AI (人工知能)やロボットが発達すると製造現場やスーパーのレジ打ちに限らず、会社の意思決定者も合理化の対象になることが言われている。 第一の意思決定者はGMであるが、名前の通り事業に関連したゼネラル的事案に精通し、拡大・縮小の決定を経営者に上申する立ち場である。経験や部下の集めてきた情報を基に判断することだけでは不安。そこで上司が納得するネームバリューのある調査会社を活用することがある。横文字の認知されている会社がよく採用されている。調査会社が万能かといえば、調査できる対象者・ネットワークは限定されている。ある調査会社から教えて欲しいと依頼があり、雑談的に対応したことがある。後日、ある企業を訪問したとき「〇〇調査報告によると、あなたと同じような意見がありました。なるほどと納得しました。」と。顔は平然のフリをしたが、腹筋は笑いを抑えるのに震えていた。この会社を笑えないなぁ。当方の会社も横文字というフィルターに弱いと

AI時代ではこのような管理職、役員は失職する。ネットでは抽出できない生の声を自分で集め、信用できるか否かを判断できる能力があり、初めてユーザーの心を反映した方針を立てられるのではないだろうか。偉そうに言っても小生の検索入り口の一つはネット。先日セルロースナノファイバーのある機能をネットで検索した。アウトプット順番4位にあったのがコスモサイン合同会社の自分のブログ(笑)。 

さて、物づくりに重要なのは知的財産である。「だよね~」の商標登録などはAIを使えば、天文学的組み合わせで商標候補がアウトプットされ出願はできるだろうが、生産とはほど遠い位置に有る。防衛か嫌がらせである。AIは補助者であっても主役に決してなれないのが発明。ディープラーニングが進んで過去の整理は得意でも新規技術開発はできない。過去の特許・技術から「容易に類推できる発明もどき」はできても、それは発明特許の要件を満たしていないので直ちに特許庁から拒絶される。

工業的価値のある材料・成形法などは発明出願日から実用新案10年、特許20年と長く保護されている。特許に抵触した場合は損害賠償責任を負わされる。出願にあたり先行技術との差別・新規性、有用性など明確に記載し審査を受け合格すれば登録となる。出願はPCT(国際特許協力条項)を利用するケースが増加してきた。一旦PCTに出願し、状況見合いで各国移行する手順である。予備調査は日本特許庁が担当するので日本語出願できるのも有りがたい。アジア地区の各国特許機関は日本の特許調査・審査を高く信用しているので登録できる確度が高い。問題は欧州である。EU統合に伴い特許制度も変わるものと思いきや、「会議は踊る本場」だけに一向に決まらず、各国個別出願を余儀なくされる。これでは出願費用が問題で、次第に敬遠しつつある。EUにとっての物づくり・発明拠点が今後、色あせていくことであろう。米国がTPP参加した場合の知的財産の有効性は強くなると予想されるだけにEUも変わらざるを得ないと予想する。

では知的財産の生産性はどうかと問われると、これに対する答えがない

    研究開発者の側に特許明細書専門家が常駐して、実験結果が出たら出願準備

    研究開発者が先行文献調査、明細書も自分で作成し、仕上げを専門家に委任する

    弁理士事務所にA4一枚程度で要旨を説明し、作成~出願まで委託する

生産数では①が多い。実験の途中で明細書担当から比較例を増やして下さいなど注文がはいり完成度が高くなる。一方、技術の真意が伝えられず隔靴掻痒的文書になることもある。

    は研究開発者の負担が大きいことと、明細書作成になれていないので出願よりノウハウにしておこうなどの心理が働く。 しかし研究開発者の実力は確実に付く

③は資金に余裕があるか、社内に適任者いないので逼迫しているのかどちらか。

トータルで考えると研究開発者が明細書を書くことが好ましい。実験計画を立案するときから効率的である。但し、出願15件程度までは巧拙や成立成績を問わないことがポイント。徐々に特許出願のコツがつかめてくる。この時の上司は育成サポーターとして面倒をみることが重要である。いずれ世界のフィールドで大活躍することを期待して。

経糸・緯糸

中島みゆきの糸は結婚式披露宴での定番曲である。「♪なぜ めぐり逢うのかを私たちは なにも知らない。いつめぐり逢うのかを 私たちは いつも知らない。縦の糸はあなた 横の糸は私。織りなす布は いつか誰かを 暖めうるのかも知れない。」

意味するところは深く誰でもその通りだなぁと共感する。但し、ただ一つを除いて。それは「縦の糸、横の糸」である。技術屋としては「経の糸、緯の糸」と書いて欲しかった。シンガーソングライターは理解される言葉を使わざるを得ないことは分かっていても、歌がこのクダリになると違和感を感ずる。経緯の発音は同じ「たて、よこ」で地球儀の経線、緯度だと言えば分かる人が多かろう。

一番簡単な織りは平織りで経糸と緯糸が直交する形でシッカリした生地ができる。多少緩みが欲しいときは綾織りなど数十種類の織りパターンがある。日本のお家芸であった織物は特殊な事例を除いて中国を始め開発国にシフトしている。その結果 生地の多くはポリエステル製となった。

その理由は経糸にどの繊維を選択するかによって生産性が高く安価にできるかにある。経糸は原糸に撚りを掛けて繊維を束(撚糸)にして強度を高め、撚糸の束を捌いて(整経)必要なら糊付けを施す。これを織機の筬(おさ)に一本一本はめ込む、3~5本纏めて通すこともある。経糸の本数は織物サイズによるが何千本・何万本もある。この作業は半日から1日掛かりであることから、織機稼働中に一本でも切れたら生地はお釈迦で最初からやり直しとなる。そこで選択される経糸は切断し難い合成繊維で汎用ポリエステルが最も利用されている。ナイロンもあるが、湿度によって経糸の張力でクリープするので敬遠される。ナイロンのもっている特性はポリエステルファイバーの断面形状を工夫することで対応しているのが実態である。

合成繊維なれば糊付けが不要。緯糸はどのような糸でも適用することが出来る。コットン、麻(ラミー)で肌触り対応商品など。緯糸の送り速度は1秒間に10~20本と超高速(ウオータージェット方式)なので、現場の織機を見学してもサッパリ分からない。原糸・撚糸・整経 糊付けなど経て糸の自動装置は関東であれば東京都立産業技術センター多摩(西立川)で見学することができる。その他福井・愛知三河の工業技術センターでも各種織機を見学でき、一部研修することが可能なのでお試し下さい

さて、冬には暖かな肌着が定着している。どんな仕組みだろうか。メーカーは開示していないが生地に肌からの水分を吸着するときに発生する凝集熱(気体が液体に変化する際の運動エネルギーの差)によるものと推定されている。高い吸湿性材料繊維にはレーヨンや高い吸湿性を付与されたアクリレート系繊維が利用されている。吸湿した水分を肌着の外に追い出し、熱が長時間持続できるための織りパターンや他繊維との混紡など工夫がなされているのではと推測される。夏の肌着は肌と接触する層は高い吸汗性、中間層に汗を周囲に移動させる拡散層、外側に汗を速く蒸発させる蒸散層の多層構造など素材・織りパターンを組み合わせた商品が開発されている。

この多層構造をみていると人工歯の構造を多層構造にするとどのようなことになるのであろうか、コア層(歯床接触層)は噛合い圧力センサーとして神経への伝達層となり、その外側が弾性変形ループ復元性層、そして最外層が適度な硬度と摩擦摩耗特性のある材料になるのか。歯科医、技工の方々のご専門の立ち場から想像してみるのも面白い。実用化するには3Dプリンターだろう。何年か後の論文に「要旨、経緯、緒言、本文、纏め」として掲載されるかも。その時の経緯の意味は「いきさつ」。

熱硬化樹脂リサイクル

先週のブログではポリカーボネート樹脂の光磁気ディスクのリサイクルを採り上げた。この樹脂は熱可塑性樹脂に分類され、融点を持ちそれ以上の温度では軟化・溶融するので成形時には溶融温度以上で溶融体として射出成形、中空成形、フィルム・延伸成形などで製品化することができる。ポリエチレンやポリスチレン、ポリプロピレン、ABS、PET、ポリアセタール、ポリアミド(ナイロン)から歯科外科材料になりつつあるPEEK、PKK(ポリケトンケトン)などのスーパーエンプラもこの分類に入るので基本的にはリサイクルは可能

一方、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などは熱硬化性樹脂といわれ、加熱による溶融はしない。三次元架橋体である。フェノール樹脂は日本人には黒色の電灯ソケットで松下幸之助が開発したとなっている二股ソケットをフェノールとホルムアルデヒドを縮重合したベークライトで製造したことから馴染みがある。寸法精度がよく、難燃性、耐熱性を兼ね備えていた。現在は光ファイバー接続部品や機械部品のギアを金属をフェノール樹脂が置き換りつつある。前者は寸法精度、後者は厚さが5cm以上のギアであっても内部に空洞がなく、かつ摺動性があり軽量であることが理由である。

メラミンは食器や浴室介護部品として、エポキシ樹脂はガラエポ(ガラスエポキシ積層体)として電子回路基板にはなくてはならない樹脂。不飽和ポリエステルはガラス繊維複合によりプラスチック漁船、遊具、浴槽など広範囲に利用されている。SMCもこの範疇に入る。

ウレタン樹脂は低温衝撃に優れ、水による発泡成形も可能であるところから、自動車、家具の緩衝シート、冷蔵庫の断熱材として使用量は多い。最近は熱可塑性ウレタン樹脂も相当浸透しているが、架橋の熱硬化性樹脂の割合が高い

熱硬化性樹脂は再溶融できない。従って①サーマルリサイクル(燃料)②モノマーまで化学分解 ③熱可塑性樹脂の中に充填物として配合する。3通りが「リサイクル」がある。

②のモノマーまで分解すると、素原料として利用できる。手法としては超臨界状態、亜臨界状態での分解が知られており、多くの企業が研究開発を進め、パイロットプラントを建設して検証作業を進めている。

超臨界状態は固体・液体・気体ではなく、特定の圧力・温度条件下では液体でも気体でもなく気体の活発な分子運動と液体の溶解性の両方を有する媒体となる。(図-1http://www2.scej.org/scfdiv/scf.html) 水は374℃、圧力218気圧で、炭酸ガスは31℃、73気圧で超臨界状態になる。超臨界状態で処理することで結合が切断されなど反応の場として利用することがある。分解には触媒としてKOHなどを併用することもある。

超臨界は多くの分野で利用されているが、初期のころは超臨界反応槽の材質も劣化させることから金属材質の適性化研究がなされた。もしくは若干マイルドな亜臨界条件での開発が進んでいる。だがしかしながら、製品量と処理量のバランス(コスト面を含め)がとれていないのも現実であり、サーマルリサイクルか埋め立てがメインとなっている。

 

 

ウレタンは特に冷蔵庫の断熱材として抜群である。理由は発泡性に加え、複雑形状に合わせて賦型できることにある。このウレタンをスマートにリサイクルできないか研究者が福井大学の橋本教授が2007年に提案している。ウレタンも200℃以上・高圧超臨界条件でケミカル分解すれば不純物濃度が高いモノマーを得ることは可能である。但し、橋本教授はポリオールにアセチル基を導入しウレタンを合成した場合、常温で希薄塩酸処理により純度の良好なポリオールが回収できること見いだした。

 

③の熱可塑性樹脂への配合 

一般的に普及してはいない。理由は熱硬化性樹脂は異物であって、衝撃強度を低下させる。そのため、熱可塑性樹脂には例えばガラス長繊維で十分な衝撃強度を確保でき、その中に増量剤として配合できる製品に限定される。当方が25年ほど前にポリプロピレンのパウダーを水中に分散させ、同時にガラス長繊維を共存させて混合、乳白色に混合したころを見計らって抄紙方式で脱水・乾燥・加熱プレスをして頑丈なボードを製造したことがある。ある日不飽和ポリエステル製のヘルメットを粉砕して、この系に配合したところ、機械的強度は寧ろ向上し衝撃強度も満足することが判明した。コンクリートパネル適性も合格した

これは異種材料への配合であるが、同種材料系への配合が最も品質的にも安心できる。

具体的には歯科技工模型で利用されているウレタンディスクを微粉砕し、ウレタン原料に混合し重合したところ、収縮、外観、衝撃、強度いずれもバージン原料で製造したものと同等の品質を得ることができた。ウレタンディスクは欧州を中心に歯科技工では利用されているが、国内では高価であることから普及レベルは高くないが、切削残り分はディスクの全体からすると結構な量であることから、リサイクルによるコスト低減の可能性はある。