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米国の原油とプラスチックス事情

<はじめに>

米国は国内シェールガスの生産量が増加したことで、①中東からの原油輸入に頼る地政学から距離を置き始めた②シェールガスの価格に引っ張られ原油価格はOPECが以前よりコントロール出来なくなってきた ③プラスチック原料としてシェールガスが利用され、大規模なエチレン、誘導体生産プラントの能増、新プラント建設が米国に軒並進展している。このところ強気の米国であるが、根本的に自前でエネルギー確保も原因の一つである。シェールガスについては2017.12.06ブログで触れたので参照して下さい。

今回は海ゴミ問題でプラスチックスが敬遠され新規大型プラントなどありえないとのイメージがある日本からみて、米国の事情を眺めた。

          参考)2019/1/14付日本経済新聞

3R意識>

日本ではレジ袋有料化やエコバッグ持参が進んでいる。海ゴミ問題でプラスチックへの潜在意識の流れが変わりつつある。如何にもプラスチックスは環境に悪いとのイメージが消費者の潜在意識があるようだ。このテーマについては、このブログでも取り上げたが、プラスチックはトータルのエネルギー消費、炭酸ガス発生量で計算されるLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)では決して環境に悪い材料ではない。但し、より良い方向としては、3RReuse,Recyle,Reduce)を従来よりを進めることが重要であることは言うまでもない。

環境立国先進国を自負していた欧州の国は現実はゴミを中国に輸出して、自分の目の前はクリーンだと主張していたが、中国から拒絶されると頭を抱えている状態。フィリッピンでも某国に返品する動きもあるなか、日本のリサイクル商品は消費者の分別意識、業者の徹底した選別と洗浄など工程が優れクリーンだけに中国のプラスチック加工業者からの引き合いが非常に強い。プレスチックスペレット(粒)製造のコンパウンダー業界の稼働率が100%を越えている。日本以外の国とは対象的である。日本は環境先進国などと空威張りはしないが、着実に実行している。国際スポーツ大会で敗けても観戦後に掃除をしてゴミ持ち帰る若者は世界に衝撃を与えた。環境とマナー意識の高い国柄であるとの認識が海外に浸透してきた。嬉しいことである。

<米国プラスチックスプラント能力増強>

さて、日本でのプラスチックス製造能力はここ20年は横ばいである。中国、台湾、タイ、インドでの製造能力拡大が著しいのはご存じの通り。一方、米国についてはシェールガスを生産をしているから、安価なプラスチックスを製造するのだろうと漠然と思っていたところではないかと。

その漠然イメージがクリヤーになってきた。北米でのエチレン生産や誘導体のレジ袋メイン材料の高密度ポリエチレン(HDPE)の製造能力拡張・新設計画が目白押しである。

2013~2015年までにガルフ地区でのHDPEの能力増強分90万トン/年は稼働済みであり、2017年から2021年までに能力増強するのは295万トン/年と驚異的に伸びを予定している。2025年までに更に150万トン増強と、留まるところはない。この背景にはシェールガスが関係していることは言うまでもない。

米国は従来は中東からの原油を輸入してクラッカーにてエチレンなど誘導体を製造する一方で天然ガスからのエチレンを利用してのHDPEや低密度ポリエチレン(LLDPE)を生産していたが、シェールガスの生産量が増加するにつれて、中東からの原油輸入は減少し、むしろシェールガスを輸出するとの立場は変わってきた。

それでは米国は日本の製品構成群と似たようなプラスチックス用途に向けるのだろうか疑問が出てくる。

<新増設プラントのプラスチック用途>

先のHDPE(日本ではショッピングバッグ・薄肉高強度フィルムがメイン)だが米国のそれは中空製品とパイプで圧倒的パイプ用途とのこと。鋳鉄管では錆問題と地震に弱い。継ぎ目からの漏水があるなど欠点はあったが、大口径では樹脂では出来ないものもあり、依然鋳鉄管が利用されている。大口径パイプには機械設備投資が必要であり、かつ樹脂への信頼確認が不十分であることから見送られてきたことは事実ある。信頼性試験については北海道での埋設試験が漸く2年目で、日本ではまだまだ先ではあるが、ISO規格制定の作業はおそらく今年中には終わると勝手ながら予想している。

そうなると、パイプは大型需要となること、海ゴミ問題とは無縁であることが一層進むことが予想される。

かって塩ビはダイオキシン問題やなんだかんだと非難され目の前から消えたが、パイプは国内より米国の活発な需要に支えられ信越化学の収益率は化学メーカーの中でいつもトップの位置を占めている。

これのHDPEポリエチレンバージョン。でも哀しいかな日本の石化メーカーでシェールオイルに対抗するようなコスト構成、製造規模から競争力は低い。 

パイプ加工メーカーもトップ3強を除けば、弱小で大型パイプを供給する能力がない。各家庭へ供給する細い水道パイプの製造設備はあるものの、大型パイプ製造は試作段階にある。一方、鋳鉄に限らず鉄は安価である。なので、安価な製品を価格の高い(原料及び大型投資見合いでの加工費用)プラスチックパイプで置き換えことは、疲弊している地方自治体からみると、即置き換え実行とは行かない事情がある。

プラスチックパイプは①錆ない ②漏水がない ③地震など地盤が変形しても伸びて破断することはない ④極端にいえばトラックの荷台にパイプ成形機を設置して加工しながら現場で敷設することが可能 ④製品寿命は電力ケーブルなどと同じ添加剤配合をすれば100年は持つ設計が可能 とメリットは大きい。

事故、地震などで給水できないと水のありがたさが分かるが、長期的な経済性を理解して手を打つのも予算の使い方だと思う。

アクティブシニアとキョウイク

ある大学の卒業生で会社や大学を定年後も活動している勉強会がある。大学が違う小生が招集されたのは訳があるが、いつも皆さんの活発な活動に圧倒される。3ヶ月に1回の頻度で開催されている。持ち回りで研究発表をする。2時間を超える講演もあり、活発な質疑応答が繰り広げられる。議論が熱くなると英国テイストのティータイムとなり、後半のもう一つ発表を聴く。半導体の過去と将来をわかり易く、かつ次世代デバイスを解説し展望する人。国家戦略上負けることができないコンピューター特許係争を凌いだこと。工学部出身ではあるが芸術ディレクターとして活動している人は日本と欧州の芸術文化の違いを解説。つい最近はホーキング理論について。タイムカプセルの理論解析など学生時代をいい加減に過ごしてきた身としては、難解な理論をさらりと説明する人の粋で余裕のある姿勢は輝いて見える。なかなか高いレベル。

覚悟はしていたが、ついに小生の番となった。そこで、進展が速い「3Dプリンターのよもやま話」のタイトルで基礎からメディカルへの応用などを発表。コスモサイン加藤社長と共著の歯科技工紙連載2018年1月号~5月号)からもネタを利用した。進展が速い分野だけに、次の講演を依頼されてしまった。3Dプリンターが製造世界をどのように変えるのかに皆様の関心がある。

会社の現役を退いた人もいるが微塵もそんな雰囲気はない。講演・発表のあとは恒例の飲み会。質疑の続きや、近況報告など実に明るい。ほとんどは会社経営層や大学教授職を退いているが、起業や別の機関で現役を続行しておられる。何かの仕事をしていることが元気の素なのか、元気だから仕事ができるのか?多分前者であろう。

ある会社の懇親会で「キョウイク」が話題に。「教育」ではなさそうな話の流れ、やがてこれが「今日行くところある?」の略だと判明。定年で自由の身になったものの、やるべきことも無く、行くところも無く。行くところを考えるのもシンドイの話の流れ、やれやれ。アクティブシニア層と大変な好対照だ。女性なら「キョウモイク」でしょう。

幼児教育の型、お受験の型で小中学校を選択し、それなりの高等教育の型を経て、有名な会社に入り、会社の型の中で活躍する。しかしながら、定年後は「型がない」。さて、どうしたものか? 手許には会社時代の名刺だけで、もはや関係が薄いどころか顔を出せば迷惑顔をされる。第一男のプライドが許さない。大雑把に言えば、こんなところだろう。

昨今、副業を認める会社が出つつある。同じ業種ではなく異なる世界にタッチすることで視野が広がることを期待してのことだろう。そして定年後にも活躍できるようにと。至れり尽くせりの制度?それとも給与対策なのか。ひねくれないで前者だとして足を一歩踏み出すのも有益ではなかろうか。

尚、この大学は面白い経緯があって設立されている。江戸時代の各藩では特有の陶磁器があり技術を他に漏洩すると処罰の対象であった。鍋島、伊万里、古九谷、清水などは独自の技術と商圏を確保していた。それが新政府になったとき、各藩の技術を解放し集大成すべく愛知の瀬戸・多治見にセラミックセンターを設置、大学を東京は蔵前に設置した。

なので流派が多少違う小生でも受け入れる素地があったのだろう。陶磁器は主要産品として輸出を請け負った。蔵前は東工大となって有意な人材を世に送りだしている。東急の大岡山が手狭になって長津田すずかけ台に広大なキャンパスと最新鋭の設備がある。大学開放の時に訪れるのも良い。技術の融合が根源にあるのか、工学と医学の境界を融合させて新境地を開く諸先生方がおられる。

話は飛ぶが京都・清水焼では最先端のセルロースナノファイバー利用で新境地を拓こうとしている。その京都は陶磁器技術の統合・発展に貢献している。淀川から清水坂まで燃料運搬の拠点が松風発祥の地でもあり歯科とは無縁ではない。

おまけ 冒頭のホーキング勉強会資料より抜粋。 完全なAIで人類滅亡と予言。厳しい時代になりそうだ。

床屋談義(Ⅱ)サブスクリプション

床屋談義が好きな街のスーパー経営者オヤジが今日もやってきた。

なじみの理容師Aさんに挨拶もそこそこに

(オヤジ )  

2019年はサブスクリプション」するぞ!

(A)        

エッ急に英語で言われても、オヤジさんホントに分かってんの?

(オヤジ)  

知識がない人とは話しができないね~。 年の初めになると、お偉い人が、今年は○○だというではないか、その一つがサブスクリプション。波に乗らないと置いてきぼり食うからね。

(A)     

ちょっと前はオムニチャネルが新商売の道具だと言って騒いでいたが、どうしたの?

(オヤジ)  

そうなんだ。うちの店は名前はスーパーだが、全部の商品はない。で、お取り寄せできますので、後日取りに来て下さいとお願いするんだ。それがオレ流チャネル。

(A)     

なんだ昔の本屋さんと同じで、何にも変わっていないね。今の若い人はお店に入って製品を確認する。そしてアプリで最安値のストアを探して注文。受け取る場所を帰宅途中のコンビニや自宅配送もしてくれるって話だ。ポイントカード代わりにお店のアプリで特典がつくようにして客を囲うところもあるらしいよ。

話を戻してサブスクリプションって真面目な話、なんなの? また妙な講釈を垂れるんじゃないでしょうね。

(オヤジ)         

前回は俺がいろいろ教えたのに、今回は立場が逆だなぁ。年齢には勝てないなぁ。でも「サブスクリプション」は自信ある。予約定期購買だ。美味しいかどうか分からないから味見をしてもらう。納得したら定期的に品物を買ってもらう。デパ地下では一瞬の単品販売だが、これは継続して販売できるので安定経営ができるってものだ。 年賀状ソフトを一旦気に入ったら、次の年の干支に合わせて追加料金で新バージョンが送られてくる。 ソフト更新・バージョンアップする度にDVDでスタートアップしなくてもいいし、第一最近のパソコンはDVDが外付けで面倒だから、予約購買サブスクリプションは便利だ

A     

もうカタカナ英語は良いよ。立派な日本語があるんだから。そういえば、ビックデーターなんて言うけど、以前といっても50年ほど前は富山の薬売りは、定期的に訪問しながら、補充の置き薬を販売していた。その際に家庭環境も全部把握され、縁談までしたっておばあちゃんから聞いたことがある。

(オヤジ)            

確かに富山の薬売り、伊勢神宮の神楽での御札売りなど、個別データーを利用しての農作業アシストなどしてたなぁ。この横浜駅の隣の高島が発祥の高島易団発行の暦などを謝礼に置いていったものなんだ。ビックデーターって言うけど日本古来のビジネスをベースにコンピューター、インターネットを組み合わせただけとも言えるな。そんな知恵を出すことはAIには出来そうにもない。

A     

この理容・美容業界も同じですよ。昔はアメリカ女優にあこがれてケバい化粧品を販売すれば売れたが、地道に家庭を中年女性が訪れて、お互い皺を隠すにはどうしたものかと相談しながら販売した。それが今や立派な化粧品会社になっている。 現場を知らずに事業計画立案なんて絵に描いた餅という客がいました。おんなじですね。

(オヤジ)             

ところで、年末年始はTVを見なくなったなぁ。昔は紅白でどちらが勝つかも景気を占う目安にさえなっていたが、今は見ない人も多くなった。結局はCMカットした録画かネットフリック、WOWOWなどの動画配信。自由な時間にみることができるので現代の生活にあっているんだな。俺でさえそうなんだから。

(隣の客)  

へエ~。ネットフリック知っているんだ。 ネットでは配信される音楽や画像を次から次へと聞かされ、見させられる。しだいに、考えることの重要性、書くことの重要さを忘れさせ、さらには感情の表現すら他人にコントロールされるような人間ができるような気がする。

思い出したぞ。大宅壮一がTVは一億総白痴化すると言っていた。一方、立花隆はパソコンできないと時代遅れになると。どっちも当たっているが、スパコンで管理される前に自分軸をシッカリもたないと、さまよえる生物に成り下がるような気がする。。。

この一言でシュンとなったオヤジと理容師Aさん。

その顔を見てニヤニヤしながら、話は飛躍するけど。あの大学駅伝ってどうよ。「大学」って冠がついているんだったら、途中で大学教養部の問題を解くようなコース設定もあって良いような気がするな。点数でタイム調整なんて。面白いぞ。文武両道が真のリーダーになれる。その試金石だ。

また、床屋談義に変なオヤジが加わった。悪気はなさそうだが、床屋談義だから可愛いところもある。ご容赦を。

 

 

 

歯科医の感性、クルマ設計の感性

歯科医の感覚は凄い。事例を挙げる。歯科医が歯科治療で訪れた患者の口腔をチェックする課程で、口腔癌の疑いありと診断。専門病院を紹介したところ一命を取り留めたと知人から聞いた。おそらく生針検査を歯科医がする訳がないので、患者の息や唾からの臭いが歯槽膿漏由来の口臭ではないと感じたに違いがない。最近、北九州市立大工学部の李教授が口腔癌患者と健常者の吐く息や唾からの揮発成分を分析することで、口腔癌マーカーの可能性を研究していることを知った。

この研究は実は大変な労力と根気が必要で、揮発性の僅かな成分を濃縮する装置の開発も伴うのでMEMSMicro Electro Mechanical Systems工学的知識と技量が必要とされる。歯科・医学と工学の学際での相互協力があって成立する。

まず、健常者A群でも息の中に数多くの成分VOCがある(体内の代謝経路を介し細胞から分泌され、血液を介し、呼気や唾液、尿などの体液中へ転送され、生体内の生化学的変化を反映)。癌患者C群にもVOCが存在する。その両方に共通しているB群もある。対象者から採取した唾液をゼオライト膜を通して濃縮・高感度処理をしてGC-MSガスクロマト質量分析法にてスペクトルを採取。C群だけに存在するVOCを特定している。

 

これの実用化には課題がありそうだが、糖尿病は呼気からアセトンが、肺がんは呼気からブタノールが、大腸癌は呼気からノナナールが検出されマーカーになり得るとの先行研究があることから、簡便な方法で安価にスクリーニングできることは非常に意味がる。

話が堅くなった。誰でが好きなクルマの話題でリラックス。

自動車愛好家にとって興味深いクルマが発表になった。日経記事を抜粋する。

「タジマEV1214日、東京大学で電気自動車最新テクノロジー成果発表会を開催した。そのなかで田嶋伸博会長兼社長は「環境だけでなく、走りでも安全面でも電気自動車の良さを証明したい」と述べ、6種類のEVモビリティを出していく考えを明らかにした。」

2輪後4輪のハイパーEVだ。6輪独立制御で、自社開発のモンスターバッテリーとモンスターモーターを搭載。その最高出力は2020馬力、0-100km/h1.95秒「モンスターE-ランナー コード6」全長は4850mm、全幅は2100mm、全高は1190mmで、重量は1950kg。一体価格はいくらになるのか、当方が心配することはない。当方の車庫には寸法でアウトの苦しい言い訳がある。

 しかしながら、クルマに詳しい諸氏にとって、2004年に慶應義塾の清水名誉教授が開発したクルマは車輪の数が8個、ホイールインモーターで最高速度が370km/hr超であった。クルマの名はElica 。覚えておられるだろう。

 

 この14年間に何が、どう向上したのか、製造工程が合理化されたのか、バッテリー、モーターを自社開発されたのか、クルマを買えないが興味はある。先のブログでEVやハイブリッドの特徴は低速時の高トルクで立ち上がりが速いとは書いたが2秒を切るとは凄い。モンスターを人間のスキルで制御するには無理がありそうだ。安全を謳うからには、そこには配慮されている筈と想像する。

筆者がこの発表でこれ良いなぁと感心したのは車椅子である。不幸にして歩行に障害がある人が外界と自由に交流できるツールとして車椅子は必要である。しかしながら電車に乗るには駅員の方の補助板の助けを借りる。これが無ければ、もっと自由に動けるはずだと。

当方では車椅子を開発している業者、大学関係者にはキャタピラ内臓の車椅子を開発して貰えないですか?と依頼していた。今般の仕様の詳細が不明ではあるものの、コンセプトが活かされることを期待している。それには軽量にしてパワフルなモーターとバッテリーが必要。田嶋EVが可能になれば障害をお持ちの方には福音となる。また海外からインバウンドの人に対しても人に優しいテクノロジーを見せることもできる。これが技術者の感性だ。

原電とそよ風発電

東北大学が12月12日にリリースした内容はインパクトがあった。 「福島原発事故後に周辺地区で捕獲された野生猿の血液・骨髄細胞の結果―血液・骨髄細胞数が内部被曝線量と逆相関を示す。」逆相関とは被曝量が増えると血液・骨髄細胞数が減少。捕獲した猿の生活地域別、個体別の区分けを慎重に実施し対象となる猿を95匹抽出。「内部被曝線量が最小1.9μG/日~最大219μGy/日)中央値が76μGy/日だった。その結果、末梢血液中の白血球と血小板数、骨髄中でこれらの血球の元となる骨髄系細胞と巨核球が内部被曝線量と逆相関にある」と発表した。なにより図のように血液中の核の数とサイズの変化に驚かざるを得ない。猿の動きや外観からは健康状態に異常を認められないとしつつも、低被爆線量であっても長期間浴びた場合の生物への影響を解析する上で貴重な研究報告。

しかしながら研究チームは低線量を常時浴びているイラン・ラムサールでは平均10mGy/年被爆の環境下でも顕著な放射線影響は報告されていないことから、馴化や適応もあり複雑であるとして慎重な研究継続をするとのこと。研究者の姿勢として凄く立派である。

科学に謙虚に真正面から向き合うことが人類・成獣・植物、大きくは環境に対して必要であることを改めて認識した。原子力発電は科学に基づいて稼働している。ただ、周辺インフラ整備には科学を軽視してコストを重視をした。科学的根拠に基づく勧告に従って津波対策・非常用電源など措置を採っておれば、これほどの結果にならなかった。科学に依存する一方で科学を無視した。言っても聞かない東電経営者連中にはお天道様が差配したのかも知れないが多くの尊い命を失い、日本中を混乱させた。村の鎮守の場所は過去津波の被害がない場所に建立されていることを、誰か一人でも関心があり、何故だろうと考え行動していればと悔やまれる。日本特有の組織の同調圧力とか空気もあるかも知れないが、経営者のトップの仕事は同調空気を作らない風通しの良い組織をつくることにある。

あれは原電の話。もう過去の話。。。と片付けるには貴重すぎる結果。これから些細なことでも人間にとって健康・快適なテーマに結びつけるために、何があり、どうすれば良いかの5W2Hを考えるのは意味がある。歯科関連において線量が圧倒的に低いコーンビームCTによる歯列顎形状の特定技術の開発、海外を飛び回るビジネスマンの飛行中被爆する線量対策としての航空機材料の開発などが挙げられる。

 週末になってポーランドで開催されていたCOP24の報道があった。京都議定書、パリ協定と名前は浸透。先進国のみ実施の京都議定書から、途上国も取り組むと変遷。CO2削減を産業革命時点+2℃以内(1.5℃以内がゴール)。詳細がこれから明らかになるので、論評は差し控えるが素人の直感では(自国ファースト政治などもあり)相当厳しいと想像する。

今後迎えるMaaS (Mobility as a service)や5G世代社会を支えるのは電力。その発電を脱炭素で賄えるのか。太陽光、風力など供給量変動の大きい自然エネルギー利用に対して火力、原電がベースロードとしてミックス構成を変える必要がある。北海道地震による長期停電、ソフトバンクの通信トラブルのようなことが電力において発生したら国は持たない。つい最近、京成線内の夜間電気工事の遅れで、接続している翌朝の京急は運休や部分運行と混乱。僅かな時間でも電力が停止するととんでもない混乱を招く。大きい技術開発は政府・公的機関・民間企業にお任せして大いにお手並み拝見をしよう。

 ただ個人レベルでも意識を持ってそよ風程度だが環境への試みをするのもありか。ポリシリコン価格暴落で太陽光発電メーカーが不振になったり、電力買い取り制度問題で個人的にも影響をうけている太陽光発電。投資コストが少なく発電が確保できる風力に着目。(最も効率が良いのは地熱発電だが観光産業との兼ね合いで進展していない。) 約10年前に仲間で日曜に集まって「そよ風風力発電」を合い言葉に風力発電用ローター(羽)の形状検討をした。ローターは剛直な紙を折り紙で製作した。出力には換気扇を利用して起電力を測定した。手先の器用な人、電気に精通している人、デザインが得意な人、発想が人とは違う人の四人が集まった。ローターの回る周速と発電量の関係はローターのデザインに依存する。理論値があり、当時の市販されているローターは得意領域の風速に合わせて製品化されていた。そよ風領域はなかった。

会議室を日曜限定の臨時工作室に転用していろんなデザインのローターを折り紙でトライする内に次第に風洞実験で確認価値がありそうだとの運びとなり、風力発電で有名な足利工大でテストをした。その結果、ローターの回転(周速)と発電量の理論値ラインに乗ることが分かった。(ループウイン社公開の発電効率の図上にプロットした)

ビル風は勿論、人が通り過ぎる時の風でも発電する。この10年の間に風力発電から撤退した企業がある一方で羽を巨大化して海洋風力発電に力を入れる企業と2極化している。当時の折り紙形状のアイデアを製造するには厄介な点があったが、現在、当方も関係する3Dプリンターを利用すれば可能だと考える。 原電と規模では比べものにはならないが、そよ風発電が大きな風を起こす時がくることを。

労働人口(定年延長・海外労働者・AI)三つ巴

事件や事故で被害者の年齢と職業を報道するたびに例えば「○○さん。75歳。無職」と紹介される。マニュアルに名前・年齢・職業を言うことが決められているにしても「無職」がなんとなくマイナスイメージを醸し出すのは如何なるものかと都度思う。75歳でも仕事に従事していないといけないのか?と。 しかしながら、それが冗談ではなくなるかも知れない。政府は企業に定年延長を指導し、年金支給開始を70歳からに設定すれば30万円/月給付するとの構想を発表している。65歳以後も健康で「職業」に就くことができる人は限られている。皮肉的だが、会社の空気を読んで仕事に邁進し成果を上げた人ほど、社内外の付き合い、空気抜きとして酒は必需品だ。 

仕事ができる人ほど定年前から種々の病気を潜在的に抱える人がいる。会社の健康診断で全く問題ないと発言をしようものなら「仕事していないからネ。」と陰口。高度成長時代は特にそうだった。仕事ができたが健康を害している層。健康ではあるが仕事ができない層。いずれも70歳を迎えるには厳しい。 

話は飛躍するが酒党には辛口のデーターがある。アルコール摂取積分値が120kg(人により200kg)に達したらいろいろな疾病がでるとの報告がある。これを200ccの罐として換算するとビール 10,000  ワイン4,800 日本酒 4,000罐 。 連続飲酒で蓄積した場合の数字なので、蓄積しないように休肝日が必要だが、それにしても少ない量で発症の危険があるということ。閾値に達したら発症する花粉症と同じと考えれば納得がいく。

話を戻して労働者人口問題へ。政府の年金給付70歳開始構想を批判するのは簡単だ。国の立場からすれば年金バランス解消もあるが、なによりも労働人口の減少対策が重要と考えているだろう。65歳以上も貴重な労働者として働いて下さい。それが国の衰退を決めるとして協力要請している。

人口の増減と国の経済力は強い相関関係があり、特に高齢者1人を何人の若者で支えるかの比率が低下すると国は衰退する。日本に限らず中国も同じ。飛ぶ鳥落とす勢いの中国は人口減少による経済停滞の危惧、社会不安対策もあり一人っ子政策を廃止した。効果がでるのは20年後。それまで民間債務残高29兆ドルもの借金漬けバブルが弾ける危険がある。すでに始まっているとの情報もある。

労働人口対策としてロボットやAIが補完するから大丈夫との見方があるものの20XX年まで待てる体力のある企業と、待てないで労働者不足倒産の危機に瀕する企業もある。海外労働者入管法改正法案が国会を通過した。具体的細目は省令で決定するとのことなので、白紙投票しろとの野党の抗議は分からないでもないが、それなら政権時代に統治システムを変更すれば良かったが、しなかった。

今回の海外労働者入管法で対象となる職種でロボットやAIでは代替可能なものか、独断と偏見で考えてみた。 入管法では14業種が対象となっている。

*外国人技能実習制度(技能検定試験に合格で3年の在留資格)

*特定技能1号(最長5年滞在可能だが家族帯同は不可)

*特定技能2号(追加予定 条件では永住可能)

ここで、AI や IOT、ロボット化など開発が進むロードマップを読んで滞在期間を決めているのでは?と推測する。

現在の代替率0%の業種であっても開発が進めば割合が50%まで削減できるならば労働人口問題は一つのソリューションを得る。逆に言えばイノベーションのネタでもある。

【介護職】介護パワースーツなど補助装置、リハビリ自動化、新モニタリング装置で介護負担の軽減

【農業】除草剤頒布の頻度を少なくする除草剤及びドローン利用による農作物管理から出荷検査など

【ビルクリーニング】 クリーニングする必要のない表面コート剤の開発。光触媒の進化とコート剤の自己組織化による表面ナノ凹凸撥水防汚材料

【自動車整備】 外板修理程度しかするアイテムがないほど電子化が進み、整備自体が縮小するだろう。補修部品を自動車販売店傘下かタイアップしている3Dプリンターで製造

【宿泊業】 ハウステンボスの事例のように受付フロント業務はロボットが置き換え、客の車管理もAIが請け負う。お客様が外出時にクルマ手配をスマートにこなしていた優秀なドアマンも顔認証とリンクしてクルマが立体駐車場から自動搬送されてくる。

【産業機械製造】多軸CAM、3Dプリンターで現在の金属加工業から変化する

人口減少、高齢化社会のモデルケースとして日本は注目されている。一方、ドイツ、フランスでの外国労働者による就職機会が奪われている社会問題は深刻さを深めている。 注目されると組織を挙げて対応する日本の企業・社会文化。ここは全体の空気を読んで活躍できる特にシニア層に期待しましょう。

FCV,EV ,MaaS

何十年前の雪国での風景として、石油ストーブの周りに保護柵があり、洗濯物を置いていた。湿度調整も兼ねていたのだろう。でも洗濯・乾燥するたびに徐々に変色していく。何故か。それは灯油の燃焼から発生している窒素酸化物が原因である。繊維や染料と反応して褐色気味の着色物質が生成するのである。これを業界では「ピンキング」という。

日本で製造している樹脂・繊維製品は添加剤配合なども洗練されており、ピンキングや黄変が発生しないが諸外国で生産される材料では対処されていないことが多い。製品が輸入されてピンキングが指摘されることがある。そのとき思い浮かぶのが冒頭の石油ストーブ。倉庫内のフォークリフトは?と聞くとエンジンでアタリ!日本ではFCV駆動フォークリフトが浸透している。倉庫のような閉ざされて空間でエンジン動力源のフォークリフトが走り回ることで発生する窒素酸化物が貯蔵製品を徐々に汚染させている。

日本は特に食品関係の倉庫では匂い問題もありFCVがパワートレイン。EVでは充電時間が長いが水素供給時間は3分程度と短い。域内走行なので供給装置問題もない。水素タンク耐圧は35MPa(350気圧)と低いこともあり普及している。

 これが自動車適用となると適用車種はトヨタ、ホンダに限られ、ベンツも時々アドバルーンを上げてはいるが、EVとは比較にならない普及度。メリットは走行距離、水素燃料チャージ時間はあるが、未解決課題も山積している。材料では水素燃料電池の触媒(白金)代替の開発、水素タンクの合理的製造法の開発などがある。タンク圧力は70MPaと高く、金属製では水素腐食で使えないので内側は高密度ポリエチンタンク、外側を炭素繊維で何重にも巻く構造となっている。バウムクーヘンのように真ん中の空洞の部分は見かけタンク大きさよりかなり小さい。 ちなみにプロパンガスタンクは2MPaで高張力鋼板の溶接。

炭素繊維製造は日本の得意技術である。だが、、、、材料メーカーのテリトリーではないこと、またクライアント先との競業避止もあって下流の製品化はしない。下流は中小企業が多い。これを突破する製品化技術が必要。樹脂タンクの層構成、炭素繊維巻く機械(口部などの巻き方など工夫が必要)の開発などが挙げられる。

インフラでは誰でも指摘している水素ステーション設置数が少ない、ステーション設備・維持管理費用が高いなど悲観的な事例を挙げる人が多い。FCV走行距離が650kmで多くは日帰りには問題がないが、どっこいEV車が当初の170kmから400kmまで改良が進んできたこともあり、FCVの走行距離だけではメリット幅が狭くなった。

Well to Wheel(油田から車輪)までのエネルギーロスが多いのも指摘されている。EVが効率が良いとも。でもEVは電力が存在しての話。原電は削減、化石発電も抑制され太陽光、風力など変動電力に対して水素は発電量調整バッファーの役目があるとしたら水素社会とEVは共存すると考えるのが自然ではないかと思う。

FCVもEVでも低速時のトルクが高い特性がある。トヨタがハイブリッド車を開発した動機はなんと0→100の立ち上がり速度であって、スポーツ感が味わえることを目的とした。それはモーターの低速時の高トルクにある。エンジンでは速度と共にトルクが高くなり、低速は苦手である。 で、イラチなドライバーはEVステーションで待つことができない性格だろうと思う。そんなユーザーにはFCVが適しているかも知れない。(ステーション問題がクリヤーになったら)。

 パワートレインの将来はどうのこうのとの講演や記事は多い。その多くは2030~2050年頃には。。。の前提付きながら、現在の状況範囲内で述べている。技術の進歩状況を外部からは見えないからである。トヨタやホンダがHEVやPHEVを独占しているのは鉄壁な知的財産であり、財産蓄積中は当然のことながら外部には発表しない。(注:FCV仲間を増やすため公開特許の利用を許可している。但し、もの作りにはノウハウや技量が必要でこれは各社公開はしない)

トヨタの次年度の組織変更が発表された。FCVは残っている。これの意味するところは何なのか。想像を逞しくするのもありだと思う。クルマを含むインフラ全体も視野に入れていく中でFCVEV,エンジンなどパワートレインの座席が決まる。その答えが徐々に表面化してきた。

 トヨタがソフトバンクと組んだMONET TechnologiesMaaS(Mobility as a Service サービスとしての移動体) の動向がパワートレインを左右しそうだ。アプリからあらゆる交通手段の最適化による利用が可能で決済も行われる。Suicaも存在するかどうか瀬戸際になるかもしれない。台湾に出張した家族がウーバーを利用したが非常に便利で驚いたと話している。また横浜みなとみらいを中心とした観光地域ではアプリからバスを呼び出す実験が行われている。徐々にMaaSに向かって動いている。

大阪万博 イノベーションの実践

2025年の大阪万博が決定。「医療・健康が中心のテーマ」と聞く。競合した国・都市に比べてこのテーマでは数歩リードしていたこともあり、票田の多い国々では国境のない医師団をはじめボランティア皆様の日頃の活躍が功を奏したと思う。

思えば前回の万博では趣向をこらしたパビリオン前の長い行列、アポロ11号の「月の石」と明るい話題の中、山田洋次「家族」が九州炭鉱閉山に伴い北海道へ移住する途中で万博を見学する風景がおりこまれ、表裏の時代性を浮かびあがらせた。笠智衆さんの運命に流されていく演技は秀逸だった。石炭産業から石油にエネルギー転換していた1970年。その3年後に石油ショックや環境汚染問題など時間軸でズームアップしてみると当時の大阪万博が屈折点だったかも知れない。「人類の進歩と調和」 パビリオン間移動の小型バスはEV車だった。それが50年後では公道を走行している。技術は調和しつつ進歩した。政治面での人類に進歩をもたらしたかは疑問だが。

では今回はどうだろう。医療・健康はテーマとして悪くない。長寿社会を謳わなかったには開発国への配慮があったとのことではあるが人類共通のテーマである。

iPS細胞の範囲拡大、AIによるビッグデーターからの診断能力の向上、CT,MRI,PET、超音波診断に加えトモグラフCT(3次元動的CT)などが拡充されることが期待できる。量子コンピューターによる分子設計での創薬やコンピューター内での治験などを想像するだけでエキサイテイングになってくる。歯科についても口腔内施術のロボット化が予想され(一部着手している大学がある)。ナノテクが更に進化した機能を発現するだろう。

一方で、技術の進化と生命倫理問題は隣り合わせにある。 このブログがアップされるタイミングではWOWOWドラマ「パンドラ AI診断」は継続中なので結末は置くとして

毎日発表される膨大な論文から診断され手術したところ、失敗したとあって係争。診断は正しいのか、その診断に誰が責任を負うのか、果たして診断は正しいが手術の過程で見落としていたのかなど、今後あり得るケースを取り上げている。実に面白い。 一昨日政府はAIを利用する際の責任問題について7原則を近々まとめると発表した。AIの責任は利用する企業・利用者にあるとの案である。AIがブラックボックスでは社会の混乱が予想されるのだろう。 

前日まで健康に良いと言われていた食品が、ある文献では逆だとの報告があれば、論文査読者の資格、過去の実績なども含めてのAIに取り込んでの判断になる。言うは易く実行には気が遠くなる作業工程が必要だ。時間はかかる。でも現場の医者が毎日治療しながら膨大な論文に目を通すことはもはや無理。技術は初期の段階では受け入れられないのは過去累々。最近の事例ではホンダがジェットのエンジンを翼の上に乗せた。ほとんどの技術者は嘲笑した。でも実績を積むと認めた。AIは過去帳の整理には適しているだろうが、クリエイティブは苦手なのだろう。

 更に9月のHealth Day Reportには「つい先延ばしに関与する脳領域」が掲載されたいた。

なんでも扁桃体の領域と行動に移す脳領域の距離が離れていると行動を先延ばしになるらしい。この距離はMRIで測定することが可能。これが本当なら、生まれる前からの診断や入社試験でのMRI測定が別の名目で実施されるとしたら、人権はもとより本人の努力など無視することになりはしないか杞憂かも知れないが気になる。

今回の大阪万博誘致に関係者の足並みが揃わなかったとのこと。安部首相のGo!のかけ声で途端にやる気になったとある。勿論経済面が誘致問題の足かせにはなっていた。でも医療・健康の新技術・新社会イノベーションから得られる収益と何もしないで出血による大きな政府のままでいる経営とどちらが有利であるか計算ができなかったようだ。このブログでも記載したが機会損失は後からは「あとの祭り」

経営者集団でさえ、このようだから、SNSの反響をみると約70%が否定的で、相変わらずのハコ物行政、サンクコストが問題だ、、、、など過去の事例踏襲コメントが多い。バブル崩壊の足音が聞こえてきた東京万博構想は今思い出してもテーマが何だったか分からない。開催動機がお台場の土地活用副都心計画だったので反対の声には頷けるところがある。 

横浜は市政100年を記念してミニ万博をみなとみらい地区振興目的で開催した。動く歩道は今でも活躍しているが、リニア車両が実際に走行したことを知っている人はほとんどいない。都会での万博とあって盛況ではあったが、テーマ力がなかったので、その後の開港150年記念事業は惨敗した。開港記念の時に羽田空港とのアクセスなど都市デザインをしていればもっと世界のヨコハマになっていたと想像する。

 愛知万博のテーマは「デザイン」だった。このネーミングはダサい日本製品を洗練されたデザインに転換するための刺激策だと受け止める人が多かったと思う。しかしながら結果は単なる外観の形状、色彩にとどまらず、「機能設計=機能デザイン」として多くの工業製品が開発されたことは、あとあとになって気がつく。

 2025年がAI実践の年だとしたら、エネルギーの化石燃料依存は限りなくゼロに近くなり、従来型の貨幣は姿を消し、銀行は形を変え、右から左のモノや情報を取り扱う商社も姿を代えざるを得ない。そんな時代の「医療・健康とは」を考え、さすれば積極的に参加する姿勢を持つことが精神的には必要だろう。

ロボットが稼ぐベーシックインカムで生きる意味を問われるのは精神的に辛い。一方で別の文化が発達する可能性もある。それもイノベーション実践の副産物。それならそれも良いだろう。

レジ袋 床屋談義(庶民の視線)

床屋談義といえば江戸時代のノンビリした風景を想像する。江戸は地名に水道橋があるように上下水道あり、リサイクルも進んでおり環境に配慮していた巨大都市だったと聞く。 床屋が今は理容店か美容院。最近は環境問題がとかく話題になることがある。こんなことは日本だからだと思う。かの国とは大変な違いだ。環境省は海マイクロプラスチックス問題からレジ袋廃止か有料化を計画している。しかしいろんなお客様との床屋談義で情報をもっている理容師さんと客のやりとりは一般庶民の見方ではあるが傾聴に値することがある。

 

理容師

「ウミガメの鼻にストローが刺さった程度でレジ袋云々は大げさではないか?」

「レジ袋はゴミ袋としても利用しているし、レジ袋そのものを海洋投棄はしない」

「確かに、ストロー(ポリプロピレン)やレジ袋(ポリエチレン)の比重は0.9000.95 で水より軽く、海では浮くので目立つことはありますね」。 

 「レジ袋やゴミ袋はポリエチレンで焼却用の燃料として役立っている。水物が多い食品廃棄物では燃焼温度が上がらずダイオキシン発生の原因になる。なのでプラゴミを配合して燃焼温度を制御している。」 ダイオキシンの方がよほど問題。日本の焼却炉は技術レベルも管理能力も世界トップだからできるのだけど。

理容師

「でもレジ袋を止めたらどうなるのですか?」

「石油化学は原油を分解してナフサとガソリンを作る。ナフサは炭素数で2(エチレン)、3(プロピレン),4(ブタン),それ以上と芳香族、ピッチ残渣」に分類される。この割合は基本変えられない」 なので、炭素数2(エチレン)の量が少なくなると全体のナフサの生産量を削減することになる。」

理容師

「長い説明を聞いてもピンと来ないが、何か生活に困ることがありますか?」

「炭素数2はポリエチ以外に洗剤、容器、化粧品、パイプ、電線、通信ケーブルなどに、炭素数3は自動車内外装で軽量化に貢献、炭素数4はタイヤ原料、芳香族はポリエステル繊維や電子機器、基板、製薬の原料、ピッチ残渣は道路など、要するに身の回りからインフラまで深く関係しているので、ナフサ生産を抑えると、プラント稼働率が低下して製造価格が上昇する」

「女性活用に伴い食品もデリカテッサンの利用と食品包装も対応している。これとの折り合いはどうするのか、この視点も重要。それに農業・酪農への影響もある。」

「原油の量を削減しないとなると、ナフサと同じ成分のガソリン生産を上げ、EV車よりガソリン車を後押しすることになる。まして原油輸入大国の中国が輸出に回っていて石油化学は混沌とするだろうね」 

理容師

「それって大変な問題でないですか。環境省のお役人に教える省庁がないのですか?」

「経産省及び傘下のエネルギー庁、農水省及び民間の経団連や労組も声を上げるべきなんでしょうね。大学もこんな時は知能を集約しての提案があってもよいのかも」

理容師

「よ~く分かりました。なんとなくオカシイとは思っていた」

「でも民間は環境にシビアですよ。50年前まで船にへばりつくフジツボが船の燃費を悪化するとして鉛配合の塗料を使用していたが、貝毒の原因となるので鉛を含まないフジツボ付着防止塗料を開発した。またポリエチレンの袋も厚みが20~30ミクロンあったのを成形法を開発してレジ袋だと6ミクロンで重い品物にも耐えるようにした。気がつかないところで、頑張っている」

理容師

「それに日本人は廃棄問題の意識が高いですからね。輸出すべきは教育・マナーなど急がば回れでしょうかね。」

「なかなか良いこと言うね。ところで薄い頭髪ではカットする髪がないので、料金もカットできない?」

理容師

「それはマナー違反です!」(笑)

「この問題のきっかけになったストロー問題。紙製に切り替えたら、風味が紙っぽくなるのでサッサと飲むのがお勧めのようですよ。お店の回転率アップ狙いだとしたら大した知恵者だ」

理容師

「床屋談義だからといってテキトーなことを言っちゃダメですよ」

「でもボケーッと生きているんじゃねーヨ!とんでもないことになるぞ」とチコちゃんに怒られそうですね。

「その通り、昨日の延長が明日と思わない方が良さそうですね。レジ袋は以前は中国で生産していたが、人件費高騰もあり今はベトナムなどにシフト。レジ袋だけの集中生産している現地会社もある。レジ袋販売不振となると東南アジアは中国不景気+環境でのしわ寄せと大変なことになるね。日本にとっては小さなことも、影響を受ける国や人々がいることは忘れてはいけないね。チコちゃんに怒られないように。」

3Dプリンター、繊維興隆と今・アラカルト

あっ!3Dプリンターだ。これ学校にある! 和光市民まつりに3Dプリンター研究会が出展したときの子供の声。へぇ~知らなかったぁ これは親の声。新旧の声が今を象徴している。ダンベルの実物と3Dプリンター製品のどちらが本物?と触らないで当てさせるクイズでは的中率は50%。外観の凹凸や光沢では判断できない。持ってみて初めて分かるところまで精巧なレベルまでできていることに感心していた。先週ブログで紹介したパラパラ漫画の立体版(ゾーエトロープ:Zoetrope)も好評で、親御さんにはパラパラというと納得していました。

写真は回転させLEDを点滅させると上から下へ水が落ちるように見える。

 

FDM方式でピカチュウの成形実演や光重合での試作品を展示するなかで、こちらから、既に世界規模では12兆円まできました。今後の物作りの世界は変わる。それを担うのは興味を示してくれた子供の将来にかかっていますと語りかけると、理解を示してくれた。さすが和光市民はレベルが違いますね~と当方は本音で相づち。和光市商工会主催のまつり土日併せて約8万人と凄い熱気。地元企業のホンダもNSXを本日に限り大幅サービス200万円値引き!として展示していました。2750万円。惜しいかな、ガレージのサイズが合わないとの理由で辞退(笑)。1日5台の生産と聞いて、それこそ3Dプリンターでの自動車生産実績を積むには好適ではないかと我田引水。樹脂のみならず金属3Dプリンターや機構部品での高速精密5軸切削装置が応用されると期待した。

喧噪な会場で3Dプリンターのブースを静かに眺めている若い人物がいた。目に何か言いたいことが一杯ありそうな雰囲気が漂ってきたので、挨拶とショート会話。これが実に有益であった。若い技術には若い視点と情熱が相乗効果を生むと当方が興奮したことは言うまでも無い。

翌日は山形大学工学部を訪問。米沢高専が源流で繊維産業発祥の一つ。帝人(旧帝国人絹)はこの米沢出身者が設立した。現在は有機EL、高分子成形など世界に誇る設備と教授陣があり産官学の推進大学として有名である。最強の蜘蛛の糸を開発したのもこの大学(鶴岡分室)で源流からの流れは今でも息づいている。

 

天然繊維の源流はコットンとシルク。このブログでも幾度も登場したが、今回は米沢の帰路、官営富岡製糸工場を見学。世界遺産に指定され俄然注目を浴び観光客は今でも絶えない。養蚕は富岡に限らず、八王子など盛んであったはずがなぜ輸出港から相当の距離にある群馬県なのか知らなかった。でも現地の地形をみると分かった。直ぐ下に河川があり、となり町の高崎観音の下には亜炭が埋蔵とあってフランス製蒸気駆動ブリュナエンジンを利用して繭からの糸繰りなどに利用できる絶好の土地柄であることを理解した。

 養蚕から繭・シルク生産は明治3年に高崎で小さな産声をあげ、次いで明治5年富岡、長野の岡谷と拡大した歴史がある。現在は世界生産量17万トン/年。中国が世界シェア80%を占め、インド、シルクロードの国が生産拠点。価格は日本品の1/3と安価である。従って、国産のシルク生産は消滅したと思っていた。岡谷は機をみるに敏で、時計など精密機器産業にシフトしたが、富岡は機械の国産化が遅れたこともあり、その後も蚕に拘り技術保存・継承運動をしつつ、地道な研究の結果DNAが操作された蚕の育成までこぎ着けた。光るシルク糸をはじめ健康食品・医薬への足がかりを作っている。現在、この技術を大々的に熊本で実証が始まっている。長野県民と群馬県民の県民性、それをならしめている風土が強く関係しているのではないかとの感想を持った。

 Dプリンターの原理を発明したのは日本人。特許を出願しながら審査請求せずに留学。それには事情があるのだろう。アメリカの風土がアイデアを成功に導いた。知恵を絞ることが産業であるイスラエルも次々と新技術を発表している。ドイツは几帳面さを発揮して精巧な3Dプリンターを製作している。それでは日本はどうするか? 心配は無用。若い人物や目を輝かせて3Dプリンターをみてくれた生徒児童が任せてくれと。