ワクチン予約顛末

本日5月26日時点ではワクチン接種開始のニュースもある一方で、特に人口の多い都市部では予約すらままならぬ状態が続いている。

5月17日から地方自治体及び防衛省の関東、関西地区でのワクチン予約が開始された。地方自治体は集団接種、個別接種枠についてはパソコン、スマホを中心に、補完的に電話での申し込みシステムとなっている。かかりつけ医院でワクチン接種可能な場合は直接申し込みすることができる。当該地区では600もの医院がリストアップされている。一見準備万端。

まずは65歳以上の人を優先して予約券が送付された。パソコン苦手の家族に変わって操作した。開始の少し前に立ち上げて待機していたところ、スムーズに申し込むことができた。拍子抜けするくらい簡単だったが、宝くじ的確率で予約がとれたに過ぎなかったと後で知ることになる。

もう一人の家族分を申し込むべく操作するとアクセスできず、待つこと3時間。漸く窓口まで辿りついた時には全候補地、全日程が×印。市役所からのLINE情報をチェックしたところ、「パソコン申し込みは既に閉鎖しています。あとは電話でと」。だが終日「話し中」。

2日目、3日目も同様で一週間。市役所相談窓口も電話がなかなか繋がらず、「電話申し込みされてもオペレーターもパソコンの画面をみて操作しています」と返答あるのみ。

一方、直接申し込みができる病院リストに従って電話した。結果はどこも「当医院に実績のある人に限定」と回答があり、“幸か不幸か病気に罹らず”かかりつけ医院を持たない人は拒絶される。病気に罹らず健康保険財政に貢献している人こそ優先して欲しいが、私的病院は経営優先なのでこれも致し方ない。

そもそも集団・個別接種の枠が少ないことが混乱の原因。医者・看護師の方々の通常の業務に加えて想定外のコロナ渦とあって、注射可能な人材が少ないことは国民は分かっている。政府は退職した看護師、歯科医、薬剤師などにお願いすることで枠拡大を企画したが、遅いと非難する声がある。政府を非難するのは簡単だ。ただ諸事、誘導時間はつきもので垂直立ち上げできるのは事前に想定して準備しているケース。防犯や国防は瞬間垂直立ち上げしないと如何にも拙い。ワクチンにはトラウマがあり、従って、当該分野への産官学への予算が圧倒的に少ない。ワクチン製造潜在能力はあるものの間に合わなかった。国民はマスク、手洗い、密回避のあたかも竹槍で世界最高水準でコロナ押さえ込みに頑張っている。

国民全体がこのような困苦の状況にあるとき、防衛省予約センターにランダムな数字を打ち込み予約を試みたマスコミがある。このブログではその是非については取り上げないが予約狂騒の中では甚だ迷惑との声がある。

暗い話題より少しでも明るい話題が好ましい。

京都はコロナ渦で宿泊客が激減。ホテル・旅館・お茶屋さんでは店を閉めるところが出ている。筆者の知り合いも長い歴史に幕を閉じますと丁寧な挨拶文が来て深刻なことを知った。ところが、京都の企業は困ったときは相身互いとして、社員をホテルに住まわせてホテルの落ち込みをカバーしている。勿論全体を浮揚させるほどではないが“気は心”。

ニューヨークの街角風景ではワクチン接種後の復活状況をみると、いずれ回復することは間違いがない。日本の経済落ち込みは-5%と発表されているが、世界では落ち込みは少ない方(上位2番)であり、シタタカな日本を実は企業は実行しているのだ。まして応仁の乱を先の大戦と言うくらいの京都には復活の起爆剤を期待している。

接種まで時間がかかるが、それまで精一杯免疫を高めて待つことにしようではないか。

QRコードの浸透(猫にマタタビ技術誌にみる))

昭和も中期のころ、病院を探しても見つからずClinicの前で倒れて逝った人が話題になったことがあった。クリニックが診療所や医院であることを知らなかった不幸な出来事だ。今では嗤う人もおられよう。だが正直なところ筆者はSDGsを書くときに戸惑うことがある。ESG(環境・社会・ガバナンス)とどう違うのか?頭の中では持続可能開発目標だから。。。と確認してからS・D・G 最後のsは何だったけ?複数形か。日本人だったらはじめから「持続可能開発目標」と言うのが伝わるといつも思う。SDGsのバッチより日本語にすると更に大きくなる!と言う人もでてこようが、逆に、意識が高い人と評価されることは間違いない。

環境展・環境省のブースではCCSのパネル。説明員がCCSですと紹介するので、思わず「日本語で言って下さい!」と言ったところ、説明員は「え~っと、ま、とにかくブースの中を見て下さい」。ときた。口あんぐりとはこのこと。経産省内では常識の言葉Carbon Dioxide Capture & Storage だが、まだ一般に浸透していない場合は正しく日本語での表記が理解されやすい。まして類似にCCUSがある。再利用のUtility が入っていることは分かるものの、普通は理解不能。へぇ、それもあるの?レベル。

それに比べると市民権を得たのがQRコード。先日、ランチにスパゲッティのお店にいった。テーブルの上には15cmX15cmのQRコード紙があるのみ。印刷したメニューがなくシンプル。スマホで読み取り注文するシステムだ。誰かが触った印刷メニューを触らなくても良いのはコロナ渦では歓迎される。お店にしてみれば、印刷メニュー作成は手間暇と費用がかかり容易には変更できない。印刷メニュー作成は、メインディッシュにサラダやスープなどを並べて撮影はしない。焦点が合わないところもあるので、個別撮影して編集で合体写真をつくる。専門業者に依頼することが多い。お店でQRコード作成すれば、食べたいものを探すという目的は達成する。

QRコードって何? を知らなくても、目的が達せられればそれでよい。

少し脇道に入る。

化学系の技術雑誌をパラパラめくっていたら、面白い記事を見つけた(現代化学4月号)タイトルは「ネコのマタタビ反応の謎を解く」である。ネコにマタタビを与えるとマタタビの上で踊ったり、陶酔する様子をマタタビ反応というのだが、何故かを過去に取り上げた目武雄氏の成果を踏まえ、西川、上野山、宮崎(各大学が連携して)化合物をさらに詳細分析し、その結果、マタタビの成分としてネベタラクトールが作用することを見つけた。作用として研究者が腕にネベタラクトールを塗った右腕と塗らない左腕を蚊がいる箱にいれて、蚊が腕に刺す度合を調べたところ、塗った腕には全く蚊は近寄らなかった、一方、塗っていない腕は10分間で7匹の蚊に刺された。このことからネコがマタタビの上でネコ踊ったり、寝転んで背中をマタタビにスリスリする理由が分かったと報告があった。

ここで、何故QRコードのシナリオにマタタビの文献を挟んできたかについて、後出しだが説明する。

雑誌文献には図6として「壁や天井にネベタラクトールを提示した時のネコの行動実験の様子」の写真がある。で、ふとみると写真の左上に「QRコードから動画をみることができる」とあるではないか。早速、スマホでアクセスした。動画は静止画より何倍もの情報を与えてくれる。理解には便利だ。

権威ある学術雑誌にQRコードが許されているのか、不勉強で知らないが、サイエンスに進もうとする若手は、動画から別のヒントを得て新技術開発へと発展する可能性があるように思われる。

動画紹介のQRコード及びネベタラクトールの分子構造を下記に示す。

46%CO2削減と現実解考察

2030年炭酸ガス46%削減を“おぼろげに浮かんできた数字”と環境大臣が発言。行政府は雇用・経済・医療・福祉などへの影響も勘案し責任ある現実解があるから言える筈だ。通常なら工程表で具体的に説明をして国民の期待と協力をお願いするところだ。

それでは現実解とは何かを考えてみたい。2030年まで時間がない。代替技術開発、建設、稼働までの工程の大日程がある。開発済みの技術でスケールアップだけが残されている場合においても、建設に最短3年、転換事業の教育訓練を含む検収1年の4年はかかる。それも全国規模でなると建設にも順番がある。前の東京オリンピック直前に新幹線が開通した。当時の十河総裁は既存技術の組み立てだけでシステムを構築した。もっとも戦前・戦中の弾丸構想があってのこと。新幹線は東京オリンピックを前に一から着手してはいない。平素の基礎開発力があり、政府の大きな後押しがあって実現する。

火力発電では

再生エネルギー(太陽光・風力発電)に環境大臣は比重を置いているようだ。但し、風力発電の巨大な羽根が居住地区では低周波振動が問題となることから海上に限定され、海上設営の本格技術開発はこれからだ。太陽光発電は日本の風景を一変する程に拡充してきた。残された土地は多くない。

もとより昼夜安定した電力を維持できない。筆者が以前紹介した余剰電力を圧縮空気として保存して小型水力電力として取り出す方法がベストだと思われる。これだと比較的簡単な土木工事ですむ。イスラエル企業は日本より欧州での実用化を急いでいる。横目で見ているときではないと思う。

水素発電は1業者がスタートした。NEDO/川崎重工/大林組、三菱パワー、J-Powerも続いているが、2050年目標なので2030年はどこまで46%削減に算入できるか見物である。普通なら責任もって算入はしない。技術検証―改良―完成までの期間に充てるのが通常だ。

水素製鉄(コークス還元代替)も三菱重工などが開発に着手している。が、2030年まで現在のプロセスを置き換えるには時間は厳しい。

原電

一方で、そこまで至る繋ぎの意味も含め原電再稼働は極めて重要である。福井県杉本知事は美浜原発再稼働を認めた。40年以上のプラント再稼働に異議を唱える声は当然だ。しかし、プラントの定期修理のレベルは非常に高いので、メンテの実態を開示でして理解を得るのが良いと思う。また、新設原電は昔の原電と異なり小型化していることで

万一の場合は大事にならないと聞いている。これが本当なら原電に関する議論を冷静にするのもありだと考える。

日本は高い厳しい規制をクリヤーし、クリヤーできなかった国、企業に差をつけてきた実績がある。上記の開発要素が多いアイテムについては、積極展開を期待する。

さて、使用する側の炭酸ガス削減・ニュートラルを自動車についてみると。

自動車ではEVは自身では確かに炭酸ガスを排出しない。FCVも実現すれば優等生と言われては巷間言われている。但し、EVは何度も言うがフォルクスワーゲンがディーゼルゲートで窮地に陥ったので、窮余策としてEVを取り上げたに過ぎない。

トヨタ自動車の豊田会長は、EVが最終ゴールではないと釘を刺している。エンジンの改良は継続しており、直接ガソリン燃焼した方が火力発電での電力利用よりは効率が良いかも知れないなら、その技術向上を継続しよう。またEVが台数でメジャーになるには時間がかかるがHEV、PHEVがそのギャップを埋めよう、そして水素も国家戦略上も重要だからFCVや水素エンジンも、、、、と多くの候補を考えて投資する必要を訴えている。

でも、可能なのはトヨタとVWグループ規模だけだと思われる。それ以外のメーカーはどれかに絞るか、または本命になったときに開発した会社のグループに参加するかの二者択一しかないのも事実あるのだろう。ホンダはカリフォルニアのマスキー法規制のときCVCCエンジンを開発した。日本車イジメが目的の一つだったが、見事にクリーンヒットでお返しをした。そのホンダがエンジンをやめてEV、FCVに絞ると発表した裏にGMと歩調を合わせる四輪車採算事情があるようだ。

以下の表は筆者が各パワートレインの特徴を纏めた。

現行エンジンも合成燃料を使用すればカーボンニュートラルは達成できる。日本の自動車産業に関わる500万人の雇用は維持できる。合成燃料はHEV,PHEVにも適用できるので高い燃費性能は維持できる。EVは電池が固体電池の開発が急がれ、かつ失業者は国内100万人と予想される対策が国と企業に求められる。水素は次期国家戦略では重要であるが、水素発電にも課題としてあるように点火し易いことからエンジンの設計がミソになる。水素タンクの容量アップも課題だ。

この表をみると、全部の候補に目配りして実行しているのはトヨタのみ。表現は悪いが競馬で全部の馬に賭けているようなものだ。自動車会社は連結子会社から提携までの組み合わせがあるが、将来はパワードライブを軸に再編されていくと容易に予想される。

 

大豆由来肉・貝養殖

先日、ランチに唐揚げカレーライスを食した。この唐揚げは大豆を原料とした人工肉なのだが、見た目は勿論、食感は変わらない。中を切り裂くと、繊維が巧みに設計されており弾力性が発現している理由が分かった。

次は大豆由来の牛肉も試して見よう。牛は胃袋が4つあり反芻による地球温暖化ガスの30%を占めるとまで言われているので、栄養素・食感・物流など問題が無ければ切り替わるであろう。この研究をやり遂げた不二製油にアッパレだ。因みに同社の特許件数を調べた。

不二製油*大豆*肉をキイワード検索すると、なんと134件もヒットした。

タイトルだけみても幅が広そうだと分かる。

霜降り状肉乃至肉、繊維状蛋白の製造法、挽肉蛋白の成形法、ブロツク肉蛋白素材、から揚げ食品 海老食感 うなぎ蒲焼き ドライフルーツ食品 生魚肉代替素材など多岐である。ランダムにピックアップした登録特許をみると

特許4070453【請求項1】植物蛋白原料と乳ホエイ蛋白原料の割合が95/5~45/55(乾燥固形重量比)である植物蛋白原料、乳ホエイ蛋白原料及び水を主成分とした原料を押出機を用いてバレル後半品温が140℃~180℃になるように加熱加圧し押出し膨化してなる肉様食品素材。
【請求項2】植物蛋白原料が大豆由来のものである請求項1記載の肉様食品素材。
特許3269519【請求項1】  大豆蛋白に50を超え90未満において蛋白質分解活性を有する酵素剤を作用させて大豆蛋白中のβ-コングリシニンを選択的に分解させて得られるβ-コングリシニン低含量大豆蛋白分解

以下省略するが、134件も特許出願するだけの技術蓄積開発力は高く評価できる。

さて、人工肉なら貝殻はどうだと発想した。ぶらタモリで長瀞・秩父が石灰が豊富な理由は珊瑚礁が地殻変動で追い出されて石灰岩の山ができたと解説していた。海は大気の炭酸ガスを吸収する。日本は海に囲まれているのだから、炭酸ガスが炭酸カルシウムの形で変化した貝殻を獲ることで、EZ水域範囲で炭酸ガス吸収量でカウントでき、かつ貝殻を粉砕しコンクリートして人工島をつくれば、やがて樹木が生えて、炭酸ガスを吸収する。国土も広がる。。一石三鳥と考えた。ホタテ料理で町興しができ、貝殻による夢の島第2弾ができるはず。現在の夢の島は緑化されている様をみると可能ではないか。 味の素がアミノ酸配合セメントで海中での昆布など餌が増殖することも発表があり、これと組み合わせると面白いと“妄想”は広がった。

ところで、日本の貝漁獲量(養殖も含め)は70万トン。貝殻量に含まれる炭酸ガスを計算すると30万トン。日本の排出炭酸ガスは12億トン。なので現在の400倍の養殖をすればよいことになる。気は確かか?と言われそうだ。

中国は貝漁獲量が137万トンと日本の2倍。大陸国家なのに、この量は恐らく内陸養殖が多いのであろう。日本は北海道のホタテで98%を占めているが、黒鮑が養殖できれば輸出にも適しているので好ましい。

現在、国は排出ガスを地下1000mの深部に圧入することを推進している。だが、そのためのエネルギーと差し引くと、案外、貝養殖の増産もトータルでは面白いのではないだろうか。貝養殖には森林・河川の整備も伴うことから農水省のみならず国土交通省など役所の横断的連携が必要だが一考して欲しいテーマではないだろうか。

 

満を持してリサイクル

小泉環境大臣がラジオ番組で満を持して“意外に知られていないが、プラスチックスの原料は石油」と発言した。それ以来ハッシュタグ付いて#意外に知られていないこと 。。。。。がSNS投稿が相次いでいる。プラスチックスにもバイオ由来のものもあり、全部が全部が石油由来でないことは、今や小学生の方が詳しく知っている。

“私的にいうなら“ の表現は嫌いだが敢えて言えば、「意外に知られていないが、衣服の多くは石油が原料である」は如何でしょうか。絹、麻、木綿ばかりでは80億の人を纏う衣服を対応できない。石油由来のポリエステルが圧倒的に利用されている。PET繊維単独もあれば、混紡のケースもある。織機の経糸はPET繊維を利用していることもあるので混紡は多い。。

で、このPET繊維も石油原料だとして有料化対象としたら、スプーンなどで環境意識を高めるよりは遙かに効果的だろうと思う。PET繊維なかりせば生活がどうなるか消費者が考えるには効果的だろう。いっそのこと、環境省はそれを打ち出してはどうかと思う。

下着もスーツ、ブラウス、コート、スポーツウエアもなくなる。天然素材の取り合いで綿確保→森林破壊、水不足→炭酸ガス吸収ゾーンの破壊。

あれ??オカシイと気がついても遅い。

この話を友人にしたところ、それは面白い! だって地球温暖化で2030年には気温40℃が珍しくないとすれば服はTシャツ、短パンでよいかも。と冗談を飛ばしてきた。座布団1枚と言いたいが、皮膚癌が増加したり、食料が無いなど不具合は予想される。

有料化の目的が“思いつき”であっても結末が問われる。このトレードオフを打破するのがリサイクルである。

使用後の回収PETボトルから洗浄して繊維にリサイクルする動きがは従来もおこなわれてきたが、さらに繊維以外にも展開するなど活発になっている。CMにも企業のSDGSイメージ戦略もあるだろう。リサイクル=下位商品とのイメージから水平リサイクルに移行しつつある。非常に歓迎される動きである。リサイクルには量的な確保がまず採算にあうかどうかの鍵となる。この面ではPETボトルはリサイクルし甲斐がある。サントリーさんがボトルtoボトルを既に実行されている。

聞いた話ではあるが、ボトルを回収する地域の特徴があるとのこと。ラベルを剥がし、キャップもとり、水洗いし、集めて定期的に出す地域のボトルもあれば、そうではない地域もあるとのこと。関西では最も意識の高い地区は宝塚だそうだ。そうでない地域の名前も教えてもらったが、地域の名誉もあるでしょうから伏せておきます。お里が知れるインジケーターは昔は箸の上げ下ろしだったが、今はPETボトルの廃棄マナーが追加された。

そんな中、まだ筆者はお目にかかっていないが、環境展で見たのが寺岡精工のPETボトル減容回収装置「ボトルスカッシュ」。

きれいなボトルを投入すると、装置の中で潰され(減容化して収容)、ポイントが付く。このポイントは何処に寄付しますか?(地域環境団体、赤十字、WWF)のパネルを押す仕組みとなっている。寄付しないでリサイクルのみを押してもよい。汚染ボトルでは回収の蓋が開かない。環境への参加意識は確かに向上するだろう。

この仕組みは意識の高い国なればこそ成立する。日本はその優等生。

マスク生活を2年以上も守っている国民性ならきっとできる。出来ないはずがない。

デジタル医療vs.ヒューマン医療介護

デジタル医療と人間味溢れる介護の両方をこの一週間に見聞きした。

まず、ビックサイトではMedtec(医療機器の製造開発展示会)が開催されデジタル医療最前線を知ることができた。このブログでは以前に取り上げた事がある。ただ、一昨年の活性度に比較すると昨年、今年のそれはコロナが研究開発にも影響しているのだろうやや低調だった。

以前より進んだと思われる例を紹介する。看護師の激務を緩和することを目的として各種センサーの発表は進化していた。例えばベッド(敷き布団)の下にピエゾセンサーをおいて、睡眠時の心拍、呼吸、自律神経活動指標(λ)、寝返りなどの体動、離床・在床の回数や時間をモニタリング。ナースコールと連携して必要のあるときに対応するシステムを提案する企業があった。この応用は病院だけでなく、クルマ運転モニター、在宅医療にも利用できる。冗談だが、会議の椅子の下の忍ばせておけば、上の空のメンバーが分かる。(笑)

上記のセンサーはあくまでもセンサーでありセンサーがアクションを執るわけではない。

対極にあるのは巧みなコミュニケーションにより、介護される人の心理を読み取り、行動を誘導することにある。 玉村氏(後述)は「人間味溢れる介護でアルツハイマーの母親が満足して旅立った」ことをラジオ放送。 今回そのコピーを入手した。ブログにするには長いので一部を割愛し紹介する。玉村咏(京都在住 染色家 艶やか・はんなりを基調に独特のグラデーションは高く評価されており、和服、超一流ホテルのタペストリーなど作品は多い。高校の同窓会で顔を合わせたのが彼を知ったのが最初。いつも華やかな女性に囲まれている、その人にこのような逸話があるとは知らなかった。

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「介護は母えの感謝ありて」 玉村咏 アトリエ攸 京都西陣

私の母は平成24年9月 88歳で亡くなりました。24歳で未亡人となって65年、よくぞ独りで姉と私を育ててくれたと改めて思っています。感謝ということを、私に教えてくれた母への御礼を込めて お話したいと思います。 母は平成11年12月8日の私の誕生日にくも膜下出血で倒れました。今、私が京都にて43年も染色家として好きな仕事をできるのは、母が産んでくれたお陰だと。自分の力でこの世に生まれてくる事ができなかったくせに恰も自らの力のように感じていた自分を恥じるようになっていきました。生まれて初めて初めて母に感謝の気持ちを抱いた時でした。恥ずかしい事ですが、それまでは母は何でも言うことを聞いてくれる女中のように思っていたのです。母への感謝の気持ちを抱いてからは、その二年後から始まるシモの世話も全く苦にならず、愛しい人の為なら何でもしてあげられると自然に思えるようになりました。このような気持ちを抱かせてくれたのも、母の病気のお陰です。もし、母が倒れなかったら 人生で最も大切な事を、私は一生気がつかなかったかも知れません。幸い手術は成功したのですが二、三年後にはアルツハイマーを発症するかも知れませんと術後先生から言われた。丁度二年後 症状が現れました。ある日の夕食後1時間経った時、何気なく聞きました「今日のお肉は美味しかったなぁ」「えー?そんなの食べたぁ?」 いつか来ると解っていたとはいえ初めての体験です。

アルツハイマーは痴呆とは違い、新しい記憶が蓄積されなくなる病気。果たしてどの位の時間で記憶がなくなるのか観察することにしました。

朝食後5分経ってから「味噌汁の具は何だった?」母の答えは正解。昼食後は5分30秒後に。これも正解。毎食後に30秒刻みで延ばし質問。その結果記憶は7~10分の間に消去されることが解りました。5分以内に話しかければ母は正常なのです。一年後、失禁がはじまりました。オムツをさせることは避けよう。ではどうする? 「おしっこないか?」「無い」。無理やりトイレにつれて行こうとすれば眉間に皺が寄ります。自然にトイレに向かわせるには、、、取り敢えず立ち上がらせる。「今日はスキヤキにしようか。冷蔵庫に肉があるか見て」の言葉に、立ち上がり「ウン、あった」。「明日、診察だから体重を計ろう」と嘘ですが言い(トイレ近くにある体重計に向かい)、、、便座に座って用を済ます工夫をしました。その間、女学校の仲良しは誰? 昔いった温泉は? オヤジの気風は良かったなぁ~など何でも良いので母の気が紛れるなら。 お風呂も面倒くさくて入りたがりません。ではどうする?「シャワーでいいか? お湯張ろうか?」「シャワーでいいわ」じゃ行こう。浴槽には既に湯が張ってあります。湯船に手を入れて栓を抜く格好しながら「浸からないのなら、お湯をぬくよ」 母は言います「勿体ない」「そんなら浸かるか?」「ウン」 もうこっちの手の内です。 この方法はいろんな事に応用できました。「みかん食べる?」「今いらんわ」この聞き方では拒否されます。「イチゴがいい?梨がいい?」母は「梨たべようかな」この二者択一法はあらゆる面で応用が利きます。(略)

母の介護を通して色々の勉強をさせて貰いましたが 大事なことは 出来るだけ話しかけ、話をさせること、なるべく独りにしないで連れ回すこと、沢山の人の中で刺激を与えることなど。でも一番は笑わせること。母のアルツハイマーは11年間進行せず、寧ろ回復し、亡くなるその日にも笑っていましたよ。 生きていく中で一番大切な、感謝する心を教えてくれた母の病気に本当に「ありがとう」

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如何でしたでしょうか。AIだIOT、DX・・・デジタルは今後も進展はするだろう。だが、ソフトやマシンは相手の立場になって考えることや、まして感謝することはない。人間はそれらを遙かに超越したところで関係を構成していることを示してくれたのが玉村咏さんの介護を通じてのメッセージではないだろうか。

東京・表参道での個展に一緒に見に行った人は、玉村さんが新しい着物を求めにきた若い女性の心理を読んで最適なお品を薦める様子をみて感心しきりだった。ビジネスの種類は異なれど相通ずるものがあると見抜いたのであろう。この人も感性があるからだと嬉しくなった。

嘘・捏造はコロナより怖い

欧州がエンジン開発をやめてEVへと旗振りの原因となったディーゼルゲート(ディーゼルエンジンの燃費測定方法を誤魔化してあたかも合格するように見せかけた)。モノつくり最先端と自負し、人々も実直な性格のドイツを代表するフォルクスワーゲンが米国から嘘を曝露された。当時筆者は同社のクルマを乗っていたが即刻売却した。問題となったディーゼル車ではないが信用がおけない会社の性格が治るまで待つことにした。即刻売却までは極端だと思われる人が多いと思う。

ただ、この事件発覚の直前の出来事も原因の一つだった。日本のディーラー店を監査に来た同社監査メンバー(カナダ、ドイツ人ら数人)とたまたま居合わせた。当時の日本フォルクスワーゲンの販売網はトヨタ系列もあり、セールスや店舗運営もトヨタ式を踏襲しており信頼感はあった。監査メンバーに信頼感をもっていることを話した。

ところが、しばらくして事件が発覚。監査官が信頼でモノが売れているから裏切ることないようにと社内監査報告をしていれば最悪事態にはならなかったはず。その反作用が筆者の行動であった。

モノつくりの一方の雄である日本も威張れない。今回、東洋紡と京セラが材料・製品の難燃性を長期に亘って誤魔化していたことが発覚した。京セラは難燃に疑問をもっていた社員が社内で話題にしたことから、遡って調査した結果、その通りと認めた。

東洋紡は事業を譲渡された会社(DIC)が不正をしていたのを担当ベースでは知りながら受け入れ是正しなかった。今回、自動車の部品に多く利用されている同社のエンジニアリングプラスチックは譲渡を受けた以外に不正があると分かった。難燃資格UL(後述)は取り消された。UL対象外の用途に今販売出来る商品はない。社内はテンテコマイ状態だろう。ISO9001取り消しまで影響すると会社のダメージは大きい。

材料の難燃性については筆者も研究開発し、難燃材料を市場に展開した経験があるので、本件には外ならぬ関心がある。材料の難燃資格は民間企業同士で取り決めた方法により評価される。米国の第三者安全科学機関 であるUL(Underwriters Laboratories LLC)規格について超簡単に紹介する。

材料には不燃と難燃、その他一般に分類され、今回発覚したのは難燃材料。製品により要求される難燃レベルが異なる。評価法の一つが燃焼着火しての燃焼程度で区別している。成形品であれば試験片サンプルに10秒間着火して燃焼する時間、燃え方(ドリップの有無)を評価し、消えたら2回目の10秒着火をしてトータルの燃焼時間を評価する。HB,V2,V1、VOに分類される。VOが最も難燃性が高い。

製品の肉厚や着色別にも評価され登録されるので、難燃処方は複雑でコスト負担も大きい。UL試験に合格すると認定材としてイエローカードが与えられる。認定された配合で生産販売をしないといけない。配合変更や製造場所・ライン変更には届出が必要である。これを怠ると抜き打ち検査で発覚する。今回の案件で重症から軽微まで指摘されてはいるが、最も卑劣だと指摘されたのは検査用サンプルを事前に用意していたこと。難燃剤の配合量が生産品より高濃度なので“合格”はする。

東洋紡を擁護する気はないが、当該製品の生産量が少ないと、素原料樹脂の製造コストは高い。これに高い難燃剤を高濃度配合すると、尚更高価格となる。UL費用もある。概ね分母が小さいと負担は大きい。その負担を市場において優れた機能を買って頂いて高価格での取引なら問題がない。機能が正しく伝わり適性な価格で取引がない場合は従来材料の価格につられて価格が決定することもある。厳しい採算に繋がる。

つい難燃剤の配合に手心を加えた人を責めるのではなく、素原料の製造コストを低下させて難燃剤を適性配合しても余裕があるようにする必要がある。そしてテストピースだけでなく、製品としての実用評価をして優れた機能を訴えることが有効だとのシステムの問題と捉えるのが正しい。

以下は筆者の経験に基づいている。海外の代表的エンジニアリングプラスチックス製造会社は巨大だった。素原料コストが低く、かつ難燃剤など副資材の購買力が強いことから安価に難燃剤を仕入れることができる。我々もベンチマークとしてこれらの材料の難燃性を評価した範囲では不正はなかったと記憶している。

当時、日本ではそれに比較すると企業規模が小さく、高機能性を付与し実用評価をすることで高い価格で市場に受け入れられたいた。しかし基本的には価格競争力は海外巨大メーカーからみれば量的に多い汎用品コンシューマー分野では見劣りするものであった。少なくとも売り上げが600億円以上でないと太刀打ちできないとの結論から、M系3社のエンプラ事業部が合体して新社を設立した。3社技術者責任者の顔合わせの初仕事は各社持ち寄り製品の難燃剤のレベル確認だった。嘘はついていないかの相互チェックだ。新社設立だから本当は仲良くと行きたいところだが、こればかりは性悪性に基づいて相手の材料の難燃性をチェックした。東洋紡がDICから事業譲渡された製品がUL資格を嘘だと見抜いていたものの、放置しておいたのと対象的。難燃性に限らず営業も含め会社全体の信頼性が第一。M系3社の販売量は現在では当時の4倍以上になった。

東洋紡は長い繊維時代の技術を土台に高機能材料・製品を開発してきた。ポテンシャルは高い会社である。一部の事業部のマネジメントはダメだったことが露呈したが、今後、苦難を乗り越え復活することを期待している。日本のものづくりの観点から存在して欲しい会社であることは間違いがない。応援している。

IT介護とレベル3自動運転クルマ

3月は引越シーズンだった。転勤はもとより、進学により引越が増える。大学内でも専門課程に進むと学び舎が変わり、それにつれての引越もある。業者に依頼することもあるが、規模が小さい場合、普通免許で運転することが可能な4トントラックをレンタルすることがある。今回は筆者の身の回りで発生した出来事を紹介する。4トントラックの運転は男の甲斐性とばかり若者が請け負ったものの、実はマニュアル車を運転したのはドライバースクール以来のこととあって、クラッチとギヤシフト操作には自信がない。京都から滋賀に掛けては百人一首で有名な逢坂山がある。坂道で渋滞が発生しやすい処だ。運転しながら止まりそうになると“ト・マ・ル・ナッ!”と大声で汗をかきつつ運転。それでも停止し坂道発進が試される時がきた。で、どうするか、グア~ッゴ~ と爆音と黒煙を噴かして発進。回りのクルマの運転手からの冷ややかな視線。空回りして後続車にぶつかる最悪事態は回避できた。実は助手席に父親が座り、クラッチのメカニズムの説明と操作仕方を教えていたとのこと。今の若者はオートマでないと運転できない。年配者の運転アドバイス介護を必要とする。

これがITとなると介護されるのは年配者。3月末に筆者も部分IT介護を経験した。散歩して休憩しようとしていたら、チョットした広場を数本の幟で囲い、80人前後の椅子がセットされ、約10人分はまだ空席の様子。幟には政府+自治体共催のPCTモニター(無料)と書いてある。コロナは規制緩和があり盛り返すこともあるので、PCT検査が無料なら受けようかと考え椅子に座った。バイトの若者からQRコードが印刷された紙が配布された。スマホを取り出しQR読み取り、Apple store からダウンロード。必要項目をインプット。やたら項目が多い。この手は電話番号ではハイフンが入ったり無かったり。エイヤッと入れてやり直し、そんなことをやって漸く窓口へ。この段階で回りを見回すと若い人はサッサとインプットを終えている。20名ほどがまだ操作している。ほとんどは年配者。バイトの人に質問しては首をかしげながらの操作で、まるで若い人に介護されている様子。筆者もこの段階までは介護は必要がなかったが、受付窓口でさらに新規記入項目があり、特定のPIN数字がスマホのSNSにきて、それをインプットすることになっているが、数字が2種類あり、それも7桁。覚えて元の画面に戻ると“間違い”表示。新規PINが与えられるので、この繰り返し。これが終わったら、メールアドレスの記入。これが見当たらないと拒絶される始末。窓口の人から小文字・大文字の打ち間違いではないですか? @マークが大文字になっていませんか? まるで介護するようにあれこれヒントを貰うが全部空振り。理由が分からないまま、持っている4つのメルアドの一つがヒットしPCR検査キットを頂く。ITは人並みと思っていただけに軽いショック。自宅に戻り検査キットに唾液をいれ郵送。翌日(日曜日)10時にはダウンロードしたソフトに陰性の連絡がありホット一息。

上述の事例はクルマの仕組みを知って十分な経験をすること、とソフトの中身は全く知らないが、操作の方法には熟知していることが必要で、それが不十分であれば介護が必要であることを意味している。

ところが、クルマの仕組みもソフト使いこなしも不要な自動運転レベル3の実用化がホンダのレジェンドにより現実となった。レベル3は日本が世界に先駆け許可されたことはこのブログでも詳細報告した。今回は日経の記者が試乗しての感想を寄稿している。

概要は高速道路走行で速度30km以下の時に自動運転となり、ハンドルから手を離しても、問題なく走行することが確認できたというもの。限定車だが1000万円。

 

1000万円と聞いて大阪・登美丘高校ダンス部・荻野目洋子のダンシングヒーローの光景を思い出した。自動車電話が登場。肩掛け電話だった。あれが、今やスマホでパソコン並機能のデバイスになったことを考えると、価格も下がるだろう。何れ、不思議がることもなく自動運転レベル3は浸透するものだと思う。まるでクルマが知らず知らずに同乗者を介護しているように。

後ろから救急車がサイレンを鳴らして迫ってきても、避けることしないとか欠点を指摘する記者。だが、そんなことは解決できるはずなので記事にする必要もなかろう。それよりはトラックに採用されると、何台ものトラックが“じゅつ繋ぎ走行”できることでドライバーの合理化や労働環境改善、強いては物流合理化に役立つことを期待したい。

紙かスマホか

スケジュールの確認・記入のツールは多くの人はスマホ、タブレット、パソコンだろう。でも文具売り場には手帳も堂々と陳列してあることからすると利用する人もいるのも確かである。恐らく、背広の内ポケットから使いこなした雰囲気の手帳を取り出すイメージがあり、イマドキの人ではなく“おじん”の雰囲気があることは確かだ。電車の中で手帳を広げているのは年配者。若い人を見かけない。当たり前だとの声が聞こえてくる。今の電磁媒体は予定を記入するだけではない。WEB会議が予定されていると、その時のULRとアクセスコード番号も同時に記録されており、指定時間の30分前には警告がなされ、このカレンダーからWEB会議を立ち上げることができる。会議主体者になればメンバーに会議開催の連絡もできる。デートの場所マップもアクセス出来る。こんな便利な機能の真似は紙手帳にはできない。選択余地なし 勝負あった!

しかしながら、早合点は禁物だ。

紙か電磁媒体のどちらが記憶に有効なのかを科学的に説明した論文がある。東京大学が東大生や一般人36人にスケジュールを紙やスマホ、タブレット媒体に記入する速度の比較。次にある特定の日の2つ前の記録を思い出す課題をだして、その正答率を評価した。(日本の研究:3月19日東大プレスリリース)

その結果。論文ではポイントとして以下3点を紹介している 論文引用

  • スケジュールなどを書き留める際に、スマートフォンなどの電子機器と比較して、紙の手帳を使った方が、記憶の想起に対する脳活動が定量的に高くなることを発見しました。
  • 異なる記銘の方法で記憶の想起のプロセスに影響が生じることを、脳活動から初めて実証しました。
  • 教育やビジネスにおいて電子機器が多用される中、記憶力や創造性につながる紙媒体の重要性が明らかとなりました。

脳波で比較すると手帳の方が脳活動が活発になっている。再び引用する。

「言語処理に関連した運動前野外側部と下前頭回や、記憶処理に関係する海馬に加えて、視覚を司る領域でも活動上昇がすべての群で観察されました。このことから、言語化・記憶の想起・

視覚的イメージといった脳メカニズムが関与すると言えます。さらにこれらの領域の脳活動は、手帳群が他の群よりも高くなることが定量的に確かめられました。このことは、記銘時に紙の手帳を使うことで、電子機器を用いた場合よりも一層豊富で深い記憶情報を取得できることを示唆しています。」

 

評価対象者36人中 何人が東大生かは開示されていない。記憶力が抜群で入学できた素質のある者だけに、一般的な人間に適用するには、正答率にしても、脳活動変化率は違うだろう。だが、そんな嫌味なことを言うつもりはない。紙に記入するときには紙を相手に書いてはいるが、その時の空間も織り込んで書いていることは誰でも経験する。

英単語を覚えるには苦労する。だが、使った場面や英文の手紙を貰った当時の事情とリンクすると不思議に全文が残っている。紙に書いたり、口に出して何回も風呂につかりながら口ずさんだセンテンスはその光景と共に思い出す。

プレゼンテーションの資料作成において、パワーポイントにエクセル、ワード、写真など挿入すれば、見栄えの良い資料ができる。Q&A方式においてアニメーション機能を利用すればQで時間をおいて考えさせて、次にAを開示する。これで初めからAも書いてあると記憶に残らない。

今回の東大の結果を応用するなら、配布資料にはQだけ書いて、Aは空白にして、自分の回答を書いてみる。そして発表者のAを更に書き加える行為をすることで理解度は深まるのではないだろうか。

学生時代の話であるが、ご指導を頂くべく教授の部屋にいくと30分から1時間の沈黙があり、自分でも、今の段階で質問するのは愚の骨頂と感じて出直しをすることがあった。簡単に答えを教えて貰ったら、その後どうなったか?。それにしても教授の忍耐力とこの学生に考えることの愉しさを教えたいとの教授の情熱を今も忘れない。

学生時代に限らず社会人になっても、良い指導者に巡りあうことがあるが、この教授タイプの人に出会うとこの人は本気で教えたいのだと反応する。この文章を書きながら思い出したのは道元が起こした曹洞宗大本山“永平寺修行僧受け入れ試験”である。山門の前で修行願いを出しても拒絶から始まる。毎日その繰り返し、雨、雪があろうとも門の前に立ち尽くす。その間に熟慮に熟慮を重ねて目的の明確化と覚悟を決めるのである。禅問答に応えるだけの修行の基礎土台が必要なのだろう。上述の教授がなされたことと同じであることに漸く気づいた。

すぐ、ググルことで(誰かが書いた)解答を求める姿勢は刹那的であり、これの繰り返しでは人生を終わるころには「勿体なかった人生」と思うことであろう。そうか手帳も買うとするか。ブログの締めくくりとしてはなんとも安易なソリューションであると苦笑いしつつ。

70歳就労努力義務に考える

今年4月から、70歳までの就労機会の確保を企業の努力義務とする改正高齢者雇用安定法が施行される。理由は少子化に伴う労働人口減少を高齢者にも働いていただいて、全体の労働人口をキープしたいとの考えに基づいている。勿論女子にも働いて頂くことが前提になっている。

ここ15年の間にサラリーマンの定年が60歳から65歳になり、次は70歳。随分の拡張である。もとより年金制度の(人為的であれ、自然現象であれ)行き詰まりもあり、支給開始年齢を60歳から63歳のあいだの選択から、65歳まで支給しないことになり、70歳開始だと更に受け取る金額はお得感があると政府は囁いてのことである。囁くどころか義務に何れなるだろう。

昭和22年~26年までの第一期ベビーブーマーはとっくに定年を迎えており、その方々はタップリ退職金や年金で余裕の暮らしをしているかと思いきや、仄聞するところによれば、企業年金の土台(国民年金)が減額になり、企業年金についても70歳を越えると減額になるなど、この年齢層でも生活レベルを従来の感覚を縮小しても厳しいものになっているようだ。それでもあるだけマシと後輩は言う。だが、金銭的にカツカツの生活でなんとかする人でも、一番苦しいのは毎日することが無い!これは苦痛のなにものでもないようだ。定年になったらゴルフ三昧したい。旅行に出かけたい。。。あれこれあるが、遊んでいては尚更だが、例え図書館に居ても何の為の図書調査なんだと自問することだという。つまりはなんとなく心が満たされないのだ

日本人に埋め込まれた働くことが美徳の意識が中々抜けきらないらしい。これが欧米だと年金暮らしが理想の人生を送ることで、連れ合いとの旅行や新規の趣味に没頭することができるのだが、日本はそうはならない。そんな中、政府が努力目標で70歳定年を企業に指導することになり、本当に働きたい人にとってはありがたい制度になるであろう。だが、雇用する企業にとっては大問題。若い人に負けず劣らずの能力を発揮し、さらに豊富な経験を活かして効率的な研究開発ができる特性をシニアは持っていることを発揮できるならば企業にとっても有益である。

豊田中研所の菊池所長は海外研究機関で働いたあとで日本に戻って提案しているのは「基礎研究こそシニアがすべきである」と述べている。基礎研究は兎角ヒット率が低い。山登りに例えるなら、この道しかないと研究を着手すると崖や滝壺にぶつかり、心が折れることがある。でもシニアは、いろんなルートを経験しているので、これがダメなら、別の方法で、見方を変えると案外簡単かも、となる。筆者も研究開発の経験があるだけに納得する。

しかしながら能力のあるシニア層は雇用安定するが、それに該当しない人は企業は抱えきれない。大器晩成といっても50歳以後で大化けするのは極めて少ない。ということで企業としては、出向転職を勧奨するか、希望すれば企業内ベンチャーの創業資金を出して本体から期限付きで切り離すことなどが行われるであろう。いずれも必要とするマーケットがあっての話だ。

先日、ある人材紹介企業の話を聞いた。上場企業役員経験者、主席研究者など1万人を登録されているが、マッチングしているのはその1/10であり、役員よりは開発経験者が多いとのこと。こうなると下手に役員になるよりは、将来のことを考えて専門(それも1本足では厳しいのでスイッチヒッター、二刀流など)を貫いた方がよいのかも知れない。今の若い人が人生設計を真剣に考える時がきた。

シニアでは能力があっても体力が持たないのでは話にならない。

シニアに若い人と同じメニューの体力測定をすれば、測定中に骨折など事故を引き起こす。だが、例えば30秒ほど片足立ちをすると、骨盤回りの不整合や背筋など筋肉が弱っていると、その場に立ち止まることなく、アチコチ動いてしまう。壁や椅子に片手を置くと安定することから、面白い装置が開発されている。

横浜国大の島教授グループが起業した会社(合同会社UNTRACKED)では指先につけたセンサーに立位状態での仮想壁にタッチすることで安定に保つように働く力を観測することで、転倒せずに作業などの仕事が可能か否かの判定を定量的にすることができる。

また、老化=酸化劣化と捉えての研究・応用が進んでいる。これについては後日、ブログにアップ予定。心技体はスポーツに限らず、ビジネス、人生を愉しむには必要だ。人ごとではない自らも意識しないと。