LOON SHOTS

景気が悪化している。GDP速報でもマイナス6%で今後の46月見込みでも同様な数字と経済評論家がレポートしている。新型コロナウイルスの影響でインバウンド客急減や国内行事も控えめになっていることから、消費税アップの影響は埋没しているように見える。が消費者心理はキャッシュレス優遇期間終了とオリンピック後を予想して買い控えの気分になるだろうとのぼんやりしたことを考えている。「景気」は名前の通り消費しようとする「気分」に左右されるが、その「気分」が出ないと、デフレに舞い戻る。ここ数日の円安はある意味「日本売り」であり、従来の円安歓迎とは言えない窮地に追い込まれている。バブル崩壊後の30年のデフレスパイラルはもうゴメンである。

若い人の労働機会が収縮し、賃金は上がらず、65歳定年を無事終えた人が、年金は減額が予想される中、100歳までの30年をデフレ景気でどう暮らしていくのか路頭に迷うのも容易に想像できる。

言いたくないが「一律の働き方改革」も景気の足を引っ張っている。外注で仕事を出したところ、少しだけ残業すれば1日でこなせる仕事が2日かかったので2日分を請求されたことがある。顧客は離れていく。祝休日も多すぎる。だからAIだIOTだと聲高に叫んでも、その導入資金が零細企業にはない、また導入しようにもSEの人不足、能力不足で、装置・システムを導入したものの、稼働せず、事務所、工場の片隅に布を被せて放置したままの風景をみた。それも数多く。

 今は確定申告の時期。徴税を目こぼしなくやれば、少しは正常になるはずだ等、なんだかんだと専門以外のところで言ったところで埒があかない。

自分のフィールドで何ができるか? それが重要である。

 そんな時に目に付いた書籍がサフィ・バーコール著のLOON SHOTS である。(日経BP社) 表紙には「クレイジーを最高のイノベーションにするルーンショット」「周囲から非常識・クレイジーと思われて相手にされないが、実は既存の常識を覆し、業界や世界までも変える 最重要ブレイクスルー・アイデア」「非常に脆く、潰されやすい。優れたアイデアは3度死ぬ」「突然、組織がルーンショットをうみだせなくなることがある。それは相が変わったからである。相転移の科学を使えば状況をコントロールできる」とある。 相転移については前回のブログで紹介した。

社員が相転移しないで、現状で満足し、リスクを取る冒険をしないマジックナンバーが記載されている。ナルホドと思うところがあるのでご参考まで。

  M=ESF/G  E;エクイティ比率 S:マネジメントスパン(組織階層数)

F:組織適合率 G:給与もアップ率

Mが大きいとリスクがあるプロジェクト推進よりは社内政治に力配分する。

S:組織の階層数が重厚であるほど2乗で聞いてくるので、組織スパンの見直しだけでもこのマジックナンバーは変えることが可能。勿論Eが大きいと現状に安住し、給与アップが小さいとやる気を失う。のは分かる。問題はF:組織適合率。社内政治に対する防御壁となり、社員のスキル養成を重視し、社員とプロジェクトを的確にマッチングする係数(スキル/社内政治の比率)。 具体的なマジックナンバーについては米国企業248社を調査してM=150を境界として社員が社内政治で昇進を図ろうとするとの結果をだしている。

大企業でSが大きく、給与アップ率が小さいとなると、社内営業が昇進には手っ取り早いと考えるのが自然。植木等のスーダラー節。今の時代にそんな….と思う方もおられよう。だが、まだまだ存在している。リスクを取らない人が出世する事例を挙げるまでもない。

 逆に社長と自分の距離・階層が少ないと、クリエイティブにならざるを得ない。そう考えると、ソニーは東京通信工業として20名でスタート。「人のやらないことをやる」を掲げて成長した。社内営業どころではなかった。既に大企業になってからも半導体の成長軌道に乗っているC-MOSSSDの陰に隠れて、優れたアイデアも3度死ぬを文字通り経験した。初期のC-MOSの欠点を違う視点から眺めたこと、なにくそ精神とチームワークが成功をもたらした。

 違った視点で眺めることの重要性は筆者も最近経験した。それは難燃剤を開発していたときに起こった。樹脂の中に配合して樹脂を難燃性にする添加剤である。樹脂と難燃剤を2軸の混練性能の優れた押出機に投入して加熱混練し、ついで試験片を作成して燃焼試験をしたところ、全く難燃性を示さなかった。難燃剤が配合していない樹脂と同等レベル。このようなことは経験しなかった。普通は「この難燃剤は×」として、外の難燃剤を評価するところだが、余りにも効果がないことが気になった。実験方法が間違い? 相手の樹脂が間違い? 押出機が間違い、、、といろいろ考えて行くうちに、突然の啓示!? 

難燃剤を外の難燃剤と同じような視点・視線で見ていたことに気がついた。この難燃剤の性格が活きるようにしてやれば、どうなんだとの実験をしたところ、全く世の中にない効果を発現することができた。それから4年経過。

M値が高い企業では相手にされなかったが、閾値の好ましい企業から声がかかったことで市場に展開することが可能となった。マーケッティングでも犬も歩けば棒に当たるような無駄な行動よりはM値を参考にした方がクリエイディブ商品の展開は速いと理解した。

近々、これが皆様の目に触れることになるが詳細は今のところここまでの開示に留めておきます。特許は2件出願しいずれも登録されている。

(ご注意:会社全体のM値が高い場合でも、例えば社長特命直轄テーマとして運営する場合は極めてM値が小さく成功する事例が多い)

アルコール分解遺伝子2・深紫外LED 殺菌

以前(2020.1.15日付)ブログでアルコール分解遺伝子について記載した。アルコールがアルデヒドに変化する際に作用する遺伝子とアルデヒドが酢酸に変化する際に作用する遺伝子の両方があり、それぞれ、祖先時代の遺伝子とその後変性した遺伝子の組み合わせが4種類あることを説明した。そのブログの最後のところで、変異が起こったのは中国南部であったと別の論文を引用して紹介した。現代化学2月号に変異遺伝子の世界マップが掲載されたので、まずそれを紹介する。

 

 

ALDH2 はアルデヒド分解変異遺伝子、ADH1Bはアルコール分解変異遺伝子である。

中東地区とアジア地区が変異遺伝子を多く有していることを示している。両方に共通しているのが、葡萄や米から酒を発明?した地域である。酒を発明しておきながらアルデヒド分解が遅い遺伝子をもっていることに疑問を持ち、仮説を立てたのが東大の太田教授。その説によれば、アルデヒドは毒である。二日酔いがアルデヒドのせいであると日頃痛感している人は直ぐに理解するであろう。こともあろうに病原菌も生きられない。この説が正しければ顔が赤くなってアルデヒドが分解しにくく体内に滞留時間の長い人は病原菌に対して強いことになる。祖先型の遺伝子を持つ人は幾らでも酒が飲め、顔色変えないでぐいぐい飲めるのんべいは病気に罹りやすいとも言える。アルコール分解もアルデヒド分解も変異遺伝子をもっている「いわゆる下戸」はそもそもアルコールを口にしないので、それでは病原菌には弱いかもしれない。その説が本当なら、アルコールが飲めない体質であっても、少しは飲むことが好ましいことになる。多くの人は少しではモノ足らないので。。。を続けるとアル中が待っている。両方とも祖先型遺伝子はアル中まっしぐらで、かつアルデヒドがたちどころに酢酸になるので、病原菌耐性は低い。

太田説によれば、稲作が発達して住民が集中して暮らすようになると生活環境(水、排泄物)汚染が激しくなり、それを防止するために強い遺伝子が残ったのであろうとのこと。

サーズ、マース、鳥、豚、新型コロナウイルスの発生地は申し訳ないが中国南部に集中している。新型コロナウイルスに対しての遺伝子変異が将来起こるのではなかろうか。その前にとにかく清潔にすることが最優先される。

【深紫外LEDによる殺菌とは】

弊社では波長265~290までの深紫外LEDを利用した空間除菌装置を居住・来客応接・製品倉庫にに設置した。日機装株式会社 製品名Aeropure である。深紫外LEDはノーベル賞の天野教授と日機装の研究成果である。製品寿命と波長はトレードオフの関係があることを日機装がブレークスルーして石川県白山市で量産化。今回の新型コロナウイルスの影響から、急遽、増産生産している。ただ驚異的な引き合いに生産が追いつかない嬉しいのか哀しいのか悲鳴を上げている状態である。清潔維持に熱心な日本人を誇りに思う。今後はタクシーやカーシェアリングなどへ普及するのは時間の問題であろう。

 

殺菌の機作(メカニズム)も追求されており、深紫外線を照射すると、効率良く塩基(チミン/シトシン)が二量体となり、細胞分裂阻害などの機能障害を引き起こす。DNAに直接作用するため、耐塩素性の菌にも有効に作用し不活性化する。

歯科ではLED殺菌水での口腔内洗浄や光重合用光源にも利用できる。

深紫外線は樹脂の官能化にも査証して印刷、接着強度、他樹脂との混合分散改良などにも利用できる。分析用光源への応用も期待されている。

さて、閑話休題。

話を戻して、アルコール分解変異遺伝子の図をよくみると、また違う様相を呈してくる。それはアルコール分解変異は中東で起こっている。筆者にはシルクロードを伝って中国及び日本に到達したのではないか????と(これは)妄想。中国南部では人口が急増したのでさらにアルデヒド分解が遅い遺伝子に変異が起こったのではないかと。俗説ではユダヤのヘブライ語と日本語・日本文化との類似点を多く例示している。カタカナに始まり、祭祀、相撲にいたるまでユダヤとの交流が紹介されている。だが、俗説の領域を出ていないと言えば、その説提唱者から叱られるかも知れないが、遺伝子分析などでの解明も一つの方法ではないだろうか。

文献

現代化学2月号 新村義人 お酒が飲めないように進化した日本人

日機装 技術資料及びカタログ

企業の相反転

子供のころ模型に利用する小型モーターといえばマブチモーターだった。小学校の夏休み宿題ではエレベーターを作った。長じてラジコンカー製作にも利用した。この小型モーターなしではクルマは成立しない。ウインドウ昇降のみならずモジュール内に数十個が内蔵され、更には、パワートレイン駆動体として利用が拡大している。その先頭にいる企業が日本電産。

日本電産の永守会長は一代で世界的大企業に成長させた。 先日、京都銀行が主催した永守会長の講演会があり、非常に面白い話をきいたので紹介する。会社創立後間もない時に米国の3Mから現状のモーターサイズを半分にダウンサイジングする企業に300億円の注文を出すとの知らせを受けた時の状況が面白い。世界広しといえど手を上げる企業はなかった。日本電産社内も同様の空気であったが、永守さんは社員を集めて「できる、できる、できる、できる、、、、、と千回声に出させた」。千回を終わったところで、「どうだ、出来る気になったか?」と尋ねた。社員は「その気になりません!」ときっぱり拒絶。そうすると、永守さんは「そうか、では更に千回だ!」。2千回を終わっても社員はNO! ではもう千回。。。で合計3000回の“できる”を唱えたところ、ある技術者が「できるような気がしてきた!」と。その後の結果は推察のとおり「半分のダウンサイジングのモーターが完成した」

「できない相」から「できる相」に社員の意識が変換したのである。相が反転したのは、永守氏の信念。チョットしたことで、従来の常識から外れる仕業が技術の進歩や営業戦略にも見られる。パソコンで成功したマイクロソフトはパソコンソフトの相に甘んじていたことで、携帯に出遅れた。携帯で一時期飛ぶ鳥落とす勢いのノキアは今のスマートホンを見越して会社上層部に訴えたが、ノキアの携帯シェア相に安住して取り上げなかった。それが致命的で今ノキアのノの字もみない。相反転の切っ掛けを見誤ると失地回復は絶望となる。

筆者は講演を話を聞きながら、比叡山の千日回峰行を思い出した。7年間に亘って比叡山の幾つかの修行道場を走破する荒技を975日を終えたあとは、断食しつつ寝ずに真言経を唱え続けることで悟りの境地に近づく修行。苦行をするなかで見えてくることを求めてのこと。2回も行った酒井阿闍梨の話はNHKで放映されたので覚えておられることおられるだろう。

永守会長の“経典”とも言えるだろう“できる、できる。。。。”と相通じるものがあると思われる。ご承知のように日本電産は京都生まれ。比叡山は滋賀と京都にまたがる天台宗のお寺。NHK大型時代ドラマの今年は明智光秀だが、彼が治めていたのは比叡山滋賀側の入り口の坂本。

京都市は東山と西山に囲まれた盆地。西山を超えると亀岡市がある。京丹後の入り口である。ここ亀岡市に京都学園大があり、定員割れが続いていたが、理事長に永守氏を迎えると、文部科学省にモーター学科を設立したいと申請したところ、前例がないと文部科学省は拒否した。そこで、学科の名前は工学部電気機械システム工学科、ちゃっかりモーター開発を目的の京都先端大学として亀岡市から京都市内に移してしまった。入学者はあちこちの試験での落ちこぼれを歓迎。ここから永守流。関西の私大では関関同立がトップ集団にある(関学、関西、同志社、立命)。これに直ぐ追いつくとハッパをかけ続けている。追われる大学もオチオチしていられない。

で、逃げられた亀岡市の市長はあの土地はどうしてくれると質問した。その答えが面白い。それを考えるのが市長のあなただと。満場2000人の中で指弾された市長。市政の経営者が市長であるとの認識がなく、補助金頼りで経営感覚のなさを曝露された。これは亀岡に限らず、日本の地方自治体ではよくある光景だ。 明智光秀が天下取りを祈願したのが亀岡「時はいま、天が下知る 五月かな」 亀岡がチャンスを逃がしたのは歴史の皮肉か。

永守氏が京都学園の理事長になってくれた。これで安心だ。との相にどっぷりつかって、後はお任せの意識がドンデン返しにあってしまった。相反転しては元に戻らない。

企業が大規模になるほど相反転は簡単ではない。企業には将来を見据えて考える人材が存在する。但し、多くは異分子・異端児として組織としては邪魔扱いされるのが通常である。入社試験では従来より発想の異なる人をと言いながら、その上位概念はいつの時代も協調性が最も優先される。なので、相転換できないと異分子・異端児はスピンアウト、その結果、その企業は時代の波(昔は30年だったが、今は10年寿命)の中では衰退速度を速める事態になる。。

従って、社員からの相反転は極めて難しいので、経営者自身が異端児にならざるを得ない。そのような会社は成長を維持できる。 経済同友会前会長の小林喜光が三菱化学(現ケミカル)社長当時、社員にAPTSIS方針を掲げた。Agility(早く)、Principle(原理原則),Transparent(透明性)Sense of survival (崖っぷち意識)Internationalization, Safety, Security, Sustainability であった。社員にAPTSISを唱えるように標語をあちこち貼ったが、異端児の筆者でさえピンとこなかった。 社員の反応状況を見た小林は新たにKAITEKIを掲げた。こちらは社員に素直に受け入れられた。 インパクトのあるメッセージはコンパクトであるべきである見本のような事例である。 その結果、具体的な素材、機能材料、商品開発へ面舵をきりはじめた。 永野流の“できる3000回”と同じ効果だ。 図はそのプロセスを概念化した。

只今現在取り上げる例としては良くないが、ゴーンが日産に来た当時の日産は次年度予算・技術目標を立てるに際には、できそうな目標を毎年繰り返していた。ところがゴーンは到底不可能と思われるレベルを掲げ、できないと承知しないとの強面路線を敷いた。これに反発して当然だったが、なんだかんだやれば無理筋目標が達成したとの話題を提供してくれたOBがいる。そのゴーンは連れ添いの色に染まり、当初の無骨男から金の亡者に相が反転して転落した。

企業も個人も「現在、どの相にいるかを認識し、異次元の相が次にやってくることを意識する必要がある」のだろうと思う。

新機能材料展・木材の進化

1月末に新機能材料展があり見学した。カーボンナノファイバー、セルロースナノファイバー、バイオ生分解複合樹脂など多彩の材料が展示。 ポスト5G狙い材料や環境対応材料が目白押しのなか、古典的材料とも言える「木材」に注目した。数年前から建築展では欧州の木材が高層建築物に利用されていることは知っていたが、日本の消防法等の壁があり、そう簡単には認可されていない。だが、新国立競技場が鉄骨と木材の組み合わせで巨大な建築物が成立することを見せてくれた。

 

これが実現したのはCLT(Cross Laminated Timber)と言われる多層直交集成材技術。木材の繊維方向は大陽の向きに従って、概ね垂直であり、また年輪があるので、製材は長期的使用では湾曲する。そこで、炭素繊維複合材でも行われている(+90度・+45度・-45度・-90度)のように繊維を多軸方向に揃えることを転用して木材繊維を直交させ・接着させることで多軸方向への強度維持ができるようにした。

 

ノルウェー、スイス、カナダなど木材資源が豊富た地域では建築物が増加しているようだ。
ここからは日本技術の出番。CLTはCLTでもひと味違いを見せてくれたのが山形県天童(将棋の町)にある天童木材。

主として杉の有効利用として伐採・製材までは従来通りであるが、その先が製材をローラーで圧縮し難燃剤を含浸させ、膨張することで内部まで難燃剤が浸透する。以前にブログでも紹介した(主として)ホウ素化合物による難燃木材となる。さらに高温のロールで圧延・プレス加工を行うことで、椅子などの部品の多くが成形できることで、従来の切削、ほぞ加工、接着などの工程が省略できる。

 

 

展示会で注目あびるものとして軽飛行機のボディを製作してみせてくれた。この軽飛行機は産総研(森林)を初め東北地区の企業の先端技術を織り込んでいる。 Clay Teamとして出品

 

胴体 超軽量CLT
防腐・防蟻・耐候性付与
翼  改質リグニン利用複合材
コクピット フェノール含浸木材準不燃
プロペラ ナノクレイコンポジット保護塗装
高感度センサー内蔵木製操縦桿
ハイレゾスピーカーなどの技術がパッケージされている。

これらの各技術も従来より一皮剥けた技術として注目される。
かってクレイは層状構造を利用して層と層の間に有機化合物を峡雑して層間を広げ(インターカレーション)、それを樹脂とクレーをナノレベルに分散させるコンパウンド(ナノコンポジット)することで、強度やガスバリヤ-の性能を高める研究・開発が行われていた。しかしながら、ガラス繊維など安価な素材が強度は高いことから、今回は強度を謳う用途ではなく、金属の保護塗装材として活路を見いだしている。樹脂配合材料でリードしていたユニチカは樹脂着色がナノクレイ配合により鮮鋭性がでることを打ち出した。筆者はナノコンポジットが世の中で出現したときに、強度だけでは限界があると高分子学会の基調講演で話をしたことがある。強度路線を変更して新規な用途展開をしていることにホット胸をなでおろしているのが正直なところである。
今ブームのセルロースナノファイバーも強度・軽量(比強度)だけの売りでは同じことになるのではないか、セルロースナノファイバーはその特徴を引き出しての用途にこそ広がるのではないかと考えている。
バイオ・再生材として木材の利用効果は海の豊穣さに影響を与える。森林での栄養素が海に流れることで、プランクトンが成長し、魚介生産量が増加する。結果としてバランスのよい食事が摂れ健康寿命にも貢献するのではないかと期待される。ここ横浜にも昨年から木造の高層建築が着工されているとのこと。
ただし、木材を手放しで歓迎するまえに、木材は植物同様、その場所を離れることはできないので、動物などの危害を回避するための忌避成分を含むことがある。アトピー疾患の木材もある。またCLTの接着剤もホルムアルデヒドような成分は今はないが、硬化剤の動向などにも注意が必要である。健康面でも先進国である日本が果たす役目はある。

出典
新国立競技場https://www.jpnsport.go.jp/newstadium/
航空機 天童木材
圧縮プロセス 天童木材カタログ
CLT構造 日本CLT協会

パーセント泣き笑い

嘘のようなホントの話。量販店の入り口で5割引きのチケットをもらった人が、ある売り場で「あっ!ひゃぁ~」と大きな声をあげた。一緒に行っていた知人が「どうした!?」と声掛けしたら「ただやッ!」と。賢明な諸氏は既にお分かりのとおり、この人は商品には5割引きと表示されていたのを見たのだ。5割と5割チケットで合計10割=無料 の式が成立したのだ。念のためこの人は大卒。数学が嫌いで数学を扱わない文系の道を究めた??にしても、小学校で算数は勉強しただろうに。で知人は面白がって、「では塩濃度10%の水がコップにあるとして、この半分を外のコップに注いだら、残りのコップの塩は何%になった?」と聞いてみた。結果は首をかしげるだけだったと。もはや、落語の熊さん八っさんと同じ。落語が成立するには、それをバカにして笑うだけの学力ベースが庶民にあってのことなので、嘘のようなホントの人は江戸時代の庶民より学力が低いことになる。大卒でありながら。
文系を馬鹿にしてはいけない。就職率が高いことで有名な工学系私大がある。入学してくる学生に小学校の分数から教え直しをしている。入学当時は1/3+1/2=2/5を回答する学生も珍しくないようだ。分子同士、分母同士の足し算をしている。分数の本当の意味が教えられていなくて、形式で答えをだすような訓練をしてきた結果なのだろう。この大学の名誉のために付言すれば、卒業性は企業から引っ張りだこなのだ。指導教官のご苦労がよく分かる。

昨年12月10日日経に%が分からない大学生の記事があった。記事になるからには相当の事例があるのだろう。引用する。

「%」って何でしたっけ?
日本人の数的思考力に関しては、20年にさらに危機的状況に陥る可能性がある。そう訴えるのは桜美林大学教授の芳沢光雄氏(数学・数学教育)だ。19年4月に『%が分からない大学生』(光文社新書)を出版。大学や中高の多くの教員と接する芳沢氏が、実際に学生らから「%って何でしたっけ?」と問いかけられる事例を聞く機会が増えたことに、危機感を示したものだ。」

どうりで、消費税10%に変更になったときに、計算できないのか、意図的なのか正しい数字とは言えない商品やお店があった。スーパーでは夕方になると5%~20%引きの商品がある。主婦は計算が速い。割引き後の値段を頭に入れながら、かごに食品を入れていく。予定していたより余りそうだとわかる自分へのご褒美のアイスを余計に買うこともできる。女性は財布が膨らむことや重いのは嫌う、そこでレジでは小銭分を上乗せして区切りのよい100円玉でおつりを貰うようにしているのが普通というか、今までの風景だった。レジが間違うことなく精算するのも凄いなぁと感心していた。大きなお札を出しているのは、申し訳ないが相当のお年を召して計算できないand買い物を経験が少ない男に決まっていた。
それが、いまでは①○○ぺいのスマホ頼りか ②レジ係はバーコードを読むだけでお金は隣の支払機にて客が操作することに変わってきた。因みに客が自動支払いさせるショップで、バーコードだけ読み取るだけの従業員に、これで働き方改革はできるねと聞いてみたところ、「いや大変なんです。自動支払いの方法を教えるに時間を取られるのです。。。」と何じゃこりゃ状態。

でも、偏微分や量子力学を毎日苦も無く駆使していた工学系の人が会社に就職し、専門職からジェネラリストに変わると、途端に算数ができなくなる。勿論加減乗除の算数はできて当たり前だが、ビジネスで最も重要なのが限界利益率の中身が分からない。職種によって一律ではない。そこも理解できない。初歩の簿記程度で商業高校ならおそらく初年度でマスタ-するのであろうが、まず、商業用語・簿記用語で躓く。資産の箱と負債の箱も分からないので、これは経理・財務のお仕事。第一経理ソフトが豊富だから処理は任せておけばよい。
なんて、考えているようでは勢いで起業しても潰れる。技術士になるには国家試験があり合格率は低い。それだけ専門性を求められるが、起業して繁盛しているのは少ない。現役当時に人脈と考えていた人は会社人脈であり、個人由来ではないことが大きな理由であるが、一方で、経理に疎く特に限界利益率を理解できない人が多いようだ。長期テーマで戦略的に当面は低くても耐えられるように、短期で限界利益率の高い商材をミックスさせて長期テーマのクライアントにも信頼をおいてもらうことを考えることが重要である。
その前に変動費、固定費など内容を精査しておき、バランスをとりながら成長させることの胆力が経営者にとってのイロハなのだろう。そこから課題抽出とアクションプランが見えてくるはずだ。

今週のブログは笑い話に終始した。しかしながら頭よい人はこれを上手く利用している。超ハイレベルの人材が集中している霞ヶ関の省から「日本財政は破綻している、負債は赤ん坊でも800万円を抱えている」などの説明をすり込むのが上手い。さすがである。でもそれではBS(バランスシート)の左側の資産は?となると言わない。右側の数字は間違いがない。嘘ではない。でも算数程度の話なので、我々庶民もついて行き意見をもつことは重要だ。愚民政治とは言われないように。

冬虫夏草って何?

日経1月11日記事に「70歳超えても働く」60代の54% 日経郵送世論調査。

(右図参照)

経済的理由が最も多い。男子の平均寿命81歳。健康年齢が72歳なので、ほぼ体が動けるうちは働きたいとの思いがあるとのこと。健康を崩してから旅行・スポーツ、趣味にと活動する余裕がない程になっている。

一方、定年延長がジワジワ延長され70歳も現実的に見えてきたことから「今のうちに」と45歳になったら、いや30歳台でも。。。と希望退職を募る一部上場の会社が増えてきた。 割増し退職金を払える体力のあるうちに整理し、次世代事業へのシフトを図りたいとの経営側の思惑を隠さない状況になっている。

働く側からみれば、本当の実力がないと若いから大丈夫とは言えないので、本気の実力形成にと刺激になるのは当然だが、経営マネジメント側には、貴重な人材を無駄遣いにしないで将来性を見抜く慧眼とそれまで耐える胆力が要求される。短期収益改善の人員整理するようでは尻すぼみしかないが、本当に会社の将来を熟考し、その上で人を整理することの苦しみを本当に味わった人は優れた経営者になることがある。

若い人より問題児になりかねないのがシニア層。 筆者がつい最近遭遇したのは某役所。シニアの担当者が困惑気味に画面とキイーボードを睨めっこ。ソフトが変更になって、どのFキイを押せばよいのやらと。気の毒になって「働き方改革のためのソフト変更でしょうね。そのうち効果がでますね」と同情。だが、隣の机ではサッサと処理。若い担当者。

かくいう筆者も名前がでてこないことが多くなった。「あの人、そうこんな感じ。。。」で、済むはなしと済まない話がある。 株式で認知症改善医薬品のニュースに超敏感に反応し急騰する銘柄があり、マイナスデーターが知らされると急降下、反証があると上昇のパターン。それだけ巨額の利益がもたらされるのであろう。ましてシニア層の対象人数は増加を背景に。

前振りが実に長い。長すぎる。 でも認知症がジワジワと進行する症状ならば、粘り強く時間を掛けて慎重に、なにより患者、対象者の人間性を尊重しながら、かつ目先の利益を優先しないでも研究開発をやり抜くことが天命だと長い時間を覚悟して取り組む必要がある。前振りもつられて自動的に長くなった。

暮れの漫才M-1で優勝したミルクボーイ風に言えば

ミルク「おかんがな ある老人ホームで服用している健康食品があって効き目が違うとか。でもその名前を思い出せないんやて」

ボーイ「なんか特徴がないか? 一緒に考えてみようよ」

ミルク「服用する前に、あてはまる項目にチェックを入れるんやそうな」

ボーイ「よく有るパターンやな。おかんはどれにチェック入れたん?」

ミルク「*やる気が維持しにくい *捜し物が多くなった *疲れやすい*目覚めが悪い、*興味引くものがない *身だしなみに気を遣わない*部屋の片付け面倒 *笑顔が少ない *部屋にこもりがち*名前がでない」

ボーイ「そんだけ覚えていたら、おかんは問題がないがな」

ミルク「でもな、孫の名前は覚えているのに、お年玉を渡すのは忘れとんねん」

ボーイ「そりゃあかんがな!」

ミルク「なんでもな。虫のようで草やって言いよんねん」

ボーイ「冬は虫のようで、夏になると草になると古来言われているものとチャウか?」それ虫と違うがな、カイコ蛹に生息する菌の一種や、草のように見えるんよ」

ミルク「えらい物知りの相棒やなぁ、冬虫夏草って言うのか」

以下は冬虫夏草の認知症改善に繋がる健康食品(医薬品のポテンシャルあると筆者は考える)の研究に携わった岩手大学 鈴木名誉教授を中心とする大学連携で文科省の科研費申請資料の一部から抜粋した。

カイコ蛹(さなぎ)に寄生するハナサナギタケから熱水抽出画分を老化促進マウスに経口投与したところ、空間パターン認識を司る(脳の)海馬CA3領域に発生した神経膠症が濃度依存的に消失し、老化促進マウスにおける文脈・空間記憶学習機能が改善することを明らかにした

(文献 機関番号11201 研究課題名 カイコ冬虫夏草由来のマウス海馬修復因子の構造解析とヒトへの応用開発)

 

要旨の引用を続けると、「培養アストロサイトに新規生物活性因子を添加することで、神経成長因子と神経成長因子油胴体の遺伝子が発現し、さらに神経初代細胞への効果として神経突起形成を誘導、このin vitroの分子構造に基づいて、老化促進マウスの脳機能は向上し、ヒトのアルツハイマー型認知症患者の前臨床試験でも改善効果が確認され、新しい機能性食品と医薬品候補を提案した。」 水溶性ペプチド誘導体構造を有する新規化合物を「ナトリード」と名付け。実証実験が行われている。

文献中 図4はナトリードの有無による2つの遺伝子発現の時間依存性を表している。

化合物の同定についても最新の分析装置により行われて、逆にそれぞれの各成分を反応により最終品を入手できることは他大学との連携で判明した。まずは、ラボから実用段階へ、その後の将来については合成も視野に入れるのであろう。もとより、健康食品としての成果を地道に、精度よく積み上げての、研究と同じ情熱で仕上げることが期待される。

因みに、この商品は第一工業製薬(本社京都)から発売されている。一袋はコーヒーの値段より安価な設定にして、長期継続服用を期待しているようだ。 大袈裟な宣伝は苦手な企業文化であるが、京都は土地柄、確かなものしか認知しないので長い目でウオッチが必要であろう。

アルコール分解遺伝子とは

海岸線を列車から眺めると「海洋深層水取水」とのパネルを見ることがある。海水との相違を明確に理解していなかった。図書館でふと目にした文献にはデーターが記載され、原則を知ることで、ミネラルウオータ、化粧品、発酵食品、工業的には低温倉庫や発電にも展開と応用・検討されていることが分かった。生半可で分かったようなふりをしている自分が恥ずかしかった。 

アルコールに関しての知識も同様である。おそらく100人いれば100通りの通説があるだろう。「百薬の長」に始まり、酒量は訓練次第で増える説。1滴でも脳細胞が死滅するから飲むな説まで幅広い。まともなのはアルコール分解酵素の有無で酒豪~下戸の説。いずれもあやふやで落ち着かない。

その前に、家飲みでは・クリスマスにはシャンペン、(スパークリング)ワイン 大晦日にはビール、ワイン、ウイスキー 正月には日本酒、ワインと多種多様のアルコールが消費されている。会話はアルコールがあれば弾む。やれ、この日本酒は希有にして入手困難なんだ、とかワインの銘柄蘊蓄を肴にして、正月明けエンジンがエンストしないようにアルコールタンクに詰め込むのだ。

一方、缶酎ハイの伸びを報ずる記事がある。酒税が350mlで28円とビールの77円と価格が安い、アルコール度数が9%と高い、なによりジュース感覚なので、ぐいぐい飲めるとあって若い人に人気。ビール業界ではアサヒ、キリン、サッポロも缶酎ハイではサントリー>キリン>アサヒ>>サッポロの販売量と順位のようでRTD業界は大変なようだ。

あまりにも高いアルコールを高い頻度で飲酒する可能性からWHOでは規制をする動きもあると日経ビジネスの記事は締めくくっている。RTDやエシカル市場について記載。この語句を読者が直ぐ分かるか?。今やスマホ検索しながら読む面倒なことになってきた。記事へのアクセスは容易になったが、その先の不便な文章には辟易する。Ready to Drink ethical と書いた方がよほど理解しやすい。と酔いを言い訳にして少々クレーム。

 正月明け早々、悪態をついてしまった。そこで酔いから冷めて少々真面目な話を。

現代化学20201月号に「酒が飲めないように進化した日本人(その1)」の記事がある。進化した変異遺伝子をもつ人間は酒に弱く、進化せずに祖先型遺伝子をもつ人間は酒に強い。として祖先型と変異型の遺伝子のどこが違うのかを紹介している。それにしても酒に強い人は日本人でも50%いる。その人達は進化していないとはなんたる言い方だとお怒りなる人も読者の中にはおられよう。著者の新村氏はアルコール分解の遺伝子に祖先型と変異型があり、アルコールが分解されてアルデヒド(これが気分が悪くなり、二日酔い)になると、次にアルデヒドが酢酸に変化するための遺伝子にも祖先型と変異型がある。

その組み合わせで酒豪~全く受け付けない下戸の5区分に分類できると説明。

 

 

遺伝子のどこが祖先型か変異型かは表の外枠注に記載した。

 

アルコール分解速度が非常に遅く(それだけ気分よく酔える時間が長く)、アルデヒドになっても、即分解して酢酸になる。非常に理想的で僅かなアルコールでも酔える。日本人には3%存在しているとのこと。ただ、麻薬みたいにリピート欲するためにアルコール依存症になる(Aタイプ)。それに対して親のいずれかが祖先型である子供の場合、アルコールが分解してアルデヒドになる速度(時間が短く)、アルデヒドも直ぐに酢酸になるので、顔色変わらずに飲み続けることができる。(タイプB)(逆に言えば、酒量が多くならないと酔った気分にならない不経済な人)。その逆パターンがC,Dで文献引用して作図したので参照願いたい。訓練で酒量が増えたので飲めると誤解している人は顔が赤くなるので食道癌などの疾病を引き起こすので、この人達に酒を無理強いしてはいけない。

 

 

 

 

 

全くアルコールに無縁な人はそれ以外のスキルで場を盛り上げることが必要で、それは訓練で幾らでも上達できるはずだ。

この文献の初めに、木の実は熟すると表面に付着している酵素によりアルコールを生成する。熟した実は地表に落ちる。ゴリラ、チンパンジーは木に登らずに、落ちてくるのを待てば良いと。その遺伝子を引き継いでいるのが祖先型遺伝子。変異した理由は不明であるが、このブログで紹介したことがあるが中国・ベトナム国境あたりで変異して日本に伝わったとの説がある。関西・中部地区で弥生人系譜はアルコールに弱い人が多いのは、この説だとも言われている。最後に再びあやふやな説を紹介してしまったが、アルコール、アルデヒド分解遺伝子が解明されたことは凄い進歩だと思う。

知的財産権 特許庁活動と提言

「突然ですが問題です。として始まる特許庁支援課のプレゼン

(2019.12.12@埼玉産業技術センターでの講演より抜粋)

Q1 2年前に他社が開発・販売した製品。売れているが知的財産権を取得していないので、形状や機能をすべてパクリしてロゴだけ自社のモノを製造して販売した

合法? 非合法?

Q2 5年前に他社が開発・販売した製品。売れているが知的財産権を取得していないので、形状や機能をすべてパクリしてロゴだけ自社のモノを製造して販売した

合法? 非合法?

Q3 自社のマル秘技術。特に管理ルールを設けているわけではないが、外部には知られていない。これを自社の社員が退職した際に持ち出し、自分の会社を立ち上げて利用している

合法? 非合法?」

の質問で始まる特許庁 総務部 普及支援 産業財産権専門官の出張講演が埼玉産業技術センターであった。「 」内は当日の講演冒頭で聴取者にヒヤリング設定問題である。これこそパクリ・丸写しであり、文書作成した特許庁に著作権がある。著作権は死後70年あるが、講演会の目的が普及活動にあるので転載の形で許されるのを確認した上でブログを書いている。

冒頭に戻り、Q1は非合法 Q2は合法、Q3は合法。

皆様の回答は如何でしたか?  Q1は非合法。 既に商品を製造し販売。3年以内は守られるルールがある。ところがQ2は5年経過すると、そのルール適用はできないので合法となる。なのでパクリ商品を出す場合は(知財出願がないことを確認したら)3年と1日待つことになる。なんだか、G党のEgawa事件を思い出した。 Q3は労働市場の流動性が過去より激しいので、よそ事ではない。 社則での管理、雇用労働契約の整備、特に退社時の書類の保管が重要。 よく言われるのは、社員は会社情報を漏らすより、経営者が多い。自社自慢もあり他社との会合の場や、展示会でつい力が入って背伸びした発言をすることがある。

講演会では特許、実用新案、意匠、商標権について具体事例をあげて紹介。特許は出願から20年、実用新案10年と期限があり、意匠、商標も都度延長があるので、商品の立ち上げからエンドまでの寿命を考えて出願する必要がある。意匠、商標を新規に考案するときは、売れている商品にどうしても意識・発想が引っ張られる傾向がある。どうみてもパクリだろう的なものもある。誤解させるネーミングもある。特にSNSのアドレス、商品にみることがあるが、現在は日本語が怪しいので見破ることができるが、巧妙な仕掛けを次々にするだろうから油断はできない。 ここも具体例を挙げて専門官は説明。

特許庁は40人ほど(単独でなくも合算で)揃えば、出前の講演会+特許相談をお願いすることができるので、これは是非利用したいものだ。知財の全体像を理解するには非常に便利だ。

今後、効率よい出願や、ブルーオーシャンのビジネス狙いにはパテントマップの作成がある。筆者も若いときはマッピングを作成したことがあり、会社別にまた発明者毎に整理すると、その人の技術的背景や癖を理解した。非常に面倒なので外注先を特許庁がアドバイスしてくれるHPがあるので参考にされては如何でしょうか。

中小企業には出願において特典が用意されている。外国を対象にする場合はPCT出願を日本語でしておいて、国が決定したら翻訳して海外国に出願する。PCT出願費用及び翻訳料の支援が受けられる。筆者も度々利用しており、特許庁から還付されるとホットしてありがたいと思う。

一方、特許は長くて20年。なので、永遠に技術保持して他社排他にするには、徹底した技術の囲い込みと流出防止をすることもある。コーラが代表的であり、最近ではノウハウ・ブラックボックス化もある。 想像だが、特許を継続改良で出し続けて巨大な特許網を形成する費用と徹底した秘匿への費用は拮抗しているのではないかと思うが、秘匿すればするほど魅力性が増すことが付加価値になっているのであろう。でも大変だ。

経済先進国のこれからの成長エンジンは知的財産にあると言われるが、本当は「もの造り」「ソフト創り」の現場があって成立する。妄想は勿論、机上の空論は特許にはならない。実施例、比較例により先進性、新規性を証明して初めて特許が成立する。 もの作りで先頭を走らないと、基礎的研究を牽引することはできない。ものづくりと知的財産の生産は両輪なのだ。ただ課題がある。知的財産をサポートする弁理士、また特許庁においては、重厚長大時代に活躍した機械、電気、電子関係が多く、これからの成長分野である創薬、バイオ、遺伝子工学、医学分野や、それらに共通する化学の専門家比率が極めて低い。ここが知的財産育成の課題であると考えている。 学生から実業界を経験しないで弁理士、審査官になることが多いが、それに加えて実業世界で先頭で戦ってきたシニアの経験を活かす採用があっても良いのではと考える。

化石賞・日本

COP25で小泉進次郎環境大臣が日本が「化石賞」をとってドヤ顔でコメントして失笑されたとの記事がどのマスコミも報じていた。しかしながら、日本の内閣の一員として日本政府の立ち位置を明確に論じたその度胸は(本人が意識してなら)エエカッコシイにしては大したものと言える。日本は決して環境を損なうような態度ではなく、環境関連の開発は世界のどの国よりも先頭に立っているのだ。新幹線網、鉄道・地下鉄、公共機関の充実がなかりせば、どのような環境になっていたのか、カリフォルニアや中国の事例を挙げるまでもなく納得するだろう。春のダイヤ改正で「のぞみ」は1時間に12本。ここに「ひかり」「こだま」が挿入される。化石賞を授与した人は日本に来て先進国の姿をみたらと思う。

環境と同時に大前提がある。それは国民が豊かで安全な社会を営むことができることにある。化石利用ぜず、原発も利用せず、太陽光と風力、水力発電でカバーできる訳がなく、恐らくは闇夜に近い生活を送ることになる。エントロピーの法則がある。あの3.11で電力調整を余儀なくされた首都圏では階段を利用し、エスカレーター、エレベーターは利用制限された。エネルギーのありがたさをどの国よりも身に染みた。それが今はどうか、たった5段程度の階段でもエスカレーターがあれば並ぶ。若い人でも年配者を差し置いてエレベータに乗り込み平然としている。それがモラル破壊エントロピー法則?。聲高に非難するつもりはない。一旦消費の味を覚えると戻れないのも事実。とは言っても迫り来る炭酸ガス増加に対して、何らかの対策を打つ必要があるのも先進国の模範としては必要。だが、未熟な技術で慌てて絆創膏貼りをするなら却って無駄な投資になる。異常気象が温暖化によるものか議論がある。災害がやたら多い国柄。大型太陽光発電が台風で火災や架台破損。日本でこれから風力発電をするとなると海上になるが、これも台風がくると破損もしくは運転停止措置としてローターを折り畳むことになる。

火力発電はダメだ。銀行融資をすると銀行が反環境団体とされてしまうのでそれも嫌だ的な動きが出始めている。石炭発電も欧州と日本で開発された発電では性能が異なるので一色単にしてはいけない。液化天然ガス発電についてもダメの動きがある。さすれば天然ガスパイプラインを新設したロシアと欧州は具合が悪いことになり、政治的動きが予想される。そうするとCOPは骨抜きになる事態もありうることになる。

日本の取り得る対策としては

*使用済み核燃料の前処理・埋設を理解の下粛々と進め、現在3割稼働の原電を安全を見極めた上で稼働率を上げる。

*火力発電の効率アップと排出される炭酸ガスの深海、地下蓄積を世界に先駆けお手本とする

*炭酸ガスを吸着反応させる簡単なアタッチメントと反応物の応用利用(小中学校でならった炭酸カルシウムの反応式の効率的反応プロセスの開発)

*水素エネルギーの抜本的開発。

その他あるが、環境省と経済産業省(NEDO)が協調して効率ある方針を立てることが望ましい。

短兵急なその場しのぎ(ポピュリズム的な)対策は一呼吸おいて判断する必要がある。 死んだ鯨のお腹から「生分解」と書いたプラスチックスが分解せずに発見された様に、生分解プラも特定の環境(多くはコンポスターに入れて、必要によっては触媒を振り掛け、長時間、ある温度条件で保存すれば)炭酸ガスと水に分解するというもの。 生分解製品をぽい捨てしたらたちどころに分解する訳ではない。即分解するような材料であれば、製品製造から流通段階で分解してしまう。そこが問題だと気がつく人は少ない。言われてみるとそうですね。となる。いち早く気がついたのが自動車メーカー。生分解材料歓迎!といいつつ、バイオ原料由来のプラスチックスと言い換えた。生分解材料でクルマを作ろうモノなら保障の限りがない。

冒頭、小泉大臣を褒めたが、9月に「2050には炭酸ガス排出はゼロにする」と発言した。 炭酸ガスが存在するので植物は炭酸同化作用する。植物~人間連鎖に大きな影響することに気がつかないのか、それとも。大きな組織を動かすには極端なことを言う必要があると考えたのか、その場のエエカッコシイ発言は遠慮願いたい。

自動車のこれから

知り合いに高齢運転者講習会に行ってきた人がいる。70歳を超えると免許更新を前に受講することが義務付けされている。受講料5100円で視力・動体視力・視野角の測定と教習場コースでの運転技能チェックがある。本人は30歳相当との診断を得て自慢している。75歳を超えると認知症のチェックも入る。その時も自慢するだろうか、いや待てよ、何年後にはこの制度が継続しているか疑問なのだ。

現在はレベル2(前車追随、自動ブレーキ、レーンキープ)それに車庫入れアシストか自動化、死角にある走行車の接近警報機能も利用されている。これは完全自動運転のレベル5には達していないが、そう遠くない時に実現すると予想される。そうしないと自動車メーカーは生き残ることが厳しくなるのが予想されている。パワートレインがガソリンだ、EVだと言う前に自動運転に向けたソフト開発が重要になっている。当然だが運転免許そのものも必要がない。

 行く先を乗車後に口頭で言うか、スマホのスケジュール通りに目的地まで運んでくれる。スタートのボタンを押せば全て終わりとなる。パソコンの原理やスマホの原理を知らなくても利用できるのと同じである。初歩的機械言語のBASICを知らないとパソコンを動かすことができなかった時代があった。それから30年も経過していない。自動車の自動運転も時を経ずにそのようになるだろう。自動運転については既にグーグルがテスト実績で先行しており、自動車メーカーはパソコンや携帯と同じ運命にならないように必死にソフト開発をする必要がある。先日の東京モーターショーでもホワイトボディ(骨格)を自動車メーカーが製造するだけになり、モーター、電池、通信機器などモジュールを組込むだけに見られるようになってきた。これでは自動車メーカーは完全なソフト会社の下請け企業に成り下がる。

 VW(フォルクスワーゲン)はディーゼル燃費不正事件を引き起こした。そこで一気にEV車に切り替えると宣言はしたものの、EVは欧州の走行距離には満足できないユーザー、及び、バッテリーの価格が自動車全体の1/3~1/2を占めるようでは利益が薄いこと、メイン市場の中国がEVからハイブリッド優先に切り替えたことからVWはディーゼルにも戻れず、さりとてEVと宣言したものの、クルマは作れど収益がでない体質になってしまった。VWグループにはポルシェ、アウディが存在するが、車両数が少ない割にそれぞれの利益がグループ全体の30%を占めており、VWは世界一の生産台数を誇るもグループ内の利益割合いは24%に過ぎない。そこでVWが望みを掛けるのはソフトで市場を獲得することとしてソフト関係の技術者を大量に雇用し始めた。ソフトの価格も台数見合いで決まることから、世界一の規模をキープする間に間に合わせようとの試みのようだ。

 半導体の生産で世界を掌握した日本、それをベースに拡大した韓国、だが、実際に利益を出したのはアップルなどソフト業者。日本の地形にあうようなソフトができれば、日本より単純な海外では通用するだろう。是非頑張って欲しい。

ここまで将来を予想するとなると材料マイスターとしては、はてどうしたものか?と頭を抱える。

 現在は半自動なので衝突時の安全性とホワイトボディの軽量化から超高張力鋼板適用率が高くなっている。汎用の曲げ応力が230MPa(価格150円~200円/kg)相当に対して2000MPaの鋼板が小型車にも適用されている。当然のことながら材料の価格及び剛性を高めるためのホットスタンプ、冷間加工も適用されることからホワイトボディの製造価格は高くなる。これが自動運転で衝突回避できるとなると、汎用鋼板やアルミで十分ではないか、場合によっては複合樹脂材料が適用できるのではないかとも考えられる。

ここで言う複合樹脂材料としては高張力鋼板の曲げ応力800MPa(曲げ弾性率100GPa程度は欲しいところであるので、ここは炭素繊維の複合樹脂が最も考えられる。近年、パルプ由来のセルロースナノファイバーの弾性率は鉄のそれより10倍あり、かつ比重が低いとあって自動車軽量化に有用ではないかとして京都プロセスを中心に研究開発が進められている。セルロースナノファイバーは現在は安価版で5000円/kg 一般では10,000円/kgと高価であることから、京大を中心としては原料50円のパルプと樹脂を2軸混練機の中で繊維を開繊して樹脂に分散させるプロセスを開発している。東京モーターショーでもインパネなど試作品を展示していた(ブログ既報)。

 しかしながらベース樹脂の曲げ弾性率(ヤング率)を高めるものの、1.4~1.8倍程度であり、ポリプロピレンの曲げ弾性率(2.54GPa)前後が到達レベルである。炭素繊維強化エンプラ系複合材料の80GPaに比較すると低い。自動車に適用するにはやはり内装材に限定されるのではないだろうか。また隣を走行する車からの電磁波をシールドしないと誤作動を引き起こす危険性は今のクルマより高くなる。その対策としては炭素繊維プラスαの複合材料が好適ではないかと考える。耐熱性もあり、リサイクルも開発が進んでいる。

 一方、3Dプリンターの進歩は製品のトポロジー面においても著しい進歩が予想される。そうなると、金属3Dプリンター、及び炭素繊維強化光重合SLA3Dプリンターによるボディ製造も予想される。無駄な材料を省きながら全体としての機械的強度を維持向上させる形状、及びそれに対する成形法として3Dプリンターが今以上に活躍することが予想される。

 ところで、GPSの機能は凄く進歩している。これからの積雪の季節となると除雪車はGPSで崖などを検知しながら運転することが知られている。さて、宇宙に存在する衛星と地上のクルマでは重力差があることから時間は宇宙が早く、地上が遅い(相対性理論)。なので、正確を期すにはこの時間差を調整する必要がある。クルマ設計はニュートン力学で十分だったはずなのに、アインシュタインの相対性理論までマスターしないとはご苦労なことだが、これもソフトに入れることが可能なところが世界を把握することになるのだろう。

職業も変化する。手近なところでは自動車教習スクールはその時代には姿がない。交通関係警察官も削減と職業も大幅に変わるだろう。

もっとも人口は確実に増加する。メディカル分野は成長産業には間違いない。でも内容はIOT,AIにより変わる。いやはや、常に勉強、勉強、勉強だ。でもこれも愉しまなくては損だ。