迷うことに意味がある  羽倉論文から

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NBPに異変が起きている。巨人、中日、阪神のチーム屋台骨メンバーが1軍登録抹消の状態。スランプというが、ベテランならば脱出法に熟知しているはずだがおかしい。そこで3度も三冠王を取った落合の事例を見ると彼もスランプの経験があるが、脱出法を開示している。原因解析、努力、前向き姿勢と家族、コーチその他の助言を受け入れることとある。

俺流を自他認める人だけに家族、コーチ、周囲の助言を受け入れることとは驚いた。天賦の才能を生かして若い時に頂点に立った人であるほど自己流にこだわる。それで期待されながら成績を残せなくて去った選手は山ほどいる。

メジャーに渡った藤浪は日本球界ではイップスに苦しんだ。メジャーで当初は活躍したが、その後急にイップスを発症。コントロールどころか暴投。見ていて気の毒になる。完璧主義者ほどイップスになるとの説がある。小中高時代に内野手の47%は送球がうまくいくとホッと安心し、送球前には不安が過ぎる経験があるとのこと。監督から叱咤されることが影響するらしい。

スポーツは肉体的に恵まれることだが、優れた心理的管理環境に恵まれることが重要なのだろう。中日の根尾昂選手の育成活用を見ると指導者がプロ野球経験者だけでは不十分で野球人生設計をできる心理面のサポートが必要だろう。両方できる監督はレア。三原脩と仰木彬氏。この流れを汲む栗山英樹だろう。

そんな中、面白い文献を見つけた。

情報通信研究機構の羽倉信宏研究チームが6月13日に発表論文名は迷うことにも意味がある 〜決断の迷いも含めて脳は運動を学習することを発見〜」何に注目したかというと、背景の項目だ。全文引用する。

サッカーのPK戦では、選手はゴールキーパーの左側への動きを見て確信を持って右隅にボールを蹴る場合もあれば、ゴールキーパーが動く方向に確信が持てないまま同じように右隅に蹴ることもあります。どちらも見かけ上は同じ運動であるため、この「右隅に蹴る」という動作について脳から同じ指令が出されていると考えられてきました。

つまり、これまでの意思決定や運動制御の理論では、一度意思決定がなされてしまえば、その決定の確信度合には依存せずに同じ運動が実行されると考えられていました。た。しかし、研究グループは、これまでの考え方を覆し、脳は決断を迷った末の運動と、迷わずに行う運動を区別し、異なる運動として実行していることを明らかにしました。

 実験方法も単純だが面白いので文献をチェック願いたい。 これを読むと練習の為の練習をやるのではなく、相手も押さえてやろうとの意識の戦いの中で実践形式でないと成長もしないし、スランプやイップスは回復しないのとも(文献より外れているであろうが)言えるのではなかろうか。トスバッティングやフリーバッティングの投手の球では快音で気持ちが良くても、勝負すべきところで活躍できるかは別。

ビジネスにおいても修羅場を経験した人の計画と、経験が浅い人の計画が表向き同じような案であってら後者が採用されることは少ない。優秀な若い人はコンサルタントへの希望が強いが、実行する時には計画外のことが頻繁にある。その対応には修羅場の経験がモノをいう。修羅場経験者には独特の安心オーラがあるのだ。これはAIにはできない。

この文献の最後のまとめに次の文章があるので重ねて引用する

「スポーツ場面では、いつでも同じパフォーマンスを発揮するために、「迷うな!」という指示が飛ぶことがあります。しかし、今回の研究結果では、脳は、むしろ迷いを受け入れ、迷いに応じた運動を作り出すことで、パフォーマンス低下を防いでいることが分かりました。つまり、現実場面で安定したパフォーマンスを発揮するためには、ただ単に目的の運動を達成するための練習に注力するのではなく、事前の意思決定状況とセットで運動を学習する必要があることが示唆され、新たなスポーツ等の指導方法につながります。」

なるほど事前の意思決定状況を詳細にPD CAしているであろう大谷は肉体的・心理的に凄い人だと思う。

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