意味的価値

経営学を学んでいる友人が米国ナイキを訪問した際に「目標 売り上げ2倍、環境負荷1/2。そしてsustainableなビジネス、社会を作る」とあったと知らせてきた。なるほど目標が曖昧で倫理綱領さえない会社がある日本よりは良いだろうと思いつつ、この目標は誰に向かってなのか?CEO、株主、投資家向けには理解するが、Company(一緒にパンを食べる仲間の意味)の社員の姿が見えてこない。

今、池田勇人が存命ならば「環境負荷1/2、継続できるビジネス、社員ともども所得倍増をし、それによる社会貢献をしよう」というであろう。

友人の解釈はこの目標を設定することが「もの作り」だけではなく意味的価値(一橋大学の延岡教授の言葉)があるとのこと。浅学の小職は意味的価値が正直分からなかった。何だか若者の「私的には・・」をも想起させてついていけない。理解不能の小生に友人から対極に機能的価値があるとヒントをもらって文献を読んだ。幾つもの機能的価値(機能的価値は評価法・測定法でカタログに明示できる)のトータルが意味的価値である説。一方で、意味的価値はユーザーの感性によるとの説。延岡教授はiPhoneは機能はその後に開発された他社品より、持っていることが愉しい。それが意味的価値だと例示されている。

この説は約8年前に発表されたが、現状はどうかと小生の経験で言えば、次世代材料や製品を考案・企画・試作・市場評価のどの工程でもユーザー満足度をまず満した上で、エッ!?「これって有ったらいいね機能」をプラスしておくことはどの設計者もデザイナーも意識している。単に製造工程の短縮で生産性を高めるだけの「もの作り」は海外勢との競争に晒されて卒業しているのが実情ではなかろうか。 

iPhoneは確かに革新的であった。ジョブズを応援したい気持ちも後押ししたのではなかろうか。機械言語をマスターしなくても、誰でもパソコンができるマックに助けられた人は多い。またトラックボール(マウスのような機能)も可愛かった。フォントのオーサカも人気があった。ウインドウズに崖っぷちまで追い込まれながらのiPod,iPad,iPhone 出現に判官びいきもあり応援した。単なる持って良かったではなく、歴史・経過をユーザーは見ている。ジョブズのプレゼンテーションは従来のやり方を変えた。これも新時代を象徴するようで、その時代を共有するにはデバイスが必須だと思わせた。

極端であるが、洋菓子の攻勢に対して和菓子も健闘している。和菓子を買う理由の一つが接待する相手に「いわれのある」茶菓子を用意することで、接遇のレベルを分かって欲しいとの思いがある。出された「いわれのある」菓子を知らずに食べようものなら恥をかくことがある。いわれのある=隠れた意味的価値なのだろう。創業100年程度では選択肢に入らないこともあるようだ。特に京都では要注意。

燃費不正は日産に始まり、スバル、マツダ、スズキ、ヤマハ と連鎖。測定法云々理由はあるようだが、国交省からのヒヤリングがあって初めて報告するとは「もの作り」としては情けないが、意味的価値では非常なダメージである。意味的価値の付加は困難でも失うのは簡単だ。これを「他山の石」と肝に銘ずるべきなのであろう。

機能的価値より意味的価値が圧倒的に突出しているのが芸術。先週金曜日、新宿柿傳にて開催の高橋奈己展「白い陰影」を見に行った。美しい襞が静謐ながら躍動的であり、かつ上品な色気がある素晴らしい白磁作品。高橋奈己さんは幾多の受賞を受けている理由が分かる。花器としては使用後の洗浄し難い口径なので機能的価値としては小さい。ところが、白磁のお茶碗で頂いた抹茶には、色彩コントラスト、適度な重量感、唇感触などを感じ思わず背筋が伸びた。

磁器の原料のカオリン(長石)はプラスチックス複合材料として利用されている。ウム。同じカオリンとして発掘されながら、最終的な製品価格はとんでもない差がある。これが意味的価値か・・・と納得して帰路についた。

私の甲子園

夏の甲子園が始まった。皆様にとって色んな想い出があるでしょう。歯科業界のなかには甲子園児だった人もおられよう。小職の高校は旧制中学当時に出場権は得たものの迫り来る戦禍に中止になった。戦後は地方大会でも1回戦負けの記録が延々と正に縁がない。陸上部からの臨時選手で埋めるようではそれも当然。それでも突然変異でプロ注目の投手が現れると3回戦まで進んだこともあるが、卒業すると元の木阿弥。 

甲子園の土は踏むことはできないが、小生にとって甲子園アルプススタンドや外野席(芝生もあった)での観戦歴は結構ある。家を朝の4時に出て、始発の阪急、阪神と乗り継ぎ甲子園に到着。脱兎如く走り中央口に並ぶ。このとき新聞紙を手に疾走するバイト学生と競争になる。バイト学生は球場オープンするやいなやバックネット中段のピッチャー球筋がよく分かるところに駆け上がり新聞紙を拡げて場所取りをする。当方も彼らに負けずに席を確保すべく、階段などの障害物を越えて目的の席へ。試合開始2時間前の障害物競走が終わると、静寂が訪れ朝食弁当にありつく。バイト学生はスカウトの為の場所取りで本当はルール違反だろうが球場も見て見ぬ振り。プロ野球で活躍しスカウトに転じた人や有名な野球評論家がいるので、そう強くは言えなかったと思う。今のスカウトの名誉の為に言うと往時の風景であって今はない。

こちらの楽しみはスカウトの雑談解説を聞くことだった。

「おい、あのピッチャー 評判だけど、もう肩がダメだな」とブルペン投球を見ただけでの判断

  →プロになったが活躍せず。

「あの監督のサインはエンドラン。バレバレのサインだ」 

→見事に当たった。地方大会から追っかけでチェックしてきたことだから言えるのだろう。現在のサインはプロ並の複雑さ。

「おい、あの監督への挨拶はどうなっているのか」と部下に指示するスカウト

「ゴーストライター記事に目を通す評論家」この記事が明日のスポーツ新聞に載る。

米国スカウトがスピードガンを持っての観戦も普通になってきたが、初めのころは放送、新聞関係者が米国スカウトにインタビューをしているのを聞こえる席で聞いていた。今年も人材が豊富なのでさぞや賑やかなことだろう。

今は見られない光景に銀傘裏天井から紐に結わえられたカメラのフィルムロールがスルスルと降りてくる風景。そうカメラマンが上で撮影したものを受け取り、新聞社に送る人がいた。熱気が籠もる場所で下には滅多にいけないカメラマン。それで熱中症にならなかったのが不思議なくらい。今ほど暑くはなかったのかも。

内野席に入れないときの外野席も結構面白い。地方色が多彩でそれぞれの地元愛を熱く語る人もいれば、プロで大成した人と同級だったが、自分は裏街道に入ってしまったと回顧反省を語る人もおれば人間模様それぞれ。で最後は食べ物、飲み物を交換しながらの観戦。目の前にホームランボールが飛んできた。その選手の名前を忘れないのも外野席の愉しみのひとつであろう。

就職先の三重県で生まれた長男は小学校時代から地方大会ネットに定石のように動かずに観戦。両校の応援団からの差し入れもあり、朝から晩まで張り付いていた。親譲りだが親以上。小生の転勤に伴い横浜にくると長男の高校は2回戦どまり。大学時代TV局の野球関係のバイトをするなかで、横浜校の渡邊監督と会話をすることがあり凄く感動したと。どの道でも極めた人物には頭を下げるだけのパワーと魅力が備わっていると長男からのコメント。この長男も今年の横浜高校の試合日程で甲子園に駆けつけると聞いている。実家に寄るよりは甲子園が惹きつける。これも甲子園の魔物かも。

81512時の合図にスタジアムは静まり黙祷を捧げる。黙祷の間は無心であるが、終わると何故か戦争の戦略・戦術と野球と似ていないか?など思いつくことがある。欧州にいた外交官からは戦争突入せずに、別の和平方法があるとの強いサインを出していながら、無視して強攻策をとる大本営。 日清・日露の地方大会で勝利したので世界大会でも勝てると盲信した当時のエリート。それを囃し立てるマスコミ応援団。相手のベンチのサインを読み損なった結果、最後は自滅コールドゲームで敗戦。その間に散った犠牲者を考えると戦いの前から、かのスカウトの読みのようにしていれば。。。と思わざるをえない。スケールの大小はあるが人間のやることはあまり変わらない。

デジタル印刷

IGAS (International Graphic Arts Show)2018がビックサイトで昨日まで開催されていた。近くで打ち合わせ後、帰社には時間があったので見学した。平面のデジタル印刷の延長が3Dプリンターと考えて何か関連性があるかもしれないとぼんやり考えたのもその理由。

ブース1~6まで大型デジタル印刷機械のデモ。 印刷素人の当方からすればどれも同じと思うが、精緻さについては長年の経験が織り込まれた印刷技術を3Dプリンターに応用するところがあるかもしれないとの皮膚感覚でウロウロ。歴史的には印刷方式は分類すると4種類ある。凸部にインクを載せて押印するように印刷する凸版・フレキソ印刷(子供のころの芋版年賀状がこの部類)、  段ボールへの印刷はこのフレキソ印刷が一般的で精度をさほど要求されないが、5年ほど前から急激に精密性が向上し、オフセット印刷と見間違えるポスターも出てきた。凹部にインクを充満させて印刷するグラビア印刷、親油性インクと水溶性インクを交互に重ねるオフセット印刷、そして謄写版の孔式印刷がある(謄写版:60代以上は微かに記憶。先生から渡される宿題は謄写版。下手な人は虎縞になった)。

自治体のゴミ袋や大手衣糧品メーカーの紙袋などは大量生産可能なグラビア印刷に、名刺やポスターなど精緻な印刷はオフセット印刷が利用されている。グラビア印刷では版元から文字・絵柄などが取り次ぎ商社に送られ→版下作成→版元・デザイナーと調整し微修正→銅シリンダーを削り凹部とし、図柄を転写させ印刷するが色合わせに時間がかかる。インクが凹部に入り印刷物が通過する前に表面のみ転写させるために余分なインクを掃き取ることが重要で、ドクターナイフの表面精度が要求される。ゴミ袋や紙袋の生産は中国がメインとなってしまったが、グラビア印刷機やドクターナイフは日本製でないと合格率に影響する。オフセットの代表的な対象は新聞、折り込み広告、ポスターなどであるが印刷数は多い。

それではデジタルだと何が変わるのか? メルマガなどWEBサービス、SNSもデジタル媒体だが、どう違うのか? 大きなブースをみるとHP、キャノン、リコー、富士ゼロックスなどインクジェットプリンターメーカーで超大型 インクはパソコンと同じカラーのカートリッジ。 CADから直接アウトプットできるのは普通のパソコンと同じ。BGRをCYKに変更するソフトは2年前にみたことがあるのでクリヤーしているのであろうと想像した。

印刷業界がシュリンクする傾向のなかで、この大型投資をするのか?説明員が曰く、メルマガなどWEBにユーザーの関心が薄れてきた。特定ボックスに振り分け、開封せずに消去する人が出てきた、それよりはDMの方が効率が高いとの統計的データーがある。。。。そうかも知れない。でもそれだけではないと思い見本をみると実に面白いことが分かった。それは個人宛の印刷対応ができること。お誕生日カレンダー(写真)、商談会への個人案内(写真)などは一括大量印刷ではなく、個別ユーザーへのマーケティングには従来にないインパクトがある。

個を求め始めたマーケットとデジタル印刷(紙or フィルム、金属箔など)の可能性に気づき始めたマーケターの流れだろうと思われる。斯界トップの凸版印刷では単なる新規広告だけでなく、新規ビジネスへ拡張企画を発表している。HPブースでは「紙、復活」を合い言葉に関係会社のデジタル印刷機能を発表していたが、製紙メーカーはパネルのみ参加と合い言葉と一致していない印象を受けた。それもそのはず、製紙業界は原料パルプの高騰、燃料、諸資材の高騰、物流費の上昇を受け値上げをせざるを得ない状況にある。一方でセルロースナノファイバーの新規開発も同時並行で進めていることもある。ストローの紙化は耐水性問題から樹脂ラミネート、フッ素化合物の表面塗布が技術的にはあるものの、価格で合わず世界で僅か2000トンの為に設備対応もできず空気を輸送するような製品では物流費もバカにはならないなど、諸手を挙げて紙化を歓迎出来る状況にはない。印刷機械メーカーは踊れど製紙メーカーは踊りたくても。。。

熱線反射

連日の猛暑。「命に関わる暑さです。不要な外出はしないで下さい。」このナレーションが流れない日がない状態。汗腺の数が少なく孔径が細い幼児~中高生、および高齢者は特に注意が必要とのこと。駅などでスーツにネクタイの高齢者を見掛けると無理をしないでと声を掛けたくなる。その駅で通勤途中のサラリーマンが熱中症で緊急搬送されるのを目撃した。寝不足も原因になるのだろう。昼の能率上がらない仕事を自宅に持ち帰りカバーしたとしたら気の毒。

地球温暖化説は間違い・嘘であるとご高説をたれる一部の大学教授、マスコミ関係者の言われることを否定する証拠を自分は持ち合わせていないが、この猛暑・酷暑それに伴う豪雨が続けば地球温暖化説に大きく傾いた上で有効な対策をするのが大学公的研究機関及びこれをビジネスに結実させるべく研究開発をする民間企業が本来あるべき姿だと思う。温暖化を否定して何もしないで人の命が失うのは堪えられない。

日本の温度変化は100年間で気温は図に示すように右上がりで1.19℃上昇している。(日経記事引用) 周囲の海の温度も高くなることから、飽和水蒸気濃度も高く、雨量が増える流れは理解できる。それでは何故温度上昇するのか? 炭酸ガス濃度は産業革命以来増加し続け400ppmまで到達。だから炭酸ガスが主原因を唱える人が多い。もし炭酸ガスがなかったら地球の温度はどうなるかご存知だろうか? 答えはマイナス18℃。宇宙と同じ。地球の平均温度が15℃なので合計33℃が炭酸ガスの温室効果となる。太陽からの熱線を炭酸ガス層が反射して地球の温度をキープしている結果である。当然ながら地球の熱を宇宙へ放熱する際には炭酸ガス層は断熱材となる。

太陽光は紫外線~可視光~近赤外~遠赤外のスペクトルを有しているが、熱線となるのは近赤外~遠赤外である。この領域の光を吸収する化合物は多々知られているが反射する化合物は限られている。日傘や駐車時の反射シートなどはアルミ蒸着シートが利用されている。但し、可視光は通さないので透明な熱線反射日傘は(価格見合いで)実用化されていない。可視光を通すが近赤外・遠赤外を遮蔽する化合物として20年以上前までの輸入車のサイドガラスが緑色をしていたことで分かるように銅化合物が利用されたいた。透明な樹脂に配合しても熱線遮蔽効果はあるが、国内の自動車メーカーが要求するレベルまで配合すると可視光透過率が低下しまるでサングラスカーのようになって好ましくないことがわかった。いまは往年の外車の緑色ガラスを今はみることがない。UVカットガラスは自動車に限らず、車両、建築物に利用されているが、熱線反射には輝度ガラス、偏平形状の雲母、アルミ粉末などを配合するケースがあるが、所望の透明性にはならない。

正解がなかなかない中、液晶での対応が試みられている。25年ほど前、ジーイープラスチック(GEP)がコンセプトハウスをNY州オーバニーに建設し話題となったので見学した。地下のボイラー廻りはエンプラ発泡断熱材(これはGEP得意の変性ポリフェニレンエーテル)だがキッチン廻り、窓廻りは実は日本メーカーからのコンセプト提案であり窓については二重ガラスで液晶がサンドイッチされていた。スイッチオン・オフで遮光・透明と変化する。カーテン代わり。現在の航空機の窓にも採用されている。しかしながら透明ではない。液晶をコレステリック系(螺旋構造の分子)とし、極薄層とすることで透明性が確保できる特許が出願されている。コレステリック液晶では(詳細割愛するが)熱線反射率が50%なので、螺旋の反対回りのコレステリック液晶と混合することで透明性を高めることが報告されている。

街を歩けば、ミストシャワー設備が徐々に増えてきた。蒸発潜熱を利用しての打ち水の応用である。先日、京都駅前でバス待ちをしているとバス停の上にミストシャワーが稼働していた。但し、冷却効果はイマイチ。何故かと見上げるとバス停の屋根が透明樹脂(PMMAPC)で熱線が通過しており熱バランスが取れていないのだろう。京都市バスの色は薄緑なので、ここは銅イオン化合物を混合した樹脂を利用するのがベターだろうと考えてバス待ちをした。一方、ゴーヤや蔓で熱線反射に利用している工場がある。樹木は高さ10メートルを超えても水をポンプのように汲み上げて上部の葉まで運んでいる。葉の表面から水分を蒸散させている。室温近傍で水が蒸発させることを樹木、植物は何気なく実行している。慶応義塾の佐藤春樹教授はこれにヒントを得て多孔質のセラミックスを冷却システム利用の提案をしている。樹木、植物は熱線反射と水分ミストによる熱線反射及び蒸発潜熱の3役を果たしている。

地球規模でこの植物を乱獲して砂漠化しているのは人間。図は年々緑が後退して砂漠化ししている地域と緑化維持している僅かな地域(日本などごく少数)。炭酸ガス問題・・・石化・・・樹脂・・・レジ袋。。。。短絡する前に留まって考えて欲しい地球環境。砂漠の緑化(これも日本企業が健闘)と短期的収益狙いのプランテーションについては抑制することが必要と思うが如何だろうか。

 

ストロー問題に思うマーキング

某国の鉄道線路にそって白色物が延々と続く光景が話題になったことがあった。白色製品は発泡スチレンの弁当容器。用が済めば窓から捨てるのが通例だった。そこで対策として発泡ポリスチレンを弁当容器に使うのは止めようと話題になった。今回、欧州ではストローを中止するという。理由は海洋汚染だそうだ。ストロー廃棄量と海洋汚染物の量的バランスが確認されない中での立案だろうが、この二つの事例はどこかオカシイ。廃棄物処理インフラの整備と捨てないで分別するマナーの徹底があれば済むことなのにと思う。ワールカップが終了したが、日本からの応援団は試合の勝負にかかわらず清掃し、ゴミを持ち帰ることが話題になった。ワールドベースボールでも話題になった。話題になるということは、裏を返せば、ゴミを散らかしても清掃業者の仕事を作っているのだから何が問題?と考える方がカノ国では普通なのだろう。その清掃が機能していないことを重々知っている立ち場から、とりあえずストローは止めようと考えたと推察できる。次はプラの蓋かショッピングバックが俎上に上がるだろう。これを延々と続けるつもりなのか、それとも立ち止まって何故こうなるのかを考えるのか。イエローカードを出す相手が違うのではないだろうか。

狩猟ベースの国の成り立ちに由来する癖なのか、同じ場所で次の作物を作るために廃棄物の有効利用、適切な処分をしないと生活が成り立たない農業国由来なのか、それとも教育レベルの問題なのか。恥の文化が武士とは言わず庶民も江戸時代に全国で800もの寺子屋を通じて教育され江戸時代に訪れた外国人の記録に驚くべき清潔さと記載されている。長い歴史が関係しているのだ。ここは表面的なことだけでなく、深掘りして欲しい。

ストローはポリプロピレンのホモポリマーで高速異型押出法で成形されるが、そのため分子量は低く、添加剤は最低現配合されているだけなので廃棄されて太陽光が長時間あたると3級アルキルであるプロピル基が脱離してラジカルが生成、これが連鎖反応により分解に至る。分子量は低下して極端には風化により粉になることは容易に想像できる。加色もされていることからリサイクルは出来ず焼却が現実解である。

一般にリサイクルには、原料が何か、できればグレード名まで分かると便利として10数年前から大阪のコンパウンドメーカーの社長の提案で材料メーカーも参加した研究活動が継続している。

ペレット1粒でも即座に分かる。高度で時間の掛かる分析装置ではなく、紫外線スペクトルが測定できる小型装置があればいい。材料別に指定された複数の紫外線吸収剤を配合しておけば、紫外線スペクトル測定器には複数のピークがあたかもバーコードのように読み取れ、予め登録してある材料名が特定できる仕組みとなっている。紫外線吸収剤は人間の目では無色に見えるので着色も容易である。食品向け包装など特定の紫外線吸収剤を配合できないことはあるが、工業製品の材料特定には大きな価値がある。 ストローは上述のようにリサイクルは出来ないが、この仕組みを使用して特定樹脂製品にマーキングして「海洋汚染物質排出国ランキング」を提唱してはどうか。横軸に人口、GNP、焼却炉、分別規制有無などをとりプロットすると改善目標が明確になると思うがどうだろう。グローバル生産・物流だからやっても無意味と貶すのではなく、このような取り組みをヒントに改善案がでることを期待している。

自動車の潮流

西日本豪雨で被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。皆様のご安全と一日も早い復興を祈念しております。

さて、国内自動車生産台数は510万台。たしかに米国を始め世界各国で現地生産しているから徐々に国内生産台数は減少している。これは理解できる。都市交通が発達しカーシェアリングに抵抗がなくなっている若者のクルマ離れが言われて久しいので尚更だろう。

ところで、中国の生産台数は2800万台!エッいつの間にこの台数? さすがに驚きます。年配の人の「サニー、カローラ競争」「隣のクルマは小さく見えます!」のCMを覚えておられる方からみると高度成長時代に年収が徐々に増え、ついにクルマを買えるところまで来たと感嘆に耽るまもなく、「いつかはクラウン」のCMが刷り込まれると、そうだなぁ~頑張らなくては!と。特に第一次ベビーブーマーの人々が「おぉ~モウレツ」に煽られて頑張った姿が想像できる。

6月発売のカローラの国内販売販売台数より海外輸出分が多いので製造ラインを海外と共通化するとして車格をBからCへ変更し姉妹車種も整理。その結果5ナンバーから3ナンバーに変更となった。「あのカローラが3ナンバー!」 クラウンの姉妹車マジェスタなど3種類を統合してクラウン1車種に絞り込まれた。これも時代の趨勢か。

その中国、大気汚染問題、部品点数が少なくて組立てが容易、電池産業の大型育成で自動車後発でも覇権を握ることが可能とあってEV車に特化している。黒電話の時代を経ないで携帯に移行したように、自転車からいきなり自動車に突入したように思える。自動車学校ではエンジンの仕組み、駆動システムを学習し筆記試験を受け、クラッチの使い方ができないと坂道発進で合格できなかった時代があったのに、EV車は遊園地のバッテリーカーを運転するような気分で目的地までの移動手段として利用できる。それで十分ではないかと。

EV車。三菱自動車が開発したのを皮切りに日産自動車が国内では先行している。トヨタ圏はPHV(プラグインハイブリッド)で対抗しているが、ガソリン使用には違いない。メリットは長距離運転が可能。EV車も走行距離を伸ばしてきたがどうやら300kmあたりとなると、俄然脚光を浴びるのがFCV(水素燃料電池車)。EVでは高速充電でも30分を要するのに対して水素チャージは約3分程度でガソリンと変わらない。水素ステーションがあれば何処までも走行できる。問題のステーションの数がネックのようだが政府の肝いりで2020年までに最低限整備し、2050までには充実させるとの方針がある。欧米を含む世界の自動車関係者によれば2050年にはFCVが主流になるとの予想もある。そうなるとEVと異なり、高度で複雑な技術体系になることから、技術覇権は日本が握ることになる。頑張れニッポン!

さて、自家用車より深刻なのは物流業者。バスに乗るとバス運転者募集を良くみる。トラックもバスも運転手のなり手がいない。アマゾンなどを利用者が急増するなか従来の運転手募集だけでは追いつかない時代になってきた。IOT活用での効率的運用が必要となっている。国内トラック・バスのトップ日野自動車はコネクト技術所有のVWと組んだのが象徴的である。日野レンジャーは過酷なサファリラリーで何回も優勝しているハードに強い会社である。エンジンは20万キロ超でも故障がないくらい頑丈。日野自動車はコネクトに移行しつつあるトヨタ圏ではあるが、物流の事情はそれを待っていられないのであろう。往路では荷物満載でも復路が空にはならないよう物流情報と車の位置情報をコネクトして効率を上げるなど種々の提案がなされている。

今、政府も支援する中でトラックの運用の方法として面白いのがトラックの縦列走行。先頭には運転手がいるが、2番目、3番目は無人運転の方式。これにはトラック間の情報やり取り、処理能力などが必要である。荷物の荷下ろしも考えないと運転手一人で3台分のデバンが必要では大変だ。でも、そう考えるのは頭が硬直している証拠かもしれない。その時は気の利いたロボットが活躍するだろう。

JST歯科領域新技術説明会から

国立科学技術振興機構(JST)は大学・高専及び公的研究機関でのシーズ研究を企業のニーズ創出に連結するための技術説明会が殆ど毎週のように東京・市ヶ谷JST別館にて開催されている。医学、生化学、薬学、化学、生物、環境、IOTなどのテーマが高い頻度で報告されている。昨日(73日)は歯科領域のトピックス6テーマについて発表がなされた。この中から、筆者の驚きと興味本意で選んだ3テーマを紹介する。尚、発表資料は1ヶ月以内にJSTホームページにアップされるので、詳細はそちらを参照願いたい。

(1)        iPS細胞を利用した骨誘導性骨補填材の作成技術(東北大 江草教授)

記憶が定かではないが3年ほど以前のJST説明会では日大からハイドロアパタイト、βリン酸三カルシウムを発泡させて埋設すると骨細胞が吸着成長すると聞いて、なるほどと感心したことがある。

今回の発表はそれでは骨誘導性に欠ける問題点があるとしてiPS細胞をバイオエンジニアリングで人口骨を作成し、凍結乾燥して埋設する技術を開発。経過時間見合いではハイドロアパタイトの周辺に繊維質は観察されるが、iPS細胞凍結乾燥品では骨が成長していることが明確になった。

但し、この実験はマウスであって、人間に応用するには培養期間の短縮が課題であるとのこと。実現できれば歯溝骨の回復、インプラント、整形外科など応用は広い。特筆すべきはPMDAの見解では医療機器に該当するとのことで、非臨床POCに繋げる可能性がある。

いよいよ本命登場と言った感がある。江草教授にエールを送りたい。

 

(2)        唾液メタボロミクスによる歯周組織と前身の健康測定法の開発 (大阪大学 久保庭准教授)

WHO勧告によれば全数の歯について歯周ポケットを測定することになっている。一本の歯の周囲6点測定し総合計をPISAとしているが、これは時間も手間も何より患者が4mm深さまでプロービングされるのは悲痛過ぎる。

これを久保庭准教授は唾液の成分の中に歯周病細菌が存在する筈としてバイオマーカーの策定を試みている。歯肉縁上の食品由来のメタボロミクス(代謝産物)をプラーク処理で除去して、重度歯周病の物質とPISAを比較すると良い相関が得られている。プラーク無しでも特定物質(カタベリン、5-オキソプロリン、ヒスチジン)の組み合わせをマーカーとすることで判定はできるとの由。

この技術は一般検診項目に採用されると、潜在患者の発見、しいては重篤な病気発見が可能になると期待される。是非WHOへの逆輸出をして欲しいものだ。

(3)        歯科矯正治療時間を短縮させる薬剤の探索 (新潟大 柿原助教)

ご専門の方にはご存知でしょうが、素人の筆者は「言われてみればそうだ」と納得の発表。歯列矯正には歯を動かそうにも今存在している歯溝を構成している骨を動く方には破骨細胞を活性化させ、動いた空間は骨芽細胞で埋める必要がある。

歯の移動を促進するための化合物378、既存抗がん剤、標的分子が明白な阻害剤の中からスクリーニングして分化促進化合物8種類を抽出。新潟大ではROCK(Rh0-associated coiled-coil kinase)を用いて破骨細胞分化や骨芽細胞分化促進を確認している。物理的歯列矯正と併用することで短期間治療が期待できる。マテリアルを一応専門としている筆者としては、矯正材料面での組み合わせができれば実用化がさらに近くなるかもしれないと考えながら聴講した。非常に今回の新技術発表は刺激になった。

 

展示会と名刺管理

毎週どこかで展示会が開催されている。ビックサイト、横浜パシフィコ、幕張メッセ。大阪インテックが有名である。単一テーマだけでなく関連テーマの併設のケースもある。ビックサイトでは東館1~8ホール、西館も含めると2万歩を優に越える体力勝負でもある。展示出展者リストから興味あるブースにマークを付け、効率的にブース訪問をされている人もおられる。勿論直近のビジネスを進めるには必要である。

しかしブラブラ道草的巡回も結構面白い。何故この商品をこの会社が開発を思い立ったのか動機を探り、他社との差異化ポイントは何か?を聞いて納得することがある。説明者がニコニコ余裕をもっていると、さぞ展示品に自信があるのだろうと思う。ついその笑顔に誘われてブースの中へ。その一方で英語のみのパネルで会話が英語の場合は、突っ込んだ議論ができずに終わることもある。逆に外国人ながら日本語ペラペラの場合はホットして訪問アポまで行くこともある。自分の能力を棚に上げてはいけないが正直なところである。

残念なのは説明員がやたら多く、展示物が見えないことがある。各事業部から派遣された結果、人数が多くなったのであろうが、縦組織で横串の情報管理が行き届いていない会社だなと判断している。展示は商品、技術だけでなく説明員を含む展示ブースに当該会社のカルチャーが出る。美人コンパニオンや販促品は必要がない。内容を議論できるプロがいるとそれだけで十分。今回の展示品では当方の要求を満足することは出来なくても、この会社と組むことで可能性はあると感じることがあり、実際その後のフォローで実用化したことがある。

展示会の面白さと有用さは、一見自分の今の仕事には関係なさそうな展示会を見ると多くのヒントが得られることがある。自動車部品、部品製造装置、食品加工業界、医療装置、電子機器展、環境展、コンバーテック展など物づくりを中心からIOTに必要なセンサー、ソフトウエア、サービス、システム組み込みなどの要素を組み合わせることで課題解決することがある。逆に言えば、多種多様な基礎技術がある日本がサバイバルできることを証明しているが、IOTにコネクトできない製品・企業はどう生き残るのか展示物を見ながら考えることがある。

説明員にも同情するところがある。それは展示場巡りが定年退職者の「教育」ではなく「今日行く」所になっていることが最近多いと聞いたことがある。本当の教育として展示内容を活用して75歳まで現役の高齢化社会を支えて欲しいものだ。

展示会の常連企業があれば消えた企業もある。事業売却に伴い参加すべき展示が変更になったか、業績が悪化したのかのどちらかと読み取ることができる。最近GE(ジェネラル・エレクトリック)の株がダウ平均銘柄から外されたが、事業を航空機エンジン、ヘルスケアに絞り込んだためとしている。数年前から日本の展示には水ビジネスのみであったことから、いずれGEは変貌するだろうとは感じていた。

 

さて、展示会から戻ると資料と名刺が相当数。これの処理を通じて展示会の復習となる。展示会のみならず日頃のビジネスを通じて名刺の数は相当数あり、この管理と利用が重要である。最近は名刺をスキャンし管理会社に送信すると自動的に整理できるので利用する人も多い。時間節約、情報共有の面では確かに有用である。

市販のソフトがどのようなものか筆者は知らないがクラウドに載せられない案件もありオフラインで作成する人も多い。昔は会社名、所属、名前、住所と電話・FAX程度であったが、現在では電話には代表と直通があり、会社携帯、個人携帯、メール、スカイプ、WEB、FB、インスタグラム、ツイッター、など続々項目は増加している。名刺交換した人と何を、いつ話したのか、そしてリンクすべき資料のファイルなどが最低必要。年々増加する情報量と当方の記憶容量との兼ね合いから5W1Hをキイワードとして記録しておかないと折角の情報が埋もれてしまう。筆者は項目追加編集できるソフトを利用している。 項目の中には情報の写真、顔写真、地図、趣味(ゴルフ腕前)、季節挨拶の有無などもあるが、逆検索で利用するのはキイワード項目。インプットは非常に面倒。(恐らく将来はロボットが打ち込みするだろう)。因みに5000件を越えるころに、その効果が明確になってくるので是非早めに対応することをお勧めする。顔は思い出すが名前が。。。。。会社名は変更したらしいがさて?。。。記憶が朧気なときに役立つのがキイワード。それを基に〇年の△△展示会でお目にかかった。。。とメールを書き出すと時間は経過していても相互の関係を復活させる効果は覿面である。

海洋汚染と3R (その2)意外な汚染物

まず始めに北大阪地区震度6弱の地震で被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。

以前のブログで水道パイプのポリエチレン樹脂への切り替えについて詳述した。地震での水平、垂直変動に対してポリエチレンパイプは継ぎ目から外れることなく、パイプが変形してライフラインを守ることが可能として東北地震でも検証されたことを報告した。関西地区は実は大手ポリエチレンパイプメーカーが集中している地域でもあるが、大都市では埋設工事が容易には出来かねる事情もあり間に合あわなかったようである。このブログが次の事案の転ばぬ先の杖の意味で海洋汚染と3Rの追加ブログを書くことにした。

その後フランスのマクドナルドではプラスチックスのストローを廃止したとのニュースが入り、徐々にEU対策が現実化してきたのかと思いきや、意外なニュースが飛び込んできた。FB仲間から次の文献を紹介された。それによると海洋中に流出しているマイクロサイズプラスチックスは年間95万トン。その内訳がタイヤ粉29万トン、ペレット23万トン、塗料粉23万トン、繊維屑19万トンであると。1)

最近になって、ベルリン工科大額が「環境に於けるタイヤ摩耗粉塵」と題する研究プロジェクトでコーティネーターターを務め、道路排水中のタイヤの摩耗から発生するマイクロプラスチックスの研究に取り組み始めた。ドイツだけでその量は年間6万トンから10万トンと推定されており、雨水とともに下水に流れ込み、最終的に海洋に達していると見られる。2)(文献1,2提供五十嵐俊郎氏)

日頃タイヤの摩擦摩耗粉塵を意識したことがなかっただけに衝撃的な数値である。タイヤメーカーは当然対策をされているとは思うが、自動車、舗装、交通システムなど広範囲に関係するだけに単一企業が解決できる課題ではない。自動車について、大気中のタイヤ粉塵測定は過去日本でも実績があり、概ね自動車廃棄量=車重量と粉塵量は比例することが知られている。3) この結果から自動車の重量は軽量が好ましい。ホワイトボディの炭素繊維複合材料、無機ガラスの樹脂化、パワードライブの選択(エンジン、EV、燃料電池)は重量で決まることになるかも。

道路舗装面は日本ではコンクリートかアスファルトかのどちらか。しかしながら道路の用途によっては複雑な形態をしている。ミルフィーユの様な多層構造をしている道路もあれば、轍防止の為にエラストマーを配合することがある。エラストマーを配合するとなお一層アスファルトが変形すると予想されるが、この場合は弾性変形することで轍が修復される仕組みになっている。タイヤとのグリップ力もあり好ましいのではあるが、常時太陽光に晒されていると分子が劣化する問題があり、都度補修作業が必要となっている。このエラストマーに代替しうる材料を筆者も考案した経験があるが難解なテーマである。劣化分子も同様に雨水で流出するのであろう。

塗装屑の発生源は多岐に亘るであろうが、自動車塗装も関係しているのであろう。鋼板のホワイトボディの防錆処理としてエポキシ系塗料が電着塗装され、外板についてはエステル系、メラミン系、ウレタン系塗料が塗装される。この時塗料に電荷を持たせ、ボディサイドに反対荷電させる静電塗装をする。この作業をロボットでするが、ボディ・外板に100%の塗料が塗布されることはないので、塗布されない塗料は回収する。日本の自動車メーカーはこの管理が徹底して外部に流出することがない。静電塗装ロボット化が遅れている自動車メーカーや修理工場では対応していないことがあるだろう。極端に言えば塗装レス材料があれば好ましいが塗料メーカーも黙ってはいないだろう。両社の鬩ぎ合いが見物である。塗料メーカーとしては鋼鈑では塗装レスでは不可能。樹脂外板では耐候性をカバーするために必要と主張するだろう。東京農工大の高田教授の海洋汚染の研究では樹脂製品が紫外線劣化してマイクロビーズ化するとのメカニズムを示している。その意味で紫外線・耐候性改良剤は長寿命化、難抽出剤への変遷する可能性はある。材料開発者及び消費者は海に顔を向けて何ができるのか考え行動する時代になってきた。

【文献】

1)McCombs, R, M. Biddle (2016), “A Big Conversation Suggests Big Questions and Big Answers,” Plasticity London, 21 September 2016

2)BMBF (Bundesministeriums für Bildung und Forschung)2017Dem Plastik auf der Spur, 19 October 2017 2017

3)https://www.jstage.jst.go.jp/article/taiki1995/41/3/41_3_144/_article/-char/ja/

ポリマーアロイ

料理ができないのに料理番組を見るのは好きだ。原料の厳選、出汁、下ごしらえ、裁断方法、サイズ、面取り、隠し包丁、粉の篩い、落とし蓋、糖への転移温度と維持時間、蛋白質凝固温度、複数の調味料の添加順番、・・・実に複雑な工程を手際よく、無駄なく仕上げてしまう。プロでなくても家人のプロセスをみると感心する。グルメ評論家のリポーターは聞き飽きた感があるが、「味の宝石箱やぁ!」と言えば、多種多様な味が単にブレンドされていると解釈し、「モチモチながらジューシー」と言えば、複数の素原料がそれぞれの長所を表現していると解釈する。

プラスチックス(樹脂)でも同じようなことが言える。今回は複数の原料の長所が活かされ、短所は目立たないようにする良いところ取りのポリマーアロイについて紹介する。

結晶性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル類、ポリアセタール、ポリアミド(通称ナイロン)、ポリフェニレンサルファイドなどは耐薬品性、成形流動性、機械的強度などが優れている。一方非晶性樹脂(ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル)は寸法精度、クリープ(長期間負荷がかかると変形)、難燃性などが優れている。

結晶性樹脂の苦手が非晶性樹脂の得意技であり、結晶性樹脂の得意技を非晶性樹脂は苦手としている。即ち、全ての品質を満足する単一材料は現在のところ見つかっていないが、得意技だけを有効に活用する方法はある。それがポリマーアロイ技術。現在まで多くの結晶性樹脂と非晶性樹脂の組み合わせからなるポリマーアロイが開発されてきた。ポリマーアロイの製造は反応リアクターと樹脂混練機能を合体した高混練2軸溶融コンパウンド機を利用している。代表的装置を図-1に示す(日本製鋼所TEXα)

この図で原料や副資材は長いシリンダーの任意の点から供給される仕組みになっている。丁度料理のようにシリンダーの根本では原料Aと調味料(多官能化合物)を混合し反応させるゾーンとし、その次に原料Bを添加して温度とスクリュウー回転で溶融混合させるゾーンとし、次のゾーンでは先の反応官能化した原料A‘とBが良く混練できるように設計されたスクリュー設計ゾーンとなり、これが完成した段階で必要により粉体・ガラス繊維・炭素繊維などを配合して複合強化ポリマーアロイ材料とし、最後には系中で発生した水分や臭気を脱気するゾーンで仕上げとする。

“反応リアクター”と称するのは結晶性樹脂と非晶性樹脂を混合しようとしても相互に溶け合わないので、双方の樹脂に部分溶解する成分を混練機内で合成することもあるからである。合成された相溶化剤は界面活性剤のような作用で基本的に相溶しない材料同士を分散することが可能となる。リアクターの事例として2軸混練機の中で官能基を有する分子を一方の材料にグラフトさせて相溶化剤の合成事例を紹介する。グラフトするための不飽和二重結合と相手材料と反応する官能基である水酸基、カルボキシル基、アミノ基など(二重結合と官能基を有する)化合物が選択される。無水マレイン酸やリンゴ酸もその一種である。

次に混練工程になるが、2軸(スクリューがシリンダーの中に2本あり、同方向に回転しながら溶融樹脂を混練し相互に出会う界面頻度を高くする効果がある)スクリューの中に特徴のあるニーディングユニットを設えて品質改良する。工程中にサンプリングをして都度分散状態を観察したのが図-2である。(筆者ら 成形加工 第611号 1994)

この図において OA:光学顕微鏡でも見える分散サイズ TEM:透過型電子顕微鏡で観察、最終の平均分散径は2ミクロン、島の中に電子顕微鏡観察時の染色で黒く見えるのはエラストマー(衝撃改良材)。エラストマーがマトリックス中に存在すると柔軟になるが、島の中に存在させることで剛性があり、衝撃強度が高い材料となる仕組みである。工程中の相溶化剤生成、両材料の粘度変化などからポリマーアロイの最終物性まで計算が可能となった。 2軸混練内での流動性・混合がコンピューター支援エンジニアリング(CAE)が利用されアロイ化の研究は進んだ。

筆者らはポリマーアロイ形態3兄弟を世の中に出している。

1)   海/島構造を基本として島の中に湖/湖の中に微細島 形態

2)   ミルフィーユのように多層反転構造 1層目(A海・B島) 2層目(B海・A島)・・n層目

3)   海/島構造であるが、島と島に橋掛けをしている形態

1)   は主として自動車に採用され、2)は電子機器のシャーシーなど寸法精度が特に要求される用途に、3)は線膨張係数が小さく、かつ衝撃の高い用途などに利用されている。面白いポリマーアロイを開発してきたが、着想は何かと問われると冒頭の「料理」。実際、2軸混練機は水産加工食品製造にも利用されている。

話を戻して海島構造のポリマーアロイでは島のサイズを極めて小さく=島の数を増加させることでトータル品質が向上することから、材料メーカーは競って、島の数を小さくすることに執念を燃やした時期があった。自動車の軽量化を狙い、ボディ外板の樹脂化が目標であった。試験片での高速衝撃試験と2軸混練機でのコンパウンド工場と往復しながら多様な人材と一緒に開発を進めた。現在でも当時の材料が搭載された車両をみると当時を思い出す。あのとき、異能な人材がいたからこそ成功したのだと。異能な集団を相溶化しつつ、異能を必要な時に発揮してもらうことがポイントであったのはポリマーアロイと全く同様であると。

歯科材料はアクリルにはじまり、アクリル系ハイブリッドレジンになった。大臼歯向けの改良材料も出現してきた。しかしながら、歯科用途にむけてポリマーアロイ設計は面白いと考えているのは多分小生だけではないと想われる。