ストロー問題に思うマーキング

某国の鉄道線路にそって白色物が延々と続く光景が話題になったことがあった。白色製品は発泡スチレンの弁当容器。用が済めば窓から捨てるのが通例だった。そこで対策として発泡ポリスチレンを弁当容器に使うのは止めようと話題になった。今回、欧州ではストローを中止するという。理由は海洋汚染だそうだ。ストロー廃棄量と海洋汚染物の量的バランスが確認されない中での立案だろうが、この二つの事例はどこかオカシイ。廃棄物処理インフラの整備と捨てないで分別するマナーの徹底があれば済むことなのにと思う。ワールカップが終了したが、日本からの応援団は試合の勝負にかかわらず清掃し、ゴミを持ち帰ることが話題になった。ワールドベースボールでも話題になった。話題になるということは、裏を返せば、ゴミを散らかしても清掃業者の仕事を作っているのだから何が問題?と考える方がカノ国では普通なのだろう。その清掃が機能していないことを重々知っている立ち場から、とりあえずストローは止めようと考えたと推察できる。次はプラの蓋かショッピングバックが俎上に上がるだろう。これを延々と続けるつもりなのか、それとも立ち止まって何故こうなるのかを考えるのか。イエローカードを出す相手が違うのではないだろうか。

狩猟ベースの国の成り立ちに由来する癖なのか、同じ場所で次の作物を作るために廃棄物の有効利用、適切な処分をしないと生活が成り立たない農業国由来なのか、それとも教育レベルの問題なのか。恥の文化が武士とは言わず庶民も江戸時代に全国で800もの寺子屋を通じて教育され江戸時代に訪れた外国人の記録に驚くべき清潔さと記載されている。長い歴史が関係しているのだ。ここは表面的なことだけでなく、深掘りして欲しい。

ストローはポリプロピレンのホモポリマーで高速異型押出法で成形されるが、そのため分子量は低く、添加剤は最低現配合されているだけなので廃棄されて太陽光が長時間あたると3級アルキルであるプロピル基が脱離してラジカルが生成、これが連鎖反応により分解に至る。分子量は低下して極端には風化により粉になることは容易に想像できる。加色もされていることからリサイクルは出来ず焼却が現実解である。

一般にリサイクルには、原料が何か、できればグレード名まで分かると便利として10数年前から大阪のコンパウンドメーカーの社長の提案で材料メーカーも参加した研究活動が継続している。

ペレット1粒でも即座に分かる。高度で時間の掛かる分析装置ではなく、紫外線スペクトルが測定できる小型装置があればいい。材料別に指定された複数の紫外線吸収剤を配合しておけば、紫外線スペクトル測定器には複数のピークがあたかもバーコードのように読み取れ、予め登録してある材料名が特定できる仕組みとなっている。紫外線吸収剤は人間の目では無色に見えるので着色も容易である。食品向け包装など特定の紫外線吸収剤を配合できないことはあるが、工業製品の材料特定には大きな価値がある。 ストローは上述のようにリサイクルは出来ないが、この仕組みを使用して特定樹脂製品にマーキングして「海洋汚染物質排出国ランキング」を提唱してはどうか。横軸に人口、GNP、焼却炉、分別規制有無などをとりプロットすると改善目標が明確になると思うがどうだろう。グローバル生産・物流だからやっても無意味と貶すのではなく、このような取り組みをヒントに改善案がでることを期待している。

自動車の潮流

西日本豪雨で被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。皆様のご安全と一日も早い復興を祈念しております。

さて、国内自動車生産台数は510万台。たしかに米国を始め世界各国で現地生産しているから徐々に国内生産台数は減少している。これは理解できる。都市交通が発達しカーシェアリングに抵抗がなくなっている若者のクルマ離れが言われて久しいので尚更だろう。

ところで、中国の生産台数は2800万台!エッいつの間にこの台数? さすがに驚きます。年配の人の「サニー、カローラ競争」「隣のクルマは小さく見えます!」のCMを覚えておられる方からみると高度成長時代に年収が徐々に増え、ついにクルマを買えるところまで来たと感嘆に耽るまもなく、「いつかはクラウン」のCMが刷り込まれると、そうだなぁ~頑張らなくては!と。特に第一次ベビーブーマーの人々が「おぉ~モウレツ」に煽られて頑張った姿が想像できる。

6月発売のカローラの国内販売販売台数より海外輸出分が多いので製造ラインを海外と共通化するとして車格をBからCへ変更し姉妹車種も整理。その結果5ナンバーから3ナンバーに変更となった。「あのカローラが3ナンバー!」 クラウンの姉妹車マジェスタなど3種類を統合してクラウン1車種に絞り込まれた。これも時代の趨勢か。

その中国、大気汚染問題、部品点数が少なくて組立てが容易、電池産業の大型育成で自動車後発でも覇権を握ることが可能とあってEV車に特化している。黒電話の時代を経ないで携帯に移行したように、自転車からいきなり自動車に突入したように思える。自動車学校ではエンジンの仕組み、駆動システムを学習し筆記試験を受け、クラッチの使い方ができないと坂道発進で合格できなかった時代があったのに、EV車は遊園地のバッテリーカーを運転するような気分で目的地までの移動手段として利用できる。それで十分ではないかと。

EV車。三菱自動車が開発したのを皮切りに日産自動車が国内では先行している。トヨタ圏はPHV(プラグインハイブリッド)で対抗しているが、ガソリン使用には違いない。メリットは長距離運転が可能。EV車も走行距離を伸ばしてきたがどうやら300kmあたりとなると、俄然脚光を浴びるのがFCV(水素燃料電池車)。EVでは高速充電でも30分を要するのに対して水素チャージは約3分程度でガソリンと変わらない。水素ステーションがあれば何処までも走行できる。問題のステーションの数がネックのようだが政府の肝いりで2020年までに最低限整備し、2050までには充実させるとの方針がある。欧米を含む世界の自動車関係者によれば2050年にはFCVが主流になるとの予想もある。そうなるとEVと異なり、高度で複雑な技術体系になることから、技術覇権は日本が握ることになる。頑張れニッポン!

さて、自家用車より深刻なのは物流業者。バスに乗るとバス運転者募集を良くみる。トラックもバスも運転手のなり手がいない。アマゾンなどを利用者が急増するなか従来の運転手募集だけでは追いつかない時代になってきた。IOT活用での効率的運用が必要となっている。国内トラック・バスのトップ日野自動車はコネクト技術所有のVWと組んだのが象徴的である。日野レンジャーは過酷なサファリラリーで何回も優勝しているハードに強い会社である。エンジンは20万キロ超でも故障がないくらい頑丈。日野自動車はコネクトに移行しつつあるトヨタ圏ではあるが、物流の事情はそれを待っていられないのであろう。往路では荷物満載でも復路が空にはならないよう物流情報と車の位置情報をコネクトして効率を上げるなど種々の提案がなされている。

今、政府も支援する中でトラックの運用の方法として面白いのがトラックの縦列走行。先頭には運転手がいるが、2番目、3番目は無人運転の方式。これにはトラック間の情報やり取り、処理能力などが必要である。荷物の荷下ろしも考えないと運転手一人で3台分のデバンが必要では大変だ。でも、そう考えるのは頭が硬直している証拠かもしれない。その時は気の利いたロボットが活躍するだろう。

JST歯科領域新技術説明会から

国立科学技術振興機構(JST)は大学・高専及び公的研究機関でのシーズ研究を企業のニーズ創出に連結するための技術説明会が殆ど毎週のように東京・市ヶ谷JST別館にて開催されている。医学、生化学、薬学、化学、生物、環境、IOTなどのテーマが高い頻度で報告されている。昨日(73日)は歯科領域のトピックス6テーマについて発表がなされた。この中から、筆者の驚きと興味本意で選んだ3テーマを紹介する。尚、発表資料は1ヶ月以内にJSTホームページにアップされるので、詳細はそちらを参照願いたい。

(1)        iPS細胞を利用した骨誘導性骨補填材の作成技術(東北大 江草教授)

記憶が定かではないが3年ほど以前のJST説明会では日大からハイドロアパタイト、βリン酸三カルシウムを発泡させて埋設すると骨細胞が吸着成長すると聞いて、なるほどと感心したことがある。

今回の発表はそれでは骨誘導性に欠ける問題点があるとしてiPS細胞をバイオエンジニアリングで人口骨を作成し、凍結乾燥して埋設する技術を開発。経過時間見合いではハイドロアパタイトの周辺に繊維質は観察されるが、iPS細胞凍結乾燥品では骨が成長していることが明確になった。

但し、この実験はマウスであって、人間に応用するには培養期間の短縮が課題であるとのこと。実現できれば歯溝骨の回復、インプラント、整形外科など応用は広い。特筆すべきはPMDAの見解では医療機器に該当するとのことで、非臨床POCに繋げる可能性がある。

いよいよ本命登場と言った感がある。江草教授にエールを送りたい。

 

(2)        唾液メタボロミクスによる歯周組織と前身の健康測定法の開発 (大阪大学 久保庭准教授)

WHO勧告によれば全数の歯について歯周ポケットを測定することになっている。一本の歯の周囲6点測定し総合計をPISAとしているが、これは時間も手間も何より患者が4mm深さまでプロービングされるのは悲痛過ぎる。

これを久保庭准教授は唾液の成分の中に歯周病細菌が存在する筈としてバイオマーカーの策定を試みている。歯肉縁上の食品由来のメタボロミクス(代謝産物)をプラーク処理で除去して、重度歯周病の物質とPISAを比較すると良い相関が得られている。プラーク無しでも特定物質(カタベリン、5-オキソプロリン、ヒスチジン)の組み合わせをマーカーとすることで判定はできるとの由。

この技術は一般検診項目に採用されると、潜在患者の発見、しいては重篤な病気発見が可能になると期待される。是非WHOへの逆輸出をして欲しいものだ。

(3)        歯科矯正治療時間を短縮させる薬剤の探索 (新潟大 柿原助教)

ご専門の方にはご存知でしょうが、素人の筆者は「言われてみればそうだ」と納得の発表。歯列矯正には歯を動かそうにも今存在している歯溝を構成している骨を動く方には破骨細胞を活性化させ、動いた空間は骨芽細胞で埋める必要がある。

歯の移動を促進するための化合物378、既存抗がん剤、標的分子が明白な阻害剤の中からスクリーニングして分化促進化合物8種類を抽出。新潟大ではROCK(Rh0-associated coiled-coil kinase)を用いて破骨細胞分化や骨芽細胞分化促進を確認している。物理的歯列矯正と併用することで短期間治療が期待できる。マテリアルを一応専門としている筆者としては、矯正材料面での組み合わせができれば実用化がさらに近くなるかもしれないと考えながら聴講した。非常に今回の新技術発表は刺激になった。

 

展示会と名刺管理

毎週どこかで展示会が開催されている。ビックサイト、横浜パシフィコ、幕張メッセ。大阪インテックが有名である。単一テーマだけでなく関連テーマの併設のケースもある。ビックサイトでは東館1~8ホール、西館も含めると2万歩を優に越える体力勝負でもある。展示出展者リストから興味あるブースにマークを付け、効率的にブース訪問をされている人もおられる。勿論直近のビジネスを進めるには必要である。

しかしブラブラ道草的巡回も結構面白い。何故この商品をこの会社が開発を思い立ったのか動機を探り、他社との差異化ポイントは何か?を聞いて納得することがある。説明者がニコニコ余裕をもっていると、さぞ展示品に自信があるのだろうと思う。ついその笑顔に誘われてブースの中へ。その一方で英語のみのパネルで会話が英語の場合は、突っ込んだ議論ができずに終わることもある。逆に外国人ながら日本語ペラペラの場合はホットして訪問アポまで行くこともある。自分の能力を棚に上げてはいけないが正直なところである。

残念なのは説明員がやたら多く、展示物が見えないことがある。各事業部から派遣された結果、人数が多くなったのであろうが、縦組織で横串の情報管理が行き届いていない会社だなと判断している。展示は商品、技術だけでなく説明員を含む展示ブースに当該会社のカルチャーが出る。美人コンパニオンや販促品は必要がない。内容を議論できるプロがいるとそれだけで十分。今回の展示品では当方の要求を満足することは出来なくても、この会社と組むことで可能性はあると感じることがあり、実際その後のフォローで実用化したことがある。

展示会の面白さと有用さは、一見自分の今の仕事には関係なさそうな展示会を見ると多くのヒントが得られることがある。自動車部品、部品製造装置、食品加工業界、医療装置、電子機器展、環境展、コンバーテック展など物づくりを中心からIOTに必要なセンサー、ソフトウエア、サービス、システム組み込みなどの要素を組み合わせることで課題解決することがある。逆に言えば、多種多様な基礎技術がある日本がサバイバルできることを証明しているが、IOTにコネクトできない製品・企業はどう生き残るのか展示物を見ながら考えることがある。

説明員にも同情するところがある。それは展示場巡りが定年退職者の「教育」ではなく「今日行く」所になっていることが最近多いと聞いたことがある。本当の教育として展示内容を活用して75歳まで現役の高齢化社会を支えて欲しいものだ。

展示会の常連企業があれば消えた企業もある。事業売却に伴い参加すべき展示が変更になったか、業績が悪化したのかのどちらかと読み取ることができる。最近GE(ジェネラル・エレクトリック)の株がダウ平均銘柄から外されたが、事業を航空機エンジン、ヘルスケアに絞り込んだためとしている。数年前から日本の展示には水ビジネスのみであったことから、いずれGEは変貌するだろうとは感じていた。

 

さて、展示会から戻ると資料と名刺が相当数。これの処理を通じて展示会の復習となる。展示会のみならず日頃のビジネスを通じて名刺の数は相当数あり、この管理と利用が重要である。最近は名刺をスキャンし管理会社に送信すると自動的に整理できるので利用する人も多い。時間節約、情報共有の面では確かに有用である。

市販のソフトがどのようなものか筆者は知らないがクラウドに載せられない案件もありオフラインで作成する人も多い。昔は会社名、所属、名前、住所と電話・FAX程度であったが、現在では電話には代表と直通があり、会社携帯、個人携帯、メール、スカイプ、WEB、FB、インスタグラム、ツイッター、など続々項目は増加している。名刺交換した人と何を、いつ話したのか、そしてリンクすべき資料のファイルなどが最低必要。年々増加する情報量と当方の記憶容量との兼ね合いから5W1Hをキイワードとして記録しておかないと折角の情報が埋もれてしまう。筆者は項目追加編集できるソフトを利用している。 項目の中には情報の写真、顔写真、地図、趣味(ゴルフ腕前)、季節挨拶の有無などもあるが、逆検索で利用するのはキイワード項目。インプットは非常に面倒。(恐らく将来はロボットが打ち込みするだろう)。因みに5000件を越えるころに、その効果が明確になってくるので是非早めに対応することをお勧めする。顔は思い出すが名前が。。。。。会社名は変更したらしいがさて?。。。記憶が朧気なときに役立つのがキイワード。それを基に〇年の△△展示会でお目にかかった。。。とメールを書き出すと時間は経過していても相互の関係を復活させる効果は覿面である。

海洋汚染と3R (その2)意外な汚染物

まず始めに北大阪地区震度6弱の地震で被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。

以前のブログで水道パイプのポリエチレン樹脂への切り替えについて詳述した。地震での水平、垂直変動に対してポリエチレンパイプは継ぎ目から外れることなく、パイプが変形してライフラインを守ることが可能として東北地震でも検証されたことを報告した。関西地区は実は大手ポリエチレンパイプメーカーが集中している地域でもあるが、大都市では埋設工事が容易には出来かねる事情もあり間に合あわなかったようである。このブログが次の事案の転ばぬ先の杖の意味で海洋汚染と3Rの追加ブログを書くことにした。

その後フランスのマクドナルドではプラスチックスのストローを廃止したとのニュースが入り、徐々にEU対策が現実化してきたのかと思いきや、意外なニュースが飛び込んできた。FB仲間から次の文献を紹介された。それによると海洋中に流出しているマイクロサイズプラスチックスは年間95万トン。その内訳がタイヤ粉29万トン、ペレット23万トン、塗料粉23万トン、繊維屑19万トンであると。1)

最近になって、ベルリン工科大額が「環境に於けるタイヤ摩耗粉塵」と題する研究プロジェクトでコーティネーターターを務め、道路排水中のタイヤの摩耗から発生するマイクロプラスチックスの研究に取り組み始めた。ドイツだけでその量は年間6万トンから10万トンと推定されており、雨水とともに下水に流れ込み、最終的に海洋に達していると見られる。2)(文献1,2提供五十嵐俊郎氏)

日頃タイヤの摩擦摩耗粉塵を意識したことがなかっただけに衝撃的な数値である。タイヤメーカーは当然対策をされているとは思うが、自動車、舗装、交通システムなど広範囲に関係するだけに単一企業が解決できる課題ではない。自動車について、大気中のタイヤ粉塵測定は過去日本でも実績があり、概ね自動車廃棄量=車重量と粉塵量は比例することが知られている。3) この結果から自動車の重量は軽量が好ましい。ホワイトボディの炭素繊維複合材料、無機ガラスの樹脂化、パワードライブの選択(エンジン、EV、燃料電池)は重量で決まることになるかも。

道路舗装面は日本ではコンクリートかアスファルトかのどちらか。しかしながら道路の用途によっては複雑な形態をしている。ミルフィーユの様な多層構造をしている道路もあれば、轍防止の為にエラストマーを配合することがある。エラストマーを配合するとなお一層アスファルトが変形すると予想されるが、この場合は弾性変形することで轍が修復される仕組みになっている。タイヤとのグリップ力もあり好ましいのではあるが、常時太陽光に晒されていると分子が劣化する問題があり、都度補修作業が必要となっている。このエラストマーに代替しうる材料を筆者も考案した経験があるが難解なテーマである。劣化分子も同様に雨水で流出するのであろう。

塗装屑の発生源は多岐に亘るであろうが、自動車塗装も関係しているのであろう。鋼板のホワイトボディの防錆処理としてエポキシ系塗料が電着塗装され、外板についてはエステル系、メラミン系、ウレタン系塗料が塗装される。この時塗料に電荷を持たせ、ボディサイドに反対荷電させる静電塗装をする。この作業をロボットでするが、ボディ・外板に100%の塗料が塗布されることはないので、塗布されない塗料は回収する。日本の自動車メーカーはこの管理が徹底して外部に流出することがない。静電塗装ロボット化が遅れている自動車メーカーや修理工場では対応していないことがあるだろう。極端に言えば塗装レス材料があれば好ましいが塗料メーカーも黙ってはいないだろう。両社の鬩ぎ合いが見物である。塗料メーカーとしては鋼鈑では塗装レスでは不可能。樹脂外板では耐候性をカバーするために必要と主張するだろう。東京農工大の高田教授の海洋汚染の研究では樹脂製品が紫外線劣化してマイクロビーズ化するとのメカニズムを示している。その意味で紫外線・耐候性改良剤は長寿命化、難抽出剤への変遷する可能性はある。材料開発者及び消費者は海に顔を向けて何ができるのか考え行動する時代になってきた。

【文献】

1)McCombs, R, M. Biddle (2016), “A Big Conversation Suggests Big Questions and Big Answers,” Plasticity London, 21 September 2016

2)BMBF (Bundesministeriums für Bildung und Forschung)2017Dem Plastik auf der Spur, 19 October 2017 2017

3)https://www.jstage.jst.go.jp/article/taiki1995/41/3/41_3_144/_article/-char/ja/

ポリマーアロイ

料理ができないのに料理番組を見るのは好きだ。原料の厳選、出汁、下ごしらえ、裁断方法、サイズ、面取り、隠し包丁、粉の篩い、落とし蓋、糖への転移温度と維持時間、蛋白質凝固温度、複数の調味料の添加順番、・・・実に複雑な工程を手際よく、無駄なく仕上げてしまう。プロでなくても家人のプロセスをみると感心する。グルメ評論家のリポーターは聞き飽きた感があるが、「味の宝石箱やぁ!」と言えば、多種多様な味が単にブレンドされていると解釈し、「モチモチながらジューシー」と言えば、複数の素原料がそれぞれの長所を表現していると解釈する。

プラスチックス(樹脂)でも同じようなことが言える。今回は複数の原料の長所が活かされ、短所は目立たないようにする良いところ取りのポリマーアロイについて紹介する。

結晶性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル類、ポリアセタール、ポリアミド(通称ナイロン)、ポリフェニレンサルファイドなどは耐薬品性、成形流動性、機械的強度などが優れている。一方非晶性樹脂(ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル)は寸法精度、クリープ(長期間負荷がかかると変形)、難燃性などが優れている。

結晶性樹脂の苦手が非晶性樹脂の得意技であり、結晶性樹脂の得意技を非晶性樹脂は苦手としている。即ち、全ての品質を満足する単一材料は現在のところ見つかっていないが、得意技だけを有効に活用する方法はある。それがポリマーアロイ技術。現在まで多くの結晶性樹脂と非晶性樹脂の組み合わせからなるポリマーアロイが開発されてきた。ポリマーアロイの製造は反応リアクターと樹脂混練機能を合体した高混練2軸溶融コンパウンド機を利用している。代表的装置を図-1に示す(日本製鋼所TEXα)

この図で原料や副資材は長いシリンダーの任意の点から供給される仕組みになっている。丁度料理のようにシリンダーの根本では原料Aと調味料(多官能化合物)を混合し反応させるゾーンとし、その次に原料Bを添加して温度とスクリュウー回転で溶融混合させるゾーンとし、次のゾーンでは先の反応官能化した原料A‘とBが良く混練できるように設計されたスクリュー設計ゾーンとなり、これが完成した段階で必要により粉体・ガラス繊維・炭素繊維などを配合して複合強化ポリマーアロイ材料とし、最後には系中で発生した水分や臭気を脱気するゾーンで仕上げとする。

“反応リアクター”と称するのは結晶性樹脂と非晶性樹脂を混合しようとしても相互に溶け合わないので、双方の樹脂に部分溶解する成分を混練機内で合成することもあるからである。合成された相溶化剤は界面活性剤のような作用で基本的に相溶しない材料同士を分散することが可能となる。リアクターの事例として2軸混練機の中で官能基を有する分子を一方の材料にグラフトさせて相溶化剤の合成事例を紹介する。グラフトするための不飽和二重結合と相手材料と反応する官能基である水酸基、カルボキシル基、アミノ基など(二重結合と官能基を有する)化合物が選択される。無水マレイン酸やリンゴ酸もその一種である。

次に混練工程になるが、2軸(スクリューがシリンダーの中に2本あり、同方向に回転しながら溶融樹脂を混練し相互に出会う界面頻度を高くする効果がある)スクリューの中に特徴のあるニーディングユニットを設えて品質改良する。工程中にサンプリングをして都度分散状態を観察したのが図-2である。(筆者ら 成形加工 第611号 1994)

この図において OA:光学顕微鏡でも見える分散サイズ TEM:透過型電子顕微鏡で観察、最終の平均分散径は2ミクロン、島の中に電子顕微鏡観察時の染色で黒く見えるのはエラストマー(衝撃改良材)。エラストマーがマトリックス中に存在すると柔軟になるが、島の中に存在させることで剛性があり、衝撃強度が高い材料となる仕組みである。工程中の相溶化剤生成、両材料の粘度変化などからポリマーアロイの最終物性まで計算が可能となった。 2軸混練内での流動性・混合がコンピューター支援エンジニアリング(CAE)が利用されアロイ化の研究は進んだ。

筆者らはポリマーアロイ形態3兄弟を世の中に出している。

1)   海/島構造を基本として島の中に湖/湖の中に微細島 形態

2)   ミルフィーユのように多層反転構造 1層目(A海・B島) 2層目(B海・A島)・・n層目

3)   海/島構造であるが、島と島に橋掛けをしている形態

1)   は主として自動車に採用され、2)は電子機器のシャーシーなど寸法精度が特に要求される用途に、3)は線膨張係数が小さく、かつ衝撃の高い用途などに利用されている。面白いポリマーアロイを開発してきたが、着想は何かと問われると冒頭の「料理」。実際、2軸混練機は水産加工食品製造にも利用されている。

話を戻して海島構造のポリマーアロイでは島のサイズを極めて小さく=島の数を増加させることでトータル品質が向上することから、材料メーカーは競って、島の数を小さくすることに執念を燃やした時期があった。自動車の軽量化を狙い、ボディ外板の樹脂化が目標であった。試験片での高速衝撃試験と2軸混練機でのコンパウンド工場と往復しながら多様な人材と一緒に開発を進めた。現在でも当時の材料が搭載された車両をみると当時を思い出す。あのとき、異能な人材がいたからこそ成功したのだと。異能な集団を相溶化しつつ、異能を必要な時に発揮してもらうことがポイントであったのはポリマーアロイと全く同様であると。

歯科材料はアクリルにはじまり、アクリル系ハイブリッドレジンになった。大臼歯向けの改良材料も出現してきた。しかしながら、歯科用途にむけてポリマーアロイ設計は面白いと考えているのは多分小生だけではないと想われる。

 

海洋ゴミと3R

湘南(鵠沼)に住む友人は毎朝・江ノ島海岸のゴミ拾いをしてから出勤。その様子をFBで公開しているが、毎日の清掃にもかかわらず60リットル袋に一杯のゴミが収集されている。彼曰く「毎日毎日よく川から流れてくるし、よくこれだけ観光客が砂浜に捨てる勇気があるなと嘆きたくなる毎日ですが、毎日やっていると、ローカルサーファーが帰りがけに『いつも波乗りしながら見ています。ありがとうございます。これ、海のゴミです。ひとつですけど、捨てるのお願いしていいですか?』こんな人がこの三年で増えてきているのも事実です。まだまだ日本も捨てたもんじゃないです。とのこと。

環境省28年度海洋ゴミ報告(http://www.env.go.jp/press/files/jp/108078.pdf)によると漂着物は大型海藻、木材の自然物及びプラスチックスである。プラスチックスでは漁具である浮子(アバ)、発泡スチロール、及びPETボトル、フィルムシートなどであり、漂着する地域によって種類と流出先が違う。例えば奄美~串本の太平洋岸では中国からのPETボトルが、対馬~山陰海岸では韓国からのPETボトルが目立つ。北海道では漁具が多いなど特徴がある。中国は世界中からの樹脂ゴミを受け入れることを止めた。約800万トン/年の樹脂ゴミを巡って悲喜こもごもの様子が展開されている。輸出用コンテナーの奥に樹脂ゴミを、扉付近には綺麗な樹脂を積載して検査をすり抜けることを試みたが結局発見されてシップバックした某国企業、ゴミ樹脂からの分別をする中国企業が倒産に追いやられた結果、中国内需を賄えないことから日本の綺麗な再生材を輸入することになり、日本の再生業者は設備増強している。日本の家庭ではPETボトルからフィルムを剥がし、内部洗浄して回収にだす几帳面な性格が中国を救っている。中国はリサイクルせずにPETボトルを流出し、日本から再生材を輸入。どこか滑稽な風景だがこれが現実。

一方、EUの欧州委員会は5月28日、海洋生物保護のため使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する法案をEU加盟国と欧州議会に提出した。2030年までに使い捨てのプラスチック容器・包装を域内でゼロにする目標を掲げた「プラスチック戦略」を表明しており、今回の提案は実現に向けた具体策となる。 http://blog.knak.jp/2018/06/post-2037.html

1)消費削減:プラスチック食品容器や飲み物コップの使用を削減、

2)販売禁止:代替品がある場合、使い捨てプラスチックは販売禁止。

  プラスチック製の綿棒、ナイフやフォーク、皿、ストロー、飲み物の攪拌棒、風船棒

3)生産者の義務:生産者は廃棄物処理や清掃等のコストを一部負担、代替品の開発

  食品容器、食品包装、飲み物容器とコップ、フィルター付きタバコ、ウエット手拭き、風船、軽量プラスチック袋

4)回収目標:2025年までに使い捨て飲料ボトルの90%を回収(デポジット)

海洋生物保護目的としているが、喫緊の課題は中国ゴミ樹脂拒否対策が先である。欧州は米国と並んで樹脂ゴミを中国に輸出をしている。食品包装がガラスなどからフィルムに転換することで輸送時の炭酸ガス抑制に貢献し、さらには食品維持の為の多層フィルム化やレトルト調理などを通じて働き方を支えてきたことを、全く考慮しない委員会の狭い了見では消費者が迷惑するだろう。日本ではここで対象となるプラスチックスは焼却炉の最新化と燃焼カロリー面からも焼却されているが、こと欧州では焼却炉が対応できていないのではないだろうか。

日本ではPETボトルto PETボトルの技術が確立し、すでに稼働している。食品トレーもトレーメーカーが中心となりシートtoシートが進んでいる。また、リサイクルPETペレットをポリエチレンに20%混合した製品は洞爺湖サミットで提供するなど多面に亘り活動している。ただリサイクルPETが40%以上になると引裂やすく、ヒートシール温度が高くなる(100℃近傍→210℃近傍)問題があり実用化されていない。筆者らの研究によればリサイクルPETの割合が80%以上であってもヒートシール温度が100℃である技術が完成している。この技術を応用すれば紙を50%以上配合することもでき、廃棄にあたっては紙容器の範疇に入る。 日本は環境先進国である。胸を張って、かかる技術を輸出しては如何だろうか。

金平糖

ノーベル賞のパロディ版としてイグノーベル賞がある。思わず笑ってしまうが着眼点は凄いなぁと感心することがある。日本人の受賞者が多いことでも知られている。カラオケの効果や歯周病と経済は関係があるとの解析もあれば、兼六園の銅像には鳩の糞がつかないことからカラス避け合金の発明などがある。犬との会話ができるバウリンガルもあった。さしずめ小職が選ぶテーマとしては、スマホによる親指の長さの世代間変化か

文科省ナノテクノロジー分子・物質合成研究プラットフォームでは「オリジナルの着眼点に将来のビジョンを描く」として、この世の中には、一見役に立たないように思われることは沢山ある。しかし、ある瞬間、突如としてブレークスルーすることがある。今は役に立たずとも、必ずや未来に花を咲かせる研究シーズを紹介する「すぐには役に立たない研究講座」を開催している。日本は独創性に劣るとの批判もあるのであろう、本来は役に立つことを前提に科研費を大学に出す文科省が、直ぐには役立たないシーズ研究を許すことが有意義なことと思う。ある日突如ブレークスルーするには感性の違う聴衆に訴えることは有効である

そこで日頃は非常に難解専門用語や数式を駆使されている大学研究者が、異なる分野の聴衆に聞いてもらうために平易に説明する必要がある。専門仲間内の言葉では伝わらない。ここで講師の力量が試される。本当は超難解な内容を平易に説明してくれると「確かに役に立ちそうだ」とぼんやりながらでも脳みそに浸透する。開催者から講演指定された人の中には「役に立たない」からと指名され招待されたとしてやや抵抗気味に発表しているのは微笑ましい。517日のテーマは 「鏡の中のグルコースを食べる微生物」、「金平糖の形状に法則性があるか」、「本当に使い難い技術」、「電子の集団行動がもたらす不思議な現象」などである「鏡の中・・」はD体、L体のグルコースの一方を利用して創薬の可能性を。「本当に使いにくい・・」はマイクロ反応装置を利用した化学反応精密制御技術の開発、「電子の集団行動・・」は膨大な情報処理を電子の電荷とスピンに分離し媒体利用しようと、確かに今ではなくとも役に立ちそうと理解できる

ここで気になったのは「金平糖」。実は金平糖のような形状がある物質で可能なら面白いが。。。と考えていた時にこの講演会。これは天の配剤として会に参加した次第。ニーズがあり役立つシーズを探していた。弘前大学の宮永教授の発表は1)何故角が発生するのか2)角の数に法則性があるのか として、10年に及ぶ学生実験を纏めたものである。ご承知のように金平糖は大きな平鍋を略30度傾斜させ加熱・回転しながら核種の表面に糖蜜を掛け乾燥すると糖蜜を更に掛ける作業を続けると角が発生する現象を利用したお菓子。核種が1粒だけでは角が発生せず球に成長するだけだが、複数の核種では角が生え始める。当初の角は90数個の小さい凸が10時間後には20前後に落ち着くとのこと。教授は淡々と実験事実を発表していて、初めはこれが国立大学?と驚いたが、聴衆に答えを直ぐに言わずに各自の頭で考え創造性を高めるようにとの会の趣旨に合致していることが分かった。

糖蜜が回転する平鍋の界面で水分が蒸発することで粘度が高くなり摩擦によるカタストロフィーにより微小な凹凸ができるのだろうと思われる。微小な凹凸が隣の凹凸と衝突することで蜜が積層する角とそうでないところに分かれると推察した。これは空間を如何にして作り最適解の形状を設計する「トポロジー」の世界である。3Dプリンターと本質的に共通するものがあると思われる。コスモサイン合同会社では3Dプリンター装置販売と同時に専門誌・歯科技工からのご依頼により3Dプリンター記事を連載中である。妙なところでリンク。当初考えていた用途への適用には糖蜜代替物質を考慮することで実用化を計りたい。宮永教授は金平糖の角と雪道での凸凹を結びつけている。これもいずれ冬タイヤ溝形状などへの役立つことになると期待している。青森の厳冬のなかコンビニの前の道路をじーっと観察している学生さんは、自然現象の中に多くの役立ちシーズがあることを学んだのであろう。

海岸の流れの強い場所で二枚貝のイガイは足糸をつかって岩に付着している。これを見た研究者はテフロンであろうが付着するので研究をしたところ、ポリドーパミンが付着物質であることを見つけた。神経伝達物質であるドーパミンが酸化重合したものである。今は医療用コーティング材、導電膜、メッキなどへ応用されている。自然界にはまだまだベールに包まれた技術ネタがありそうだ。と書きながら自然界はオープンに公開している。観察眼のなさをベールと表現しているのは自然に対して不遜な態度なのであろう。

バイオプラスチック(2)生分解性プラスチック

生分解プラスチックは例えばポリ乳酸は澱粉などを発酵により乳酸とし重合によりプラスチックスになる。使用後は微生物により分解されて水とCOかメタンとCOに分解する。空中のCOを固定して利用し微生物により低温分解して元に戻す。COを増加しないプロセスとして優れている

欧州バイオプラスチック協会が公表している調査結果によると、2017年の世界の生産能力は205万トン。 生分解性プラスチックスはその内44%で85万トン。主たるプラスチックはポリ乳酸(PLA)と脂肪族ポリエステル(PHA)で今後も50%の成長速度が予想されている。世界のプラスチックス総生産量は約3億トンなのでバイオ全体でも0.7%未満。少ないとみるか、よくぞここまでの規模になった今後も期待できるのどちらか。

<少ないとみる人は>

 プラスチックは市場が必要とする物性にあわせて合成されてきた。一方微生物バイオプラスチックは天然由来成分だけに目的物性に合わせる幅が小さい。なので適性市場は少ないだろうと(現在の技術ベースで)考える。具体的にはポリ乳酸(PLA)が出現した時はPET代替が可能として期待はしたが、ガスバリアはPETに及ばず、溶融から固化するまでの時間が長く射出成形適性はない。このための添加剤は開発されたが、コスト問題の壁がある

<増加を期待する人は>

 ポリ乳酸(PLA)は短所が長所である成形法に巡り会えた。それが3Dプリンターである。溶融から固化までの時間が長いのは溶融フィラメントを積層して立体物を成形する(FDM方式)の材料としては優れていることが判明した。現在はフィラメントとして販売されている。FDM向け材料はABS、ナイロン12と並んでPLAが高温特性、耐薬品性などを特徴として伸びている。

 PLAが期待されている分野に発泡製品がある。一般に発泡は化学発泡剤及び低沸点有機溶剤、フッ素系化合物の物理発泡剤が利用されているが、ここでは環境を考慮して炭酸ガスによる発泡を検討している事例を紹介する。 PLAを押出機で溶融させ、途中から炭酸ガスを注入しPLAに溶解させる。溶解させるに都合のよい超臨界圧条件で炭酸ガス(超臨界状態では液体的性質)を混合し、ついでダイスから大気圧へ解放すると発泡する仕組みである。民間企業を中心に産総研(関西)、大阪市・滋賀県工業試験所が協力して開発を進めている。PLAにはd体L体があり、また分子量依存性もあることから発泡プロセスの開発と同時に材料開発も検討した。その結果を巻末にて紹介する。

このように今後の成形技術の開発如何によっては伸びることが予想されている。生分解プラスチックにはPLAの他にポリヒドロキシアルカン(PHA)ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリグリコール(PGA)がある。それぞれ微生物分解を利用した農業用マルチフィルムに既に利用されており、後者はガスバリア特性を活かした冷凍輸送代替真空パック用包装フィルムなどに利用されることが期待される。

過去から身近で利用されてきた生分解材料にセルロースがあり、光学フィルムのTAC(トリアセチルセルロース)はリサイクル率が高いことも好感される。包装フィルムやテープの(セロファン)はPPやPETの2軸延伸フィルムに押され減少傾向にあったが、最近4~5%伸びで反転攻勢に出ている。セルロースフィルムの吸湿性をコーティングでカバーし家庭内で生分解できるネイチャーフィルム(英イノービアを買収したフタムラ)は菓子、コーヒーなどの食品包装を中心に動向が注目される。

 セルロースといえばセルロースナノファイバーが脚光を浴びているが、木材はセルロースを接着し、害敵からガードするためのリグニンからなっている。リグニンを除去しないで木材のまま成形体ができないかの研究も一方で行われている。京都大学はセルロースナノファイバーと平行して木材粉末やサトウキビ由来のスクロースにクエン酸を配合して熱プレスにより製品化できることを発表している。接着材に化石原料を全く使用しない特徴がある。クエン酸が相当量含有されているので、熱湯水で溶解しないのか懸念したが、セルロース、リグニンと反応していることが分かっている。東京都産業技術センターでは木材チップ・粉末に熱硬化性樹脂を極少量配合した複合材料を熱成形するプロセスを発表しており、一部食器など民間企業で生産されている。漆器と外観が似ている。 これらが射出成形可能まで開発されると面白い

さて、話を戻して制度面から見ると、すでに国内には日本バイオプラスチック協会などによる表示・認証制度が存在する。 主な対象は植物由来の製品や生分解性を有する製品などがバイオプラだということが分かりやすいマークを示すことで、低環境負荷を意識するメーカーや小売業者、消費者への訴求を狙っている。経済産業省が新たな表示や顕彰制度の創設で後押しの動きをしているが、国産バイオマスを原料とする製品に限定が有力候補の一つ。但し、欧米では生産過程でCO削減に貢献した製品もグリーンプラに含める概念をだしつつあり、経産省も再考の余地があるようだ。

だとすれば、化石原料由来のポリカーボネートの製造法には溶剤を使用する界面法と一切使用しない溶融法があるが、この欧米の解釈では溶融法ポリカーボネートがグリーンプラになる可能性になるか否かも注目される。現実的には消費者は市場性のあるプラスチックを購入する。 物性、価格など満足した上でグリーンであれば購入の動機となる。なので、物性、価格のマッチングの材料開発と独特の特徴を活用した成形技術の開発が必要となる

そんな中、既存のPETを分解する微生物が海外の研究者によって発見されたとのニュースがFacebookにあった。中国の廃プラ輸入禁止措置もあり関心を読んでいる。ただ、PET分解微生物の発見は日本が早く慶応/京都繊維工芸大の合同チームが2016年に発表している。

最後に生分解プラスチックは却ってマイクロプラスチックスを増加させ海洋汚染するのでは?と英国を中心に巻き起こっている懸念にどう向き合うか。生分解プラスチックにだけでなく非生分解プラも含めて全体での議論が当必要だろう。

PLA超臨界発泡プロセス   20倍発泡食品トレー   35倍発泡セルSEM写真

 

バイオプラスチック(1)

バイオプラスチックには次の2種類があることを始めに紹介します。

①    植物由来原料を重合したプラスチック(バイオマスプラスチック)

②    植物由来原料を重合したプラスチックスが微生物により分解し最終的に水と二酸化炭素に分解される プラスチック(生分解性プラスチック・グリーンプラスチック)

<はじめに>

近くのスーパーでエコバッグ持参の客には2円値引きサービスがあったが、。先日エコバッグ持参の割合が70%に達したので環境への理解を得られたとして値引きサービスは止め、ポリ袋が欲しい場合は1枚2円頂戴しますのビラ。 逞しい商魂にアッパレなのか渇!なのか皆さんのご判断にお任せします。何だか落語の壺算の逆パターン。

経産省などが推進しているバイオプラスチック。バイオ率100%のレジ袋では2円/枚より更に高価になり直接消費者に反映させるとバッグ持参が増加し、バイオプラスチックはレジ袋市場には浸透しなくなる。なのでバイオ率、価格をどうするか、それとも従来材料にない機能を発揮させて、価格に見合った市場を開拓するかがポイントとなる。

<バイオプラスチック>

企業がバイオプラスチックスの事業に着手するには地球愛だけでなく、利益を通じての社会貢献が動機である。数年前まではブラジルや米国ではサトウキビやトウモロコシ由来のアルコールが自動車ガソリン代替か混合用(ガソホールE10,E20)として原油価格暴騰の期間ブームになったが原油価格の低下、シェールガスが現実化すると沈静化した。米国のイラン核合意離脱により5月16日のWTI価格71ドルと高騰気味であるが、採算ラインになるかどうか注目される。ただ、高燃費車や脱ガソリン車の増加もあり、ガソホール復活可能性は少ないとみる。ブラジルBraskemではアルコールをエチレンに転換しバイオマス・ポリエチレンの生産をしている。日本でも2商社が取り扱い、包材メーカーも商品化に努力している。パッケージ展でみると歩みは当初の狙いより遅いが確実に浸透していることは分かる。原油(ナフサ)由来のポリエチレンと物性が略同じなので、材料設計、成形加工技術、製品設計は従来技術の範囲内で対応できる強みがある。しかしながら価格差はナフサ由来とはある。

バイオマス・ポリエチレンはイオングループが有料レジ袋に、東京ディズニーリゾートがお土産用袋に、またセブン-イレブンが一部店舗で無料レジ袋に、 今後バイオプラスチックス認定を見える化する経産省・環境省の動きを先取りしての企業活動だろうが、バイオマスの割合については価格見合いだろう。京都市はバイオマス・ポリエチレンを10%配合した家庭ゴミ袋を7月から有料指定袋として本格実施する。従来と同価格。これで年間500トンCO2が削減されるとのこと。京都議定書20年の節目のアクションとしては理解できる。たかが10%されど10%。従来通りだと単純に価格は上がる。物流コストの上昇環境もあり、インフレーションフィルム成形速度、シール速度、裁断刃寿命改善、パッケージ袋の印刷、検査方法、段ボール材質見直しなど細かいところまで合理化しないと採算に合わない。ご苦労された様子が想像できる。改善導入初期はポカミスが起こり易い。検品にコストが掛かる。なので導入期間は相当とる必要がある。

バイオマスプラスチックスの中でも注目を浴びているのがバイオポリカーボネートである。糖・グルコースから誘導されるイソソルバイドを成分とするポリカーボネート(補注参考)で既存のポリカーボネート樹脂の透明性、衝撃強度、寸法精度特性を有しておりながら、光学特性に優れ表面硬度が高い(鉛筆硬度は既存がBに対して1Hと高い)開発品の中には2Hとアクリルに迫る硬度がある。特徴は表面鮮鋭性である。自動車の内装材(インパネ)は傷が付きやすい。なので、傷がついても戻り易いウレタンかポリプロピレンの場合は種々の無機フィラーの種類、配合エラストマーなどを変えてグレード開発をして更に成形時にはエンボス加工(小さな凸凹)するのが一般的である。

自動車は単なる移動手段だけでなく個室的な意匠性が要求される。なのでインパネは軽自動車とは言え硬度と鮮鋭性を付与するために塗装がなされることがある。自動車に長く携わってきた開発者がバイオポリカーボネート樹脂のテストピースを見た瞬間、これを着色ペレットとして販売すれば塗装しなくても商品価値はあると直感。塗装費用に見合うとの計算もあり、しかも、塗装表面は硬化樹脂のコーティングにおける非平衡系の自己組織化散逸構造により表面は微少の凸凹パターンが発生する。これが光散乱の原因となる。一方、射出成形で表面が平滑なバイオポリカーボネートは鮮鋭性・深みのある意匠性が発揮できる。

軽自動車への採用を切っ掛けに乗用車まで拡大している。塗装は溶剤系が主流で溶剤回収など環境に課題が、水系塗装は乾燥が長くタクトタイムに課題がそれぞれあり、塗装レスは非常に意味がある。内装材で実績を出した材料は外装材にも適用されている。塗装レスがキイワードである。現在、三菱ケミカルがDurabioの商品名で製造販売をしている。製造プロセスは溶媒を使用しない溶融法を採用していることから材料及び製造法の両面で地球フレンドリーと言える。帝人も研究を進めており新聞発表をしている。

バイオプラスチックスではその他、展示会・新聞報道によると次の各社が発表している。

*三菱ガス化学(セバシン酸原料)高弾性率・低吸水ナイロン(Lexter)を市場展開中。

*ユニチカ も同様に「ゼコット」を準備している。

いずれも高価格・高機能が許されるスーパーエンプラ分野への参入。

*東洋紡・三井物産・Synvina(ポリエチレンフラノエート)PEF(ガスバリア、透明性、耐熱)推進中。PET代替。ポリエチレングリコールと、2,5-ジフランカルボン酸の重縮合体

*米ジェノマティカ、伊アクアフィル(ナイロンメーカー)は原料のカプロラクタム(CPL)の商業化に乗り出す 。

*三菱ケミカル・東レ 三菱ケミカルはトウモロコシなどバイオマス原料由来のポリエステル(ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)や ポリエチレンテレフタレート(PET)に関する基本特許について 東レとライセンス契約を結んだと発表。 市場拡大の為の三菱ケミカルのKAITEKI戦略の一つだろう。

次週はバイオプラスチック(2)生分解プラスチックスを採り上げる予定