原電とそよ風発電

東北大学が12月12日にリリースした内容はインパクトがあった。 「福島原発事故後に周辺地区で捕獲された野生猿の血液・骨髄細胞の結果―血液・骨髄細胞数が内部被曝線量と逆相関を示す。」逆相関とは被曝量が増えると血液・骨髄細胞数が減少。捕獲した猿の生活地域別、個体別の区分けを慎重に実施し対象となる猿を95匹抽出。「内部被曝線量が最小1.9μG/日~最大219μGy/日)中央値が76μGy/日だった。その結果、末梢血液中の白血球と血小板数、骨髄中でこれらの血球の元となる骨髄系細胞と巨核球が内部被曝線量と逆相関にある」と発表した。なにより図のように血液中の核の数とサイズの変化に驚かざるを得ない。猿の動きや外観からは健康状態に異常を認められないとしつつも、低被爆線量であっても長期間浴びた場合の生物への影響を解析する上で貴重な研究報告。

しかしながら研究チームは低線量を常時浴びているイラン・ラムサールでは平均10mGy/年被爆の環境下でも顕著な放射線影響は報告されていないことから、馴化や適応もあり複雑であるとして慎重な研究継続をするとのこと。研究者の姿勢として凄く立派である。

科学に謙虚に真正面から向き合うことが人類・成獣・植物、大きくは環境に対して必要であることを改めて認識した。原子力発電は科学に基づいて稼働している。ただ、周辺インフラ整備には科学を軽視してコストを重視をした。科学的根拠に基づく勧告に従って津波対策・非常用電源など措置を採っておれば、これほどの結果にならなかった。科学に依存する一方で科学を無視した。言っても聞かない東電経営者連中にはお天道様が差配したのかも知れないが多くの尊い命を失い、日本中を混乱させた。村の鎮守の場所は過去津波の被害がない場所に建立されていることを、誰か一人でも関心があり、何故だろうと考え行動していればと悔やまれる。日本特有の組織の同調圧力とか空気もあるかも知れないが、経営者のトップの仕事は同調空気を作らない風通しの良い組織をつくることにある。

あれは原電の話。もう過去の話。。。と片付けるには貴重すぎる結果。これから些細なことでも人間にとって健康・快適なテーマに結びつけるために、何があり、どうすれば良いかの5W2Hを考えるのは意味がある。歯科関連において線量が圧倒的に低いコーンビームCTによる歯列顎形状の特定技術の開発、海外を飛び回るビジネスマンの飛行中被爆する線量対策としての航空機材料の開発などが挙げられる。

 週末になってポーランドで開催されていたCOP24の報道があった。京都議定書、パリ協定と名前は浸透。先進国のみ実施の京都議定書から、途上国も取り組むと変遷。CO2削減を産業革命時点+2℃以内(1.5℃以内がゴール)。詳細がこれから明らかになるので、論評は差し控えるが素人の直感では(自国ファースト政治などもあり)相当厳しいと想像する。

今後迎えるMaaS (Mobility as a service)や5G世代社会を支えるのは電力。その発電を脱炭素で賄えるのか。太陽光、風力など供給量変動の大きい自然エネルギー利用に対して火力、原電がベースロードとしてミックス構成を変える必要がある。北海道地震による長期停電、ソフトバンクの通信トラブルのようなことが電力において発生したら国は持たない。つい最近、京成線内の夜間電気工事の遅れで、接続している翌朝の京急は運休や部分運行と混乱。僅かな時間でも電力が停止するととんでもない混乱を招く。大きい技術開発は政府・公的機関・民間企業にお任せして大いにお手並み拝見をしよう。

 ただ個人レベルでも意識を持ってそよ風程度だが環境への試みをするのもありか。ポリシリコン価格暴落で太陽光発電メーカーが不振になったり、電力買い取り制度問題で個人的にも影響をうけている太陽光発電。投資コストが少なく発電が確保できる風力に着目。(最も効率が良いのは地熱発電だが観光産業との兼ね合いで進展していない。) 約10年前に仲間で日曜に集まって「そよ風風力発電」を合い言葉に風力発電用ローター(羽)の形状検討をした。ローターは剛直な紙を折り紙で製作した。出力には換気扇を利用して起電力を測定した。手先の器用な人、電気に精通している人、デザインが得意な人、発想が人とは違う人の四人が集まった。ローターの回る周速と発電量の関係はローターのデザインに依存する。理論値があり、当時の市販されているローターは得意領域の風速に合わせて製品化されていた。そよ風領域はなかった。

会議室を日曜限定の臨時工作室に転用していろんなデザインのローターを折り紙でトライする内に次第に風洞実験で確認価値がありそうだとの運びとなり、風力発電で有名な足利工大でテストをした。その結果、ローターの回転(周速)と発電量の理論値ラインに乗ることが分かった。(ループウイン社公開の発電効率の図上にプロットした)

ビル風は勿論、人が通り過ぎる時の風でも発電する。この10年の間に風力発電から撤退した企業がある一方で羽を巨大化して海洋風力発電に力を入れる企業と2極化している。当時の折り紙形状のアイデアを製造するには厄介な点があったが、現在、当方も関係する3Dプリンターを利用すれば可能だと考える。 原電と規模では比べものにはならないが、そよ風発電が大きな風を起こす時がくることを。

労働人口(定年延長・海外労働者・AI)三つ巴

事件や事故で被害者の年齢と職業を報道するたびに例えば「○○さん。75歳。無職」と紹介される。マニュアルに名前・年齢・職業を言うことが決められているにしても「無職」がなんとなくマイナスイメージを醸し出すのは如何なるものかと都度思う。75歳でも仕事に従事していないといけないのか?と。 しかしながら、それが冗談ではなくなるかも知れない。政府は企業に定年延長を指導し、年金支給開始を70歳からに設定すれば30万円/月給付するとの構想を発表している。65歳以後も健康で「職業」に就くことができる人は限られている。皮肉的だが、会社の空気を読んで仕事に邁進し成果を上げた人ほど、社内外の付き合い、空気抜きとして酒は必需品だ。 

仕事ができる人ほど定年前から種々の病気を潜在的に抱える人がいる。会社の健康診断で全く問題ないと発言をしようものなら「仕事していないからネ。」と陰口。高度成長時代は特にそうだった。仕事ができたが健康を害している層。健康ではあるが仕事ができない層。いずれも70歳を迎えるには厳しい。 

話は飛躍するが酒党には辛口のデーターがある。アルコール摂取積分値が120kg(人により200kg)に達したらいろいろな疾病がでるとの報告がある。これを200ccの罐として換算するとビール 10,000  ワイン4,800 日本酒 4,000罐 。 連続飲酒で蓄積した場合の数字なので、蓄積しないように休肝日が必要だが、それにしても少ない量で発症の危険があるということ。閾値に達したら発症する花粉症と同じと考えれば納得がいく。

話を戻して労働者人口問題へ。政府の年金給付70歳開始構想を批判するのは簡単だ。国の立場からすれば年金バランス解消もあるが、なによりも労働人口の減少対策が重要と考えているだろう。65歳以上も貴重な労働者として働いて下さい。それが国の衰退を決めるとして協力要請している。

人口の増減と国の経済力は強い相関関係があり、特に高齢者1人を何人の若者で支えるかの比率が低下すると国は衰退する。日本に限らず中国も同じ。飛ぶ鳥落とす勢いの中国は人口減少による経済停滞の危惧、社会不安対策もあり一人っ子政策を廃止した。効果がでるのは20年後。それまで民間債務残高29兆ドルもの借金漬けバブルが弾ける危険がある。すでに始まっているとの情報もある。

労働人口対策としてロボットやAIが補完するから大丈夫との見方があるものの20XX年まで待てる体力のある企業と、待てないで労働者不足倒産の危機に瀕する企業もある。海外労働者入管法改正法案が国会を通過した。具体的細目は省令で決定するとのことなので、白紙投票しろとの野党の抗議は分からないでもないが、それなら政権時代に統治システムを変更すれば良かったが、しなかった。

今回の海外労働者入管法で対象となる職種でロボットやAIでは代替可能なものか、独断と偏見で考えてみた。 入管法では14業種が対象となっている。

*外国人技能実習制度(技能検定試験に合格で3年の在留資格)

*特定技能1号(最長5年滞在可能だが家族帯同は不可)

*特定技能2号(追加予定 条件では永住可能)

ここで、AI や IOT、ロボット化など開発が進むロードマップを読んで滞在期間を決めているのでは?と推測する。

現在の代替率0%の業種であっても開発が進めば割合が50%まで削減できるならば労働人口問題は一つのソリューションを得る。逆に言えばイノベーションのネタでもある。

【介護職】介護パワースーツなど補助装置、リハビリ自動化、新モニタリング装置で介護負担の軽減

【農業】除草剤頒布の頻度を少なくする除草剤及びドローン利用による農作物管理から出荷検査など

【ビルクリーニング】 クリーニングする必要のない表面コート剤の開発。光触媒の進化とコート剤の自己組織化による表面ナノ凹凸撥水防汚材料

【自動車整備】 外板修理程度しかするアイテムがないほど電子化が進み、整備自体が縮小するだろう。補修部品を自動車販売店傘下かタイアップしている3Dプリンターで製造

【宿泊業】 ハウステンボスの事例のように受付フロント業務はロボットが置き換え、客の車管理もAIが請け負う。お客様が外出時にクルマ手配をスマートにこなしていた優秀なドアマンも顔認証とリンクしてクルマが立体駐車場から自動搬送されてくる。

【産業機械製造】多軸CAM、3Dプリンターで現在の金属加工業から変化する

人口減少、高齢化社会のモデルケースとして日本は注目されている。一方、ドイツ、フランスでの外国労働者による就職機会が奪われている社会問題は深刻さを深めている。 注目されると組織を挙げて対応する日本の企業・社会文化。ここは全体の空気を読んで活躍できる特にシニア層に期待しましょう。

FCV,EV ,MaaS

何十年前の雪国での風景として、石油ストーブの周りに保護柵があり、洗濯物を置いていた。湿度調整も兼ねていたのだろう。でも洗濯・乾燥するたびに徐々に変色していく。何故か。それは灯油の燃焼から発生している窒素酸化物が原因である。繊維や染料と反応して褐色気味の着色物質が生成するのである。これを業界では「ピンキング」という。

日本で製造している樹脂・繊維製品は添加剤配合なども洗練されており、ピンキングや黄変が発生しないが諸外国で生産される材料では対処されていないことが多い。製品が輸入されてピンキングが指摘されることがある。そのとき思い浮かぶのが冒頭の石油ストーブ。倉庫内のフォークリフトは?と聞くとエンジンでアタリ!日本ではFCV駆動フォークリフトが浸透している。倉庫のような閉ざされて空間でエンジン動力源のフォークリフトが走り回ることで発生する窒素酸化物が貯蔵製品を徐々に汚染させている。

日本は特に食品関係の倉庫では匂い問題もありFCVがパワートレイン。EVでは充電時間が長いが水素供給時間は3分程度と短い。域内走行なので供給装置問題もない。水素タンク耐圧は35MPa(350気圧)と低いこともあり普及している。

 これが自動車適用となると適用車種はトヨタ、ホンダに限られ、ベンツも時々アドバルーンを上げてはいるが、EVとは比較にならない普及度。メリットは走行距離、水素燃料チャージ時間はあるが、未解決課題も山積している。材料では水素燃料電池の触媒(白金)代替の開発、水素タンクの合理的製造法の開発などがある。タンク圧力は70MPaと高く、金属製では水素腐食で使えないので内側は高密度ポリエチンタンク、外側を炭素繊維で何重にも巻く構造となっている。バウムクーヘンのように真ん中の空洞の部分は見かけタンク大きさよりかなり小さい。 ちなみにプロパンガスタンクは2MPaで高張力鋼板の溶接。

炭素繊維製造は日本の得意技術である。だが、、、、材料メーカーのテリトリーではないこと、またクライアント先との競業避止もあって下流の製品化はしない。下流は中小企業が多い。これを突破する製品化技術が必要。樹脂タンクの層構成、炭素繊維巻く機械(口部などの巻き方など工夫が必要)の開発などが挙げられる。

インフラでは誰でも指摘している水素ステーション設置数が少ない、ステーション設備・維持管理費用が高いなど悲観的な事例を挙げる人が多い。FCV走行距離が650kmで多くは日帰りには問題がないが、どっこいEV車が当初の170kmから400kmまで改良が進んできたこともあり、FCVの走行距離だけではメリット幅が狭くなった。

Well to Wheel(油田から車輪)までのエネルギーロスが多いのも指摘されている。EVが効率が良いとも。でもEVは電力が存在しての話。原電は削減、化石発電も抑制され太陽光、風力など変動電力に対して水素は発電量調整バッファーの役目があるとしたら水素社会とEVは共存すると考えるのが自然ではないかと思う。

FCVもEVでも低速時のトルクが高い特性がある。トヨタがハイブリッド車を開発した動機はなんと0→100の立ち上がり速度であって、スポーツ感が味わえることを目的とした。それはモーターの低速時の高トルクにある。エンジンでは速度と共にトルクが高くなり、低速は苦手である。 で、イラチなドライバーはEVステーションで待つことができない性格だろうと思う。そんなユーザーにはFCVが適しているかも知れない。(ステーション問題がクリヤーになったら)。

 パワートレインの将来はどうのこうのとの講演や記事は多い。その多くは2030~2050年頃には。。。の前提付きながら、現在の状況範囲内で述べている。技術の進歩状況を外部からは見えないからである。トヨタやホンダがHEVやPHEVを独占しているのは鉄壁な知的財産であり、財産蓄積中は当然のことながら外部には発表しない。(注:FCV仲間を増やすため公開特許の利用を許可している。但し、もの作りにはノウハウや技量が必要でこれは各社公開はしない)

トヨタの次年度の組織変更が発表された。FCVは残っている。これの意味するところは何なのか。想像を逞しくするのもありだと思う。クルマを含むインフラ全体も視野に入れていく中でFCVEV,エンジンなどパワートレインの座席が決まる。その答えが徐々に表面化してきた。

 トヨタがソフトバンクと組んだMONET TechnologiesMaaS(Mobility as a Service サービスとしての移動体) の動向がパワートレインを左右しそうだ。アプリからあらゆる交通手段の最適化による利用が可能で決済も行われる。Suicaも存在するかどうか瀬戸際になるかもしれない。台湾に出張した家族がウーバーを利用したが非常に便利で驚いたと話している。また横浜みなとみらいを中心とした観光地域ではアプリからバスを呼び出す実験が行われている。徐々にMaaSに向かって動いている。

大阪万博 イノベーションの実践

2025年の大阪万博が決定。「医療・健康が中心のテーマ」と聞く。競合した国・都市に比べてこのテーマでは数歩リードしていたこともあり、票田の多い国々では国境のない医師団をはじめボランティア皆様の日頃の活躍が功を奏したと思う。

思えば前回の万博では趣向をこらしたパビリオン前の長い行列、アポロ11号の「月の石」と明るい話題の中、山田洋次「家族」が九州炭鉱閉山に伴い北海道へ移住する途中で万博を見学する風景がおりこまれ、表裏の時代性を浮かびあがらせた。笠智衆さんの運命に流されていく演技は秀逸だった。石炭産業から石油にエネルギー転換していた1970年。その3年後に石油ショックや環境汚染問題など時間軸でズームアップしてみると当時の大阪万博が屈折点だったかも知れない。「人類の進歩と調和」 パビリオン間移動の小型バスはEV車だった。それが50年後では公道を走行している。技術は調和しつつ進歩した。政治面での人類に進歩をもたらしたかは疑問だが。

では今回はどうだろう。医療・健康はテーマとして悪くない。長寿社会を謳わなかったには開発国への配慮があったとのことではあるが人類共通のテーマである。

iPS細胞の範囲拡大、AIによるビッグデーターからの診断能力の向上、CT,MRI,PET、超音波診断に加えトモグラフCT(3次元動的CT)などが拡充されることが期待できる。量子コンピューターによる分子設計での創薬やコンピューター内での治験などを想像するだけでエキサイテイングになってくる。歯科についても口腔内施術のロボット化が予想され(一部着手している大学がある)。ナノテクが更に進化した機能を発現するだろう。

一方で、技術の進化と生命倫理問題は隣り合わせにある。 このブログがアップされるタイミングではWOWOWドラマ「パンドラ AI診断」は継続中なので結末は置くとして

毎日発表される膨大な論文から診断され手術したところ、失敗したとあって係争。診断は正しいのか、その診断に誰が責任を負うのか、果たして診断は正しいが手術の過程で見落としていたのかなど、今後あり得るケースを取り上げている。実に面白い。 一昨日政府はAIを利用する際の責任問題について7原則を近々まとめると発表した。AIの責任は利用する企業・利用者にあるとの案である。AIがブラックボックスでは社会の混乱が予想されるのだろう。 

前日まで健康に良いと言われていた食品が、ある文献では逆だとの報告があれば、論文査読者の資格、過去の実績なども含めてのAIに取り込んでの判断になる。言うは易く実行には気が遠くなる作業工程が必要だ。時間はかかる。でも現場の医者が毎日治療しながら膨大な論文に目を通すことはもはや無理。技術は初期の段階では受け入れられないのは過去累々。最近の事例ではホンダがジェットのエンジンを翼の上に乗せた。ほとんどの技術者は嘲笑した。でも実績を積むと認めた。AIは過去帳の整理には適しているだろうが、クリエイティブは苦手なのだろう。

 更に9月のHealth Day Reportには「つい先延ばしに関与する脳領域」が掲載されたいた。

なんでも扁桃体の領域と行動に移す脳領域の距離が離れていると行動を先延ばしになるらしい。この距離はMRIで測定することが可能。これが本当なら、生まれる前からの診断や入社試験でのMRI測定が別の名目で実施されるとしたら、人権はもとより本人の努力など無視することになりはしないか杞憂かも知れないが気になる。

今回の大阪万博誘致に関係者の足並みが揃わなかったとのこと。安部首相のGo!のかけ声で途端にやる気になったとある。勿論経済面が誘致問題の足かせにはなっていた。でも医療・健康の新技術・新社会イノベーションから得られる収益と何もしないで出血による大きな政府のままでいる経営とどちらが有利であるか計算ができなかったようだ。このブログでも記載したが機会損失は後からは「あとの祭り」

経営者集団でさえ、このようだから、SNSの反響をみると約70%が否定的で、相変わらずのハコ物行政、サンクコストが問題だ、、、、など過去の事例踏襲コメントが多い。バブル崩壊の足音が聞こえてきた東京万博構想は今思い出してもテーマが何だったか分からない。開催動機がお台場の土地活用副都心計画だったので反対の声には頷けるところがある。 

横浜は市政100年を記念してミニ万博をみなとみらい地区振興目的で開催した。動く歩道は今でも活躍しているが、リニア車両が実際に走行したことを知っている人はほとんどいない。都会での万博とあって盛況ではあったが、テーマ力がなかったので、その後の開港150年記念事業は惨敗した。開港記念の時に羽田空港とのアクセスなど都市デザインをしていればもっと世界のヨコハマになっていたと想像する。

 愛知万博のテーマは「デザイン」だった。このネーミングはダサい日本製品を洗練されたデザインに転換するための刺激策だと受け止める人が多かったと思う。しかしながら結果は単なる外観の形状、色彩にとどまらず、「機能設計=機能デザイン」として多くの工業製品が開発されたことは、あとあとになって気がつく。

 2025年がAI実践の年だとしたら、エネルギーの化石燃料依存は限りなくゼロに近くなり、従来型の貨幣は姿を消し、銀行は形を変え、右から左のモノや情報を取り扱う商社も姿を代えざるを得ない。そんな時代の「医療・健康とは」を考え、さすれば積極的に参加する姿勢を持つことが精神的には必要だろう。

ロボットが稼ぐベーシックインカムで生きる意味を問われるのは精神的に辛い。一方で別の文化が発達する可能性もある。それもイノベーション実践の副産物。それならそれも良いだろう。

レジ袋 床屋談義(庶民の視線)

床屋談義といえば江戸時代のノンビリした風景を想像する。江戸は地名に水道橋があるように上下水道あり、リサイクルも進んでおり環境に配慮していた巨大都市だったと聞く。 床屋が今は理容店か美容院。最近は環境問題がとかく話題になることがある。こんなことは日本だからだと思う。かの国とは大変な違いだ。環境省は海マイクロプラスチックス問題からレジ袋廃止か有料化を計画している。しかしいろんなお客様との床屋談義で情報をもっている理容師さんと客のやりとりは一般庶民の見方ではあるが傾聴に値することがある。

 

理容師

「ウミガメの鼻にストローが刺さった程度でレジ袋云々は大げさではないか?」

「レジ袋はゴミ袋としても利用しているし、レジ袋そのものを海洋投棄はしない」

「確かに、ストロー(ポリプロピレン)やレジ袋(ポリエチレン)の比重は0.9000.95 で水より軽く、海では浮くので目立つことはありますね」。 

 「レジ袋やゴミ袋はポリエチレンで焼却用の燃料として役立っている。水物が多い食品廃棄物では燃焼温度が上がらずダイオキシン発生の原因になる。なのでプラゴミを配合して燃焼温度を制御している。」 ダイオキシンの方がよほど問題。日本の焼却炉は技術レベルも管理能力も世界トップだからできるのだけど。

理容師

「でもレジ袋を止めたらどうなるのですか?」

「石油化学は原油を分解してナフサとガソリンを作る。ナフサは炭素数で2(エチレン)、3(プロピレン),4(ブタン),それ以上と芳香族、ピッチ残渣」に分類される。この割合は基本変えられない」 なので、炭素数2(エチレン)の量が少なくなると全体のナフサの生産量を削減することになる。」

理容師

「長い説明を聞いてもピンと来ないが、何か生活に困ることがありますか?」

「炭素数2はポリエチ以外に洗剤、容器、化粧品、パイプ、電線、通信ケーブルなどに、炭素数3は自動車内外装で軽量化に貢献、炭素数4はタイヤ原料、芳香族はポリエステル繊維や電子機器、基板、製薬の原料、ピッチ残渣は道路など、要するに身の回りからインフラまで深く関係しているので、ナフサ生産を抑えると、プラント稼働率が低下して製造価格が上昇する」

「女性活用に伴い食品もデリカテッサンの利用と食品包装も対応している。これとの折り合いはどうするのか、この視点も重要。それに農業・酪農への影響もある。」

「原油の量を削減しないとなると、ナフサと同じ成分のガソリン生産を上げ、EV車よりガソリン車を後押しすることになる。まして原油輸入大国の中国が輸出に回っていて石油化学は混沌とするだろうね」 

理容師

「それって大変な問題でないですか。環境省のお役人に教える省庁がないのですか?」

「経産省及び傘下のエネルギー庁、農水省及び民間の経団連や労組も声を上げるべきなんでしょうね。大学もこんな時は知能を集約しての提案があってもよいのかも」

理容師

「よ~く分かりました。なんとなくオカシイとは思っていた」

「でも民間は環境にシビアですよ。50年前まで船にへばりつくフジツボが船の燃費を悪化するとして鉛配合の塗料を使用していたが、貝毒の原因となるので鉛を含まないフジツボ付着防止塗料を開発した。またポリエチレンの袋も厚みが20~30ミクロンあったのを成形法を開発してレジ袋だと6ミクロンで重い品物にも耐えるようにした。気がつかないところで、頑張っている」

理容師

「それに日本人は廃棄問題の意識が高いですからね。輸出すべきは教育・マナーなど急がば回れでしょうかね。」

「なかなか良いこと言うね。ところで薄い頭髪ではカットする髪がないので、料金もカットできない?」

理容師

「それはマナー違反です!」(笑)

「この問題のきっかけになったストロー問題。紙製に切り替えたら、風味が紙っぽくなるのでサッサと飲むのがお勧めのようですよ。お店の回転率アップ狙いだとしたら大した知恵者だ」

理容師

「床屋談義だからといってテキトーなことを言っちゃダメですよ」

「でもボケーッと生きているんじゃねーヨ!とんでもないことになるぞ」とチコちゃんに怒られそうですね。

「その通り、昨日の延長が明日と思わない方が良さそうですね。レジ袋は以前は中国で生産していたが、人件費高騰もあり今はベトナムなどにシフト。レジ袋だけの集中生産している現地会社もある。レジ袋販売不振となると東南アジアは中国不景気+環境でのしわ寄せと大変なことになるね。日本にとっては小さなことも、影響を受ける国や人々がいることは忘れてはいけないね。チコちゃんに怒られないように。」

3Dプリンター、繊維興隆と今・アラカルト

あっ!3Dプリンターだ。これ学校にある! 和光市民まつりに3Dプリンター研究会が出展したときの子供の声。へぇ~知らなかったぁ これは親の声。新旧の声が今を象徴している。ダンベルの実物と3Dプリンター製品のどちらが本物?と触らないで当てさせるクイズでは的中率は50%。外観の凹凸や光沢では判断できない。持ってみて初めて分かるところまで精巧なレベルまでできていることに感心していた。先週ブログで紹介したパラパラ漫画の立体版(ゾーエトロープ:Zoetrope)も好評で、親御さんにはパラパラというと納得していました。

写真は回転させLEDを点滅させると上から下へ水が落ちるように見える。

 

FDM方式でピカチュウの成形実演や光重合での試作品を展示するなかで、こちらから、既に世界規模では12兆円まできました。今後の物作りの世界は変わる。それを担うのは興味を示してくれた子供の将来にかかっていますと語りかけると、理解を示してくれた。さすが和光市民はレベルが違いますね~と当方は本音で相づち。和光市商工会主催のまつり土日併せて約8万人と凄い熱気。地元企業のホンダもNSXを本日に限り大幅サービス200万円値引き!として展示していました。2750万円。惜しいかな、ガレージのサイズが合わないとの理由で辞退(笑)。1日5台の生産と聞いて、それこそ3Dプリンターでの自動車生産実績を積むには好適ではないかと我田引水。樹脂のみならず金属3Dプリンターや機構部品での高速精密5軸切削装置が応用されると期待した。

喧噪な会場で3Dプリンターのブースを静かに眺めている若い人物がいた。目に何か言いたいことが一杯ありそうな雰囲気が漂ってきたので、挨拶とショート会話。これが実に有益であった。若い技術には若い視点と情熱が相乗効果を生むと当方が興奮したことは言うまでも無い。

翌日は山形大学工学部を訪問。米沢高専が源流で繊維産業発祥の一つ。帝人(旧帝国人絹)はこの米沢出身者が設立した。現在は有機EL、高分子成形など世界に誇る設備と教授陣があり産官学の推進大学として有名である。最強の蜘蛛の糸を開発したのもこの大学(鶴岡分室)で源流からの流れは今でも息づいている。

 

天然繊維の源流はコットンとシルク。このブログでも幾度も登場したが、今回は米沢の帰路、官営富岡製糸工場を見学。世界遺産に指定され俄然注目を浴び観光客は今でも絶えない。養蚕は富岡に限らず、八王子など盛んであったはずがなぜ輸出港から相当の距離にある群馬県なのか知らなかった。でも現地の地形をみると分かった。直ぐ下に河川があり、となり町の高崎観音の下には亜炭が埋蔵とあってフランス製蒸気駆動ブリュナエンジンを利用して繭からの糸繰りなどに利用できる絶好の土地柄であることを理解した。

 養蚕から繭・シルク生産は明治3年に高崎で小さな産声をあげ、次いで明治5年富岡、長野の岡谷と拡大した歴史がある。現在は世界生産量17万トン/年。中国が世界シェア80%を占め、インド、シルクロードの国が生産拠点。価格は日本品の1/3と安価である。従って、国産のシルク生産は消滅したと思っていた。岡谷は機をみるに敏で、時計など精密機器産業にシフトしたが、富岡は機械の国産化が遅れたこともあり、その後も蚕に拘り技術保存・継承運動をしつつ、地道な研究の結果DNAが操作された蚕の育成までこぎ着けた。光るシルク糸をはじめ健康食品・医薬への足がかりを作っている。現在、この技術を大々的に熊本で実証が始まっている。長野県民と群馬県民の県民性、それをならしめている風土が強く関係しているのではないかとの感想を持った。

 Dプリンターの原理を発明したのは日本人。特許を出願しながら審査請求せずに留学。それには事情があるのだろう。アメリカの風土がアイデアを成功に導いた。知恵を絞ることが産業であるイスラエルも次々と新技術を発表している。ドイツは几帳面さを発揮して精巧な3Dプリンターを製作している。それでは日本はどうするか? 心配は無用。若い人物や目を輝かせて3Dプリンターをみてくれた生徒児童が任せてくれと。

機会損失(精緻と直感)

「ゾーエトロープ:Zoetrope」と聞いてピンとくる人は少ないでしょうが、パラパラ漫画の立体版といえば、なんとなく分かる。ノートや教科書の右隅に少しづつ人や模様を変えて、パラパラめくると、動いて見える。目の残像時間を利用している。英単語を覚えるつもりで買った綴り帳は特に便利だった。表と裏の両方に描いては楽しんだ。おかげで肝心の英単語記憶目的はパラパラとどこかへ飛んで行った。今は3Dプリンターのおかげで立体像を一コマづつ僅かに部分を変えて製作することができる。これを回転盤の円周上に時間軸の順番にワンピース欠けることなく置き、回転させる、かつ回転盤の上から回転速度と同調したサイクルでLEDの光源を点滅すると、立体像が動いている様に見せることができる。事例や作り方はWEBに紹介されているhttp://roomoor.net/entertainment/11254/2、https://www.youtube.com/watch?v=PDwal4PhZv4

尚、筆者が参加している3Dプリンター研究会(活動拠点和光市)では来る11月11日(日曜日)に和光市保健センターで開催される和光市民まつり会場に研究会活動の余興として作品を展示する予定。お時間があればお子様連れで遊びに来て下さい。どのような3D形状にするか、メンバーには凝り性の人がいるので小生も楽しみにしている。

さて、前置が長くなった。大学での研究成果が産業界に移転させる交流の場として科学技術振興機構(略JST)がほぼ毎週のように「新技術説明会」を実施している。日頃専門外の最先端の情報に触れることが少ない研究者や技術系管理者にとっては非常に有益なシステムである。特に業際を知ることは非常に重要である。筆者もよく利用している。これはと思った研究者には講演後の個別面談や大学訪問の上で情報の精度を上げることがある。こんなところが日本のサイエンスの強みを支えていると理解している。

企業が取り組んでいる現在のテーマに応用することで短期的収益が増大すると期待できる発表の後には名刺交換など長い行列ができる。成果主義の影響だろう「答え」が分かった案件はスピードが勝負である。講演参加者としてそれなりに社内説得できる立場の人が多いのでアクションが速い。

一方、講演の内容が最後の「答え」が開示されていないテーマについて中長期テーマとして自社で取り上げるには正直名刺交換の列は短い。社内のテーマとしては遠い位置づけか壁は高いのであろう。発表について特許出願したが、公開されるのが1.5年後なので、答えを待つ必要がある。 現在のイントロ開示段階では頭を回転させて欠けているワンピース(答え)を浮かび挙がらせる力量が求められ、それにより共同研究するか否かの判断が求められる。

企業で「戦略的企画」を作成するにあたり上層部のチェックは企画者の推察・想像・妄想は厳しく排除される「精緻な計画」になっているかどうか問われる。特に大企業に多い。 予算規模、人材再配置など大がかりなことになるから安全運転経営ではありうる。想定内の条件を前提にしての「精緻」ならいくらでも書けるが、想定内通りに市場・経済が推移することがないので「絵に描いた餅」に終わることがある。計画が精緻で自信があったのか、世の中が間違っていると言う人にも出会ったことがある。あれだけ調査に費用をかけ、優秀な人材を投入した企画なので間違いがないと。精度はないのが当たり前として斥候検討をさっさと始めた方がよほど効率的である。そうはしないで精緻・精緻を連発するような会社は来たるべき運命が待っている。 小野薬品工業も本庶教授からの提案を断った理由が分かる。米国企業に話しかけたところ乗ってきた。そこで小野はそれを見て受け入れたの情報がある。如何にも日本企業の典型的見本。では米国企業はどのように判断をしたのか、それは「大局的な直感」であろう。この提案に乗らないで他のテーマに会社の資源を投入して得られる利益と本テーマが成功した場合の利益を得る「機会損失」を計算したに違いない。精緻な積み上げより「直感」が勝ることはよくある。 おそらく想定内の範囲で利益を得るよりは、想定外の技術開発で想定を変えていくような企業が生き残るのであろう。アマゾン、アップル、グーグル、フェスブックなど、日本語がないのが残念だが、昔はホンダやソニーがあった。でも今の若い人は違う。精緻を連発していたシニアは去り、直感を磨いていたシニアは退職後も活躍している。その両者がタッグを組めば面白い展開ができると期待している。

活性酸素

先週のブログでは活性酸素は健康に好ましくない。防衛としてポリフェノール化合物を摂るとして酸化防止のメカニズムを記載した。今週は活性酸素の名誉回復編を紹介する。

身近にある活性酸素が利用された商品では漂白剤(ブリーチ)、消毒・殺菌、脱臭などが、工業的では半導体の表面洗浄、印刷前処理などがあげられる。原料は過酸化水素であったり、空気をコロナ放電させて活性なオゾンを発生させる方法がある。カラフルな印刷がほどこしてあるショッピングバッグのポリ袋。材料はポリエチレンが多いが、このポリエチレンの分子は炭素と水素からなり、極性のあるインキとは水と油の関係にある(相溶化能力が低い)。従って、極性のないポリエチレンの表面を活性酸素でカルボニル基、水酸基、カルボキシル基などを生成させて極性化することで印刷インキがポリエチレン表面に濡れて硬化することで印刷が可能となる。一般的にエネルギーが低い装置としてはコロナ処理が、強いエネルギーを与える場合には紫外線や電子線照射、さらに強くはガンマ線照射などが利用される。ショッピングバッグ程度の印刷ではコスト・パフォーマンスからコロナ処理がなされる。過剰に電圧をかけると返って濡れが悪くなる。近い極性のところで合わせるのがポイント。

化学式からおおよその相溶化(濡れ性)を予想することができる。

便利な「溶解パラメータ」である。

SP(Solubility Parameter

 右の表に簡単にまとめた。テフロンは溶剤や樹脂とは容易に混合しない。水は特別な溶剤であることがわかる。光重合で適用するポリメタクリルアクリレートやエポキシは910台にあり、後重合の前に予備洗浄する溶剤がイソプロピルアルコールである理由も納得。

 

少し脱線するが、樹脂と水は全くSP値は離れている。なので、川や海で樹脂が溶解することはない。溶解するより河川の出口などで歯止めをすることが可能であれば海で問題になっているマイクロプラスチックス問題は解消される可能性がある。むしろ、悩ましいのは生物分解樹脂。完全分解までの途中経過は本当に環境に問題がないのか、これからの課題である。

ポリエチレンは水溶性インクとはSP値が離れている。そこで酸素ラジカルを反応させて水溶性インクとなじむようにしている。 大手フイルムメーカーの工場ではフイルムを成形しながら表面にコロナ処理を施し、グラビア印刷を行う工程を見ることができる。紫外線は3Dプリンターの光重合に用いられている。電子線照射はポリエチレンに他の化合物をラジカル・グラフト反応する場合に利用される。ガンマ線はグラフト反応よりは殺菌に利用することがあり、医療用器具は利用されている。殺菌には120℃の高温殺菌、エチレンオキサイド処理があるが、短時間にドライ処理できる展はガンマ線処理が利用されている。

さて、活性酸素は文字通り、酸素から生成される。酸素は肉体にとって安全である。ここで癌を含有している細胞の内側まで光増感剤を侵入させ、皮膚の上から紫外線を照射することで細胞内で活性酸素を発生させてがん細胞を死滅させることを考えた研究者がいる。

東工大・生命理工学院 湯浅教授が従来の光線力学治療法を発展させている。光増感剤をグルコースの輸送体と合体させ、癌がある細胞に入り口から内側に侵入させる。

外部から光を照射することで光増感剤により細胞内の酸素が安定基底状態(一重項エネルギー)からエネルギーの高い状態にシフトする(三重項状態)。三重項状態から基底状態に戻るときに活性酸素が分離される仕組みである。これが癌を死滅させる。

 

この考え方は従来から存在していたが、

①紫外線が到達する距離は皮膚の直下と限界があったことから、体内深部まで光線が通らない。

②光増感剤の分子が大きいので癌細胞まで到達する時間が長い。その間は遮光室の中に1週間ほど居住続ける必要があるなど患者にとっては不便極まりない 

③従って使用済みの増感剤が排出されるにも時間がかかる。との問題があったとのこと。 ①に対しては近赤外線の利用 但し、低い紫外線の比較すると低エネルギーなので光増感剤の分子の研究をされている。 ②③については低分子で速く癌細胞まで到達するように工夫をされている。 動物実験の段階ではあるが、これの実用化される意味は非常に大きい。この研究はナノマシンを用いた画期的な画像診断と治療実用化を精鋭な研究者が実行している。期待しよう。

酸化と糖化

健康番組花盛りである。TV視聴者がシニア層かその予備軍の事情もあるのだろう。赤ワインにはポリフェノールが入っているから健康によろしい、大豆のイソフラボンもポリフェノールが、緑茶にもポリフェノールのカテキンが。。。その数4,0008,000だとするWEBある。きっと植物の種類の数だけポリフェノールの数があるのだろう。植物は根が生えたところから動くことができない。強い紫外線を浴びようが、酷暑であろうが身を守るべく紫外線吸収剤を体内で合成し、酸化防止剤を合成している。ポリフェノールは酸化防止剤である。我々がポリフェノール含有植物を食べることで、体内で発生している活性なラジカルをトラップする役目がある。実は食品、プラスチックス、化粧品には使用条件下で酸化により分子が劣化(味、匂い、強度低下など)しないように、フェノール系酸化防止剤が配合されている場合がある。ポリフェノールの「ポリ」は「多い」を意味するので、ここでは非常に単純な形をした酸化防止剤で酸化防止のメカニズムを紹介する。

 

35-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン

通称:BHT

フェノールOHをかさ高なターシャルブチル基が立体的に覆っている。

分子の大きさと位置を模型で示したのが右図。

酸素原子を赤で表示している。フェノールの反対側にあるCH3(メチル基)から電子をOHに向かって押していることからOHのH(水素)は外れて水素ラジカルとなり食品やプラスチックス内で劣化により生成したラジカルと反応する仕組み。一方、水素ラジカルを放出したフェノール化合物は以下のスキームで分子構造を変えて安定化していく。途中の酸素ラジカルは隣の嵩だかなターシャルブチル基で立体的に保護され他の分子への転移は免れる。

 

 

 

賢明な読者は、それなら保存・使用期間の劣化に対して多量の酸化防止剤を配合する必要があると考えるのは当然かと。しかしながら添加剤業界では自動修復するリン系添加剤を配合する。このリン系(フォスファイト系)添加剤との相乗反応(詳細割愛)により、ある程度は元のフェノール系酸化防止剤として作用することができる。総合すると少量の添加剤配合で性能が維持できる。プラスチックスに配合されるフェノール系酸化防止剤は用途により分子構造が異なる。電線など寿命が50年以上設定する場合にはフェノールの数が多く、雨などで抽出されない分子形状をしている酸化防止剤を利用する。使用中に発生する過酸化物を積極的にキラーするイオウ含有添加剤も併用することがある。計算機科学AIで何年後には添加剤分子設計および配合最適化ができることを期待する。

さて、糖化。10月18日NIKKEI STYLE 記事(老化を促進させる「糖化」 実は飲酒と密接な関係が)。 が気になって読んだ。飲酒で赤ら顔になる人が対象で、いくら飲酒しても顔色が変わらない人は飲酒と糖化は関係がない。しかしながら「糖化」とは何?。記事中の同志社大の八木教授の発言を引用すると

 「体の中で起こる糖化とは、体内の余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質を変性、劣化させていくことです。たんぱく質は、臓器、皮膚、筋肉、血管などをはじめとする体を構成する重要な成分です。つまり、糖化により体を構成するさまざまな要素が劣化していくわけです」と述べられている。「糖化が進行していくプロセスでAGEs(糖化最終生成物)という物質が生成されます。AGEsはさまざまな経路を経てつくられ、一口にAGEsと言っても、論文に報告されているだけでも数10種類あり、実際のところ100種類以上あるともいわれています。このAGEsこそ、老化を促進させてしまう厄介な物質なのです」(八木教授)

  (筆者注:AGEs;Advanced Glycation Endproducts

 

 「AGEsの弊害の一つに、たんぱく質の硬化があります。AGEsはたんぱく質同士を結合させ、『悪玉架橋』と呼ばれる厄介者を体内につくってしまうのです。悪玉架橋ができると可動性やしなやかさが失われ、硬化してしまいます。さらに、体内には、AGEsをキャッチするレセプター(受容体)が存在し、そのレセプターがAGEsをキャッチしてしまうと炎症を起こすのです。このようにして、体内のさまざまな臓器の機能が低下していきます。これがいわゆる『老化』(八木教授)

 

飲酒との関係はアルコールの分解アルデヒドが存在するとこの反応が促進するとのこと。アルデヒドを酢酸まで分解仕切ってしまう酵素を有する人は関係がなさそうで、顔色が変わらない酒豪は安心して良さそうだが、元の糖の過剰摂取は避けた方がよさそうだ。

 ではAGEの測定はどうするのか? 先週、先端材料展、ロボット展がビックサイトにあり、別の企画展示ではデジタルヘルス展が開催されていた。 シャープ・ヒューレットパッカー協賛ブースにAGE測定器があった。 原理はAGEは微弱な蛍光を発するので受光の光量で評価する。経皮の数字と血中の濃度は相関関係があり、指の日焼けしていない部分に光をあてるだけで測定が可能。大まかに5分類。A:同年代では少ない。(全体の7%) B:やや少ない(全体の43%) C:やや多い(全体34%)、D多い(14%) E:非常に多い(2%)。 全体は加齢により数値は高くなるが、若くして高い数値は要注意のようです。年齢と数値の図を示す。

 

筆者も試してみた。その数値は0.36 

では対策としては同社のパンフレットに代表例が記載。引用しておきます。これをみると生活習慣に依存していることがわかります。

 

最後に

酸化のメカニズムは分析・解析で解明されている。添加剤メーカーの改良研究のための解析や、材料メーカーの利用根拠を追求するための解析が相当進んでいる。筆者も添加剤の炭素を重炭素原子に置き換えて合成し、添加剤が酸化劣化でたどるメカニズムを追ったことがあった。

一方、今回取り上げた糖化については、記事や装置メーカーのパンフを基に記載したが、糖とタンパクの架橋体の分析した結果やマーカーとしての蛍光物質が何かなどについてエビデンスを知りたい。更なる有効性と精度アップのため、なにより健康人生を送る人のために。

低温大気圧プラズマ

♪黄昏は むらさきに 風の流れも 染めていく ♫ 。。そのような気分がわかるような季節になった。いつの間にかである。そのいつの間にかに大気圧低温プラズマが凄く進歩している。 冒頭の「風の流れも染める」とは阿久悠の凄い感性。ひょっとしたら秋風のような低温領域でもプラズマ照射すると風の中にある微粒子の表面が親水官能化されて染めやすくなるのかも。。。と無粋な技術者の発想で申し訳ない。

一昔前までは真空・減圧・数千度温度条件でしかプラズマ照射できなかったが、今は大気圧下で肌に照射してもほんのり温かく感ずる程度になったことで、応用が広がっている。群馬大・黒田研究室、東工大・沖野研究室などが精力的に大気圧低温プラズマに取り組んでいる。

その前にプラズマって何? 

右図は固体→液体→気体→電離気体(プラズマ)移行を水を例に示している。プラズマ中ではイオン、電子、中性粒子、ラジカルが運動している

数千度の電離気体と聞いて“雷”を着想した人。正解です。 雷が多いと松茸が増えると言われているが、小生はプラズマによる水および松茸細胞が活性化するのでは・・・?と信用しないで頂きたいが食いしん坊の小生は妄想している。

しかしながら水にプラズマ照射して生成したバブル水は植物育成に効果があることを東工大が発表している。 

プラズマの種類としては、アルゴン、ヘリウム、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、水素など拡大している。 低温大気圧プラズマの温度としては0℃以下から200℃までなので、親水化対象が樹脂、繊維、紙、ゴム、金属、半導体、更に生体などに応用できることができる。親水化により異種材料同志の接着が容易になる。フッ素樹脂でさえ接着することが可能など。

ここで代表的用途例を挙げると

半導体                   表面酸化物の高速還元

印刷                        回路印刷

接着                        イミドフィルム銅張り接炭素繊維/樹脂接着 

CFRPCFRTP 自動車、スポーツ用品 

殺菌・抗菌          食品 

医療                        内視鏡手術止血 (血液と傷口と反応させることで

           “かさぶた”を瞬間生成させる) これは歯科医にとって 

           参考になるだろう。

また肌表面付着の汚染物質やアレルゲンにプラズマを照射してガスクロで分析するなど皮膚科、化粧品関係にも展開が期待できる。

低温大気圧プラズマが可能になってのは、ガス種や照射装置自身の温度を低温に維持できる装置が必要である。これに3Dプリンターが活躍している。金型は冷却配管をニアネットシェイプに配置できることが重要であるが、3Dプリンターは可能にした。プラズマ装置の冷却構造や内視鏡極細ノズル化も3Dプリンターの進歩があってのこと。

小生は2003から3年間ポリカーボネートの成形品の表面にガラス化する化合物をコーティングしたあとで大気圧プラズマ処理することで耐傷付性かつ軽量のある自動車窓ガラスを開発したことがある。有機ガラスは実は戦時中の大型レンズ製造を目的に開発されている(産総研池田に展示)。これが大気圧低温プラズマと合体することで軽量車両に応用される。自動車窓ガラスの場合、3次元形状は苦手であったが、群馬大ではそれも可能にする技術を発表している。異業種の基礎がそれぞれ確立している日本だからこそできると自信を持ちたいものである

最後に食いしん坊が自信もてないのが食事による血糖値。都度の採血は避けたい。そんな要望に添いそうなデバイスが発表された。発表資料によれば

原理は北海道大学・清水孝一教授が研究していた、光を用いた生体の診断技術だ。液体に一方向から光を当ててのぞきこんだ際、その液体に含まれている物質の量や種類によって、光は散乱し、ぼやけて見える。同社の脂質計測器では、生体にLEDで光を当て、その散乱度合いをもとに脂質を計測する。メディカルフォトニクスが製品化。、手軽に食後高脂血症の測定ができるようになる。

それにしてもこの写真は迫力がある。

小生が開発するなら、食事中の高脂血症アルゴリズムから最高値を予想して、その前に満腹感を脳が感ずるようにするが、どうだろう。 それとも信号機のように青、黄色、赤で表示か。

文献) 群馬大・黒田教授 20188.月 大学技術展資料

    東工大・沖野教授 2018.10.13 未来産業技術研究所 講演、公式パンフおよびHP