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衣料・新しい風

漸く春めいてきた。(一部を除いてコロナ規制が解除され)抑制されていた気分もカラダも伸びをして、さぁ巻き返しだ!と街中が活気が出てきたように思える。衣服も冬から春へと模様替えの準備開始。とはいえコロナ渦で購買力は低下、ビジネスでは在宅時間が増え、ビシッと決めたスーツを買う機会は減少した。紳士服量販店の閉店ラッシュは残念だがそれが現実だ。高級品を品揃えしているデパートの紳士服売り場は土日祭日でも閑散としている。

そんな中、おやっ!と手にしたのは、超軽量カジュアルスーツ。平織りであるが経糸・緯糸の間に空間がある。織機での張力が弱い筈はないので、????と思っていたら、なんと、水溶性樹脂の繊維が織り込んであり、織った後でお湯で溶かし出していることが分かった。

医療用の膜を製造する際にナノサイズ、サブミクロンの空孔を作るには水や溶媒に溶けない樹脂と溶解する樹脂からなるブレンド、アロイを形成させて、あとで溶媒抽出することで多孔膜を作ることが行われている。人工透析などの医療機器や電池セパレーターなどの工業分野にも利用されている。コンパクトな上水道設備に多孔質チューブを利用した設備は日本の繊維産業は得意であり、世界でも日本しかできない芸当の一つとなっている。

この発想は実は通気性おむつや合成紙にも共通している。これらの場合は抽出ではないが、フィラーを樹脂に分散させてフィルムやシートを製造し、延伸することでフィラーは延伸できないので、界面にボイド(空隙)を形成する。そこが水分透過性や印刷インクのアンカーになるのだ。

化学産業の原点に石炭化学と繊維産業がある。昭和30年代からは石炭に代わって石油化学が置き換わったものの、蓄積技術の応用範囲は前者が圧倒している。石炭化学は芳香族化学と言えるものであり、染料から出発して医薬品に到達しており、繊維産業は微細加工技術を利用しての医療、工業材料に展開している。炭素繊維や芳香族高強度繊維、合成皮革などは繊維産業のなせる技である。

中国は大量生産を得意とするが、経糸が切れると半日は織機を停止して手作業で経糸を切り替える必要があるので、切れないPET繊維を経糸に利用している。衣服にした場合は限界がある。日本では平織りや綾織りなどをしている機屋さんはいない。経編機がラグビーウエアで大活躍したことを覚えておられるでしょうか? 首筋には無線で指令を受ける装置を内蔵しながら、柔軟な動きに追随できる伸縮性のある生地が要求された。これが出来たのはデザイン設計(富山)と経編をした福井の機屋さん。

日本の繊維産業は日米貿易摩擦から収縮したものの、機能性繊維で復活した。その加工技術の広がりは化学とリンクして伸びている。旭化成、帝人、東洋紡、東レは繊維メーカーとしてよりも高機能素材メーカーのイメージが強い。三菱レイヨンは三菱ケミカルと合体した。戦後解体前は同じ会社で石炭化学も経験しているだけに強い潜在ポテンシャルはある。

【新デザイン作業スーツ】

さて、昔のことを言えば、ホワイトカラーとブルーカラーと勤労者を区別する言葉があった。衣服の色、デザインを指してのことだろうが、今はそんな区別はなく、どちらも作業着。白いシャツにネクタイ・スーツ姿はもはや絶滅危惧種。その職種でも工場の現場に入ることがある。そんな時は上着や白衣が提供されて着衣するが、ズボンはスーツのままのことが多く、現場では立ち尽くすだけの“お客さん扱い”になる。危険予防の面もあるが、それでは現場の本音に迫ることはできない。多少汚れようが洗濯でき、現場の人と生で会話ができる服が欲しいと思っていた。ワーク○ンは繁盛しておりタフな服であるのは間違いがないが、絶滅危惧種の人が着衣するには気が退ける。ポケットデザインはちょっと。。。

また、在宅では何を着ていても自由であるが、気分はビジネスモードになりにくい。在宅では家事も同時にこなす必要がある。まさにビジネスの気分と家事労働の両方に通じる“作業着的スーツ”があれば。。。。と考えていた。

そんな時、東京八重洲地下街を歩いていたら、新しいショップを見つけた。WWSと看板にある。東京駅から徒歩2分のところにオフィスが昔あり、この地下街はどこに何があるかを熟知していたので、新店舗にひかれて店員さんと話をした。

WWSとはwork wear suit。コンセプトが面白いというか上述の“ちょっと。。。”& “あれば。。。”の両方を満足する可能性があると思った。横浜にもショップがあるとのことで、後日買い求めた。若者向きのパンフだったので、どうかなぁと思いつつモノは何でもテストしないと分からないとあって買い求めた。

 

結論から言えば、これが実に気に入ったのである。在宅勤務中はジーンズから切り替え使用頻度が増えた。春めいてきたので外出もしてみたが、特に違和感はない。創業者のコンセプトは水道工事の作業衣でレストランにも行けることを考えて作ったとのこと。隠れポケットは大きいが使用しないとポケットが見えない仕組みになっており、考えてあることは理解した。

コロナ渦だからと下を向いていないで、視点を変えて光明を見出しトライする。評論家や企業役員がイノベーション・イノベーションと聲高に言っている間はイノベーションをしていない。言う暇があれば実行して、愉しくてしょうが無く、食事も忘れて没頭する。その結果がイノベーションと言われても本人は“エッ!そうなの”と思うことでしょう。WWSを始めた女性はただ者ではなさそうだ。コスモサインにも通じるものがあるとみた。

クルマの信頼性

急成長してトヨタより資産価値が高いと評価を得たテスラにリコール問題。18年初頭までに製造した、高級セダン「Model S」の12~18年モデルと高級SUV(多目的スポーツ車)「Model X」の16~18年モデルである。合計で約15万8000万台のリコールだに突き当たった。EVはクルマのボディに電池とモーターを搭載すれば出来ると考えたのではあるまいが、それに近い発想であったことはかもしれない。

リコールの原因を米運輸省高速道路交通安全局から指摘されたのは、「IVI(車載情報通信システム)機能を提供する「MCU(Media Control Unit)」内にあるeMMC対応のNANDフラッシュメモリー。タブレットで使用されている部品を利用したとある。」(日経引用)

自動車と家電とは信頼性のケタが違うよ! と教える技術者がいなかったのか、多分既存自動車メーカーに納入しているTier 1,2の部品メーカーからの供給が拒否されたので、タブレットに目を向けたのであろう。価格も安価で大量に出回っている。EVでde fact standardを獲るためには急いだ背景が想像できる。

タブレットNANDメモリーでは書換回数が3000回で限界だそうだ。タブレットでは5年程度。クルマの買い換えが2~3年では持ちそうだが、中古車価格はどうなのか?普通は車検1~2回はする。10年以上も珍しくない(筆者も過去12年乗ったことがある。それでも故障0だった)。テスラの技術者はおそらくハラハラドキドキしたであろう。指摘されたクルマと今は違い改善されているだろうが、自動車は厳しいことを経営陣は認識したであろう。初期失敗は誰でもあるので失地回復して欲しいものだ。

筆者は入社時は雑貨(灯油缶、シャンプー、化粧品ボトルなど)向けの高分子材料の開発をしており、その後クルマ向け材料を担当することになった。材料から成形メーカーに手渡す技術資料は雑貨の場合は1~5枚程度。受け取る方も物性表と加工技術資料の一部を参考にともかく試作しましょうと速い。

一方、クルマ向けとなると成形メーカーの前に自動車メーカーとの摺り合わせが極めて重要で、ここに開発のキモがある。自動車メーカーとは何が必要で、どのレベルが必要なのか、、、、、、幾重にも要求項目がリストアップされる。材料データーの信頼性とクルマ部品の信頼性データーが最も重要で、多角的な方面から試験する。

熱(極寒の土地、砂漠熱帯)、冷熱サイクル、紫外線の強弱、湿度の影響、塩害の影響などを1年以上、試験装置または大型試験チャンバーの中で評価し、統計処理をする。

材料の機械的強度特性は引張り強度・伸び、座屈、衝撃、振動疲労特性、音響特性、摩擦摩耗、耐薬品性、クルマ洗浄液などの耐性なども評価される。衝撃は隣のクルマのドアがあたった軽微なものから正面衝突した時の変形速度まで広範囲にわたり実験され、それをテストピースで評価できる装置を開発し数多くの試験を重ねる。最終的に自動車メーカーに納める資料は我々の世界では“巻物”と言っていた程である。巻物は1巻ではなくピラミッドのように幾重にも重ねられており、まるで源氏物語ぐらいの巻物を神棚に奉納する台に載せている様ほどの資料を作成したものだ。それに納得したら漸く試作することになり、実用試験となる。ここでも自動車メーカーと材料メーカー、部品メーカーの信頼性試験などが繰り返される。材料メーカーの試験棟は大型成形工場で成形、塗装、衝突試験、冷熱サイクルなど自動車メーカーと同規模のインフラで充実している。クルマの信頼性は開発現場にいただけに、そんなに簡単にクルマはできないと今でも染みついている。

ところが、同じクルマでもドイツとは発想とシステムが違う。ドイツは新材料の展開が速い。信頼性の確認の仕方が違うのだ。クルマに搭載してテストコースやアウトバーンでの走行テストで実績を積み、問題がない=採用!の流れである。結果オーライ的なところがある。エンジンルーム内の金属からエンジニアリングプラスチックスへの切り替えの先頭を切ったのはドイツ。日本ではインテークマニホールドやアクセルペダルなど重要保安部品ではドイツでの実績をみてそれを即採用するのではなく、上述の信頼性試験を経て採用に至ったものもある。見送ったものもある。欧州で実績があるから日本でもと売り込みをする部品メーカーや材料メーカーが国内自動車メーカーを説得できず往生しているのが実態だ。なにも障壁を作っている訳ではないが、故障の原因追及にはドイツ方式は時間がかかる。それと最終的なユーザーへの責任からである。ドイツは気を悪くしないで欲しい。筆者はドイツ車を3台乗り継いでいることで免罪符を頂きたい。

ただ、放射線量や加速度、耐熱性など尋常ではないレベルを自動車より圧倒的に多くの部品から構成されるロケットを失敗率限りなくゼロで打ち上げることができる技術及び品質管理ができる技術基盤のあるところが自動車における信頼性を勝ち取ると考える。

手術支援ロボット

先日、MeditecのWebinarで岡山大医歯薬学総合科の平木教授のCT透視ガイド下針穿刺ロボット紹介講演を聴講した。素人なので言われてみて分かったのは、生針検査や針穿刺治療において、手術医は常にCT装置横で施術しており、毎回、CT装置からの放射線を被曝していることに驚いた。患者は術後経過観察でCTスキャンするとしても頻度は少ない。岡山大ではCT装置から距離を置いて(ガイド下IVR画像下治療)画像を観ながら施術するロボットを開発している様子の発表だった。肋骨の間をくぐり抜け、ターゲット器官に途中で針の方向を変えて狙った箇所に到達。その精度は医者とほぼ変わらないとの報告であった。医者が要する時間が30分に対して支援ロボットでは1分程度の事例発表があった。患者の負担は減少することが期待できる。実用化にはまだ課題があるようだが、遠隔治療や医者水準の底上げには有用だと思われる。

手術ロボットの代名詞であったダビンチは特許が切れており、欧米日の企業がこれを機会とし市場参画を開始している。米国TransEnterixの手術支援ロボットは既に埼玉医科大学国際医療センターに納入されている。手術支援ロボットには開腹から縫合するまでの過程をフォローするが、糸で臓器を縫う場合のテンションを医者は手で感じながら調節できるが、果たしてロボットにはそれが可能か。日本の産業ロボットでは握る対象物が固い、柔軟かをセンサーで微妙に感じとり作動している。手術支援ロボットにおいては操作者が縫合時の力感覚を感じるシステムを搭載することになる。日本得意な技術の一つであろう。

川崎重工は産業ロボットで成功している企業である。かねてから開発を進めていることは公知であったが、満を持して昨年11月に国産初の手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」を販売開始した。

製造販売を手掛けるのはメディカロイド社(川崎重工出資)写真で見る限り非常にコンパクトな作りだ。

このサイズなら普通の病院の手術室内にセットが可能だ。

 

薬事製造販売承認を取得し保険適用が認めらており、まずは泌尿器科領域を対象に販売するとのこと、米国では前立腺癌手術の97%はダビンチであることから、真っ向勝負にでたのか。

日本のロボットはロボットの腕が隣の人に接触しないような微妙な寸止め機構が組み込まれているなど手術支援ロボも数本のアームからなるだけに、精緻な制御が日本製は可能だろうと思われる。

ただ、機械・装置販売と違い、医療支援ロボットの範囲拡大には、AI蓄積量がモノを言う。市場からの症例を装置への是正措置、予防措置に組み込む品質マニュアル、安全マニュアル(QMS,GVP)の充実と実行が必要だ。川重(メディカロイド)は先行品にはない特徴として遠隔リアルタイムサポートをあげており、IoTプラットフォームサービスを手がけるオプティムと共同開発したシステムMedicaroid Intelligent Network System(MINS)を活用するとのこと。それも大きな拡販ツールとなるだろう。

今、テレワークブーム。地方に居住しても仕事は可能。だが、万一病気になった場合、その地方に充実した医療体制がないと命取りになる。そのような時に5G、6Gの通信で遅延時間無く支援ロボットが現地で作動対応することが必要だろう。それには医学界、PMDAなど克服する課題はあるが、頻度の少ない地方で重装な設備負担は厳しいことを考えると、いつまでも放置できる問題ではなかろう。

手術ではないが筆者が苦手としているのに採血がある。健康診断では看護師が厄介な人に当たってしまったのではないかと、こちらが恐縮している。血管がなかなか見つからないのだ。腕を温めたり、叩いてみたりと看護師さんの奮闘に申し訳ない気持ち。それをカバーする採血ロボットが弘前大学で開発されている。赤外線を照射すると血管が見えやすくなるのは知られており、たしか高知大学も民間企業と共同開発をしていた。弘前大学では一歩進めて採血ロボを作成したとヨコハマテクニカルショー(WEB)で発表している。この実用化を節に希望するものの一人だ。

たまご

物価の優等生である卵の値段が最近値上がりが大きい。こちらは理由は明快で鳥インフル流行による鶏卵生産量が減少していることが主原因。需要の方は専門家から聞いた情報によると家庭消費が50%、中食関係が30%、加工食品向けが残り20%。中食の減少分を家庭調理分でカバーしていることから全体として値上がりになっている。値上がりを見るとスーパーによって値上げ幅が相当違う。購買能力(生産業者にとっては迷惑パワー)を判断することになる。消費者にとっては実に悩ましい。卵サイズはS~Lまである。買うなら大きい方がお得なのか?分からない。たまご関係者(上記の専門家)から聞いたところでは、1kgいくらの重量制なので、重量あたりの個数はSサイズが多いことになる。名古屋地区ではモーニングに使用する卵は個数勝負なのでSサイズが選択され、残りのLサイズは北陸地区に販売していると業界の内情を教えて貰った。北陸の人はそれを聞いてどう思うだろうか。得なのか損なのか? 筆者にも分からない。

kg当たりでは同じか。売り場には多くの卵パッケージが並んでいる。平場飼卵が増加している。アニマルフリーとかでブームなのか。狭いゲージ個室でいるより広場で運動できることは鶏にとっても良いだろうとの仮説になっているが、鶏の気持ちは誰も確認していない。

一ヶ月ほど前NHK番組「チコちゃんに叱られる」で鶏はなぜ朝に鳴くのか?との設問があった。答えは *鳴くのは雄 *鳴く雄には順番があり平場でマウントをとっているNo.1が先に鳴き,続いてNo.2。。。の順だとのこと。負けた鶏は鳴くことができないこともあるようだ。マウント取り合いでは壮絶な戦いがあるとのこと。上述の専門家によると戦いの中には鋭いクチバシで相手の内蔵をついて致命傷を与えることもあるのだそうだ。そうなると個室の方が安心できる鶏もいるだろう。雌鶏も一夫多妻制なので弱い鶏から乗り換える必要があるので平場ではオチオチできない。鶏の本音は聞いていないが。 鶏の声をずーっと昔は町中でも鶏を飼っている家があり聞いたものだ。それを今は聞いたことがない。昭和45年当時は150万の養鶏業者が今は2000まで減少している。鶏卵数はほぼ同じだけに、今稼働している養鶏場は自動生産システムでロボット化も進んでいる大型工場だ。

さて、話題を戻して、卵はS,Lどちらを選ぶ、平場飼い卵を選ぶか?の答えは栄養でしょう。関西では昆布出汁で卵を溶いて「だし巻き卵」が定番になっている。大根おろしを載せて絶妙な味が好まれている。筆者の家でもよく食する。関西は(特に京都は)昆布文化である。関東になると砂糖配合の固めの卵焼きで昆布出汁が使われていない。

横浜にいる筆者は昆布に入っているヨウ素を餌として取り入れている「ヨード卵」をその代替として利用している。千葉の海岸で採れる昆布を餌にしているとのこと。値段は高いが血中コレステロールなど効用が多いなどは会社のCMになるので多くは記載しない。

聖マリアンナ医科大の研究によるとin vitro ではヨード卵抽出物質について報告。発毛・育毛に関しても記載がある。「男性型脱毛症(AGA)の最大の原因物質ジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制し、発毛促進を期待できる」としたとある。筆者にとって「早く言ってヨ」気分。

余談だが、電力事情が相当厳しいらしい。経済産業省は「節電のお願い」とは明確に言わないが、発電能力が96~100%と瀬戸際で停電を食い止める運転を強いられていることを極めて婉曲的に表現している。燃料の液化天然ガスの調達問題にあるようだが、ベース電源には原子力、石炭火力が如何に生活に重要であるか政府は堂々と主張しても良いのではないだろうか。コロナで生活に影響を与え、その上 節電を強いるのは為政者としては言いたくないことではあろう。

そのせいかどうか?最近、街でエスカレーター修理をよく目にする。通常は半日程度の点検・補修であるが、昇降2系合わせて3ヶ月と長い。「強風により動く歩道は停止します」の表示も昨年より多いような気がする。独断偏見を言えば電気に関連する業界は直接指示されてピーク電力カットへ協力しているのでは?と考えた。終電ももっと繰り上げて、夜更かししないでさっさと寝るとするか。鶏のように。

 

珈琲と私

テレワークが続く。パソコン作業も時々立ち上がって気分転換するが、考えに詰まったときは、珈琲豆を挽く。こう言うときは手回しが適している。さて、どの豆にするか?粉砕粒度はどれぐらいにするか? だが、目開きピッチを覚えていないので再現性がない。なので同じ豆でも味が異なる。これが素人の味だと開き直る。ガラガラガラと挽ハンドルを廻す。豆の種類(サイズと焙煎度)によりハンドルへの抵抗が違うが、やがて粉粒体となり空回転となると挽き終わり。ここで仕事の気分転換は40%達成。お湯の温度を確認して全体の20%程を注いで30秒ほど静置する。この時に立ち上る香りで20%ストレス解消だ。豆の産地を認識するのはこのとき。手許にある豆はブラジル、キリマンジャロ、エチオピア、コロンビア、ウガンダ、ルワンダ。スペシャル扱いがブルーマウンテン、特別はゲイシャだが相当な腕が必要なので遠い目標にしてある。

素人の勝手な順番で電車でいう普通、準急、急行、特急、快特の如きでその時の必要とする味を選択しているのであって産地の方にはお断りしておきます。

筆者は珈琲通でもなんでもない。それでも、この立ち上がる香りで(特に焙煎度が低いときは)その土地の雰囲気が想像できる。そんなことないと読者は言われるだろう。上で挙げた珈琲豆産地の多くは内戦が長く続き一次産業に女性が従事して支えてきた歴史がある。ルワンダの豆の香りはブラジルとは違い荒々しい。焦土と強烈な太陽の下で熟したのではと焙煎度が低いときは特に感ずる。お試しあれ。

さて、残りを二分割してお湯を注ぐ様子をYou Tuberで見る。その真似をする。筆者は現在の仕事のなかで某先端材料の濾過プロセスを開発する必要に迫られていることもあり、珈琲を淹れる工程を抽出・濾過プロセスとして見てしまう癖がでる。折角の気分転換ではあるが、粒子の差により濾過速度が異なる様はナルホドと再認識することがある。

抽出濾過した液体は芳醇な珈琲となってカップに注がれる。それをゆっくり味あえばよいものを、7割程度いただくと、気分回復度が100%になっていることから、つい仕事に舞い戻っている。飲み残しは産地の人に申し訳ないので後ほど温めてのむ。こんな調子を一日に少なくとも3回は繰り返す。

そんなに回数が多くて健康に問題ないのか?は昭和の頃の話で、今は寧ろ好ましいが通説となっている。

日本の研究.com (2020.11.09) 京大及び長浜バイオ研発表によると、「習慣的なコーヒー摂取が健康に良い影響を与える場合が多いことが分かってきました。コーヒーをよく飲んでいる人の方が、糖尿病や心血管疾患、肝硬変、いくつかの癌や認知症になりにくく、死亡率も低いという結果が出たのです。NewEngland Journal of Medicine に掲載された最近の記事では、1 日 3 から 5 杯のコーヒーを習慣的に飲むのがよいのではと記載されています」

今回発表された研究内容は「コーヒーをよく飲んでいる人ほど眼圧が低いことを発見しました。ただし、コーヒーを飲むことによって眼圧が下がるのかは分かっていませんので、緑内障の治療や予防の目的でコーヒーを摂取することを推奨するものではありません。くれぐれもご注意ください。」とある。

 

 

 

 

 

 

皮膚科専門でTVでお馴染み女性医師によるとクロロゲン酸はシミ防止によいとか、保水性補助として有用だとの情報をYou tubeで語っている。また、珈琲研究家で東京薬科大学名誉教授の岡希太郎氏は以前からブログで珈琲成分効果を取り上げていたが、論文がネイチャーに掲載されたことを報道で知った。論文査読が厳しい雑誌なので本当だろう。タイトルは「珈琲習慣は健康寿命の援軍 注目のニコチン酸」

健康といえばポリフェノール。CMでもお馴染みで珈琲にもクロロゲン酸が含まれているとされ多く報告があるとのこと、これに加えてニコチン酸(たばこのニコチンとは全くちがいます!)。記事のなかで「一般には善玉コレステロールを増やす効果や、皮膚・粘膜の健康を保つ美肌効果などが注目されていますが、医療の現場では、様々な病気の治療にも使われ始めています」その1つが、先天的なNAD不足による筋無力症で難病に指定されている「ミトコンドリア・ミオパチー」。昨年にはヘルシンキ大の研究チームが、ニコチン酸の投与で患者の筋肉中のNAD濃度が高まり、副作用もなく運動機能が回復したと発表した。また中国の医師団からは、やはり難病の潰瘍性大腸炎をニコチン酸の追加投与で治癒させたとの論文も発表されている。筆者はこの分野は全く知見がないので、コメントなしで引用した。ご判断は読者に任せたい。

クロロゲン酸(左)とニコチン酸(右)の分子構造。

 

 

 

 

 

 

この記事では

「珈琲豆を深く煎ると、このクロロゲン酸は失われてしまう。そこで岡さんは、ニコチン酸が豊富に含まれる深煎りの豆と、クロロゲン酸が豊富に含まれる浅煎りの豆をブレンドした珈琲を飲むことを勧めている。」。そうか豆が同じでも焙煎状態(浅・深)を組み合わせか、経験が深い人とフレッシュな見方をする人の組み合わせがクリエイティブな仕事をできるのだ。。。。と教えられたようなものだ。

ここで、少しだけ化学屋らしいことを言えば、抽出にはお湯の通過速度と温度が重要。粉砕した粒子径が細かく、かつ揃っている場合(正規分布で分布幅が狭い)は、お湯の通過速度が遅くなる。始めと後の通過・濾過速度は低下して、お湯と接触時間が長いと苦みが抽出されてくる。そこでの対策として粒子径分布を変える(広く、または粗粒子を配合する)ことも対策として挙げられるのではないかと考えている。

そんな多くのことを考えさせてくれる珈琲。淹れ立ての珈琲をいただく。産地で働く人の様子を想像しながら。写真は焙煎前の生珈琲豆。目の前で焙煎工程を見ることができる戸越銀座Caffe la Costaの豆の特徴図

組織潜在力とDX

電通ビルが売却のニュースは流石に驚いた。売り上げ1兆円を軽く超える企業がまさかの損失補填に自社ビル売却。オリンピックの当てが外れた、斜陽マスコミの影響など原因は専門家にお任せして、テレワークで仕事は可能なので3割程度のフロアを賃貸するとのこと。

これを聞いて、本当にテレワークで可能なのか? 不思議に思った。自分の専門スキルの売買で会社と契約している分には可能だが、日本の会社の多くは専門職での採用は限定的であり、多くは総合職としての採用が多い。出身は技術者であっても短くて3年、長くても20年するとジェネラリストとして事業企画などの職に就く。例え20年が研究職で入社しても基礎分析、材料開発、成形開発、テクニカルサービス、品質管理及び製造現場など多岐の経験を積む人が多いのが日本企業の特徴。技術職で採用が営業に転ずる人の割合いが多いと言うか普通。海外支店勤務で技術営業兼マネージャーも経験する。

では、次から次へと受け持ちする仕事が変わっても円滑に組織として活動できるかと言えば、境界が重なりあっており、例えば材料開発を推進しようと思ってもその他関係業務との連携・相互の理解がないと進まないから、相手の仕事も知らず知らずに代替しうるレベルまでになっている。

外資系企業の場合は個人―企業の契約で成立しており、個人のスキルが必要とするところにジグソーパズルのように当てはまる人材が採用され、使命が終われば雇用は解除される。オフィスの風景も個室が与えられているか、隔絶パネルで区切られた空間で仕事をしているのを良くみる。実に格好が良いように見える。日本の企業の多くは大部屋。今は大部屋でもパソコンのキイタッチの音しか聞こえないが、以前であれば電話で話す内容が聞こえてくると、“あの案件だったら,情報を持っているので教えてあげよう”としたものだ。人には情報は教えない頑なな人は陽が当たるところから距離を置くようになった。

いつでも仕事が変われる状態はコストセンターからみれば「遊んでいる=余裕=無駄」とみられることもあり、不況になると目を付けられる危険もある。だが、今流行の“デジタルトランスフォーメーションDX”となるとどうか。デジタルは単なるツールだが、問題はトランスフォーメーションDXに便利なのは大部屋的相互業務一部浸透型組織ではないかと考えている。材料屋の表現ではIPN構造(Inter Penetrate Network Morphology)。超簡単にいえば融通無碍の組み替え。マルチタレントでないとDX時代は円滑に進まないと思われる。会社も社員をマルチタレント養成し、個人においてもマルチ分野に専門家顔負けに通用するような技量と見識をもつ必要があるのだろう。

その意味で、専門一本足打法で会社内で生活できても、転職は厳しく、定年後に通用するには時代が求めていない限り厳しい。会社訪問して事務所風景が大部屋になっていて、電話の声が聞こえていると“この会社は変化にも強いだろう”と判断する。大部屋でもパソコンの音だけでシーンとしている会社は“チョット心配な会社”と思う。皆様の会社は如何でしょうか?

筆者が経験してきたことを記述した“経験則”であるが、理論的な取り扱いをした記事が日経に掲載されている。慶応・菊澤教授の“危ない「働き方改革」、実は変革に向いた日本の組織”を参考にして下さい。

日本、ドイツ、米国の企業組織形態の特徴を論じています。ダイナミック・ケイパビリティ(感知、捕捉、変容する変革能力)が変革競争力に重要であると説いておられる。全く同感だ。

続きは(日経ビジネス2021年1月22日)をお読み下さい。

図表を引用(筆者作成)

コロナ第三波と身近なできごと

昨年の入試問題ににPCRに関する設問があった。いまどきの問題なのでメモした。(出典は現代数学2021、2月号)。

「PCR検査において、病気に罹っているとき検査結果が陽性になる確率は0.74,健康のとき陰性となる確率は0.999である。病気の人の割合いは1000人に一人であるとする。検査結果が陽性になった場合、実際に病気である確率は約何十%か」

簡単と言う人、若い時はスラスラできたが今は。。。の人とそれぞれでしょう。答えは末尾に記載しましたので参考にして下さい。

頭が柔らかくなったところで、今度は身体の運動などに関わることについて。皆様の仕事によっては表題の内容は該当しないとのお断りをまずしておきます。

次のグラフは昨年の2月から本年1月までの執筆者の月平均歩行数。個人データーであるので、勿論全体を表していない。その前の年は年間平均8800歩である。2月から低下がはじまり、第一波で外出自粛が発出されると4月は1700歩の最少記録をした。ビジネス相手方もクローズドしている状態で外出機会は極端に減少した。その後解除になると徐々に増え始めたものの、テレワークの浸透もあり2019年ベースには戻っていない。ズーム会議も会議はすれど実行となると相手方の勤務状態変化もあり、以前ほどのスピード感で物事が進まなかった。そうこうするうちに第二波、そして大型の第三波が来ている。

1月8日に1都3県に緊急事態が発出され、次々と事態宣言対象地域が拡大している。横浜も外出自粛規制対象となっているので、歩行数は減少している。しかし、第一波ほどに低下していないではないか! 出歩いている証拠ではないのか!とお叱りを受けるであろう。

実はビジネス活動による1月の平均歩行数は2500~3000歩であり、残りは居室内でのエクササイズによる歩数を足し算したものである。米国在住の人からの情報により始めたエクササイズであるが、ひところ流行った ビリーズブートキャンプほどの激しい動きではない。10分もやれば十分とのこと。物足りない感じで初日を終えた。歩数は1000歩稼ぐことはできた。目標は2000歩以上補完する必要があることから、サイクル2回とした。その日の睡眠時間は通常より大幅に延びた。坂のある土地柄だが妙に足が軽い。おおっ! 従来のビジネス、散歩の歩数で得られた感触と違うことに気がついた。因みにBMIは24なので肥満ではない、坂道をフウフウ言いながら登っていたわけではないが、エクササイズを取り入れてから軽やかになった。コロナ渦が運動音痴の筆者にもたらした良いことだと前向きにとらえることにした。

ZOOM(Teams)会議は決定しても実行が遅いと上述したが、良いことを先日見つけた。

それは技術者フォーラム会議がWEBで実施されたときのことである。講師の方の説明を聞きながらチャットで質問を書き込むと休憩時間に講師が回答をする。セミナー参加者は休憩できるが講師は対応に休憩どころではない。その質疑応答に誘導されて新しい質問が飛ぶ。リアル会議やセミナーでは質問者のところにマイクを持って行くのに時間を取られる。質問者の多くは「素晴らしいご講演で有り難うございます」と枕言葉がはいり時間が取られる。質問者の中には頭が整理されてなくあやふやな質問して返答に困る事態もままある。質疑応答も2~3件で終わるケースが多い。チャットでは挨拶不要、質問が整理されていることがあり、多くの質疑応答が可能である。なかなか便利である。

コスモサインもWEBセミナーを予定している。積極的なご参加と活発な質疑応答を期待しています。

コロナ渦が終焉しセミナー後の懇親会が早くできると良いことは言うまでも無い。

皆様におかれてもコロナ渦で変化したもの、普段気にしていないものが見えたなどあろうかと思われる。これを機会にカタスロフィ的に変化するのは何か?と前向きに考える時間をもらたと考えることも良いのではないだろうか。

冒頭問題の答え (2020年東大薬学系大学院試験問題のひとつ)

分子(1/1000 X0.74) 分母[ (1/1000X0.74) + 999/1000X(1-0.999)]

=42.5%。答えは約40%

空気清浄機としてのガソリン車

タイトル間違っていないか?と疑問を持たれる方、最後までお読み頂けると、さもありなんと思われるでしょう。

EVは排気ガスゼロ FCV(水素燃料)排気ガスはH2Oのみでトドの詰まり大気を汚染しないので歓迎されている。それに対してガソリン車は二酸化炭素、(ディーゼルの場合)窒素酸化物、PMを排出する。ガソリン車ゼロ宣言をする国が相次いでいる。日本でも2030年代にはガソリン車ゼロを目指すと政府が発表したとあって大騒ぎ。あまりにも自動車業界の反発が強いので「役所で使用するクルマは」。。。とやや後退気味に訂正したと聞く。自動車工業会はガソリン車の燃費向上を継続しており、EV、FCVの推進も実施と多岐に亘っての選択枝を広げて格闘中の時だけに、技術音痴の政府が勝手な方向に誘導するのは堪らんとのことだと思う。レジ袋廃止と同じ無智な空気感でやられてはならないと思ったのであろう。

そうは言っても、ガソリン車を将来製造するのは厳しいだろうと多くの人が見ているなかで、エッ!? と驚くべきことが粛々と進んでいることを知った。それは

「大気を清浄化するエンジン車」の開発である。 将来のガソリン車は空気清浄機?とでも表現するのか?

EV,FCVは大気汚染はしない。今回の開発目標は吸気の空気よりクリーンな空気にして排気するというもの。指摘されて目が覚めたのは「確かに大気汚染がなければの条件を満たせば、あとはwell to wheel 問題(クルマ製造LCAを含む総合環境負荷)に焦点が絞られる。このような発想は全くしていなかった。驚いた。

でも、驚くのは早い。2017年 幼稚園児の描いた「空気をきれいにする車」を取り上げて当時考えられる技術を集合するとして東工大村上准教授(当時)が提案していたのだ。

 

2015 年度「機械の日・機械週間」絵画コンテスト受賞作品「空気をきれいにする車」。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原油・シェールガスはまだまだ潤沢にある。直接ガソリンを燃焼するエンジンはトータル熱効率では優れている。熱効率50%を越えるクルマも発売されるようになった。

では「大気を清浄化するエンジン車」のキモは何かと言えばリーバーンエンジン構造、セラミック被覆点火プラグなどエンジン本体の開発に加え、最も重要な働きをしていているのは排気ガス処理触媒である。一酸化炭素、低分子量炭化水素、窒素酸化物、PM(微粒子)を還元トラップする触媒(TWC&4WC)である。

欧米では極寒時スタートでも触媒能力が発揮できるよう触媒を予めヒーターで加熱するなど細かい配慮の後処理を組込んでいる。このシステムは自動車用内燃機関技術研究組合で自動車メーカーと官学一体となって開発を進めている。図はイタリアフィアットの試作車である。

(2021.2月号日経Automotiveより)

究極は大気を元の大気より綺麗にするが、当面の目標は2030炭酸ガス70%カットとのこと。多分、落ち着く先はFCVとエンジンとのハイブリッドなのかもしれない。水素社会はクルマ以外でも次期インフラとして充実されることもあり、水素とエンジンが持つそれぞれ特徴を相互補完したクルマになるものと予想される。愉しみだが、早くして欲しい。

触媒は小中学校で習ったのは自ら変化することなく化学反応を推進するというもの。確かに1世紀前の化学産業では分子を結合させるために高圧・高温の条件が必要だった。高圧法低密度ポリエチレンの名前がついているように圧力は2000~3000気圧を必要とした。それが精々5~20気圧、常温~60℃で規則正しく結晶となる定圧法低密度ポリエチレンができている。肥料で欠かせない原料のアンモニアはハーバーボッシュ法(温度600℃、圧力200~1000気圧)が長く適用されてきたが、最近では定圧法が開発されている。これが可能としているのは触媒にある。今、欧州を中心に合成ガソリンの研究がなされている。原油ではなく水素と一酸化炭素をコバルト・鉄触媒で合成ガソリンを製造するにはフィッシャー・トロプシュ法を利用している。さて、この研究と通常のガソリンを利用するにはトータルLCAではどうななのか、両方のレースが見物である。

触媒の開発は途方もない探索が必要であるが、量子コンピューターと計算機化学の進展により従来より効率よく最適触媒の種類及びその形態が指定されるのではないだろうか。それにより環境改善と豊かな生活の両立ができるとしたら化学者としては非常に嬉しいことだ。

大豆と納豆菌

目覚めの際のルーチンの1つ加わったのが香木を嗅ぐこと。匂いを感じ、珈琲の微妙な味が分かり、熱は平熱。咳、息切れ 呼吸苦 寒気 筋肉痛 関節痛 下痢 頭痛 鼻水 くしゃみ 倦怠感 咽頭痛のチェックリストに有無を記録する。あたかも機械の始業・就業点検や薬事管理点検のようでもある。(コスモサインの社員は全員PCR検査して陰性を確認)

さて、朝食の定番に納豆がある。納豆業者に叱られるが、筆者は正直なところ納豆が非常に美味しいとは思わなかった。栄養があり善玉菌が、、、、、と医食同源の原料との理解だ。子供のころ関西・北陸地区を中心とする西日本で生活を送れば納豆とはほぼ無縁だった。幼児のころの絵本なので信頼性はイマイチだが、富士川の合戦で源氏の急襲を受けて、ノンビリと大豆を煮ていた平家が驚いてムシロに巻いて逃げた。それが納豆の始まりと書いてあったのを覚えている。今でいう納豆はお店になかった。水戸の藁に巻いたお土産を見て“これが納豆?”の雰囲気だった。京都で納豆といえば大徳寺の納豆。大徳寺納豆は真っ黒で匂いが強烈で“薬”として中国から渡来したのであろう。毎日食前に乗ることはない。

社会人となっての初勤務地が三重県四日市。社員寮に入居。朝食・夕食は社員食堂。フォッサマグナを境に地域分けすると、東日本地域からの人が6割、西日本地域が4割。納豆はテーブルの中央に大きな容器に山盛りに置いてあり各自取る。卵と刻みネギも添えて。納豆を攪拌する回数とチカラの入れ具合で、東日本か西日本出身かを見分けることができた。ネット検索すると攪拌回数と旨み成分の関係を実験した事例が紹介されている。3点満点で味を評価すると、攪拌しないと1点、20回攪拌でで1.8点 100回で2点 400回で2.3点 だそうで投稿者は400回攪拌を推奨(できるか!)。攪拌すれば納豆菌の量が増える訳ではない、ネバネバが大豆から剥離して表面の膜を形成することでセンサーに感じやすくなっていると考えた方が合理的で、体内に入れば同じ栄養素量だと言えば、また納豆業界の人から叱られそうだ。

京都大学が大豆と納豆菌について研究し10月に学会誌に投稿したことが昨年の11月2日にプレスリリースされた。タイトルは「大豆と納豆菌のせめぎ合いの仕組みを解明 ―生きた大豆は納豆菌を嫌い、納豆菌は死んだ大豆が好き」

生きた大豆は納豆菌を振り掛けても繁殖することなく拒絶する。芽が出てもやしとなる。煮るなり長期間放置すると大豆は死に、その細胞膜を納豆菌は栄養として取り込み内部に浸透するメカニズムを明らかにした。「納豆菌は死んだ蒸大豆に応答して大豆を栄養源として生育するために、遺伝子発現を変化させていることがわかりました。」と凄い様子が記載されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波及効果と今後の予定について著者らは次のように記述している

「本研究により、大豆は納豆菌 枯草菌の増殖を抑える抗菌物質を産生していることが示唆されます。足のにおいの原因として、枯草菌などの細菌の存在が指摘されています。今後は、大豆から抗菌物質を単離同定し、どのような細菌に対して抗菌活性を示すのかを明らかにすることにより、大豆抗菌物質の薬剤への応用が期待されます。一方、蒸大豆に対する納豆菌の生理作用を追究し、その成果を高品質な納豆の製造に繋げる予定です。また、納豆菌の細胞表層構造の変化に伴う洞穴の形成機構を解析することにより、細胞の膜ダイナミクスと洞穴の生理的意義を明らかにします。」

さすが京大。納豆の研究を踏まえ、メカニズムをベースに抗菌物質への展開を睨んでいることは頼もしい。高品質納豆生産が味覚に繋がると納豆消費量が増え、結果として健康寿命がネバネバ成分のように延びるのであれば大歓迎だ。子供のころ食しなかった納豆だが今は毎日の食卓にある。

「京大発表論文

タイトル:Bacterial inducible expression of plant cell wall-binding protein YesO through conflict between Glycine max and saprophytic Bacillus subtilis

著 者:Haruka Sugiura, Ayumi Nagase, Sayoko Oiki, Bunzo Mikami, Daisuke Watanabe, and WataruHashimoto

掲 載 誌:Scientific Reports」

環境対策の短期・中長期テーマ

皆様、明けましておめでとうございます。旧年中はコスモサインをご愛顧頂きありがとうございます。本年も何卒宜しくお願いいたします。

日本海側のお客様におかれては除雪作業をしつつのお正月だったのではないでしょうか。関越道でトラックが豪雪で動けないことが年末の話題になった。同じ光景が2018年の北陸道であった。東京では降雪5センチで交通網がズタズタになるような脆弱さを露呈する。日本海側の降雪量は豪雪となると一夜で90センチ積雪になることもあるが都市生活は大きな影響はなくなっている。昭和38年(サンパチ豪雪)以来融雪設備(散水)の拡充や雪下ろし頻度が少なくなるような建築の推進などインフラ拡充により格段に住みやすくなっている。新潟大の親子二代に亘る教授のカーボン利用による道路や屋根ヒーターの息の長い研究も地方に根ざしているテーマだ。

一方道路となると、一台でもストップし渋滞発生中に豪雪が来ればクルマは閉じ込められる。燃料メーター、バッテリーメーターを睨みながら救援を待つことになる。ガソリン車やHEVには給油支援は可能でもEV車は厳しい。ホッカイロ、寝袋とスコップを持参することをお勧めする。スコップは何故かと言えば車内にいるとエコノミー症候群になるので車外で体を動かし救援自衛隊の方々と一緒にワークする為。食料と蔵書を積み込み読書三昧でその時を待つのもありか。給油問題はEVもFCVも同じなので、そこは道路側での改善が求められる。

2050年排出ゼロ宣言があってから環境ニュースが俄然多くなった。暮れの12月28日の日経によると社長100人のアンケートでは自社で達成可能9割との記事が紹介された。その手法として(1)次世代再エネ発電 (2)水素の活用技術 (3)電池の高効率化 (4)デジタル技術を活用した電力ネットワーク (5)電動モビリティとある。 普通ならこの記事を素直に読み、「非常に心強い回答である。それを達成する蓄積技術や手順を保有しているからこそ言い切ることができるはずだ。」と反応をしたであろう。だが、日本の半分は降雪の気象条件下にあることを考えると、違うソリューションも用意しないと不完全ではないかと考えられる。それとも社長は記者が用意したアンケートの中で選択するとの条件で回答したのかも知れない。本当の社長なら「これらの項目にはない重要な要開発の技術がある」と答えたと思う。質問した記者のレベルが問われるものと思われる。

次世代再生エネルギー発電の主力が太陽光発電だとしたら日本海側の冬期は発電量が低下する。電動モビリティも降雪には弱い。太陽光発電の蓄電・電池の高効率化がリチウム電池(固体も含め)に依存するならば、現在の40ドル/KWHを政府目標の20ドルにしてても尚高い、かつ全世界とのリチウム取り合いになると資源枯渇問題が懸念される。

揚水発電やフライホールに加えて圧縮空気によるエネルギー保存&再生電力に注目されると予想する。雪国秋田出身の首相ならでは指示を省庁にされてはどうかと思う。新潟出身の田中角栄は列島改造論と唱えた。その発想の背景は雪国であっても経済発展するにはどうしたら良いのかを考えたことも含まれている。

小生がもし首相なら2050年と2100年の計画を出しなさいと指示するだろう。恐らく2050で達成したインフラは2100年では通用しない事態になることは予想される。バズワードに駆られて走りだすと落とし穴に落ちる危険がある。長期的な視点が必要だと考える。

列島改造によって新産業都市ができたものの、グローバル化で地盤沈下したのと同じ道を歩みかねない。寧ろ日本への逆の流れを起こさせたい。折角の正月においては視点を遠いところに馳せるのもよいのだろう。

今の技術の延長の2050には日本海の荒波を利用した潮流発電や暴風でも稼働する風力発電や温泉地区での地熱発電もあるだろう。抜本的な技術で2100年を迎えるには、例えばプルサーマル、核融合、マントル発電などが思いつく。過去検討したが技術未達でペンディングになっているテーマもある。再度取り上げるには覚悟が必要だが、それこそ民間企業ではなく国のお仕事だ。大学が官民提携しないと研究室が維持できないような今の独立法人大学システムではなく、長期的な視点で大学に取り組ませる予算措置と人材の態勢を敷くことが官に求められる。

今後の歯科・歯科技工の世界も例外ではない。どのようになるのかと受動態で待つのか・どのようにするのかと能動的に動くのかエキサイティングなテーマであり考え提案し実行できればと考えている。